ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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第一章

閑話:大好きなお姉様2 (シンシア視点)

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翌日泣きはらした目は赤く腫れ、人前に出れる姿でない。
私は部屋に引きこもり布団の中で丸まっていると、お姉様の乾いた笑みが何度も頭を過った。
お姉様はお母様やお父様の前でも同じを笑みを見せる。
なら誰がお姉様の本当の気持ちを知れるのかな?
誰の前でお姉様は自然な笑みを見せられるのかな?
どうして私じゃないの……?
考えれば考えるほど、暗い気持ちに落ちていく。
そして自分の中で何かが崩れていく音が耳に響いた。

数日後、私はまた友人の元へ向かうと、問いかけてみた。

「ねぇあなたはお姉様と喧嘩したことある?」

「うん?唐突にどうしたのよ、シンシア。そりゃぁあるわよ、お姉様と部屋で遊んでいて絨毯を汚して怒られたり、お姉様の好きなお菓子を黙って食べちゃったときは怖かったわ。後はそうねぇ、つい最近だとお姉様の大切なネックレスが欲しくて取り合いになったかなぁ」

彼女の話す表情を見て、姉への愛情を感じる。
私はお姉様と喧嘩なんてしたことない、もちろん怒られた事もない。
羨ましい、私もお姉様と喧嘩をしたい、ちゃんと言い合いたいのに。
なのに……お姉様は笑みを浮かべるだけ。

「私のお姉様は……外でも家でも同じ顔。もちろん怒った事なんてない。言い合いもしたことない。なんでだろう……」

「あら、良い事じゃない?揉めるなんて面倒よ。それよりも噂通りのお姉様なのね。シャーロット様は令嬢の間でお手本とされているわ。家でも完璧な令嬢なんてさすがじゃない」

面倒……お姉様は面倒だと思っているの?
だからむかってこないの?

「完璧な令嬢……」

「えぇ、羨ましいわ~。私のお姉様も見習ってほしい」

憧れのような眼差しを浮かべる彼女を横目に、私はじっと考え込んでいた。
そう、完璧な令嬢で自慢のお姉様。
両親の前でも私の前でもどこでだって……でもそんな事ありえるのかな。
私だって外へ出ればニコニコ可愛い令嬢を演じてきた。
人と関わるようになって、他の令嬢たちの態度を見て、それが正解なのだと知った。

でも家族の前では、嫌な事があれば不貞腐れるし、愚痴だって不満だって……。
お母様やお父様を困らせたりだってする。
欲しい服を買ってもらえなければ泣いてごねるし、勉強が嫌で家を飛び出したこともある。
だけどお姉様は何でも受け入れて、そして何も言わない。
皆がイメージする令嬢そのまま……感情を感じられないあの笑み……。
黙り込んだ私の様子に、彼女は心配そうな表情を見せた。

「うん、どうしたのシンシア?」

「私……お姉様の本当の笑顔を見たことない。なんで見せてくれないんだろう。どうして何も話してくれないんだろう。私はこんなにもお姉様を好きなのに……」

肩を落としボソボソとそう呟くと、友人は焦った様子で私の背中をさすった。

「ちょっと落ち着きなさいよ。とりあえず今日はここまでにしましょう。また声をかけるわ」

彼女の言葉に頷くが、私の心の中は深い深い闇に染まっていった。

家に帰ってすぐに、私はお姉様の元へ向かう。
そしてお姉様の頬を思いっきりにひっぱたいてみた。
パシンッと叩いた手がジンジンと痛むが、きっとお姉様はもっと痛いはず。
これならさすがに怒るかな、泣いてくれるかな。
お姉様の本当の姿を見られるかな?

だけどお姉様へ視線を向けると、そこにあったのはいつも笑み。
赤くなった頬を押さえながらも、引きつるような笑みを浮かべて続けていた。
その姿にまた目頭が熱くなり、涙が零れ落ちそうになる。

なんで笑っているの?
こんな理不尽な事をされたら普通怒るでしょう?
なんで、なんで、なんで……そんな笑みはいらない。

涙をグッと堪えお姉様の瞳を真っすぐに見つめてみると、その瞳の奥はまるで人形のように、感情を感じられない。
怒りも悲しみも、そう何もないの。
その瞳を見てようやく気が付いた、お姉様は私を面倒だと思っているのだと。
当たり障りのない対応で、他人行儀。
素直な感情を見せるに値しない、そんな存在なんだと。

その瞳が怖くて、私はそのまま逃げるように部屋を飛び出した。
後ろを振り向いてみても、追ってくる気配はない。
改めて思い知らされた事実に、悲しくて悲しくて……私は一晩中泣いていた。

それから私はお姉様と今まで通り話すことなんて出来なかった。
どうやって話していたのか、わからない。
好きだけど、嫌い。
嫌いだけど好き。
そんな矛盾した思いが胸にこみ上げる。
だからその感情をぶつける様に、お姉様の好きな物大切にしている物を奪うことにした。
私を大切にしてくれないのに、他の何かを大切にするなんて許せないもの。
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