令嬢が悪役令嬢になるまで……(連載版)

あみにあ

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始まりは……

まず最初に……これは名門貴族の公爵家に生まれた一人の少女が、悪役令嬢と呼ばれるようになるまでのお話です。

とある日……オギャー、オギャー と元気な産声が響きました。

その場にいた皆は、元気で美しい女の子の存在を確認し、歓喜に満ち溢れた。

その女の子は親の愛情を一心に受け、まっすぐにスクスクと育っていきました。

漆黒の髪は父から、ブラウンの少しつり目は母とそっくりです。

少しお転婆なところはあるけれど、彼女の成長を誰もが見守り、そうして幸せになることを願っていた。

そんな少女の物語。


************************


そんな私はスクスクと成長し、5歳になる頃に、護衛をつけて父と町へと出かけた。

初めて見る町の風景に、人の多さに、そして活気に満ち溢れた様子に……私は、馬車から身を乗り出して、外の世界を目でおっていった。
みんなとっても楽しそう!
屋敷の中では見ることが出来なかった風景に、ワクワクが止まらなかった。


そんなとき窓の外で一人の男の子が目に映った。
澄んだ青い目を困ったように揺らしながら、ブロンドの髪を靡かせ、顔を左右に振り何かを必死に探している男の子。
その男の子の姿に、私は隣に乗車していたお父様の腕を、そっと引っ張った。

「お父様、馬車を止めていただけないかしら」

私は上目遣いでパパを見つめながらに、お願いをしてみる。

「なんて可愛いのだ。しょうがないなぁ、パパが何でも叶えてやろう……!今すぐ馬車を停めよ!!!」

パパの言葉に馬車は道の端により、ゆっくり減速していく。
私は馬車が止まったのを確認するや否や、勢いよく馬車の扉を開き、勝手に外へと飛び出した。
お父様や従者が慌てた様子で私を捕まえようとするが……私はそれらの手を全てすり振り切っていく。

しばらく走っていると、人込みの中、さっき見えた透き通るブロンドの髪を見つけた。
その少年は道端にしゃがみ込み、両足を前で抱え、今にも泣き出しそうだ。

「ねぇ、君大丈夫?こんなところで何しているの?」

そう声をかけてみると、目に涙をためながら見上げた彼はビクッと驚いた様子を見せる。
そんな彼に私は徐にしゃがみ込むと、とびきりの笑顔を向けた。

「泣かないで!探しものなら一緒に探してあげるから!」

すると彼は無言のままに、ただただ私を見つめていた。
何だろう……穴があきそうなほど見られている……。

その視線に戸惑う中、動く気配のない彼の様子に私は彼の手をとり(一緒に行こう)っと誘ってみる。
彼は無表情のまま頷き、ゆっくりと立ち上がると、私は彼の手を強く握りしめながらに、街の中へと進んでいった。
人込みを掻き分けていく中、私は男の子へ顔を向けると、クルクルの瞳を覗き込む。

「ねぇ?何を探しているの?大きいもの?小さいもの?どこに落としたのかわかる?」

彼は少し考えた表情を見せると、立ち止まって私の手を引っ張った。
そんな彼の様子を不思議に眺めていると、なぜか今にも泣きだしそうな表情を見せる。
私はそんな彼に頬を上げ優しく微笑んで見せると、小さな震える手をギュッと握りしめた。

「そんな悲しそうな顔しないで、笑うとみんなが楽しくなるんだよ!あなたの笑った顔を見てみたいな」

彼は私の言葉に驚いた表情を見せると、今にも溢れそうだった涙がひっこんでいく。
そうして……少年は小動物のような可愛らしい笑顔を見せてくれた。

「かわいい!やっぱりあなたの笑った顔はとても素敵ね!!!」

私はかわいさのあまりに、彼の頭を引き寄せ強く抱きしめる。
彼は抱き寄せている私の手を握ったかと思うと、小さく口をひらいた。

「もう見つかったんだ」

見つかった……?
何が……、何を……?
彼の頭に回した手はそのままに、よくわからないことを言う彼を覗き込んでみると、澄んだブルーの瞳と視線が真っすぐに絡んだ。
彼にもう見つかったの?と問いかけようとしたその刹那……彼の頭の向こうから慌てたようすで私の方へ向かってくるパパの姿が目に映った。

その姿に私が抱きしめていた手を緩めると、彼はするりと私の腕から体を離し、どこかへと走り去り消えていく。
少年が去る背中を追いかけようとすると、突然に足が地面から離れていった。
お父様に抱き上げられたと気が付き顔を上げると、そこには今にも泣きだしそうなお父様の様子に、私はごめんなさい……と素直に謝った。
心配したんだ!と震える声にコクコクと頷く中……なぜだか次第に私の意識は、波を引くように遠のいていった。


彼は一体何を見つけたんだろう。

でも彼はとても嬉しそうだった。

綺麗な顔立ちで……そして不思議な男の子だったなぁ。

次に目を覚ますと、そこ屋敷の部屋のベットの上だった。
どうやら私は意識を失って、眠っていたらしい……。
涙ぐむお父様とお母様の姿を前に、改めてごめんなさい、と頭を下げると私は思いっ切りに二人に抱きついた。
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