天使なオメガと俺様王子

いちご大福

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戦争の始まり。

第3話

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『あなたを見ていた


あなたをただ見ていた


優しいあなたを誰もが見ている


ねぇ きづいて?あなたは1人じゃない


ねぇ きっと誰かが傍にいるから


優しいあなたをみているから


どうかきづいて 優しい音に』



クライマックスのルキアの歌声。
誰もが聞き終えるまで無言で。


ルキアの歌声と、歌詞はルキアが作っている。

優しい声のルキアは天使のようだと誰もが思う。
そんなルキアの姿を見て、自分の伴侶は神がかっているとアルベルトは思ってしまう。


「とても綺麗だよ、ルキア」

そして、思うのは、渇望。

ルキアを抱きたいと思う。ドロドロに溶かして自分、アルベルトだけ見ていればよい、と。


いつもそう思っているアルベルトは苦笑する。
ルキアに対して技量が狭くなってしまう。




「ルキア・アスファ・オーガニア、死ねぇ!!」

「「「「わぁぁぁ!!!」」」」
突如、現れた赤髪の女がルキアに襲いかかる。
その刃物を持った女に会場が騒めいた。


「!?」
突如に現れた人物にルキアは動けない。
「憲兵!」
動けないルキアをアルベルトが直ぐ様に動いて抱き上げて距離を置くと命令を下す。
 



すぐに憲兵が動き、女を捕まえた。
「何が天使だ、この偽善者!!」
「!!」
「世界はな、お前が邪魔なんだ!お前さえ居なければ、アルファとベータは争える!
そしてアルファのいいようにさせるものか!」


「……………」

「貴様さえ居なければ!」
「戦って戦って、得るものはなんですか?」

「…っ!それはベータが」
「それはまるでどっちが優秀かどうか、とかの話でしょう?

僕はオメガ、ベータやアルファに比べたらとても弱いです。

でも一緒の事があります。


生きとし生けるもの全てが同じように、魂を持っているから」



「偽善者だと言われても構わない。命は平等だと歌い続けますから」



「……。」

女は無言になると憲兵の隙をついて逃げ出した。
「「「捕まえろー!」」」

「逃がしてあげてください!」
憲兵が騒ぎだしている中、ルキアは声を張り上げる。
「「「え?」」」
「ルキア!」
パンッと叩かれる頬に、叩いたアルベルトにルキアは頬に手をあてた。
そこには憤怒の怒りを抱えたアルベルトの姿がある。

「ルキアが叩かれた意味がわからないなら、分からせるまでだ。憲兵、姿を追え。」
「「「はっ!」」」
アルベルトの命令を聞く憲兵たちは動きだすと、ルキアの体は急に体勢がかわる。

そして個室へとアルベルトは向かい、ルキアはただ慌てる。

「アルベルト!?」
「ルキア、君の歌声は確かに皆を動かす。と、同時に憎まれる事を知るべきだ」
「それは」
「わかっている、か?いや、わかってない。お前は特殊なオメガだ。その声で戦争が始まりを告げる事も可能だ。
それはもし姉のカルミナが人質に取られたら、君は歌うだろう?
戦火の歌を」
「憎んでそれでまた憎まれて、人を殺して殺されて。そんなふうな負の連鎖を止めなきゃいけない。なら僕はすすんで死を選ぶ」
「ルキア!」
アルベルトがルキアの名を強く呼ぶ。


「アル、確かに僕は脅威かもしれない。今は戦争を止めてるかもしれない。
でも誰ももう死ななくていい世界を見たいよ。
だからアル、僕に力を貸して」
「ルキア、お前は……」
「僕はね、父さんと母さんみたいに幸せそうな家庭が増えたらいいなって思う。
アルファとベータが一緒に歩める道を」
だから夢は叶えたいとルキアは微笑む。  



『今のアルファとベータ間の戦争を知らない訳じゃない、ルキアは。だが簡単に両者が時間をかけて解決するならどれだけいいんだろうな』
アルベルトは考えざる得ない。


ルキアの両親を目の前で殺されたのをルキアとカルミナは持っている。
アルファとベータ間で産まれたルキアとカルミナはオメガという特異点でもある。



「僕には歌うしかないのかな。平和の為に戦う力があったらいいのに」
「力などあってもいいものではないよ、ルキア。
力がアルファにあるからこそ、ベータは妬んでいる。俺はルキアには平和を願う歌う力があるからこそ、現実的に戦争にはなってないんだよ、それは特殊な力だと俺は思う」
「アルベルト………」
「今は戦争を止めているのはルキアだ、それだけは忘れないでくれ」
ギュッと抱きしめるアルベルトにルキアも抱きしめ返す。
次第に互い近づく顔にルキアとアルベルトを目を細めながら、互いに瞳を閉じる。

触れ合う口付けが激しいものに変わっていく。


個室からは衣服の擦れる音を境に、アルベルトはルキアの衣服を剥いでいった。



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