聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ

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29閑話:彼女との出会い (リック視点)

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三人で話すときはエリザベスをリサと呼んでいた。
けれどこの気持ちを隠すために、愛称で呼ぶことをやめた。
今まで通りになんていられない。
精一杯の虚勢、彼女と僕の間に壁を作りたかったんだ。

世話役をおりるつもりはなかった。
彼女のことを一番に知っているのは僕だと自負出来る。
だが傍に居続ければ、この想いが消える事なんてないだろう。
だが王子の騎士になるには、この想いは邪魔にしかならない。
いつか二人は結ばれ夫婦になるのだから。

王子とエリザベスはお似合いだと、そう何度も言い聞かせる。
夜会で王子の隣に婚約者として入場してくる姿を目に焼き付けた。
真っ青なドレスに、王子の瞳と同じ色のネックレスをした彼女。
王子の腕に手を回し歩く姿に、心の奥にしまった箱にカギを掛けた。
いつかこの箱がなくなることを祈って……。

成長し社交界に出るようになっても、エリザベス様は少し変わっていった。
令嬢としての立場をわきまえるようになり、昔ほど無茶なことはしなくなった。
だが相変わらず目は離せない。

逃げ出す癖も同様、少しは我慢できるようになったが、それでもどうしても我慢できないことであれば、隙をみて逃げ出そうとする。
その度に彼女を捕まえ、手を握るんだ。
昔とは違い、小さく柔らかくなった彼女の手に熱を感じてしまう自分がいる。
隣へ並ぶ彼女を見ると、少女から女性へ変わり体に丸みが帯びた姿に胸が高鳴ってしまうんだ。

見つけた時に見せる、誤魔化す笑み。
怒るとプクっと頬を膨らませて怒る彼女の仕草。
反省して、シュンっと肩を落として素直な態度。
美味しい物を食べた時や嬉しいことがあると満面の笑みを見せる。
貴族令嬢としての強い瞳。
そんな彼女を見ていると、口にしないとそう決めた気持ちが、消えるどころか箱から溢れ大きくなっていくばかりだ。

けれどその度に、王子と彼女が手を取り並ぶ姿を思い出す。
皆から祝福され微笑みあう二人の姿。
彼女の隣は僕の物ではないのだと、何度も言い聞かせた。

時が流れる中、彼女を想う気持ちを忘れられないままだったが、次第にそれを受け入れる自分が居た。
忘れよう消そうとしても消えないのだから受け入れるしかないのだろう。
その頃から王子は、エリザベスがいるにもかかわらず女遊びをするようになった。
毎日毎日違う女を部屋に連れ込み、一夜を過ごす。
エリザベスは全く気にしていないようだが、僕は許せなかった。

どうして彼女がいるのに、別の令嬢に手を出すのか。
彼女を必要ないのであれば、僕に譲ってくれとそんなバカな事を考える。
一度王子に苦言を申し出たが、女遊びをやめようとはしなかった。
結婚すれば遊べなくなる、だから今遊んでいるのだと。
王子の言い分は理解できない。
だがその考え方は、エリザベスとよく似ている。
しかし僕には王子がそれを楽しんでいるようには見えなかった。

聖女を召喚する方法は見つけられないまま、僕たちは18歳になった。
僕は騎士学園を無事卒業し、近衛騎士団へ入ると彼女の護衛についた。
新参者が王子の婚約者の護衛なるなんて、と思うかもしれないが、彼女が僕を選んでくれたんだ。
その事実だけで、想いが溢れそうになる。
なのに彼女はもうすぐ妃となってしまう―――――。

刻一刻と婚礼の日が近づく中、あの日彼女が古い本を持って聖堂へと入って行った。
そこで彼女が目の前から消えたんだ。
本当に突然で、一瞬何が起こったのかわからなかった。
けれどそこに居たはずの彼女はどこにもおらず、どこを探しても見つからなかった。
王子にすぐに報告し、僕は罰を受ける覚悟をしていた。
けれど王子は僕を咎めなかったんだ。
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