3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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9話 根岸光平 「覚悟」

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視点変わります。コウこと根岸光平
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(ジャムさん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル伯爵)
姫野美姫(ヒメノ)
山田卓司(タク)
有馬和樹(キング)
飯塚清士郎(プリンス)

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 今日も野宿だ。まあ、今日は食べ物があるからええけど。

 あれから馬車で進み、途中からは森に入った。普通に道を進むと、追いつかれる可能性があるらしい。

 クラスのみんなは、焚き火のまわりで休憩だ。わいは周辺を見まわる。自分から偵察部隊に入れてもらった。

 森の中は魔獣や肉食動物がいるらしい。 野宿するときは要注意だそうだ。まあ、けったいな世界に来たわ。

 探すのは動物の死骸や大きなフン。特にこれといってなかったので、焚き火に帰ろうとしたらジャムさんに会った。

「ジャムさん!」
「コウ殿、異変は?」
「なーんもないですわ」

 ジャムさんとしばらく歩き、足を止めた。

「えーと、ジャムさん?」
「何か?」

 ジャムさんが足を止めて振り返る。なんて言ったらいいんやろ。

「軽骨な行動を慎まれよ、というところでしょうか」

 誰かと思ったら、ヴァゼル伯爵。

 名前が言いにくいから、みんなはヴァゼル伯爵と呼ぶことにした。なぜ伯爵を付けるかというと、もちろんドラキュラ伯爵みたいだから。でも聞いたところ、血は吸わないらしい。

「考えろ、とは?」

 ジャムさんが眉を寄せた。

「子供たちは血を見るに慣れておりません。あまり刺激が強いのもどうかと」

 ジャムさんがハッと気づいた。

「ぬかったわ。少しヒメノと話してこよう」

 ジャムさんは、そう言って走っていった。

 ヴァゼル伯爵と歩いて焚き火に帰る。

「おっちゃん、グッジョブです。ありがとう」
「貴殿も今日は、よい働きでした。どのような能力で?」
「あー、早く走れるってやつです。陸上部なもんで」
「リクジョウブ?」
「ああ、えーと、走って遊ぶ集団です」
「なるほど。あの速さを活かせば、よい戦士となりましょう」

 わいは足を止めた。

「強くなれますか?」
「ええ。素早さというのは、もっとも強さに関係します。あとは使い方でしょうか」
「使い方?」

 伯爵も足を止めた。こちらを向いてじっとしている。なんや?

「おわっ!」

 気がついたら、真横にいてじっと顔を見られた!

「ど、ど、どうやったんです?」
「相手の虚を突きました。一瞬、消えたように見えたはずです」
「見えました!」
「相手の動きを見る目、身体の使い方、肝心なのは相手と自分の気配を操作すること」

 これは、すごいわ。そして、わいがするべき事が見えた気がする。

「伯爵、いや師匠! 弟子にしてください!」

 師匠は片膝をついて、両手を組んだ。

「師匠? なにしてはります?」
「我が大いなる母、チカ様に祈りを捧げました。私に弟子が偶成されるとは」

 ……師匠、だいじょうぶやろか?


 焚き火に戻ると、みんなは思い思いのところに座っていた。小さなパンと干し肉を持っている。強奪した食料が配られたようだ。

 姫野が少し離れたところに座っていた。食事はしていないようだ。

「姫野、だいじょぶか?」

 近寄って声をかけた。

「うん。さっきジャムパパにも聞かれた。ありがと」

 姫野は思ったより元気だ。でもまあ、大丈夫ではないやろな。生まれて始めて見る首チョンパだ。わいも正直、今日は寝れへんやろ。

 しかし、ここまで来て気づいた。こんな時、どんな声をかけるのか考えていなかった。

「ひっ!」

 姫野の視線のさきに、わいもたまげた。人の頭が地面からニョッキリ生えている。目がこっちを見た。いや、よく見ると知ってる顔やん!

「タク! おどかすなよ!」

 わいの親友の山田やまだ卓司たくじだった。そのまま、ぬめっと地面から上半身が出てくる。

「いや、なにしてんのかなと」
「なんもしてへんわ! お前こそ、それ妖怪の出かたやで」

 わいは伯爵とのやり取りを思い出した。

「そうや、タク、ヴァゼル伯爵に、お前も弟子入りせえへん?」
「うん? なんで?」
「あの人、気配消したりとか、めっちゃ上手そうなんよ。わいら向きやろ?」
「なるほど、俺ら、戦いには向いてないもんな」
「あ……やっぱ、ええわ」

 話を切り上げようとしたら、タクに聞き直された。

「なんだよ、言ってみろよ」
「いや、逆やってん。やりたいのは今日の無音鬼みたいなヤツ。うしろからズブリ」
「まじで?」
「ええて。忘れて」

 姫野が横から身を乗りだした。

「それって、暗殺ってこと?」
「そうや」
「無茶よ!」
「無茶か? この世界だったら、殺し合い普通やろ。だったら戦いになる前に殺したほうが効率ええやん」
「忍者だな。やろうぜ」
「いや、ええて、タク」
「思えば俺のスキル、土遁どとんの術だし」

 タクの胸ぐらを掴んで、地面から引き抜いた。

「わいは、覚悟決めたちゅう話、しとんねん!」
「怒んなよ、コウ」

 タクが腕をはらった。

「んで、俺らがそれをやれば、みんなが戦わずに済むって狙いだろ」
「そうなの?」
「知らんがな!」

 タクは得意げに、わいを指差した。

「こいつ、よく言うもん。ほんま、このクラスは当たりやわーって」
「当たり?」
「好みの美人が多いんじゃないかな」
「ちゃうわ!」

 舞台裏を暴露されたみたいで、腹が立つ。でも、しゃあない、話すか。

「わいは二年時の転校で来たやろ。これ、一年時に転向してきたキングとよく話すけど、転校先のクラスって、めっちゃ当たり外れがあんねん」

 姫野も思い出したようで、うなずいた。

「そうか。キングも転校が多かったって言ってたもんね」
「あそこは、親父が裁判官やからな。元裁判官か。わいはちゃうで。オトンが借金から逃げてるだけで。そんでな」
「……さらっとダークな話題ぶっこむわね」
「そうか? まあそれで、このクラスは当たりも当たり。大当たりってぐらい居心地ええのよ。なもんで、恩を感じるっちゅうやつかな」

 居心地ええどころやないけどな。女子は、ちょいちょい弁当くれる。男子は、わいがおったら金のかからん遊びをする。

 さりげない気遣いやけど、今どき、おらんで。放課後にカラオケ行かず、空き地で遊んでる男子高生なんか。

「そうなのね……でも、わたし、賛成とも反対とも、言えない」
「ええんちゃう。それで。姫野は知っとく必要あるやろ。これ、キングやプリンスやったら反対するで」
「するだろなぁ。勝手にやろうぜ!」
「軽いな! お前!」
「俺は、こういうのは軽く考えたほうがいいと思うよ」

 姫野が両頬をパンパン! と叩いた。

「言えてる! 軽く考えたほうがいいわね」
「っつうか、忍者好きなのは、お前だろ」
「あほぅ! そんな幼稚ちゃう」
「お前のスキル名は?」
「ニンニン!……ほんまや!」
「ほらな」

 だめだこりゃ、と首をすくめて姫野がパンを取りに行った。そういや、なんの話をしに来たんやっけ?
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