3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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7話 ヴァゼルゲビナード 「癒しの力」

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新しい人が出てきたので、その人の視点で。
めんどうな作品でサーセン!
<(_"_)>
視点は翼男のヴァゼルケビナード。
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(戦士殿)
有馬和樹(キング)
蛭川日出男(ゲスオ、醜男)
姫野美姫(ヒメノ)
花森千香(花ちゃん、ハナ)

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・



 気高き夜行族。

 それが召喚に捕まり、このような地に堕とされるとは。

 さらには、行動を共にするのは年端もゆかぬ子供らばかり。

「戦士よ」

 横にいた蜥蜴とかげ族の男に聞いた。

「彼らは何歳なのです?」
「一七、一八だそうだ」

 一八! まだ百も行っておらぬのか。それを知れば、この稚拙ちせつさも致し方ないのかもしれん。先程から出てからの事ばかり論ずるが、ここを出る策がない。

「戦士殿」
「何か?」
「子供らは、ここからどう出るつもりでしょう?」
「さて、どうするのか。胸がはずむな」

 胸がはずむ? この戦士は言葉使いがおかしいのか。

 子供らが立ち上がった。

「じゃ、おれはなるべく派手にやるからな」

 周りからキングと呼ばれた少年だ。キング? 王とな? どれほど仲間内で強かろうと、軽々しく使う言葉ではない。

「日出男じゃなかった、ゲスオ、よろしく」
「おまかせあれ」

 醜男ぶおとこがキングに近づいた。

「むむむ! ご覧あれ最終最後の秘奥義!」
「いや、そういうの、いいから」
「くぅ。ノリが悪いでござる。秘技! お茶目な落書き!」

 醜男は何やら大げさに言ったわりに、キングとやらの身体に触れただけだ。

 そのキングは何を思ったか、牢屋に入り直した。

 壁に手を添える。

「粉・砕・拳!」

 ごっ!と壁に拳が当たると、壁は粉々に吹き飛び、大きな穴が空いた。

「なっ!」

 何をやった? 魔術ではない。魔術であれば、その流れが見えるはずだ。

 壁の向こうは廊下だった。

「ありゃ、こっちが外だと読んだんだけどな」

 そのまま真っすぐ横切り、廊下の壁に手を当てる。

「粉・砕・拳!」

 また廊下の壁が吹き飛ぶ。穴の向こうで口を開けているのは兵士だ。どうやら兵士の食堂であるらしい。

「ぎゃあ!」という叫びと共に兵士が逃げ出す。

「何が、何がどうなって」

 私の疑問に答えてもらいたかったが、横にいた蜥蜴の戦士も口をぽかんと開けている。

「お二方、参りましょうぞ」

 私と戦士の間に立ち、手を引いたのは、さきほどの醜男だ。

「ヒデオ殿、これは」
「ゲスオで結構でござるよ、ジャム師匠」
「ゲスオ殿、キング殿の力はいったい……」
「はい。キングのスキルは拳で殴ると粉砕するという力です」

 スキル、そんな物があるのか。

 醜男と戦士の会話に耳を立てる

「それにしては、規模が……」
「はい。拙者のスキルは敵のスキルに四文字だけ落書き、つまり字を足せるというものでして」
「それは敵だけでなく味方も?」
「そのとおりです。この場合『砕く拳』が、『なんでも砕く拳』に変わっております」

 蜥蜴の戦士が絶句している。私も同じだ、こんな物は見たことがない!

「それは……最強の力、であるな」
「はい。うまいぐあいにチートが完成です」
「では、昨日の地下歩行術も?」
「さすが師匠! あれは『どこでも潜水』を、『みんなでどこでも潜水』に変えておりまする」

 前を歩く少年の一人が笑いながら振り返った。

「誰かがいないと、チートにならないけどな!」
「おほほほ! 寄生虫とお呼び!」
「……そこまで言ってねえよ」

 ゲスオとやらの話の大半はわからぬ。だが、この男が他人の能力を増幅させるようだ。

 どごん! と音がし、食堂の向こう側の壁が吹き飛んだ。

「しかし、なぜ四文字という縛りを……」

 私の疑問に、にやりとゲスオが笑みを浮かべた。

「無制限や無限というスキルはダメなようでして。四文字というところで審査に通りました」
「では、五文字でもいいのでは……」
「ぐふふ。社長」

 なぜ、社長と呼ぶのか。

「そこはほれ、世のいかがわしき言葉は、すべて四文字で現せますゆえ。例えば、おま……」

 ゲスオの後ろから、少女の手刀が炸裂した。

「おまえは、歩くR18か!」
「ヒメノ嬢のいけずぅ」
「この話題の時に、嬢とつけるな!」

 二人の意味不明な会話は置き、外に出る。

 昼間だった。

 まぶしすぎて、目を開けるのが辛い。

「まさか、蒸発しませんよね?」

 ヒメノと呼ばれた少女が聞いてきた。

「蒸発? まぶしいのと日焼けが傷に染みるのとで大変なのです」
「傷! そうだった! 花ちゃーん!」

 ヒメノが、ハナというさらに小さい子を呼んできた。これで、もはや何をするつもりなのか。

「傷、いける?」
「あ、はい!」

 ハナという娘が親指と人差指を立てた。

「お注射♡」
「……なんでスキル名それ?」
「えっ? だって、看護師のイメージで」

 人差し指で私をつついた。

 まったく、子供の遊びに……

 なんだこれは? 身体の内から留まることなく力が溢れる。

「ふははは!」

 あまりのみなぎる力に笑いがこみ上げた。

「ちょっと、ゲスオ!」
「ははー!」
「ハナちゃんのスキル、ブーストかけた?」
「もちろんであります! 『癒やす』を『すべて癒やす』に改変しております隊長!」
「やばっ、ドラキュラさん、臨界突破! って状態なんだけど」
「最高にハイッってやつですね」

 背骨に激痛が走り、翼が伸びる。内臓がひっくり返るような衝撃に耐え、目を開けた。

「ま、まぶしくない!」

 陽の光でも目を開けていられる。そしてこれほど、これほど、輝きのある世界だったのか!

 空は辺際なき青さが広がり、雲はあまりに巨大で優しい。

 涙がこぼれた。

 この世界は、どれほどの美しさに包まれているのか。

「……癒やされ過ぎちゃったね」
「はっ! いささか、反省しております隊長!」

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