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39.収穫祭
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酒場で働き始めて毎日が充実していた。
忙しくて里咲の記憶について考える余裕もない。
これから先この世界で生きていくのだから、里咲だろうがエリザベスだろうが、自分は自分なんだとそう思えてくる。
また一から始めればいい、私の過去も異世界の私も知っている人はリックだけなのだから。
新たな自分を見出すために、異世界の居酒屋でバイトしていた経験を生かして、新しいお酒を考えたの。
といってもハイボールなんだけどね。
ウィスキーに炭酸を混ぜて、はい完成。
簡単すぎて新しいとは言い難いけれど、この世界ではウイスキーやビールに何かを混ぜて飲むという習慣がない。
これがきっかけで、カクテルだったりそういったしゃれたものが出来たらいいなと思っている。
試しに作ってみた異世界のお酒だけれど、それが美味しいと評判になった。
あっという間に街中に広まり、連日超満員。
オリヴィアも創業以来こんなに繁盛したことはないと嬉しそうだった。
この世界へ来て初めて人の役に立てた、そんな気がする。
今日もお盆を片手に走り回ること数時間、夜も大分更けようやく一息ついた頃、客足がまばらになった店内で、常連客の会話に耳にとどいた。
「そういえば、聖女とクリストファー王子がこの間街へ出かけたんだ。二人だけでさ」
「えっ、なんだよ、それ」
「その日俺は非番だったんだが、急に呼び出されてさ、二人ともいい雰囲気だったんだよな。令嬢たちの最後の砦だった王子の結婚も、そろそろじゃねぇかな」
「まじか、それはめでたいな。もうすぐ収穫祭だし、そこで発表されるんじゃねぇか」
収穫祭……懐かしい響き。
エリザベスの頃、リックとクリスとで毎年参加したわ。
大きな馬車に乗って街を移動して行くの。
今年収穫した食材を使って城の料理人たちが最高の料理を振舞う。
貴族も大勢参加する、この街一番の大イベント。
それよりも杏奈がクリスを選んだのなら、彼らの話す通り収穫祭で発表するのかもしれないわ。
ふふっ、クリスの浮かれている姿が目に浮かぶわね。
念願だった聖女様と結婚なんて、そうそう叶うものじゃない。
幸せそうな二人の姿を想像していると、ハイボールと注文が入った。
はい~と返事を返し慌ててジョッキへ注ぐと、お盆に乗せてホールへ出ていく。
「そういやぁ~俺、聖女様を見たことないんだけど、どんな感じなんだ?」
「めちゃくちゃ綺麗だぜ。たおやかで儚げな可愛らしい美女だ」
「ほう~、そりゃ拝んでおきたいな」
ふふっ、そうでしょうそうでしょう、杏奈は魅力的な女性だわ。
自分に自信がないみたいだけれど、肌は綺麗だしスタイルもいい。
目がクリクリ可愛い顔出し、これぞ聖女様って感じなのよね。
だからきっとクリスも喜んでいるはずだわ。
「おまたせしました」
会話が途切れたタイミングに合わせ、ジョッキをテーブルへ置くと、酔っぱらいの常連客がニカッと笑いながら顔を上げる。
「まぁ~聖女様も可愛いが、リサちゃんには劣るな~」
「そりゃ当然だろう。リサちゃんはここの看板娘だからなぁ~。俺らの聖女様だ」
そう二人はガハハと笑うと、ジョッキを持ち上げ一気に飲み切った。
「はぁ~うめぇ。リサちゃんのいれる酒はいつも格別だね~。聖女様もいいが、リサちゃんが一番きれいだよ」
「ふふっ、ありがとう。だけどおだてても何もでないわよ。それにここで一番美しいのは、オリヴィアさんだと思うわ」
オリヴィアへ視線を向けウィンクすると、常連客は顔を引きつらせる。
「オリヴィアはなぁ……綺麗だが……。いやーあー、そういえばもうすぐ収穫祭だろう。リサちゃんも行くのかい?」
行きたいけれど……収穫祭には城の者が大勢やってくる。
もちろん貴族だって……バレるリスクが高くなるわ。
考え込んでいると、いつの間に傍に来ていたのか若い男性客が隣に佇んでいた。
「注文かしら?」
「いえ、あの、リサさん、よかったら俺と収穫祭に行きませんか!」
突然の誘いに目が点になる中、周りの客たちがざわめきだす。
「おいおい抜け駆けかよ。俺と行こう、上手い飯奢るからさ」
「ちょっと待て、こんなガキじゃなくて俺なんてどうよ?まだまだ現役だぜ~」
悪乗りしてくる彼らに向かって笑みを深めると、サッと逃げるように離れる。
「ごめんなさい、人ごみは苦手なのよ。大人しく家にいるわ」
軽くあしらい手を振ると、別のテーブルからハイボールとの声にカウンターへと戻ったのだった。
忙しくて里咲の記憶について考える余裕もない。
これから先この世界で生きていくのだから、里咲だろうがエリザベスだろうが、自分は自分なんだとそう思えてくる。
また一から始めればいい、私の過去も異世界の私も知っている人はリックだけなのだから。
新たな自分を見出すために、異世界の居酒屋でバイトしていた経験を生かして、新しいお酒を考えたの。
といってもハイボールなんだけどね。
ウィスキーに炭酸を混ぜて、はい完成。
簡単すぎて新しいとは言い難いけれど、この世界ではウイスキーやビールに何かを混ぜて飲むという習慣がない。
これがきっかけで、カクテルだったりそういったしゃれたものが出来たらいいなと思っている。
試しに作ってみた異世界のお酒だけれど、それが美味しいと評判になった。
あっという間に街中に広まり、連日超満員。
オリヴィアも創業以来こんなに繁盛したことはないと嬉しそうだった。
この世界へ来て初めて人の役に立てた、そんな気がする。
今日もお盆を片手に走り回ること数時間、夜も大分更けようやく一息ついた頃、客足がまばらになった店内で、常連客の会話に耳にとどいた。
「そういえば、聖女とクリストファー王子がこの間街へ出かけたんだ。二人だけでさ」
「えっ、なんだよ、それ」
「その日俺は非番だったんだが、急に呼び出されてさ、二人ともいい雰囲気だったんだよな。令嬢たちの最後の砦だった王子の結婚も、そろそろじゃねぇかな」
「まじか、それはめでたいな。もうすぐ収穫祭だし、そこで発表されるんじゃねぇか」
収穫祭……懐かしい響き。
エリザベスの頃、リックとクリスとで毎年参加したわ。
大きな馬車に乗って街を移動して行くの。
今年収穫した食材を使って城の料理人たちが最高の料理を振舞う。
貴族も大勢参加する、この街一番の大イベント。
それよりも杏奈がクリスを選んだのなら、彼らの話す通り収穫祭で発表するのかもしれないわ。
ふふっ、クリスの浮かれている姿が目に浮かぶわね。
念願だった聖女様と結婚なんて、そうそう叶うものじゃない。
幸せそうな二人の姿を想像していると、ハイボールと注文が入った。
はい~と返事を返し慌ててジョッキへ注ぐと、お盆に乗せてホールへ出ていく。
「そういやぁ~俺、聖女様を見たことないんだけど、どんな感じなんだ?」
「めちゃくちゃ綺麗だぜ。たおやかで儚げな可愛らしい美女だ」
「ほう~、そりゃ拝んでおきたいな」
ふふっ、そうでしょうそうでしょう、杏奈は魅力的な女性だわ。
自分に自信がないみたいだけれど、肌は綺麗だしスタイルもいい。
目がクリクリ可愛い顔出し、これぞ聖女様って感じなのよね。
だからきっとクリスも喜んでいるはずだわ。
「おまたせしました」
会話が途切れたタイミングに合わせ、ジョッキをテーブルへ置くと、酔っぱらいの常連客がニカッと笑いながら顔を上げる。
「まぁ~聖女様も可愛いが、リサちゃんには劣るな~」
「そりゃ当然だろう。リサちゃんはここの看板娘だからなぁ~。俺らの聖女様だ」
そう二人はガハハと笑うと、ジョッキを持ち上げ一気に飲み切った。
「はぁ~うめぇ。リサちゃんのいれる酒はいつも格別だね~。聖女様もいいが、リサちゃんが一番きれいだよ」
「ふふっ、ありがとう。だけどおだてても何もでないわよ。それにここで一番美しいのは、オリヴィアさんだと思うわ」
オリヴィアへ視線を向けウィンクすると、常連客は顔を引きつらせる。
「オリヴィアはなぁ……綺麗だが……。いやーあー、そういえばもうすぐ収穫祭だろう。リサちゃんも行くのかい?」
行きたいけれど……収穫祭には城の者が大勢やってくる。
もちろん貴族だって……バレるリスクが高くなるわ。
考え込んでいると、いつの間に傍に来ていたのか若い男性客が隣に佇んでいた。
「注文かしら?」
「いえ、あの、リサさん、よかったら俺と収穫祭に行きませんか!」
突然の誘いに目が点になる中、周りの客たちがざわめきだす。
「おいおい抜け駆けかよ。俺と行こう、上手い飯奢るからさ」
「ちょっと待て、こんなガキじゃなくて俺なんてどうよ?まだまだ現役だぜ~」
悪乗りしてくる彼らに向かって笑みを深めると、サッと逃げるように離れる。
「ごめんなさい、人ごみは苦手なのよ。大人しく家にいるわ」
軽くあしらい手を振ると、別のテーブルからハイボールとの声にカウンターへと戻ったのだった。
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