令嬢が悪役令嬢になるまで……(連載版)

あみにあ

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閑話:彼の心境:後編

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俺は会場へと戻ってきた。

会場へ入り、彼女の姿を探すが見当たらない。

すれ違う貴族に挨拶をしながらの会場の中心へと進んでいくと、令嬢達が俺の周りへと集まってきた。

なんだ?

「グレイさまぁぁぁぁぁ」
「グレイ様、ご機嫌よう。」
「グレイ様、お久しぶりでございます。」
「グレイ様お会いしたかったわ~~~!」

女の波へと呑み込まれ身動きが取れなくなる。
令嬢を突き飛ばすわけにもいかずどうしたものか……。
貴族令嬢の言葉を笑顔で交わしていると、テラスへ続く扉に彼女の姿を見つけた。
俺は失礼するよと彼女の姿に目線を合わせたまま、女性達を制止し彼女のもとへと向かう。

彼女はどこからか走って来たのだろうか……。
息が少し乱れていた。
どうしたのかと聞くと彼女は困った笑顔で何でもないと答える。
何もないわけないだろう!!!
走って逃げなければいかない何かがあったのか?
俺に話せない何かがあったのか?
どうして話してくれないんだ……。

誰と、どこで、何を……。

彼女に聞けないまま貴族令嬢を眺めている彼女を見ると、
首筋に汗が流れていた。

そして俺は彼女をダンスへと誘い、パーティーは幕を開けた。
彼女がテラスから戻ってきてからは彼女のそばにずっとついていたが、結局パーティーで何があったのかは分からず仕舞いだった。
俺はモヤモヤした心を隠すように彼女を家に送っていった。

パーティーの後何事もなく月日は流れていく。

そんなある日父上から彼女が王子の婚約者候補に挙がったと聞かされた。

候補に挙がってしまえば、婚約はほぼ間違いない。
王子はどうして?
彼女が会場からいなくなったのは王子と居たからだろうか……。

彼女は王子との婚約話に了承したのか……?

俺はいてもたってもいられず、すぐに彼女の家へと向かった。

彼女の家に着くと、彼女は赤いドレスを身につけ、何処かのパーティーへと行くかのように髪を結い上げ、宝石をあしらっていた。

まさか……王子に会いに行くのだろか。
徐々に心がどす黒い渦に支配されていく。

彼女へ問いかけると、王子の婚約者候補からはずしてくれと頼みにいくと聞いてほっとした。

俺は彼女に笑顔見せると彼女もニッコリと自然に微笑み浮かべる。
この微笑みを知っているのは俺だけだ。

そして彼女は王宮へと向かっていった。

よかった、彼女の気持ちが王子にないことに緊張がゆるむ。
そんなようすを彼女のメイドに疎ましそうにみられていた。

「あまり悠長にしているとあっさり王子様に捕らえられてしまいますよ、女の子はね!王子様に憧れがあるんですから!」

メイドの言葉に無意識に表情が歪んでいく。

「そんな顔している暇があるのでしたら、彼女を捕まえて俺が幸せにしてやる!!そう一言でもいったらどうですか!」

メイドの強い言葉に俺は真っ赤になった。
そんな言葉言えるわけないだろう……。
どうしたって彼女は俺を家族としかみていないのだから……。
彼女の目をみればわかる……。

王子との話し合いがどう進んだのか気になる中、なかなか彼女に会いに行けない日々を過ごしていると、彼女の家の者から彼女が部屋から出てこないので助けてほしい……と連絡が入った。
どうしたんだ?王子と何かあったのだろうか……?
俺は馬へ乗り急いで彼女のもとへと向かった。

彼女の家に着くと、泣きそうな顔のメイド達にに迎えられる。
メイド達はやくこちらへ……とせかすように俺を家の中へと招き入れた。

彼女の部屋をノックするが返事がない。
メイドが扉を開け、俺を彼女の部屋へと押し込む。
おいおい!いいのか?
女性の部屋に男が……二人っきりで……いやだめだろう!
メイドは有無を言わさず扉を閉める。
信頼されているのだろうが……これは……。

俺はため息をつき彼女の姿を探す。
ベットのほうへ目を向けると、布団にくるまって顔だけこちらを向けた愛らしい少女と目があった。
泣いていたであろう目は赤く潤んでいた。
薄暗い部屋の中、引き込まれるように俺は彼女へと近づいていく。
涙を浮かべ俺を見上げる彼女に危うく手が出そうになった。
理性、理性だ……押さえろ俺……。

そう心で念じながら、俺はそっと彼女の頭を撫でた。

彼女の髪をなでていると、彼女がゆっくりと話し出した。
王子の婚約者候補に外れなかったの……。
もうどうすればいいのか、わからないの……。
私は、王妃になんてなりたくないのに……。
グレイと王宮で魔術師になりたいのに……。

俺は黙って彼女の背中を撫でた。

少し落ち着いたであろう彼女が泣きはらした目で、俺を見上げながらに呟いた。

「ねぇ……私はどうしたらいいのかな?」

俺と一緒に国外へ逃げるか?

しかし言葉よりも先に手が出ていた。
俺はとっさに彼女の頭を俺の胸へと引き寄せた。
甘い彼女の香りが……俺を支配していく。

「俺と……」

バァーーーンッ

突然彼女の部屋の扉が開いた。

俺たちは突然のことに驚き、扉のほうを向く。

そこには第一王子が笑顔のまま俺を睨み付けていた。

王子はこちらへと歩き、俺の腕の中にいた彼女を奪われた。

ゆっくり王子と視線をあわせる。

王子は何かを彼女に呟き、王子は目線で外に出ろと俺に言う。

俺は彼女の髪を優しく撫でた後、第一王子の後へ続き彼女の部屋を後にした。

外に出ると、王子はゆっくりと振り返りまた俺を笑顔のまま睨み付ける。

「ねぇ、もう彼女は僕の婚約者になるんだから彼女に会うのはやめてくれないかな?」

王子は微笑みを浮かべる。

「彼女はこの婚約を嫌がっているだろう……」

俺は思いきって彼に本当の事を伝える。

「だからなに?それでも僕の婚約者だ、君が彼女に触れる理由にはならないだろう」

「だが!!!……っっ」

「彼女の幸せを願うのなら……僕との婚約の方が良いって事は、わかっているんだろう?君は侯爵で僕はこの国の王子だ」

「だが……俺は彼女を幸せに……」

王子は俺の言葉に被せるように、話し続けた。

「君が彼女に会うのを辞めないと、僕は彼女に酷いことをしてしまうかもしれないなぁ……。僕以外をみる彼女も、誰かの物になる彼女もいらないからね」

王子はただただ微笑みを浮かべたまま、そうはっきりと言い切った。

「そうだな~君がこのまま会い続けるのなら、彼女にありもしない罪をきせ牢獄に閉じ込めるのもいいね……。僕にはそれができてしまう。それか……僕の物にならないのなら彼女を殺してしまおうか。暗殺者でも雇ってね」

俺は驚愕のあまり王子の肩を掴みかかり睨みつけると、笑顔に隠れた表情の奥に、黒く渦巻いている何かが映った。

この王子は本気だ。

彼女にもう会うなと、会えば彼女が不幸になる……。

俺は頭を垂れると、王子の肩を掴んでいた手を放し、その場から去っていった。

そうして俺は彼女に会いに行くのをやめたのだった。
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