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番外編
夏祭りの日 side はっしー
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はっしーside
俺は今日、ねこと明人と一緒に近くの夏祭りに遊びに行く約束をしており、集合場所へと向かっていた。
あ、もうねこいんじゃん!
ねこの姿が見えたので、手を振りながら近寄り声をかけた。
「お!ねこ早いな~待たせてごめんな~」
「ううん。全然待ってないから大丈夫だよ。」
それならよかったと安心した後、ねこの姿を見たら白の浴衣を着ていた。
まぁ明人の提案で、全員浴衣を着て夏祭りに行こうと言っていたので、着てくることは知っていたのだが...
改めてマジマジと見ると、その浴衣はねこの純粋さに良く似合っていると思った。
「あとその浴衣、ねこに似合ってるな!」
「あ、ありがとう...」
俺は素直に感想をねこに伝えると、ねこは頬をほんのり赤く染めて俯いた。
普段は見れない姿に心の中でテンションが上がり、明人に感謝を伝えた。
ねこ、可愛すぎか...!マジ、明人ありがとな!
「は、はっしーもその浴衣似合ってるよ!」
そう心の中で感謝していると、ねこも俺の浴衣を褒めてくれた。
俺は元々持っていた黒の浴衣を着てきていた。
昔は、子どもながらに背伸びをして大人っぽく見せようと黒を選んだが、いつの間にか似合うようになっていたんだなと感じた。
「お、まじ?ありがとな!いや~ねこに褒められるとは、よほど似合ってるんだな~なんて笑」
「ふふ、何言ってるの笑」
俺がドヤ顔で言うと、ねこは笑いが耐えきれず吹き出していた。
そのまま笑っているねこを眺めるのも良かったのだが、さすがにこの計画を立てた張本人である明人がいないことが気になってきた。
「それにしても、言い出した本人が遅くねーか?あいつ連絡も寄越さないで、何してんだよー」
思わずそう呟きながら携帯を確認すると、約束の時間は過ぎていた。
特にメールも来ておらず、何かあったのかと思いメールを送った。
しかし、すぐに既読は付かず、俺は早く見ないかなと何度も確認していた。
早く見てくれよ!そして、メールを早く寄越せ!俺は、は・や・く、ねこと夏祭りを楽しみたいんだよ!!
少し経ってから既読が付き、メールも来た。
「既読ついた!あ、メールも来たわ。」
内容は...
「う~ん?"ごめん、マジごめん。急に外せない予定入っちゃって行けなくなった!でも、俺のことは気にせず、二人で夏祭り楽しんできて!"だってさ~」
実はメールがもう一つ来ていたが、さすがにそれはねこに言えなかった。
"はっしー、屋台の中にジューシーでビッグなフランクフルトあるから、それオススメだよ!ねこくんに食べさせたらエロイだろうな~なんて...笑"
お前、なんでそんなこと知ってるんだよ...下見でもしてたのか!?でも、ありがとう!絶対探しだすわ!
...てか、待てよ?なんでそんな情報を俺にくれるんだ?まさか明人に、俺がねこを好きなことバレてる...とか?
冷静に考えて、あいつならありえると思ってしまった。
なんかいっつも俺たち見てニヤニヤしてるし...
ねこは残念そうにしていたが、チャンスが与えられたからには存分に生かすしかないだろうと思い、また明人に感謝した。
「どうする?まぁ気にせずってあるし、二人で存分に楽しむか?そんでもって、あいつが来れなかったことを後悔させてやろーぜ!」
俺がそう言うと、ねこも、
「後悔って笑まぁ、明人がいないのは残念だけど、ここまで来たら帰るのもったいないし、普通に楽しもうかな笑」
夏祭りを楽しむことにしたようで、笑いながら同意してきた。
その返答を聞き、明人には悪いが、これでねこと二人きりで行けるぞ!と嬉しくなり、大きな声が出てしまった。
「おっしゃー!そうと決まれば、早速屋台とか見に行こうぜ!」
ねこは頷き返し、二人で屋台を見に歩を進めた。
様々な屋台が両サイドに並んでおり、どこも親子連れや学生など人で賑わっていた。
この夏祭りのフィナーレには大きい打ち上げ花火が上がる予定で、その時間になると会場は、どこを見ても人、人、人の状態になる。
まぁ、俺にはとっておきの穴場スポットがあるから問題ないんだけどな!
そんなことを考えながら歩いていると、さっきまで隣を歩いていたねこの姿が見えなくなっていた。
あれ!?ねこいなくなってるんだけど!?
どこに行ったんだ...?
俺は焦って来た道を戻っていくと、青白い顔をして周りをキョロキョロ見ているねこの姿を見つけた。
はぁ...まだ思ってたよりも近くにいてよかった~
ねこがその場から動かないように、俺は急いでねこの腕を掴んだ。
ねこは、突然掴まれたことに驚いたようでビクッと肩を揺らした。
声をかけてから掴めばよかったか?と、俺は申し訳なさを感じたが、はぐれるよりは何倍もマシだと思った。
数秒後、ねこは振り返ると、腕を掴んだのが俺だと気づいたようだ。
「はっしー!?」
「はぁ~焦った~突然ねこがいなくなったから、ビックリしたわ...」
まじで、冷や汗かいたわ...
「ご、ごめんね...」
ねこは眉を下げて、謝ってきた。
俺はせっかく楽しい夏祭りなんだし、そんな顔のままいさせたくないなと思った。
「まぁ、無事に会えたしノープロブレムだ!でも、すぐにはぐれそうだからな~何なら手でも繋いでおくか?笑」
そう7割冗談で言った。
残りの3割は、本気で乗ってきてくれたらいいな~なんていう邪な考えだったりするが笑
それを聞いたねこは、思考停止して考え出したと思ったら、慌て出した。
「手って...え、手を繋ぐ?って言った?え、え、繋ぐ...?」
ねこって表情に出すぎというか、分かりやすいな~
あまりな慌てように、俺は笑いが耐えきれなくなり、吹き出した。
「ぶっ...あっはははは!ねこ、お前...や、やばいな...あはははは!あ~ほんと......可愛いな(ボソッ」
最後の言葉は、ねこには聞こえなかったらしく、首を傾げていた。
まぁ、聞こえていたら今ごろ顔を真っ赤に染めてるんだろうな~
俺が大笑いしている間に、ねこは俺の言葉が冗談だと思ったようで、落ち着きを取り戻していた。
そして、何かを思いついたのか、閃いたような顔をして話しかけてきた。
「ねぇ、はっしー。僕良いこと思いついた!」
「ん?なに?」
「あの...手を繋ぐのはちょっとムリだけど、これならいいかなって...」
ねこはそう言いながら、俺の裾を少し摘まんだ。
ちょっと待ってくれよ...一体何が起きてるんだ...?
というか、ねこさん。いつの間にそんな技を身につけたの?...俺、悶え死にそうなんですけど!?
と思いながら、ねこを見ると自信たっぷりの表情をしていた。
これはまた天然でやってるんだなとわかった。注意しても直らないんだろうな!と叫びたい気持ちをグッと堪え、あとどれだけ耐えなければならないのかとこの先を思うと、思わず大きなため息をついていた。
「ごめん!やっぱり、迷惑だったよね...そ、それにそんなはぐれないだろうし、僕はだいじょ「いや!?全然迷惑じゃねーから!むしろ掴んでて欲しいっていうか...って何言ってんだ俺は!? 」」
そのため息を迷惑だと勘違いしたねこは、提案を取り下げようとしてきたため、俺は慌ててねこの言葉を遮ってそう言った。
しかし、何も考えずに口から言葉が出てしまったため、もろに本心を垂れ流しにしてしまった。
うわぁー!!俺、何言っちゃってんの!?
最悪すぎるんだけど...ねこに引かれること間違いなしじゃん...
そう落ち込んでいると、ねこは気にした様子もなく、
「じゃあ、このまま掴んでるね。」
と言った。
「あ、お、おう。そうしといて!」
もしかしたら早口で喋っていたため、ねこにはあまり聞こえなかったのかもしれない。
とりあえず、よかった~引かれなかった~!
もうこの世の終わりかと思ったわ...
ひと安心して、一先ずこのままねこが俺の袖の裾を掴んだ状態で落ち着き、俺たちは屋台を見てまわることにした。
相変わらず、ねこは周りをキョロキョロと見ていた。
「ねぇ、はっしー。屋台いっぱいあるね!」
その言葉で、俺も周りを見ると食べ物系がよく目についた。
「そうだな!あと、食べ物系が多いよな~」
...って決して、明人のメールが脳裏を掠めたからとかそういうのではないがな!
そう思いながらも、ちゃっかり確認してしまった。
ベビーカステラにポテトにフランクフルト...いやあれは明人の言ってたやつじゃなさそうだな...
食べ物を見ていて、ふと今何時だと思い時計を確認すると19時近くになっていた。
ここら辺で食べておいた方がいいかもな~
「屋台見てたら、お腹へってきたな!ちょうどいい時間だし、何か買って食べるか!」
ねこもお腹が空いたようで頷いていた。
「じゃあ各々食べたいもの買って、そうだな~あ、あそこのデカイ木のところに集合で!」
「うん、わかった!」
そう言ったあと、俺たちは分かれて買いに行った。
さて、まず明人の言ってたフランクフルトを探すか~
そう思いながら、しばらく見て歩いていると、少し離れたところから目的のものらしきワードが書かれた屋台を見つけた。
そこに近づいていくと、だんだんと屋台のお兄さんの声が聞こえてきた。
「お客さん!うちのフランクフルトはそこら辺のよりジューシーでビッグだよ!!どうですか!?美味しいよ~」
明人のメールそのまんまの言葉を言っていたため、思わず笑いだしてしまった。
そのまま過ぎね...?そんなことある!?
これ絶対、明人、下見してたの確定だな!
「あ、そこの大笑いしてるお兄さん!一つどうですか~!」
あまりにも笑っていたからか、屋台のお兄さんに声をかけられた。
俺は声に誘われるように近づき、「じゃあ、一つ貰います!」と言い、受け取った。
木へ向かう途中で、さすがにフランクフルトだけじゃ足りないかと思い、焼きそばを買っていった。
木へ到着したが、ねこはまだ選んでいるようでいなかった。
それにしても面白かったな~
明人は下見までしてたのに来なかったとか、何考えてたんだ?
(そんなの二人を影からこっそり見守るために決まってるだろ!二人がはぐれたときに見失ったけどな!!by 明人)
頭を悩ませていたが、答えが出る前にねこが来る方が早かった。どうせしょうもなさそうな理由だろうしと思い、放棄した。
ねこは俺の姿を見つけると、微笑みながら近づいてきた。
「はっしーはそれにしたんだ!でも、なんか気のせいかな?そのフランクフルト、普通よりでかいような..?」
やっぱり、気になるよな~
ねこは早速、俺の持っているフランクフルトが目についたようで、普段と大きさが違うのに疑問を抱いていた。
「お!気づいた?いや~売ってた人がそこら辺のよりジューシーでビッグだよ!って誘うから見てみたら、本当にそうだったからつい買っちゃったよね笑」
「そうだったんだ笑」
俺は店員さんのモノマネをしながら言うと、ねこは笑っていた。
まぁ、明人の言葉にまんまと乗せられて買ったのが大きいけど、嘘は言ってない!
そんなねこは何を買ったのかと見ると、少し物足りないような気がした。
「ねこはたこ焼きと唐揚げ棒にしたんだな~...それで足りるか?あ、このフランクフルト味見する?」
「へぇ!?」
俺はそう言うと、ねこは変な声を出して、一気に顔が赤くなった。
いや、明人の言葉があったからじゃねーよ!?ただ、善意で言っただけだから!って、こんな言い訳、今日で何回してるんだ、俺...?
さすがに言い訳も苦しくなってきたなと思った。
「勢いで買ったのはいいんだけどさ、他のもの食べたくなったときに食べれなくなるかなって笑」
ありがちなことを言うと、ねこは納得したようだった。
「ちょっと気になるから、お言葉に甘えて味見させてもらおう...かな?」
「どうぞ遠慮なく!やっぱり、面白いこととかは共有した方が楽しいからな!」
しかし、ねこはすぐには食べず、一人焦っているようだった。
どうしたんだ?手が塞がってるから受け取れなくて焦ってるのか?
そのまま食べてくれてもいいんだけどな~
というか、むしろその方が俺得なんだけど...
そう邪な考えが脳裏を過りつつ、俺はねこにフランクフルトを差し出した。
「はい、俺が持ったままなら手が塞がってても食べれるっしょ!」
「じゃ、じゃあ...いただきます...」
ねこは渋々といった表情を浮かべてそう言った。
そして、俺が差し出したフランクフルトを口にしようとしたが、思っていたよりも大きかったようで、先端を少しだけ囓っていた。
すると、肉汁が溢れだし、それはねこの口端からツーっと顎まで伝っていった。
は...え、ちょっ!エロすぎね!?
囓るときのちょっと苦々しそうな表情とか、肉汁が伝っていく様子とか!!
もろに俺の下半身に直撃したんだけど!?
というか、先端囓るってどうなのよ!?いや、咥えられてもそれはそれでくるものがあるけどさ...
ほんと、マジで危なかった~天然恐ろしいわ...
俺は心の中で一頻り叫び、何とか落ち着きを取り戻した。
醜態を晒す羽目になる事態は避けられたが、ねこの今の状態をずっと見ていると危険そうだったので一刻も早く拭いてあげることを決意した。
「...も~何やってんだよねこ~ほら、拭いてやるから、こっちに顔向けて!」
「あ、ありがとう...」
俺はねこの顔をこちらに向けさせて、ハンカチで拭いていった。
その間、ねこはずっと目を閉じていた。
そういうところだぞ、ねこ...
なんで、男心を擽ってくるような仕草をしちゃうかな~
俺、よくここまで耐えれてるわ...
と、ねこの天然の攻撃を耐えている自分の忍耐力に感動していた。
「よし、オッケー!拭き終わったぞ~それにしても、これはジューシー過ぎじゃね?笑ビックリしたわ!」
ほんと、色んな意味でビックリしたわ!
明人...さすがにこれはダメっしょ...
確かにエロかったけど!いいもの見れたけど!危険度ハンパないから!!
今回の件で、明人の提案は要注意!と心の片隅に刻んでおいた。
「うん、そうだね笑あ、お礼に唐揚げ一個あげる!」
「いいのか?じゃあ貰おうかな!」
そう言って、ねこは唐揚げ棒を差し出した。
今までも得なことばかりだったが、さらにねこがお礼にくれると言うので、俺はありがたく貰うことにした。
差し出してくれたけど、すぐ返すだろうし、別にそのまま食べてもいいよな?
と思いながら、ねこからは受け取らず、そのまま食べた。
「うわっうまいな!これも買っておけば良かったか...?」
ねこから貰った唐揚げは思ったよりも美味しくて、思わず声に出していた。
自分の欲に負けて、フランクフルトを買ったが、こっちでもよかったかもしれない...
俺が悩んでいる様子を見たねこは、面白かったのか笑っていた。
「全部食べてもお腹が空いてたら、また買いに行こうよ笑」
「そうだな!じゃあ、先に今あるやつを食べるぞ~」
ねこの提案に賛成して、とりあえず買ってきたものを食べていった。
まぁ、フランクフルトも美味しいな!
見た目は大きいが、味は大味ではなく、ちゃんと肉の旨味も感じたので俺は買って良かったわ~と大満足した。
あと、焼きそばとたこ焼きを少し交換して食べたりして、ねこも満足したような表情を浮かべていた。
よし!腹ごしらえも終わったし、他の屋台とか見に行ってもいいかもな!
「食べきった~お腹も膨れたことだし、次は遊び系の屋台でも行くか?」
「そうだね!色々あるから迷っちゃうな~」
また人混みの多い通りへ向かうと、ねこの言う通り色々な屋台があった。
射的に金魚すくいか~
金魚すくいとか昔やったけど、全然取れた記憶ないな~
と、少し昔のことを思い出していると、ねこが楽しそうな明るい声で話しかけてきた。
「はっしー、僕あそこのヨーヨー釣りしてもいい?」
ねこが指した場所にはヨーヨー釣りと書かれた屋台があった。
あれ、今まで実際にやったことってあったか?スルーしてた気がする...まぁでも、楽しそうだな!
「いいよ~そういえば、ヨーヨー釣りとか俺一回もしたことないかも笑」
「ほんと!?それじゃあ、記念すべき初挑戦だね!」
ねこは相当やりたかったのか、いつもよりも嬉しそうな顔を浮かべていた。
そして、足早にヨーヨー釣りの屋台へと行き、ねこはそこのお兄さんに話しかけた。
「あの、二人分お願いしてもいいですか?」
「おーおーいいよ!やってって!」
俺たちはお兄さんにお金を渡し、代わりに釣糸を受け取った。
水の中を漂う、色とりどりの水風船は照明の明かりでキラキラと輝いていた。
ねこは俺の隣で真剣に水風船を見て何か悩んでいた。
何色にしようか迷ってるのか?
その真剣な表情に思わず笑いそうになったが、集中の邪魔にならないようにと我慢した。
それにしても、これってどうやったら取れるんだ?
初挑戦のため、わからないことだらけで、う~んと唸っていると屋台のお兄さんが声をかけてきた。
「そんなに釣糸見て、どうした?」
「いや~俺、今日が初挑戦なんですよ!あ!何かコツとかないですかね?」
そう言うと、お兄さんは驚きながらも笑みを浮かべて、
「お~そうか!じゃあ、特別にコツ教えてやるか~」
と言った。どうやら、気前の良いお兄さんだったようでコツを教えてくれるようだ。
「まず、釣糸を水につけないのは鉄則だ!紙だからすぐに切れちゃうしな~あとは、水風船の持ち手のゴムが水に浮かんでいるのとかだと取りやすいだろうな!」
お兄さんの言ったのを参考に水風船を探してみた。
う~んと、お、あった!白と赤があるな~
どちらの色にしようか迷っていると、ふと隣の浴衣が視界に入った。
ねこの浴衣、白色だし、水風船も白色にしようかな!
そうと決まれば、白色の水風船をロックオンして慎重に機会が来るのを待った。
お、ここならいけそう!
そう感じて、引き上げると無事に取ることができた。
「お!お兄ちゃん、スジがいいな~」
俺の様子を見ていた、屋台のお兄さんはそう言って褒めてくれた。
「いえいえ、お兄さんのアドバイスのおかげですよ~ありがとうございます!」
俺は素直にお兄さんにお礼を言った。
そして、隣のねこを見ると、まだ色を決めかねているようで、キョロキョロと浮かび回っている水風船を見ていた。
もう一つくらいなら取れるかな?
と思い、取れそうなやつを探していると、もう一つ白色の水風船が取れそうだったのでそれを取ることにした。
そちらも少し釣糸が水についたが順調に取ることができた。
二個目を取ってすぐ後に、ねこも取れたようで嬉しそうな声が聞こえてきた。
「やったー!はっしー取れたよ!」
「お~やったな!」
手に水風船を持ち、はしゃぐ様子を見て可愛いなと思いながらねこと一緒に喜んだ。
「はっしーは取れた?」
ねこは今までの俺の声やお兄さんの声が聞こえていなかったようで、少し不安そうな顔をしながら聞いてきた。
もしや、この顔は俺が取れてないと思ってるな~?まぁ、初挑戦だしあり得るけど笑
俺はねこに「取れたよ!」と報告すると、何色にしたのか聞かれたため、持っていた水風船をねこの目の前に出した。
すると、ねこは興奮した様子で話し出した。
「すごいね!初めてなのに二個も取れたんだ!」
「お兄さんにコツ聞いたからな~」
「それでもすごいよ!...でも、二個とも白色なんだね?」
「あ~まぁ、白、好きだし?」
ねこになぜ二個とも白色なのかを聞かれたが、理由は濁した。
さすがに本人に「お前の浴衣の色と、一緒のやつ取った」とか言えねーよ!
ねこは不思議そうな顔をしていたが、すぐに水風船へと目を移し、チャレンジしていた。
それから、二人とも釣糸が切れるまでやったが、結局俺は二個、ねこは一個で終わった。
「久しぶりにやったら、面白かったな~」
「確かに、面白かったわ!でも、すぐ切れると思ってたんだけど、意外と切れないもんだな~」
「いや、はっしーが上手いだけだよ笑」
「そうか?」
ヨーヨー釣り初めてだったけど、取れない!なんてことにならなくてよかったわ~
そう思いながら、水風船で遊んでいると、ねこもそれを見てマネし始めた。
しかし、狙いが外れたのか水風船はねこの顔へと跳んでいき当たった。
「うわぁ、痛っ!」
「プッ、あはは!ねこ、何やってんだよ笑」
そんなに跳ねるのか!と驚いたと同時に、その間抜けな様子に笑いが堪えきれず、俺はお腹を抱えて笑った。
ねこはおでこを擦りながら、俺をジト目で見てきた。
「そんなに笑わないでよ!これは偶々だから!いつもはちゃんと遊べるんだよ!?」
「はぁ~...ふっ...そうなんだな~」
必死に弁解する様子にまた笑いが込み上げてきた俺の横で、ねこは意地になってまた水風船を跳ねさせていた。
「ほらね!できるでしょ?」
ねこはそう言って、自慢気な顔を向けてきた。
そんなに悔しかったのか笑
その表情がまた面白くなって、俺はまた笑ってしまった。
ダメだ...もう笑いが止まらね...笑
しばらくそのまま笑っていると、いきなり隣からパンッという破裂音が聞こえてきた。
俺はあまりに突然のことで固まった。しかし、すぐに横を見ると膝から下が水で濡れているねこがいた。
さっきの音は水風船が割れた音か!
幸い周りに濡れている人がいなかったから良かったが...
「ねこ、今日、色々神がかってるな...ハプニング...ふっ、続出じゃないか...あははは!はぁ~もう、笑いすぎて苦しい笑」
ほんとに今日は色々やらかしてるな~
まぁフランクフルトはほぼ俺のせいだけど笑
「確かに、そんなに大笑いしてるはっしーって珍しいけどね...そろそろ笑いを抑えてほしいかな...」
笑いすぎて腹筋も顔の筋肉も痛くなってきたし、ねこが落ち込んでいる様子だったので、一旦落ち着こうと深呼吸した。
「そうだな...はぁ~もう大丈夫だ!にしても、結構濡れてるな~」
「うん、でも自然に乾くと思うよ。」
そう言っても、白の浴衣だから少し透けてるし、俺が気になるんだよな...
「まぁ、そうだな...あ!どうせ花火まであと少しだし、先に穴場スポットでも行くか!」
ねこは首を傾げて、頭にハテナマークを浮かべていた。
「よく来てたからさ、花火が良く見える穴場を発見してたんだよ!そこなら人もほとんどいないと思うし、濡れてても気にならないっしょ!」
昔、よく探検とかもしてたから偶然見つけてたんだよな~
地元民でもわからないかもしれないところだし、ちょうどいいだろう!
「じゃあ、そこに行こうかな!」
ねこも賛成してくれて、俺たちは少し早いが、穴場スポットに向かった。
「おし!着いたぞ~」
森の中の坂道を数分登ったところで、開けた場所に着いた。そこには、ベンチがポツン、ポツンと二つあり、その奥には腰くらいの高さの柵が立てられている。
前来たときと相変わらず同じ景色だな~
毎回来るたびに、ベンチが設置されているのに人の気配がないのが不思議だなと俺は思っていた。
もしかしたら、誰かがいらないベンチをここに置いていったのかとか、ここを知ってる人が誰かと見るために置いていったのかもしれないと考えたが、まぁ、ありがたく使わせて貰っていた。
誰かと見るためなら、そいつは結構ロマンチストなやつだったんだろうな...
いや、人のこと言えないけど笑
そんなことを考えている間、ねこは柵に近づき景色を見ていた。
俺はそっとねこの横に立つと、ねこは海を指差しながら話しかけてきた。
「すごいね!下の屋台も綺麗だし、あそこの海で花火が打ち上がるんだよね?」
そう聞いてくるねこの瞳は、電柱のわずかな明かりのみの薄暗いこの空間で、輝いて見えた。
「そうそう。だから、ここは誰にも邪魔されない一番の特等席って訳!」
思っていたよりも喜んでくれたようで、俺も嬉しくなり、よくやった!昔の俺!と、昔の自分を自分で褒めた。
ふと、もうそろそろかなと時計を見ると、花火の開始の時間がすぐ迫っていた。
「もうすぐ、始まるぞ!あそこのベンチに座ってようぜ!」
俺がそう言うと、ねこは頷いて、二人でベンチに腰かけた。
そして数分、ねこと喋っている間に時間になったようで、ヒュ~という花火の音が聞こえてきた。
数秒後、ドンッという大きな音とともに、真っ暗な空に赤色の大輪の花が咲き誇った。
昔と変わらず迫力あって、綺麗だな...
少し目の前の景色に見惚れていたが、チラッと横目でねこの様子を見ると、同じように景色に見惚れているようだった。
その表情は花火が上がるたびにコロコロ変わっていて、本当に楽しんでいるんだなと感じ、笑みが溢れた。
小さい頃、俺も同じように花火が上がるたびにはしゃいでたよな...
感慨に耽りながら花火を眺めていると、ふと隣から視線を感じた。
俺はねこの方を向くと、視線が合った。
「ねこ、どうした?」
「ううん。いや、今日ははっしーのおかげで良い一日になったな~って。ありがとう。」
ねこは微笑みながらそう言った。
素直な気持ちを聞けたのは嬉しいが、あまりにも直球だったため、逆に俺の方が恥ずかしくなってしまった。
少し顔が赤くなっているだろうということに気づかれないように俺は花火の方に視線を逸らした。
「ま、まぁ、ねこが良かったなら、俺も良かったよ...!」
しどろもどろに出した言葉は動揺が滲み出ていて、しばらく感じた視線から俺が照れているのがバレているのではと心臓がバクバクしていた。
バレていたら余計に恥ずかしすぎる!
しかし、その不安は杞憂だったようで、ねこはまた花火を見て輝いた表情をしていた。
今日は色んなことがあったけど、本当に楽しかった~!また、ねこと一緒に来れたらいいな...
まぁ、そんときは明人も一緒でもいいかもしれないけどww
あいつがいると、もっと色んなこと起きそうだし、なんてww
俺達は花火が終わるまでずっとベンチで眺め、人混みが少し引いた頃、帰路についた。
ねこは駅で別れて一人で帰ろうとしていたようだが、
帰り道になにかあったらどうするんだよ!
いや、男だし心配いらないとか思ってるんだろうけど、俺がムリ!
そう思い、「ねこを一人で帰す訳にはいかないな~」なんて、冗談まじりに笑いながらも、絶対送る!と拒否できない雰囲気を出した。
卑怯?はっ何とでも言え!俺にとってねこ大事!
自分でも心配しすぎかと思ったが、天然のねこにはこれくらいがちょうどいいだろうと自己完結した。
ねこの家も近くなってきて、改めて今日の出来事を振り返ってみた。
「今日は色んな意味で楽しかったな~」
「いや...本当にお騒がせしました...」
ねこは頭からプシューと湯気が出そうなほど顔を赤らめていた。
それに可愛いなと思いつつ、今日のハプニングを思い出して笑った。
「あはは!まぁ、これも良い思い出だよな!」
「うん、そうだね!笑今日は本当にありがとう。」
ねこも俺の笑いにつられて一緒に笑っていた。
「おう!...あ!よかったらこれ一個やるよ!」
俺は歩きに合わせて揺れる水風船が視界に入り、そういえば二個取っていたなということを思い出した。
俺が二個持ってても仕方ないし、あんなに楽しそうにしてたから割れたままで終わるのも嫌だな...
と思い、俺は白の水風船を一個ねこに差し出した。
「お前割っちゃったし、それに俺、二個持っててもあげる人いないからさ~どうせなら一個もらってってよ!」
「そういうことなら、貰おうかな笑ありがとう!」
ねこは満面の笑顔を浮かべながら、水風船を受け取った。
よし!家にも無事に送り届けたし、心残りもない!てことで、
「じゃあ、俺は帰るな~ちゃんと寝ろよ~」
「もう、子どもじゃないよ!気を付けて帰ってね!」
少し拗ねたような表情を浮かべたが、すぐに笑って見送ってくれた。
俺はたびたび振り返って、まだねこいるかな~?と見ると、まだ見送ってくれていた。
俺は嬉しくて手を振ると、ねこも少し困ったような、でも吹き出しそうな顔で手を振り返してくれた。
さすがに角を曲がったら、家に戻ってるだろうけど、最後まで見送ってくれる様子に健気だなと顔が緩んだ。
今日の思い出は大事に心の中にしまっておこう!
あと、明人のアドバイスのおかげで普段見れないねこも見れたし、あいつにはちょっとお礼しとかないとな~
後日、現場を見逃して落ち込んでいた明人にお菓子を持っていくと、根掘り葉掘り聞かせろ!と詰め寄られ、少し後悔したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんてね~まぁ実際の俺はそんなヘマをしないだろうがな!(ドヤァ)
でも、そんなフランクフルトがあったら、ぜひ!ぜひ!食べて欲しい!!ほんと土下座でもするから!
そして、俺はカメラのシャッターを影で切りまくるぜ!
ということで、早速、後日二人に提案したら賛成してくれた。...がしかし!周りでそれを聞いていたやつらも行くと言い出した。
嘘だろ!?いや、まだ当日に二人で行動する場面が来るかもしれない!!
こんなところで諦めてたまるか!!
と思い、当日も様子を窺っていたが、特に何のイベントも起きることなく夏祭りは終わったのだった。
「やっぱり、現実ってそんなに甘くないんだな…(  ̄- ̄)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!(土下座)
でも、なんとかお昼前に、はっしーsideも上げることができてよかったです(T0T)
今回は8月→夏休み→夏祭り!という安易な考えからこのようなお話になりましたが、現実では夏祭りが中止になっているところも多いですよね(-_-;)
でも、作者は小説を書きつつ想像の中で夏祭りを楽しめたので満足です笑
このお話を読んでくれた皆様にも、少しでも楽しんでもらえたなら良かったです!
では、ここまで読んでくださりありがとうございました!
また、皆様に会えるのを楽しみにしております。
俺は今日、ねこと明人と一緒に近くの夏祭りに遊びに行く約束をしており、集合場所へと向かっていた。
あ、もうねこいんじゃん!
ねこの姿が見えたので、手を振りながら近寄り声をかけた。
「お!ねこ早いな~待たせてごめんな~」
「ううん。全然待ってないから大丈夫だよ。」
それならよかったと安心した後、ねこの姿を見たら白の浴衣を着ていた。
まぁ明人の提案で、全員浴衣を着て夏祭りに行こうと言っていたので、着てくることは知っていたのだが...
改めてマジマジと見ると、その浴衣はねこの純粋さに良く似合っていると思った。
「あとその浴衣、ねこに似合ってるな!」
「あ、ありがとう...」
俺は素直に感想をねこに伝えると、ねこは頬をほんのり赤く染めて俯いた。
普段は見れない姿に心の中でテンションが上がり、明人に感謝を伝えた。
ねこ、可愛すぎか...!マジ、明人ありがとな!
「は、はっしーもその浴衣似合ってるよ!」
そう心の中で感謝していると、ねこも俺の浴衣を褒めてくれた。
俺は元々持っていた黒の浴衣を着てきていた。
昔は、子どもながらに背伸びをして大人っぽく見せようと黒を選んだが、いつの間にか似合うようになっていたんだなと感じた。
「お、まじ?ありがとな!いや~ねこに褒められるとは、よほど似合ってるんだな~なんて笑」
「ふふ、何言ってるの笑」
俺がドヤ顔で言うと、ねこは笑いが耐えきれず吹き出していた。
そのまま笑っているねこを眺めるのも良かったのだが、さすがにこの計画を立てた張本人である明人がいないことが気になってきた。
「それにしても、言い出した本人が遅くねーか?あいつ連絡も寄越さないで、何してんだよー」
思わずそう呟きながら携帯を確認すると、約束の時間は過ぎていた。
特にメールも来ておらず、何かあったのかと思いメールを送った。
しかし、すぐに既読は付かず、俺は早く見ないかなと何度も確認していた。
早く見てくれよ!そして、メールを早く寄越せ!俺は、は・や・く、ねこと夏祭りを楽しみたいんだよ!!
少し経ってから既読が付き、メールも来た。
「既読ついた!あ、メールも来たわ。」
内容は...
「う~ん?"ごめん、マジごめん。急に外せない予定入っちゃって行けなくなった!でも、俺のことは気にせず、二人で夏祭り楽しんできて!"だってさ~」
実はメールがもう一つ来ていたが、さすがにそれはねこに言えなかった。
"はっしー、屋台の中にジューシーでビッグなフランクフルトあるから、それオススメだよ!ねこくんに食べさせたらエロイだろうな~なんて...笑"
お前、なんでそんなこと知ってるんだよ...下見でもしてたのか!?でも、ありがとう!絶対探しだすわ!
...てか、待てよ?なんでそんな情報を俺にくれるんだ?まさか明人に、俺がねこを好きなことバレてる...とか?
冷静に考えて、あいつならありえると思ってしまった。
なんかいっつも俺たち見てニヤニヤしてるし...
ねこは残念そうにしていたが、チャンスが与えられたからには存分に生かすしかないだろうと思い、また明人に感謝した。
「どうする?まぁ気にせずってあるし、二人で存分に楽しむか?そんでもって、あいつが来れなかったことを後悔させてやろーぜ!」
俺がそう言うと、ねこも、
「後悔って笑まぁ、明人がいないのは残念だけど、ここまで来たら帰るのもったいないし、普通に楽しもうかな笑」
夏祭りを楽しむことにしたようで、笑いながら同意してきた。
その返答を聞き、明人には悪いが、これでねこと二人きりで行けるぞ!と嬉しくなり、大きな声が出てしまった。
「おっしゃー!そうと決まれば、早速屋台とか見に行こうぜ!」
ねこは頷き返し、二人で屋台を見に歩を進めた。
様々な屋台が両サイドに並んでおり、どこも親子連れや学生など人で賑わっていた。
この夏祭りのフィナーレには大きい打ち上げ花火が上がる予定で、その時間になると会場は、どこを見ても人、人、人の状態になる。
まぁ、俺にはとっておきの穴場スポットがあるから問題ないんだけどな!
そんなことを考えながら歩いていると、さっきまで隣を歩いていたねこの姿が見えなくなっていた。
あれ!?ねこいなくなってるんだけど!?
どこに行ったんだ...?
俺は焦って来た道を戻っていくと、青白い顔をして周りをキョロキョロ見ているねこの姿を見つけた。
はぁ...まだ思ってたよりも近くにいてよかった~
ねこがその場から動かないように、俺は急いでねこの腕を掴んだ。
ねこは、突然掴まれたことに驚いたようでビクッと肩を揺らした。
声をかけてから掴めばよかったか?と、俺は申し訳なさを感じたが、はぐれるよりは何倍もマシだと思った。
数秒後、ねこは振り返ると、腕を掴んだのが俺だと気づいたようだ。
「はっしー!?」
「はぁ~焦った~突然ねこがいなくなったから、ビックリしたわ...」
まじで、冷や汗かいたわ...
「ご、ごめんね...」
ねこは眉を下げて、謝ってきた。
俺はせっかく楽しい夏祭りなんだし、そんな顔のままいさせたくないなと思った。
「まぁ、無事に会えたしノープロブレムだ!でも、すぐにはぐれそうだからな~何なら手でも繋いでおくか?笑」
そう7割冗談で言った。
残りの3割は、本気で乗ってきてくれたらいいな~なんていう邪な考えだったりするが笑
それを聞いたねこは、思考停止して考え出したと思ったら、慌て出した。
「手って...え、手を繋ぐ?って言った?え、え、繋ぐ...?」
ねこって表情に出すぎというか、分かりやすいな~
あまりな慌てように、俺は笑いが耐えきれなくなり、吹き出した。
「ぶっ...あっはははは!ねこ、お前...や、やばいな...あはははは!あ~ほんと......可愛いな(ボソッ」
最後の言葉は、ねこには聞こえなかったらしく、首を傾げていた。
まぁ、聞こえていたら今ごろ顔を真っ赤に染めてるんだろうな~
俺が大笑いしている間に、ねこは俺の言葉が冗談だと思ったようで、落ち着きを取り戻していた。
そして、何かを思いついたのか、閃いたような顔をして話しかけてきた。
「ねぇ、はっしー。僕良いこと思いついた!」
「ん?なに?」
「あの...手を繋ぐのはちょっとムリだけど、これならいいかなって...」
ねこはそう言いながら、俺の裾を少し摘まんだ。
ちょっと待ってくれよ...一体何が起きてるんだ...?
というか、ねこさん。いつの間にそんな技を身につけたの?...俺、悶え死にそうなんですけど!?
と思いながら、ねこを見ると自信たっぷりの表情をしていた。
これはまた天然でやってるんだなとわかった。注意しても直らないんだろうな!と叫びたい気持ちをグッと堪え、あとどれだけ耐えなければならないのかとこの先を思うと、思わず大きなため息をついていた。
「ごめん!やっぱり、迷惑だったよね...そ、それにそんなはぐれないだろうし、僕はだいじょ「いや!?全然迷惑じゃねーから!むしろ掴んでて欲しいっていうか...って何言ってんだ俺は!? 」」
そのため息を迷惑だと勘違いしたねこは、提案を取り下げようとしてきたため、俺は慌ててねこの言葉を遮ってそう言った。
しかし、何も考えずに口から言葉が出てしまったため、もろに本心を垂れ流しにしてしまった。
うわぁー!!俺、何言っちゃってんの!?
最悪すぎるんだけど...ねこに引かれること間違いなしじゃん...
そう落ち込んでいると、ねこは気にした様子もなく、
「じゃあ、このまま掴んでるね。」
と言った。
「あ、お、おう。そうしといて!」
もしかしたら早口で喋っていたため、ねこにはあまり聞こえなかったのかもしれない。
とりあえず、よかった~引かれなかった~!
もうこの世の終わりかと思ったわ...
ひと安心して、一先ずこのままねこが俺の袖の裾を掴んだ状態で落ち着き、俺たちは屋台を見てまわることにした。
相変わらず、ねこは周りをキョロキョロと見ていた。
「ねぇ、はっしー。屋台いっぱいあるね!」
その言葉で、俺も周りを見ると食べ物系がよく目についた。
「そうだな!あと、食べ物系が多いよな~」
...って決して、明人のメールが脳裏を掠めたからとかそういうのではないがな!
そう思いながらも、ちゃっかり確認してしまった。
ベビーカステラにポテトにフランクフルト...いやあれは明人の言ってたやつじゃなさそうだな...
食べ物を見ていて、ふと今何時だと思い時計を確認すると19時近くになっていた。
ここら辺で食べておいた方がいいかもな~
「屋台見てたら、お腹へってきたな!ちょうどいい時間だし、何か買って食べるか!」
ねこもお腹が空いたようで頷いていた。
「じゃあ各々食べたいもの買って、そうだな~あ、あそこのデカイ木のところに集合で!」
「うん、わかった!」
そう言ったあと、俺たちは分かれて買いに行った。
さて、まず明人の言ってたフランクフルトを探すか~
そう思いながら、しばらく見て歩いていると、少し離れたところから目的のものらしきワードが書かれた屋台を見つけた。
そこに近づいていくと、だんだんと屋台のお兄さんの声が聞こえてきた。
「お客さん!うちのフランクフルトはそこら辺のよりジューシーでビッグだよ!!どうですか!?美味しいよ~」
明人のメールそのまんまの言葉を言っていたため、思わず笑いだしてしまった。
そのまま過ぎね...?そんなことある!?
これ絶対、明人、下見してたの確定だな!
「あ、そこの大笑いしてるお兄さん!一つどうですか~!」
あまりにも笑っていたからか、屋台のお兄さんに声をかけられた。
俺は声に誘われるように近づき、「じゃあ、一つ貰います!」と言い、受け取った。
木へ向かう途中で、さすがにフランクフルトだけじゃ足りないかと思い、焼きそばを買っていった。
木へ到着したが、ねこはまだ選んでいるようでいなかった。
それにしても面白かったな~
明人は下見までしてたのに来なかったとか、何考えてたんだ?
(そんなの二人を影からこっそり見守るために決まってるだろ!二人がはぐれたときに見失ったけどな!!by 明人)
頭を悩ませていたが、答えが出る前にねこが来る方が早かった。どうせしょうもなさそうな理由だろうしと思い、放棄した。
ねこは俺の姿を見つけると、微笑みながら近づいてきた。
「はっしーはそれにしたんだ!でも、なんか気のせいかな?そのフランクフルト、普通よりでかいような..?」
やっぱり、気になるよな~
ねこは早速、俺の持っているフランクフルトが目についたようで、普段と大きさが違うのに疑問を抱いていた。
「お!気づいた?いや~売ってた人がそこら辺のよりジューシーでビッグだよ!って誘うから見てみたら、本当にそうだったからつい買っちゃったよね笑」
「そうだったんだ笑」
俺は店員さんのモノマネをしながら言うと、ねこは笑っていた。
まぁ、明人の言葉にまんまと乗せられて買ったのが大きいけど、嘘は言ってない!
そんなねこは何を買ったのかと見ると、少し物足りないような気がした。
「ねこはたこ焼きと唐揚げ棒にしたんだな~...それで足りるか?あ、このフランクフルト味見する?」
「へぇ!?」
俺はそう言うと、ねこは変な声を出して、一気に顔が赤くなった。
いや、明人の言葉があったからじゃねーよ!?ただ、善意で言っただけだから!って、こんな言い訳、今日で何回してるんだ、俺...?
さすがに言い訳も苦しくなってきたなと思った。
「勢いで買ったのはいいんだけどさ、他のもの食べたくなったときに食べれなくなるかなって笑」
ありがちなことを言うと、ねこは納得したようだった。
「ちょっと気になるから、お言葉に甘えて味見させてもらおう...かな?」
「どうぞ遠慮なく!やっぱり、面白いこととかは共有した方が楽しいからな!」
しかし、ねこはすぐには食べず、一人焦っているようだった。
どうしたんだ?手が塞がってるから受け取れなくて焦ってるのか?
そのまま食べてくれてもいいんだけどな~
というか、むしろその方が俺得なんだけど...
そう邪な考えが脳裏を過りつつ、俺はねこにフランクフルトを差し出した。
「はい、俺が持ったままなら手が塞がってても食べれるっしょ!」
「じゃ、じゃあ...いただきます...」
ねこは渋々といった表情を浮かべてそう言った。
そして、俺が差し出したフランクフルトを口にしようとしたが、思っていたよりも大きかったようで、先端を少しだけ囓っていた。
すると、肉汁が溢れだし、それはねこの口端からツーっと顎まで伝っていった。
は...え、ちょっ!エロすぎね!?
囓るときのちょっと苦々しそうな表情とか、肉汁が伝っていく様子とか!!
もろに俺の下半身に直撃したんだけど!?
というか、先端囓るってどうなのよ!?いや、咥えられてもそれはそれでくるものがあるけどさ...
ほんと、マジで危なかった~天然恐ろしいわ...
俺は心の中で一頻り叫び、何とか落ち着きを取り戻した。
醜態を晒す羽目になる事態は避けられたが、ねこの今の状態をずっと見ていると危険そうだったので一刻も早く拭いてあげることを決意した。
「...も~何やってんだよねこ~ほら、拭いてやるから、こっちに顔向けて!」
「あ、ありがとう...」
俺はねこの顔をこちらに向けさせて、ハンカチで拭いていった。
その間、ねこはずっと目を閉じていた。
そういうところだぞ、ねこ...
なんで、男心を擽ってくるような仕草をしちゃうかな~
俺、よくここまで耐えれてるわ...
と、ねこの天然の攻撃を耐えている自分の忍耐力に感動していた。
「よし、オッケー!拭き終わったぞ~それにしても、これはジューシー過ぎじゃね?笑ビックリしたわ!」
ほんと、色んな意味でビックリしたわ!
明人...さすがにこれはダメっしょ...
確かにエロかったけど!いいもの見れたけど!危険度ハンパないから!!
今回の件で、明人の提案は要注意!と心の片隅に刻んでおいた。
「うん、そうだね笑あ、お礼に唐揚げ一個あげる!」
「いいのか?じゃあ貰おうかな!」
そう言って、ねこは唐揚げ棒を差し出した。
今までも得なことばかりだったが、さらにねこがお礼にくれると言うので、俺はありがたく貰うことにした。
差し出してくれたけど、すぐ返すだろうし、別にそのまま食べてもいいよな?
と思いながら、ねこからは受け取らず、そのまま食べた。
「うわっうまいな!これも買っておけば良かったか...?」
ねこから貰った唐揚げは思ったよりも美味しくて、思わず声に出していた。
自分の欲に負けて、フランクフルトを買ったが、こっちでもよかったかもしれない...
俺が悩んでいる様子を見たねこは、面白かったのか笑っていた。
「全部食べてもお腹が空いてたら、また買いに行こうよ笑」
「そうだな!じゃあ、先に今あるやつを食べるぞ~」
ねこの提案に賛成して、とりあえず買ってきたものを食べていった。
まぁ、フランクフルトも美味しいな!
見た目は大きいが、味は大味ではなく、ちゃんと肉の旨味も感じたので俺は買って良かったわ~と大満足した。
あと、焼きそばとたこ焼きを少し交換して食べたりして、ねこも満足したような表情を浮かべていた。
よし!腹ごしらえも終わったし、他の屋台とか見に行ってもいいかもな!
「食べきった~お腹も膨れたことだし、次は遊び系の屋台でも行くか?」
「そうだね!色々あるから迷っちゃうな~」
また人混みの多い通りへ向かうと、ねこの言う通り色々な屋台があった。
射的に金魚すくいか~
金魚すくいとか昔やったけど、全然取れた記憶ないな~
と、少し昔のことを思い出していると、ねこが楽しそうな明るい声で話しかけてきた。
「はっしー、僕あそこのヨーヨー釣りしてもいい?」
ねこが指した場所にはヨーヨー釣りと書かれた屋台があった。
あれ、今まで実際にやったことってあったか?スルーしてた気がする...まぁでも、楽しそうだな!
「いいよ~そういえば、ヨーヨー釣りとか俺一回もしたことないかも笑」
「ほんと!?それじゃあ、記念すべき初挑戦だね!」
ねこは相当やりたかったのか、いつもよりも嬉しそうな顔を浮かべていた。
そして、足早にヨーヨー釣りの屋台へと行き、ねこはそこのお兄さんに話しかけた。
「あの、二人分お願いしてもいいですか?」
「おーおーいいよ!やってって!」
俺たちはお兄さんにお金を渡し、代わりに釣糸を受け取った。
水の中を漂う、色とりどりの水風船は照明の明かりでキラキラと輝いていた。
ねこは俺の隣で真剣に水風船を見て何か悩んでいた。
何色にしようか迷ってるのか?
その真剣な表情に思わず笑いそうになったが、集中の邪魔にならないようにと我慢した。
それにしても、これってどうやったら取れるんだ?
初挑戦のため、わからないことだらけで、う~んと唸っていると屋台のお兄さんが声をかけてきた。
「そんなに釣糸見て、どうした?」
「いや~俺、今日が初挑戦なんですよ!あ!何かコツとかないですかね?」
そう言うと、お兄さんは驚きながらも笑みを浮かべて、
「お~そうか!じゃあ、特別にコツ教えてやるか~」
と言った。どうやら、気前の良いお兄さんだったようでコツを教えてくれるようだ。
「まず、釣糸を水につけないのは鉄則だ!紙だからすぐに切れちゃうしな~あとは、水風船の持ち手のゴムが水に浮かんでいるのとかだと取りやすいだろうな!」
お兄さんの言ったのを参考に水風船を探してみた。
う~んと、お、あった!白と赤があるな~
どちらの色にしようか迷っていると、ふと隣の浴衣が視界に入った。
ねこの浴衣、白色だし、水風船も白色にしようかな!
そうと決まれば、白色の水風船をロックオンして慎重に機会が来るのを待った。
お、ここならいけそう!
そう感じて、引き上げると無事に取ることができた。
「お!お兄ちゃん、スジがいいな~」
俺の様子を見ていた、屋台のお兄さんはそう言って褒めてくれた。
「いえいえ、お兄さんのアドバイスのおかげですよ~ありがとうございます!」
俺は素直にお兄さんにお礼を言った。
そして、隣のねこを見ると、まだ色を決めかねているようで、キョロキョロと浮かび回っている水風船を見ていた。
もう一つくらいなら取れるかな?
と思い、取れそうなやつを探していると、もう一つ白色の水風船が取れそうだったのでそれを取ることにした。
そちらも少し釣糸が水についたが順調に取ることができた。
二個目を取ってすぐ後に、ねこも取れたようで嬉しそうな声が聞こえてきた。
「やったー!はっしー取れたよ!」
「お~やったな!」
手に水風船を持ち、はしゃぐ様子を見て可愛いなと思いながらねこと一緒に喜んだ。
「はっしーは取れた?」
ねこは今までの俺の声やお兄さんの声が聞こえていなかったようで、少し不安そうな顔をしながら聞いてきた。
もしや、この顔は俺が取れてないと思ってるな~?まぁ、初挑戦だしあり得るけど笑
俺はねこに「取れたよ!」と報告すると、何色にしたのか聞かれたため、持っていた水風船をねこの目の前に出した。
すると、ねこは興奮した様子で話し出した。
「すごいね!初めてなのに二個も取れたんだ!」
「お兄さんにコツ聞いたからな~」
「それでもすごいよ!...でも、二個とも白色なんだね?」
「あ~まぁ、白、好きだし?」
ねこになぜ二個とも白色なのかを聞かれたが、理由は濁した。
さすがに本人に「お前の浴衣の色と、一緒のやつ取った」とか言えねーよ!
ねこは不思議そうな顔をしていたが、すぐに水風船へと目を移し、チャレンジしていた。
それから、二人とも釣糸が切れるまでやったが、結局俺は二個、ねこは一個で終わった。
「久しぶりにやったら、面白かったな~」
「確かに、面白かったわ!でも、すぐ切れると思ってたんだけど、意外と切れないもんだな~」
「いや、はっしーが上手いだけだよ笑」
「そうか?」
ヨーヨー釣り初めてだったけど、取れない!なんてことにならなくてよかったわ~
そう思いながら、水風船で遊んでいると、ねこもそれを見てマネし始めた。
しかし、狙いが外れたのか水風船はねこの顔へと跳んでいき当たった。
「うわぁ、痛っ!」
「プッ、あはは!ねこ、何やってんだよ笑」
そんなに跳ねるのか!と驚いたと同時に、その間抜けな様子に笑いが堪えきれず、俺はお腹を抱えて笑った。
ねこはおでこを擦りながら、俺をジト目で見てきた。
「そんなに笑わないでよ!これは偶々だから!いつもはちゃんと遊べるんだよ!?」
「はぁ~...ふっ...そうなんだな~」
必死に弁解する様子にまた笑いが込み上げてきた俺の横で、ねこは意地になってまた水風船を跳ねさせていた。
「ほらね!できるでしょ?」
ねこはそう言って、自慢気な顔を向けてきた。
そんなに悔しかったのか笑
その表情がまた面白くなって、俺はまた笑ってしまった。
ダメだ...もう笑いが止まらね...笑
しばらくそのまま笑っていると、いきなり隣からパンッという破裂音が聞こえてきた。
俺はあまりに突然のことで固まった。しかし、すぐに横を見ると膝から下が水で濡れているねこがいた。
さっきの音は水風船が割れた音か!
幸い周りに濡れている人がいなかったから良かったが...
「ねこ、今日、色々神がかってるな...ハプニング...ふっ、続出じゃないか...あははは!はぁ~もう、笑いすぎて苦しい笑」
ほんとに今日は色々やらかしてるな~
まぁフランクフルトはほぼ俺のせいだけど笑
「確かに、そんなに大笑いしてるはっしーって珍しいけどね...そろそろ笑いを抑えてほしいかな...」
笑いすぎて腹筋も顔の筋肉も痛くなってきたし、ねこが落ち込んでいる様子だったので、一旦落ち着こうと深呼吸した。
「そうだな...はぁ~もう大丈夫だ!にしても、結構濡れてるな~」
「うん、でも自然に乾くと思うよ。」
そう言っても、白の浴衣だから少し透けてるし、俺が気になるんだよな...
「まぁ、そうだな...あ!どうせ花火まであと少しだし、先に穴場スポットでも行くか!」
ねこは首を傾げて、頭にハテナマークを浮かべていた。
「よく来てたからさ、花火が良く見える穴場を発見してたんだよ!そこなら人もほとんどいないと思うし、濡れてても気にならないっしょ!」
昔、よく探検とかもしてたから偶然見つけてたんだよな~
地元民でもわからないかもしれないところだし、ちょうどいいだろう!
「じゃあ、そこに行こうかな!」
ねこも賛成してくれて、俺たちは少し早いが、穴場スポットに向かった。
「おし!着いたぞ~」
森の中の坂道を数分登ったところで、開けた場所に着いた。そこには、ベンチがポツン、ポツンと二つあり、その奥には腰くらいの高さの柵が立てられている。
前来たときと相変わらず同じ景色だな~
毎回来るたびに、ベンチが設置されているのに人の気配がないのが不思議だなと俺は思っていた。
もしかしたら、誰かがいらないベンチをここに置いていったのかとか、ここを知ってる人が誰かと見るために置いていったのかもしれないと考えたが、まぁ、ありがたく使わせて貰っていた。
誰かと見るためなら、そいつは結構ロマンチストなやつだったんだろうな...
いや、人のこと言えないけど笑
そんなことを考えている間、ねこは柵に近づき景色を見ていた。
俺はそっとねこの横に立つと、ねこは海を指差しながら話しかけてきた。
「すごいね!下の屋台も綺麗だし、あそこの海で花火が打ち上がるんだよね?」
そう聞いてくるねこの瞳は、電柱のわずかな明かりのみの薄暗いこの空間で、輝いて見えた。
「そうそう。だから、ここは誰にも邪魔されない一番の特等席って訳!」
思っていたよりも喜んでくれたようで、俺も嬉しくなり、よくやった!昔の俺!と、昔の自分を自分で褒めた。
ふと、もうそろそろかなと時計を見ると、花火の開始の時間がすぐ迫っていた。
「もうすぐ、始まるぞ!あそこのベンチに座ってようぜ!」
俺がそう言うと、ねこは頷いて、二人でベンチに腰かけた。
そして数分、ねこと喋っている間に時間になったようで、ヒュ~という花火の音が聞こえてきた。
数秒後、ドンッという大きな音とともに、真っ暗な空に赤色の大輪の花が咲き誇った。
昔と変わらず迫力あって、綺麗だな...
少し目の前の景色に見惚れていたが、チラッと横目でねこの様子を見ると、同じように景色に見惚れているようだった。
その表情は花火が上がるたびにコロコロ変わっていて、本当に楽しんでいるんだなと感じ、笑みが溢れた。
小さい頃、俺も同じように花火が上がるたびにはしゃいでたよな...
感慨に耽りながら花火を眺めていると、ふと隣から視線を感じた。
俺はねこの方を向くと、視線が合った。
「ねこ、どうした?」
「ううん。いや、今日ははっしーのおかげで良い一日になったな~って。ありがとう。」
ねこは微笑みながらそう言った。
素直な気持ちを聞けたのは嬉しいが、あまりにも直球だったため、逆に俺の方が恥ずかしくなってしまった。
少し顔が赤くなっているだろうということに気づかれないように俺は花火の方に視線を逸らした。
「ま、まぁ、ねこが良かったなら、俺も良かったよ...!」
しどろもどろに出した言葉は動揺が滲み出ていて、しばらく感じた視線から俺が照れているのがバレているのではと心臓がバクバクしていた。
バレていたら余計に恥ずかしすぎる!
しかし、その不安は杞憂だったようで、ねこはまた花火を見て輝いた表情をしていた。
今日は色んなことがあったけど、本当に楽しかった~!また、ねこと一緒に来れたらいいな...
まぁ、そんときは明人も一緒でもいいかもしれないけどww
あいつがいると、もっと色んなこと起きそうだし、なんてww
俺達は花火が終わるまでずっとベンチで眺め、人混みが少し引いた頃、帰路についた。
ねこは駅で別れて一人で帰ろうとしていたようだが、
帰り道になにかあったらどうするんだよ!
いや、男だし心配いらないとか思ってるんだろうけど、俺がムリ!
そう思い、「ねこを一人で帰す訳にはいかないな~」なんて、冗談まじりに笑いながらも、絶対送る!と拒否できない雰囲気を出した。
卑怯?はっ何とでも言え!俺にとってねこ大事!
自分でも心配しすぎかと思ったが、天然のねこにはこれくらいがちょうどいいだろうと自己完結した。
ねこの家も近くなってきて、改めて今日の出来事を振り返ってみた。
「今日は色んな意味で楽しかったな~」
「いや...本当にお騒がせしました...」
ねこは頭からプシューと湯気が出そうなほど顔を赤らめていた。
それに可愛いなと思いつつ、今日のハプニングを思い出して笑った。
「あはは!まぁ、これも良い思い出だよな!」
「うん、そうだね!笑今日は本当にありがとう。」
ねこも俺の笑いにつられて一緒に笑っていた。
「おう!...あ!よかったらこれ一個やるよ!」
俺は歩きに合わせて揺れる水風船が視界に入り、そういえば二個取っていたなということを思い出した。
俺が二個持ってても仕方ないし、あんなに楽しそうにしてたから割れたままで終わるのも嫌だな...
と思い、俺は白の水風船を一個ねこに差し出した。
「お前割っちゃったし、それに俺、二個持っててもあげる人いないからさ~どうせなら一個もらってってよ!」
「そういうことなら、貰おうかな笑ありがとう!」
ねこは満面の笑顔を浮かべながら、水風船を受け取った。
よし!家にも無事に送り届けたし、心残りもない!てことで、
「じゃあ、俺は帰るな~ちゃんと寝ろよ~」
「もう、子どもじゃないよ!気を付けて帰ってね!」
少し拗ねたような表情を浮かべたが、すぐに笑って見送ってくれた。
俺はたびたび振り返って、まだねこいるかな~?と見ると、まだ見送ってくれていた。
俺は嬉しくて手を振ると、ねこも少し困ったような、でも吹き出しそうな顔で手を振り返してくれた。
さすがに角を曲がったら、家に戻ってるだろうけど、最後まで見送ってくれる様子に健気だなと顔が緩んだ。
今日の思い出は大事に心の中にしまっておこう!
あと、明人のアドバイスのおかげで普段見れないねこも見れたし、あいつにはちょっとお礼しとかないとな~
後日、現場を見逃して落ち込んでいた明人にお菓子を持っていくと、根掘り葉掘り聞かせろ!と詰め寄られ、少し後悔したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんてね~まぁ実際の俺はそんなヘマをしないだろうがな!(ドヤァ)
でも、そんなフランクフルトがあったら、ぜひ!ぜひ!食べて欲しい!!ほんと土下座でもするから!
そして、俺はカメラのシャッターを影で切りまくるぜ!
ということで、早速、後日二人に提案したら賛成してくれた。...がしかし!周りでそれを聞いていたやつらも行くと言い出した。
嘘だろ!?いや、まだ当日に二人で行動する場面が来るかもしれない!!
こんなところで諦めてたまるか!!
と思い、当日も様子を窺っていたが、特に何のイベントも起きることなく夏祭りは終わったのだった。
「やっぱり、現実ってそんなに甘くないんだな…(  ̄- ̄)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!(土下座)
でも、なんとかお昼前に、はっしーsideも上げることができてよかったです(T0T)
今回は8月→夏休み→夏祭り!という安易な考えからこのようなお話になりましたが、現実では夏祭りが中止になっているところも多いですよね(-_-;)
でも、作者は小説を書きつつ想像の中で夏祭りを楽しめたので満足です笑
このお話を読んでくれた皆様にも、少しでも楽しんでもらえたなら良かったです!
では、ここまで読んでくださりありがとうございました!
また、皆様に会えるのを楽しみにしております。
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