3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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28-6話 有馬和樹 「悪霊か精霊か」

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 新たなドラゴンをどうするか考えていると、あらっ、うしろから気配? 

 トレーラーのうしろに大勢の人影が現れた。50、60人はいる。ローブを着ているが、小さい?

「ハビじい、うしろのあれ!」

 ハビスゲアルは振り向いて、嫌悪感が丸出しの顔をした。

「愚かな。教会が持つ魔法学校の生徒です」

 やっぱり! 年齢は12か13、小6ぐらいだろう。

 どうする? 前と左右は魔法に対して防御できる。真後ろは誰もいない。

「集団で行う強力な魔法があります。おそらくそれ狙いかと!」

 ハビスゲアルは飛んでくる火の玉を結界で防御しながら、早口で教えてくれた。

 生徒たちの前に引率の先生みたいな男が出てきた。着ているローブが派手、というより高級そうだ。重厚な茶色い布地に銀の刺繍がほどこされている。

「あれは、三番目の司教ウァサゴ!」
「あれで三番? もう、七二人の司教って馬鹿ばっかなの?」
「……面目ございません」
「まあ、上に行くほど馬鹿なら、一番下だったハビじいが、一番まともかも」

 しかし、子供たちに攻撃させる前に止めたい。攻撃が始まれば、こちらも応戦せざるを得ない。

『ドラゴン、そっち行く!』

 遠藤の悲鳴に似た通信。くそっ。姫野を見た。姫野も、いい手を思いついてない様子だ。

「ギョズミー!」

 魚住はドラゴンと格闘しているので四苦八苦だが、なんとかこっちを向いた。

「な、なにキング」
「もう一匹、どうにか時間かせいで!」
「ええっ! 無理だよ!」
「そこをなんとか!」
「無理だって!」
「……からの?」

 魚住が怒って黙った。

 すまん魚住。でも、おれを磯釣りに連れていってくれた時、道具が波にさらわれたよな。あの時だって、ありあわせの物でなんとかしてくれたじゃないか。

 魚住は額の汗をぬぐった。

「ちくしょう、実戦でもしたことないけど、やってやるよ!」

 汗をぬぐった、その左手を見る。

「ダブルロッド!」

 おお、見えなくてもわかる。二刀流か! これでドラゴンはしのげる。あとはチビッコ。

「姫野! たぶん、奥の手なんだろうけど、使おうぜ!」

 姫野がうなずく。

「ぼだいじゅー!」

 ゴゴゴゴ、と地響きのような低い声が、地の底から響いてくる。

「……ワレヲ呼ブノハ誰ジャ」

 やっぱりいたか。しかし、ずいぶん悪ノリしてる。ゲスオあたりが何か吹き込んだか。

「菩提樹、うしろの子供を脅してやって」
「……心得た」
「なんで、そんな低い声?」
「……ゲスオ殿が、怖がらすには、こうだと」
「オッケ。それで子供を怖がらせてみて」

 ゴゴゴ、と生徒たちの前に地面から巨大な菩提樹の上半身が出現した。

「あわわわ」

 三番目の司教とやらが、腰を抜かして尻もちをつく。

 菩提樹が生徒を見下ろし、口を開いた。

「……オ主ラ、魔法使イカ?」

 一番前の男の子が、女の子をかばうように前に出た。

「失せろ、この悪霊め!」
「むむ、わらわは太古の樹の精霊ぞ」
「嘘だ!」
「嘘とな?」

 巨大な菩提樹の上半身は、ずいっと前かがみして少年の前に近づいた。

「お主の目は節穴か。今見ているのは何じゃ?」
「悪霊だ」
「悪霊とな。それを見たことがあるのか」
「ないけど……ないけど神様はそう言ってる!」
「ほう、神様とやらに、そう聞いたのか」
「司教様が、そうおっしゃったのだ!」

 少年が伸ばす手をくぐり、うしろの少女が前に出た。

「あなた、もしかして、校庭の隅っこにある木?」
「ほう、よくぞ気づいた。左様。わらわは菩提樹の精霊」
「たまに感じてたの。あの木って、しゃべりかけてるみたいで」
「よい素質じゃ。それを大事にすれば、よい魔法使いになるぞよ」

 少女はにっこり笑い、うなずいた。

「み、みなさん、この悪霊に火焔球を放つのです!」

 腰を抜かしていた司教がしゃべった。

 おれはトレーラーの屋根を蹴って飛び降りた。一直線で司教の元に走る。

『キング、ミンチはダメ!』

 姫野の声。わかってる。

 走る勢いそのままに、おれは男のアゴを蹴り上げた。吹っ飛んで起きてこない。気絶したな。

 カツカツッ! と音がした。おれの足元に矢が跳ねる。トレーラーから離れたおれを狙ったか。

 っつうか、子供いるんだから危ねえだろ!

「おい、お前ら、あぶねえから逃げろ」

 子供らが、わらわらと逃げていく。それでよし! と一息。おれの右手を誰かが握った。

「はい?」
「わたし、菩提樹さんと一緒に行くの!」

 さっきの女の子だ。

「お前な、あぶないから帰れって!」
「いやよ! せっかく会えたんだもん!」
「いつでも会えるだろ!」
「ウソ! お母さんそう言って、ハミルと会えなかった!」
「ハミルって誰だよ!」
「ウチの猫よ!」

 風切り音がして、体を伏せた。頭の上を矢が飛んでいく。

「んにゃー!」

 イライラして思わず奇声を上げた。女の子をおんぶして走り出す。

 近くの家の屋根で物音がした。兵士が一人、落ちてくる。おれを狙ってた弓兵か。

 トレーラーまで戻り、おんぶしたままハシゴを上がる。

「キング、ちょっとそれ」

 おれの背中を姫野が指差している。なんかこれ、デジャブを感じる。

「ああ、知り合った女の子だ。できれば一緒に行動したい」
「そ、そう。まあ、キングがそう思ったんなら……ってどういうことよ!」

 あはっ、そりゃそうだ! ジャムさんを連れてきた時とは違う。

「キング! 限界だ!」

 魚住が叫んだ。そうでした、ごめんなさい!

 おれは耳に手を当てた。

『業務連絡、業務連絡、カラササヤさん、出番ですよ。どうせ近くにいるんでしょ』
『はっ! ただいま!』

 さきほど兵士が落ちた屋上に人影が現れた。二階の屋根から一階の軒に飛び降り、地面に着地する。やっぱりな。

 そして大きく息を吸い込み、顔を上げた。土煙を上げそうな勢いで走り出す。

「烈突の槍遣い、カラササヤ。参戦いたす!」

 ……あのおじさん、この戦いに向けて、名乗り口上を考えてたな。

「王よ、相手はどちらに!」
「上空、二匹の竜!」
「はっ! 槍はどちらに!」
「そのへん!」
「ははー!」

 カラササヤさん、走りながら重装歩兵の槍を拾う。勢いそのまま、槍を担いだ。

投擲とうてき!」

 ものすごい勢いで槍が空を裂く。二匹のドラゴンのうち、青いドラゴンの羽に当たった。ドラゴンが落ちてくる。

「さらに投擲!」

 赤いドラゴンの羽にも当たった。二匹とも、落ちてくるのは大通り。それもトレーラーの前方!

……戦で大将は座って待てというが、これは、おれが出るしかないだろう!
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