天使なオメガと俺様王子

いちご大福

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戦争の始まり。

第2話

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「姉さん、待ってるよ?」
「分かってる!」
ルキアが声をかけた。唯一の姉、カルミアに。
「カルミナにルキア様、ご機嫌麗しゅう。カルミナ、なんでルキア様に隠れているのかな?」
「ルキア、こいつを何とかしろ!」
「アルファのライピア様に僕なんかが何とか出来る訳ないでしょ?
姉さん、いい加減にライピア様の求愛を受けたら?」
「ルキア様はお優しいですね。さすがアルベルト様の奥方になられるお方です」

「いや、僕は無理やりで、、」
「いや、最後は和姦だとアルベルト様がおっしゃっておりましたが」
顔を真っ赤にしてルキアは固まった。



「僕の話はいいから、いい加減に行って来なよ、姉さん!」
ドンッとカルミアをライピアの胸元に追いやったルキアはそそくさっと去っていき、


物陰に隠れて様子を伺う。



恥ずかしくて堪らないカルミナにライピアは優しく肩に手を置いて、
カルミナの顔を覗く姿は慎ましい。




「僕はああいう恋愛もありだと思うけどね?」
「俺はこれでも純愛だけど?」
「抱くだけ抱いて、恋人期間を吹っ飛ばした君に純愛をどうなの?」
いつの間にか背後に居るアルベルトにルキアは溜め息をつかざる得ない。
「俺は初めて会った時からずっとルキアを愛してるよ」
「アル、恥ずかしいからそこで真面目な顔をやめて」
真っ赤になったルキアをアルベルトは抱きしめる。硬く引き締まった身体にルキアは身を任せた。



「来月、コンサートだろう?」
「うん、僕なんかの歌で皆が喜んでくれるなら歌うよ」
平和の歌を。

呟くルキアにアルベルトは、外交にまで充分に価値があると、貴重な存在だとルキアは分かっていない。

アルベルトからすれば、ルキアは半身とも言えるし、婚約者同士だ。
本来ならその歌声だって誰にも聴かせたくはない。
でもルキアが望んでいる事だからこそ、ルキアの味方でありたいとすら。


ベータの派閥ではまだルキアを引き抜きたいとすら考えているらしい。

あの歌声を聴けば誰だって欲しくなる。



自分がそうであったように。




「アル、また来てくれる?」
「勿論のこと。行く。」
ルキアはアルベルトを会場に招待し、決して差別をする事はないと説明している。
また自国の事も。

歌を終えたらルキアは話し出す。
平和の言葉を。

戦争を止めたいから皆で力を合わせよう、と。
色々と話すルキアに皆は心を打たれる者も多く、天使だとすら言われる。



ルキアとカルミナはアルファとベータから産まれた貴重な存在でもあった。
あまりにも異色ではあるが、稀な存在感を持ち続けるルキアに惹かれる者は多い。


ましてやアルファよりも存在も薄いオメガ。
そんなルキアの歌声と語り部に耳を傾けている者が多かった。




「僕ね、歌うのが好き」

小さい頃から言っていたルキアの言葉。
歌手やアイドルになりたい訳でもないが、ただ歌うのがルキアは好きだった。

柔らかい透き通るような歌声は、誰もが魅了される。


心底、コンサートを楽しみにしているルキアの為にアルベルトは身辺警備を増強しているのは知らずにいるのはルキアは知らない。









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