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49.王子の心情(クリス視点)
お膳立てまでして、聖女との距離を置いていたあの日。
ネイサンが殺気立った様子で俺の前に現れた。
「クリストファー殿、僕をだしにして聖女様の気持ちを否定しようとしたのですか?」
バンッと机に券を叩きつけると、鬼の形相で睨みつける。
「いや、そういうわけじゃ……」
「最初から可笑しいとは思っておりましたが、まさかこんな事を考えているとは……聖女様のお気持ちにお気づきになったでしょう?それでこんなひどいことを」
「まぁ……だがこうでもしないと彼女に悪いだろう。俺を想っていても答えられないんだから」
「ならそうはっきりとおっしゃるべきです。こんな遠回しに……最低です。彼女は泣いておられましたよ」
ピシャリと言い捨てられた言葉が胸に響く。
「だが本人からはっきりした言葉も聞いていない現状、なんと言える?俺の事が好きなのか?と聞けばいいのか?」
「そうですね、こんな事をするぐらいなら、そうされた方が数倍ましです。これはお返ししておきます」
ネイサンはクシャクシャになった券を投げつけ言い捨てると、部屋を出て行った。
バタンッと勢いよく閉まった扉を眺めながら、俺は深いため息を吐きだす。
面倒なことになっちまったなぁ。
こんなことになるなら、聖女から早々に離れておくべきだった。
ネイサンに言われた通り、聖女と向き合って話をした。
悲しむ彼女の姿に罪悪感が浮かぶが、どうすることも出来ない。
距離を置こうとしていた矢先、彼女から一緒に出掛けようと誘われた。
最初は断ろうと思ったのだが……恋情とは違う強い眼差し感じ彼女の提案を受け入れたんだ。
そこでエリザベスを見つけた。
だがリックはすでにリサを見つけていた。
その事実が腹立たしくて彼女を強引に連れ帰り想いを伝えた。
真っ赤に頬を染め戸惑う彼女を見て可愛いと思った。
けれど彼女の瞳には戸惑いだけで、恋情は浮かんでいなかったんだ。
恥ずかしさと戸惑いで俺から逃げる彼女。
だけどレベッカの一言でようやく俺を見てくれるようになった。
最初は緊張していた彼女だったが、話していると昔のように戻って行く。
思い出話や、向こうの世界での話、この世界へ戻ってからの話。
リックと過ごした日々を語る彼女は生き生きと輝いていた。
その姿を見てふと思い出した。
助けてほしいときにいつも呼ぶ名はリチャード。
俺が危険なことに彼女を巻き込んでいたというのもあるが、リサはいつもあいつの言葉だけは聞いていた。
それは信頼以上の気持ちがあるのかもしれない。
隣で話し続けるリサを見つめながら、もしかしたらとの想いが込み上げる。
彼女は鈍感だ。
好意を向けられていても、それが恋情なのか友情なのか判断できない。
俺はリサに幸せになってもらいたいと思っている。
もちろん幸せに出来る自信はある。
だがそれはリサも同じ気持ちを持っているという前提だ。
返事は待つと伝えたが、エリザベスが戻ったとの事実が城中に知れ渡ると、勝手に結婚の話が進んで行く。
もうすぐ収穫祭。
国民が盛り上がるその祭に、結婚を発表しようとしている。
あの鈍感に自分の気持ちを気づかせるにはちょうどいいと思ったんだ。
もしかしたら考えすぎているのかもしれない。
彼女が誰の手を取るのか見極めるには、あいつも俺と同じ土俵に立つべきだ。
収穫祭が迫ったあの日。
俺はリックを部屋へ呼び出した。
「リック、悪いな」
俺はリックを部屋へ招き入れると、扉を閉める。
「俺はリサに気持ちを伝えた。知っているだろうが、収穫祭の日に結婚する」
「おめでとうございます」
リックは深々と頭を下げると、胸に手を置き俺を真っすぐに見つめた。
「……喜んでくれるのか?」
「もちろんです。お二人はお似合いですから」
いつもと同じ表情を見せるリック。
しかし月が雲に隠れ暗闇が訪れると、表情がはっきり見えなくなった。
口調もいつも通りだが……リックはこうやって言いたい事を我慢し続けてきたのだろう。
「俺に幸せに出来ると思うか?あれだけ遊んでいたんだ、今更あいつ一人に絞れるか不安なんだ。手に入れたら飽きるかもしれない」
「なにをおっしゃっているのですか?……待っていたのでしょう」
「あぁそうだ、だが実際に戻るとよくわからなくなった」
挑発するようにそう言い放つと、青い瞳に怒りの炎が浮かび、場が一瞬に殺気立った。
「あなたが彼女を連れ戻したのでしょう、何が言いたいのですか」
静かに放たれた言葉は、凍り付くように冷たい。
俺は一瞬怯むが、すぐに持ち直すと、おもむろに口を開いた。
「お前は俺の騎士だ。だがその前に友人だと思っている。だから聞いているんだ。俺があいつを幸せに出来ると思うか?」
「……意味がわかりません。これ以上話が無いようであれば失礼させて頂きます」
リックは話は終わりだと礼を見せると、そのまま部屋を出て行った。
これでリックがリサに想いを伝えれば同じ土俵にたつ。
その先の答えはリサにしかわからない。
だがもし想いを伝えなければ、このまま彼女と結婚し必ず幸せにする。
そう決意を込めて俺は雲間に映った少し欠けた月をそっと見上げた。
ネイサンが殺気立った様子で俺の前に現れた。
「クリストファー殿、僕をだしにして聖女様の気持ちを否定しようとしたのですか?」
バンッと机に券を叩きつけると、鬼の形相で睨みつける。
「いや、そういうわけじゃ……」
「最初から可笑しいとは思っておりましたが、まさかこんな事を考えているとは……聖女様のお気持ちにお気づきになったでしょう?それでこんなひどいことを」
「まぁ……だがこうでもしないと彼女に悪いだろう。俺を想っていても答えられないんだから」
「ならそうはっきりとおっしゃるべきです。こんな遠回しに……最低です。彼女は泣いておられましたよ」
ピシャリと言い捨てられた言葉が胸に響く。
「だが本人からはっきりした言葉も聞いていない現状、なんと言える?俺の事が好きなのか?と聞けばいいのか?」
「そうですね、こんな事をするぐらいなら、そうされた方が数倍ましです。これはお返ししておきます」
ネイサンはクシャクシャになった券を投げつけ言い捨てると、部屋を出て行った。
バタンッと勢いよく閉まった扉を眺めながら、俺は深いため息を吐きだす。
面倒なことになっちまったなぁ。
こんなことになるなら、聖女から早々に離れておくべきだった。
ネイサンに言われた通り、聖女と向き合って話をした。
悲しむ彼女の姿に罪悪感が浮かぶが、どうすることも出来ない。
距離を置こうとしていた矢先、彼女から一緒に出掛けようと誘われた。
最初は断ろうと思ったのだが……恋情とは違う強い眼差し感じ彼女の提案を受け入れたんだ。
そこでエリザベスを見つけた。
だがリックはすでにリサを見つけていた。
その事実が腹立たしくて彼女を強引に連れ帰り想いを伝えた。
真っ赤に頬を染め戸惑う彼女を見て可愛いと思った。
けれど彼女の瞳には戸惑いだけで、恋情は浮かんでいなかったんだ。
恥ずかしさと戸惑いで俺から逃げる彼女。
だけどレベッカの一言でようやく俺を見てくれるようになった。
最初は緊張していた彼女だったが、話していると昔のように戻って行く。
思い出話や、向こうの世界での話、この世界へ戻ってからの話。
リックと過ごした日々を語る彼女は生き生きと輝いていた。
その姿を見てふと思い出した。
助けてほしいときにいつも呼ぶ名はリチャード。
俺が危険なことに彼女を巻き込んでいたというのもあるが、リサはいつもあいつの言葉だけは聞いていた。
それは信頼以上の気持ちがあるのかもしれない。
隣で話し続けるリサを見つめながら、もしかしたらとの想いが込み上げる。
彼女は鈍感だ。
好意を向けられていても、それが恋情なのか友情なのか判断できない。
俺はリサに幸せになってもらいたいと思っている。
もちろん幸せに出来る自信はある。
だがそれはリサも同じ気持ちを持っているという前提だ。
返事は待つと伝えたが、エリザベスが戻ったとの事実が城中に知れ渡ると、勝手に結婚の話が進んで行く。
もうすぐ収穫祭。
国民が盛り上がるその祭に、結婚を発表しようとしている。
あの鈍感に自分の気持ちを気づかせるにはちょうどいいと思ったんだ。
もしかしたら考えすぎているのかもしれない。
彼女が誰の手を取るのか見極めるには、あいつも俺と同じ土俵に立つべきだ。
収穫祭が迫ったあの日。
俺はリックを部屋へ呼び出した。
「リック、悪いな」
俺はリックを部屋へ招き入れると、扉を閉める。
「俺はリサに気持ちを伝えた。知っているだろうが、収穫祭の日に結婚する」
「おめでとうございます」
リックは深々と頭を下げると、胸に手を置き俺を真っすぐに見つめた。
「……喜んでくれるのか?」
「もちろんです。お二人はお似合いですから」
いつもと同じ表情を見せるリック。
しかし月が雲に隠れ暗闇が訪れると、表情がはっきり見えなくなった。
口調もいつも通りだが……リックはこうやって言いたい事を我慢し続けてきたのだろう。
「俺に幸せに出来ると思うか?あれだけ遊んでいたんだ、今更あいつ一人に絞れるか不安なんだ。手に入れたら飽きるかもしれない」
「なにをおっしゃっているのですか?……待っていたのでしょう」
「あぁそうだ、だが実際に戻るとよくわからなくなった」
挑発するようにそう言い放つと、青い瞳に怒りの炎が浮かび、場が一瞬に殺気立った。
「あなたが彼女を連れ戻したのでしょう、何が言いたいのですか」
静かに放たれた言葉は、凍り付くように冷たい。
俺は一瞬怯むが、すぐに持ち直すと、おもむろに口を開いた。
「お前は俺の騎士だ。だがその前に友人だと思っている。だから聞いているんだ。俺があいつを幸せに出来ると思うか?」
「……意味がわかりません。これ以上話が無いようであれば失礼させて頂きます」
リックは話は終わりだと礼を見せると、そのまま部屋を出て行った。
これでリックがリサに想いを伝えれば同じ土俵にたつ。
その先の答えはリサにしかわからない。
だがもし想いを伝えなければ、このまま彼女と結婚し必ず幸せにする。
そう決意を込めて俺は雲間に映った少し欠けた月をそっと見上げた。
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