12 / 74
10-1話 花森千香 「村長の村」
しおりを挟む
「おい」
いつのまにか後ろにプリンスがいた。飯塚清士郎くん。いまはもう、みんながプリンスと呼んでいる。有馬和樹くんもキングって名前で呼んでいい。
声をかけられたのは、みんなのいる焚き火から離れて、花を見ていたからだ。
「あんま離れんなよ」
「はい」
3年F組の「北風と太陽」とよく例えられる二人。プリンスがもちろん北風だ。
眠い目をこすり、みんなの元へ歩く。昨日は一睡もできなかった。
こういう時、花屋に生まれた私は、花を見ると落ち着く。祖父の代で「花森花屋」という店は、母が「ハナ♡ハナ」に改名した。小さい頃から「ハナ♡ハナ」に出入りしてたので、花には詳しい。それでも、ここは異世界なので、見たことがない花が多かった。
あっ、気をつけないと。現実の世界でも毒のある花は意外に多い。眺めるだけにして、摘み取るのはやめておこう。
「花ちゃーん!」
姫野美姫さんに呼ばれて走っていく。男子の一人が、腕に傷を作っていた。山猫のような動物に襲われたらしい。急いで私のスキルで治す。
出発の準備をして、男子たちが焚き火の跡を消していた。目指す行き先は、老夫婦のいた村。森を抜け、山を一つ超えるとあるらしい。昨日に乗った馬車は使えない。
今日は歩き。みんなの足を引っぱらないか、そこが不安。
山の途中で一泊し、次の日に山を下りることができた。そしてようやく、人の作った道に出る。
歩いていくと、先頭が止まった。
「あれ、煙じゃないか?」
プリンスが歩く先の空を指して言った。
「私が見て参りましょう」
そう言ったのは、私が昨日、治し過ぎたらしいヴァゼル伯爵。
「師匠、わいらも」
そう言ったのは、陸上部のコウくんこと根岸光平くん。それに水泳部のタクくんこと山田卓司くん。
三人が下見に行き、しばらくすると戻ってきた。老夫婦と話をしている。コウくんも、タクくんも険しい表情。老夫婦が泣き崩れた。
キングやプリンスを中心に、なにか話がされている。近づいて聞いてみた。
「おれ、タク、コウ、ジャム殿、伯爵の五人で行く。プリンスはみんなを頼むな」
「不満はあるが、まあ、しょうがないな」
「伯爵、相手は十人で間違いない?」
「間違いありません」
盗賊のようなものが、村を襲ったらしい。今その盗賊は、村長の家で酒盛りをしているそうだ。
「ぐふふ、拙者をお忘れか」
ゲスオってすごいあだ名の蛭川日出男くん。今は、ふざけてる時じゃないと思うのに。
「ゲスオ、今回はダメだ。危険すぎる」
「拙者がおられば、不測の事態に対処できませぬぞ」
「十人との戦闘だからな、そこまでにはならない」
戦闘。映画でも見てるみたい。
「では、今後、拙者は協力いたしません」
「ゲスオ! ふざけんなって」
珍しく、ゲスオくんがごねている。
結局、戦闘には入らないけど、村の入口で待機という事で納得した。
六人が静かに駆けていった。
私たちは道から外れ、林の中に身を隠した。ほかの盗賊が来た時の用心らしい。
時々、プリンスと男子数名が道に出て、村の様子を見張る。気づけば、そのみんなは腰に剣やナイフをつけていた。私はのんきだったのかもしれない。朝に花を眺めている場合じゃないかも。
「待ってるの、長いね」
私の隣にいた、友松あやさんが言った。ほんとに待ってる時間って長い。
どのぐらい時間が経ったのか、わからくなるぐらい待った。
伯爵が飛んで帰ってきた。プリンスが、みんなを呼ぶジェスチャーをする。
「みんな、まだしばらく待ってて。男はもう数名来てくれ。かなり片付けないといけない」
「それ、うちが行くよ」
友松さんの言葉におどろいた。
「それはダメだ」
「血を消すのって、うちのスキルが有効でしょ」
そうか。さっきの「片付け」の意味がわかった。
「あの! ケガをした人は?」
思わず聞いてしまった。
「タク、コウ、ゲスオの三人だ。命には関わらないから、こっちに連れてくる」
プリンスと男子数名が走っていった。
「うちが行ったほうが、早いと思うんだけどな」
「あや、さすがに見ないほうがいいんじゃない? 村全滅よ」
姫野さんと、友松さんが話をしている。
「ちょっと思ったのが、うちのスキルに『死体』って書き込んで、一気に掃除できないかな」
「あっ、なるほど!」
姫野さんが、空中を下からスワイプするような動きをした。それを見ながら腕を組んで、指をトントンと叩いている。そして、意を決したように口を開いた。
「行くか」
いつのまにか後ろにプリンスがいた。飯塚清士郎くん。いまはもう、みんながプリンスと呼んでいる。有馬和樹くんもキングって名前で呼んでいい。
声をかけられたのは、みんなのいる焚き火から離れて、花を見ていたからだ。
「あんま離れんなよ」
「はい」
3年F組の「北風と太陽」とよく例えられる二人。プリンスがもちろん北風だ。
眠い目をこすり、みんなの元へ歩く。昨日は一睡もできなかった。
こういう時、花屋に生まれた私は、花を見ると落ち着く。祖父の代で「花森花屋」という店は、母が「ハナ♡ハナ」に改名した。小さい頃から「ハナ♡ハナ」に出入りしてたので、花には詳しい。それでも、ここは異世界なので、見たことがない花が多かった。
あっ、気をつけないと。現実の世界でも毒のある花は意外に多い。眺めるだけにして、摘み取るのはやめておこう。
「花ちゃーん!」
姫野美姫さんに呼ばれて走っていく。男子の一人が、腕に傷を作っていた。山猫のような動物に襲われたらしい。急いで私のスキルで治す。
出発の準備をして、男子たちが焚き火の跡を消していた。目指す行き先は、老夫婦のいた村。森を抜け、山を一つ超えるとあるらしい。昨日に乗った馬車は使えない。
今日は歩き。みんなの足を引っぱらないか、そこが不安。
山の途中で一泊し、次の日に山を下りることができた。そしてようやく、人の作った道に出る。
歩いていくと、先頭が止まった。
「あれ、煙じゃないか?」
プリンスが歩く先の空を指して言った。
「私が見て参りましょう」
そう言ったのは、私が昨日、治し過ぎたらしいヴァゼル伯爵。
「師匠、わいらも」
そう言ったのは、陸上部のコウくんこと根岸光平くん。それに水泳部のタクくんこと山田卓司くん。
三人が下見に行き、しばらくすると戻ってきた。老夫婦と話をしている。コウくんも、タクくんも険しい表情。老夫婦が泣き崩れた。
キングやプリンスを中心に、なにか話がされている。近づいて聞いてみた。
「おれ、タク、コウ、ジャム殿、伯爵の五人で行く。プリンスはみんなを頼むな」
「不満はあるが、まあ、しょうがないな」
「伯爵、相手は十人で間違いない?」
「間違いありません」
盗賊のようなものが、村を襲ったらしい。今その盗賊は、村長の家で酒盛りをしているそうだ。
「ぐふふ、拙者をお忘れか」
ゲスオってすごいあだ名の蛭川日出男くん。今は、ふざけてる時じゃないと思うのに。
「ゲスオ、今回はダメだ。危険すぎる」
「拙者がおられば、不測の事態に対処できませぬぞ」
「十人との戦闘だからな、そこまでにはならない」
戦闘。映画でも見てるみたい。
「では、今後、拙者は協力いたしません」
「ゲスオ! ふざけんなって」
珍しく、ゲスオくんがごねている。
結局、戦闘には入らないけど、村の入口で待機という事で納得した。
六人が静かに駆けていった。
私たちは道から外れ、林の中に身を隠した。ほかの盗賊が来た時の用心らしい。
時々、プリンスと男子数名が道に出て、村の様子を見張る。気づけば、そのみんなは腰に剣やナイフをつけていた。私はのんきだったのかもしれない。朝に花を眺めている場合じゃないかも。
「待ってるの、長いね」
私の隣にいた、友松あやさんが言った。ほんとに待ってる時間って長い。
どのぐらい時間が経ったのか、わからくなるぐらい待った。
伯爵が飛んで帰ってきた。プリンスが、みんなを呼ぶジェスチャーをする。
「みんな、まだしばらく待ってて。男はもう数名来てくれ。かなり片付けないといけない」
「それ、うちが行くよ」
友松さんの言葉におどろいた。
「それはダメだ」
「血を消すのって、うちのスキルが有効でしょ」
そうか。さっきの「片付け」の意味がわかった。
「あの! ケガをした人は?」
思わず聞いてしまった。
「タク、コウ、ゲスオの三人だ。命には関わらないから、こっちに連れてくる」
プリンスと男子数名が走っていった。
「うちが行ったほうが、早いと思うんだけどな」
「あや、さすがに見ないほうがいいんじゃない? 村全滅よ」
姫野さんと、友松さんが話をしている。
「ちょっと思ったのが、うちのスキルに『死体』って書き込んで、一気に掃除できないかな」
「あっ、なるほど!」
姫野さんが、空中を下からスワイプするような動きをした。それを見ながら腕を組んで、指をトントンと叩いている。そして、意を決したように口を開いた。
「行くか」
13
あなたにおすすめの小説
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる