3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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28-10話 有馬和樹 「3年F組包囲される」

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 喜多絵麻が、はっと我に帰ったようにまわりを見る。

「あ、あの、私、生まれが広島だから……」

 いや、そういう問題じゃない。

「……爆炎鬼ばくえんき

 無影鬼むえいきと自ら名乗るタクがつぶやいた。そう、そんな名前が相応ふさわしい。

 みんなが立ちすくむ中、プリンスが喜多絵麻に近づいた。

「すまんな。助かった」
「うん」

 いや、そこ「奥さんが傘持ってきた」ぐらいの軽さだけど、神を一人焼いたんだからな!

『西と東から一団! 相当な数!』

 遠藤の声が静けさをやぶった。

「しまった、時間がかかり過ぎた!」

 姫野がつぶやく。まわりを見れば、大通りの脇には野次馬が大勢あつまっていた。路地裏に作った迷路も、もう壊されたのだろう。

 おれは耳に手をかけた。

『みんな、一旦トレーラーに戻ろう』

 トレーラーにいくつかあるハシゴから分散して登る。ゲンタも戻って来た。

 通信の遠藤やボール攻撃の玉井といった潜伏している者もいるが、基本的に大勢だ。それに異世界人がいる。ジャムさん、ヴァゼル伯爵、ハビスゲアル、カラササヤさんの四人。登るのにも時間はかかる。

 今日、この戦いには土田がいない。3年F組が27人。ジャムさんたち合わせて31人か。

「テファ、登れない」

 最後のおれが登ろうとした時、横から声をかけられた。あの女の子だ。

「テファちゃんは帰ろうね」
「いや! お兄ちゃんと一緒に行く!」

 もう! 置いてもいけないから背負って登る。ハビスゲアルぐらいの命ならいいのだが、お兄ちゃん、君の命は背負えないんだが。

 登ってまたもや、姫野と目が合った。

「まあ……味方が増えたのは確かね」

 嫌味はよせ、姫野。これで32人か。

 兵士は次から次に集まり、トレーラーを通せんぼするように道いっぱいに広がった。

 馬に乗った兵士が十騎ほどいる。あれが隊長格だろう。そのうちの一人が、こちらに馬を進めてきた。

「我が名はワーグル! 王都守備隊の隊長だ」

 真面目そうな男だった。言っちゃ悪いが司教連中の胡散臭さがない。

「おれの名はキング。何の用だ?」
「何の用とは心外な。都に攻め入ったのはそちらであろう」
「いやいや、斬られそうになったから身を守っただけ」

 おれはクラスのみんなを指差した。

「っつうか、都を攻めに来た者に見える?」

 クラスのみんなは甲冑も付けてなければ、剣も持ってない。剣があるのはジャムさんとヴァゼル伯爵、プリンスぐらいだ。

 おれの言葉にワーグルと名乗った隊長は少したじろぐ。

「な、ならば、何の用で王都に来たのだ!」
「はいはい。教会に聞きにきました。なんで下々の村を襲うのか。おれらの作った免疫所をなんで潰したのか?」
「なにぃ?」

 これは頭脳班の連中と事前に決めていた口上だ。戦争をふっ掛けるってのは、大義名分が必要らしい。

「嘘を申すな! このほどの流行り病、原住民のせいと聞いた」
「違うね。魔法で治せない病気だ。それを隠すために、おたくの教会が森の民を襲った」

 トレーラー上の誰かが動いた。と思ったらカラササヤさんだ。地面に飛び降り、ワーグル隊長の前にでる。

「俺の顔を見ればわかるだろう」

 顔中に残る疱瘡ほうそうの跡を見て、ワーグル隊長らは目を剥いた。

「お主、治ったのか? そこまで悪くなって元気になった者は見たことがない」
「ああ。病から救ったのは、この若者ら。俺の村は都の兵士に焼かれた」

 カラササヤさんは指笛を吹いた。甲高い音が大通りに響く。んん? なんの合図だ?

「手を出すなら、森の民は黙っておらぬぞ」

 大勢の野次馬の中から、一人、また一人と歩いてくる。

「おい、姫野!」
「こんなの、聞いてない!」

 おれはあわてて耳に手をやった。

『カラササヤさん、みんなを戻せ! 戦闘には参加しないはずだ!』
「我らが王よ……」

 ジャラジャラと首かざりをつけた老人が出てきた。

 ……うそだろう。ゴカパナじいさんまで来てんのかよ!

「菩提樹の里の民、総勢320人。すべての総意にございまする。なんと申しましたか、そうクラスメートのために」

 ゴカパナじいんさんは、おれに向かって小さなペンダントを振った。木彫りの菩提樹の葉だ。

「姫野、あそこ!」

 おれは指を差した。小さな女の子が二人。

「フルレ! イルレ!」

 姫野は頭をかきむしった。

「んにゃー!」

 そうだろう。あまりに思うように行かないと、叫びたくなるってもんだ!

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