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8話 姫野美姫 「王都の大通りを混乱させよ」
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視点変わります。ヒメちゃんこと姫野美姫
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(ジャムパパ)
ヴァゼルケビナード(ドラキュラもどき)
有馬和樹(キング)
蛭川日出男(ゲスオ)
友松あや(あや)
根岸光平(コウくん)
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
キングが牢屋を壊す。
外に出ると大きな通りだった。
これ、メインストリートって言うのかな。兵士の馬車が通るためか、下は石畳で固められている。向こうの世界で言えば六車線? かなり幅が広い。
その広い通りが、一直線に大きな外門に向かっている。反対を見れば、一直線にお城だ。
通りの中央に、多くの石像が建っていた。5mはありそうな大きさだ。石像は軍馬に跨ったやつもある。この国の英雄なのかもしれない。
いつのまにか、ジャムパパが剣を二本持っていた。どこかで失敬したらしい。一本をドラキュラもどきに渡した。
いくつかの組に分かれて散らばる。
残ったのは、わたし、キング、ゲスオ。それに異世界人の二人。狙うは、この街の混乱。
「キング、あの石像、壊さない?」
「いいね。あっ、ブースト切れたかも」
「おまかせあれ」とゲスオが前に出る。
こいつは、すぐふざけるから心配。
「ふざけないでいいからね」
「むむむ! 臨海突破!」
「言ったそばから! って、それ、わたしが言ったやつ!」
「ならば! リミッターカット!」
「原付の改造かい!」
「おだまり! 秘技、お茶目な落書き!」
ゲスオがキングに触れる。
それからキングは、つかつかと石像に近づいた。
「粉・砕・拳!」
ボゴン! と石像が木っ端みじん。通りにいた人たちが「ぎゃー!」と悲鳴を上げる。
もう一体に近づいてボコン! 人々が、我さきにと通りから逃げ始めた。
「むふぅ。キングのスキル名は中二どころか、小6でござる」
「……言ってやるなよ」
散らばっていたみんなが帰ってくる。麻袋を背負ったのがチラホラ。その向こうから……でかした、馬車だ!
一台の箱馬車と二台の幌馬車だ。箱馬車には、老夫婦と女子数名。あとは幌馬車に分かれてもらう。
運転って言うの? それは異世界人二人とプリンス。
プリンスって馬車の経験はないけど、乗馬はあるって。ほんとにもう、お坊ちゃま!
馬車に乗り込もうとしたジャムパパが、うずくまった。動けないようだ。周りを見る。物陰から、ローブを着た青年がこちらに手をかざしていた。
「召喚士!」
来ると思ったけどジャムパパのほうか!
「ゲスオ! あや!」
幌馬車から飛び降りてくる。
「お茶目な落書き!」
「ケルファー!」
……あやちゃん、高圧洗浄機の正しい名前はケルヒャーだけどね。
ジャムパパが立ち上がった。
「これは?」
「この子のスキルは汚れを落とすの。プラスして今回は呪いも」
「ヒメ、全員、急いでしとくね」
「うん、お願い」
そんな会話をしていたら、ジャムパパが駆け出した。
召喚士に詰め寄り剣を払った。召喚士の片腕が飛ぶ。
思わず駆け寄ろうとしたのを「やめなさい」という言葉で止まった。馬車の上から、もう一人の異世界人が口を開いた。
「彼は戦う種族です。戦って死ぬのはよいが、自由を奪われるのは最も嫌うはず」
ジャムパパは睨みつけたまま、相手のお腹に剣を刺した。それをねじると、相手はうめき声を上げて倒れた。
初めて見る光景に悲鳴をあげそうになる。その時、後ろから首に短剣を当てられた。
「武器を捨ててもらいましょうか」
「……無音鬼?」
「おや、名前を覚えてもらいましたか」
わたしはそのまま下がらされ、集団から離れた。ジャムパパが武器を捨てる。
「無音鬼? じゃあ、わいは無影鬼で」
さらに後ろから、聞いた声がした。わたしの首にある短剣が取られる。
前に出て振り返ると、無音鬼の首にナイフが当てられていた。コウくんこと、根岸光平だ。
「馬鹿な、わしの後ろを取るなど」
「おじさんより早いよ」
コウくんがナイフを構えたまま離れた。
ザッ! と音がしたと思ったら、ジャムパパが剣を振っていた。無音鬼は、首から血を吹き出して倒れた。
遠くから音がした。城の方から兵士たちが駆けてくる。
「姫野! 馬車に乗れ!」
キングの声にあわてて馬車に乗る。前にはジャムパパが乗り、手綱を勢いよく叩いた。
三台の馬車は門をくぐり、堀にかかった石橋を渡った。渡ったところでキングが馬車から降りる。
橋のたもとから拳を打つと、石の橋はガラガラと崩れ落ちた。
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(ジャムパパ)
ヴァゼルケビナード(ドラキュラもどき)
有馬和樹(キング)
蛭川日出男(ゲスオ)
友松あや(あや)
根岸光平(コウくん)
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
キングが牢屋を壊す。
外に出ると大きな通りだった。
これ、メインストリートって言うのかな。兵士の馬車が通るためか、下は石畳で固められている。向こうの世界で言えば六車線? かなり幅が広い。
その広い通りが、一直線に大きな外門に向かっている。反対を見れば、一直線にお城だ。
通りの中央に、多くの石像が建っていた。5mはありそうな大きさだ。石像は軍馬に跨ったやつもある。この国の英雄なのかもしれない。
いつのまにか、ジャムパパが剣を二本持っていた。どこかで失敬したらしい。一本をドラキュラもどきに渡した。
いくつかの組に分かれて散らばる。
残ったのは、わたし、キング、ゲスオ。それに異世界人の二人。狙うは、この街の混乱。
「キング、あの石像、壊さない?」
「いいね。あっ、ブースト切れたかも」
「おまかせあれ」とゲスオが前に出る。
こいつは、すぐふざけるから心配。
「ふざけないでいいからね」
「むむむ! 臨海突破!」
「言ったそばから! って、それ、わたしが言ったやつ!」
「ならば! リミッターカット!」
「原付の改造かい!」
「おだまり! 秘技、お茶目な落書き!」
ゲスオがキングに触れる。
それからキングは、つかつかと石像に近づいた。
「粉・砕・拳!」
ボゴン! と石像が木っ端みじん。通りにいた人たちが「ぎゃー!」と悲鳴を上げる。
もう一体に近づいてボコン! 人々が、我さきにと通りから逃げ始めた。
「むふぅ。キングのスキル名は中二どころか、小6でござる」
「……言ってやるなよ」
散らばっていたみんなが帰ってくる。麻袋を背負ったのがチラホラ。その向こうから……でかした、馬車だ!
一台の箱馬車と二台の幌馬車だ。箱馬車には、老夫婦と女子数名。あとは幌馬車に分かれてもらう。
運転って言うの? それは異世界人二人とプリンス。
プリンスって馬車の経験はないけど、乗馬はあるって。ほんとにもう、お坊ちゃま!
馬車に乗り込もうとしたジャムパパが、うずくまった。動けないようだ。周りを見る。物陰から、ローブを着た青年がこちらに手をかざしていた。
「召喚士!」
来ると思ったけどジャムパパのほうか!
「ゲスオ! あや!」
幌馬車から飛び降りてくる。
「お茶目な落書き!」
「ケルファー!」
……あやちゃん、高圧洗浄機の正しい名前はケルヒャーだけどね。
ジャムパパが立ち上がった。
「これは?」
「この子のスキルは汚れを落とすの。プラスして今回は呪いも」
「ヒメ、全員、急いでしとくね」
「うん、お願い」
そんな会話をしていたら、ジャムパパが駆け出した。
召喚士に詰め寄り剣を払った。召喚士の片腕が飛ぶ。
思わず駆け寄ろうとしたのを「やめなさい」という言葉で止まった。馬車の上から、もう一人の異世界人が口を開いた。
「彼は戦う種族です。戦って死ぬのはよいが、自由を奪われるのは最も嫌うはず」
ジャムパパは睨みつけたまま、相手のお腹に剣を刺した。それをねじると、相手はうめき声を上げて倒れた。
初めて見る光景に悲鳴をあげそうになる。その時、後ろから首に短剣を当てられた。
「武器を捨ててもらいましょうか」
「……無音鬼?」
「おや、名前を覚えてもらいましたか」
わたしはそのまま下がらされ、集団から離れた。ジャムパパが武器を捨てる。
「無音鬼? じゃあ、わいは無影鬼で」
さらに後ろから、聞いた声がした。わたしの首にある短剣が取られる。
前に出て振り返ると、無音鬼の首にナイフが当てられていた。コウくんこと、根岸光平だ。
「馬鹿な、わしの後ろを取るなど」
「おじさんより早いよ」
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ザッ! と音がしたと思ったら、ジャムパパが剣を振っていた。無音鬼は、首から血を吹き出して倒れた。
遠くから音がした。城の方から兵士たちが駆けてくる。
「姫野! 馬車に乗れ!」
キングの声にあわてて馬車に乗る。前にはジャムパパが乗り、手綱を勢いよく叩いた。
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