ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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第一章

閑話:王子の悩み2 (マーティン視点)

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カイザックに声を掛けられキョトンと首を傾げる彼女の姿に、胸が小さく高鳴った。
あんな表情もするのか、いいなぁ。
傍に居く事など忘れ、彼女の表情をじっと眺めていると、カイザックがチラチラとこちらを窺うように視線を向ける。
何を話しているのか、楽しそうに笑う彼女の姿を見つめる中、カイザックの視線の先を追うように、彼女が顔を上げ、こちらへ顔を向けた。
その姿に胸が大きく高鳴ると、俺は反射的に身を隠す。

あっ、……ッッ、やべっ、って、俺……なんで隠れてんだッッ。
俺だって彼女と話をしてみたい、話して……あの笑みを間近で……ッッ。
自分に笑いかける笑みを想像すると、体中が熱くなり、バクバクと心臓の音が頭に響く。
羨ましい、悔しい、恥ずかしい、欲しい、そんな思いが入り混じる中、いつの間に戻ってきたのか、ふとカイザックの声が頭上から響く。

「はぁ……なにやってんですか。わざわざ話す機会を作りに行ってみれば、隠れるなんて想定外ですよ。てかタイミングを見てたんじゃないんですかー?おーぃヘタレ王子様ー」

「くそっ、うるせぇ……」

小馬鹿にしたようなカイザックの態度に苛立つが、言い返す言葉がない。
今のは間違いなく話をするチャンスだった。
だけど……いや、無理だろう……ッッ。
俺はその場で小さく蹲ると、自分の情けなさに頭を抱えていた。

そんな俺の行動は、なぜか両親にまで知られていた。
きっとカイザックが報告したのだろう。
あいつ本当に余計なことしかしねぇ……ッッ。
今更怒りを感じても、知られてしまった以上どうしようもない。
おせっかいの母は、俺とシャーロットをくっつけようと画策しているのか……何かと彼女を王宮へと呼ぶようになった。

いつも城の研究室へ足を運んでいたが、窓から庭を見渡せば彼女と母が話している姿が目に映る。
何度もその場に呼ばれているのだが、どうしても行くことが出来ない。
適当に理由をつけては逃げて……。
本当なんで……俺はこんな意気地なしなんだろうな……。
彼女に会いたい、いや、会いたくない。
そんな矛盾した気持ちが俺の中でストップをかける。
それかも何度も何度も彼女と話す機会はあったはずなのが……俺はずっと逃げ続けていた。

そして12歳になったある日、とある夜会に俺は参加した。
功績を上げた貴族の祝いの席で、そこに彼女の姿があったんだ。
いつも見ている姿とは違う、めかしこんだ彼女の姿。
何時間でも眺められる、そんなバカな事を考えていた。
母と話す彼女の姿をじっと眺めていると、突然俺の名を呼ばれたんだ。

いつの間に傍に来たのか……執事が俺の背中をそっと押すが、思うように足が動かない。
母の傍には彼女がいる、いや、無理だろう。
いやいやいやだが、ここで逃げるのは……うぅっ、どうする……ッッ。
硬直し固まっていると、どこからともなくカイザックが現れ、気合いだと背中を思いっきりに殴られた。
痛みにカイザックを睨みつけると、そのまま母の元へ突き飛ばされる。
すると心地よい甘い匂いが鼻孔を掠め、そっと顔を上げると、初めて彼女と目が合ったんだ。

透き通るような真っ青な瞳に、俺の姿が映り込む。
いつも遠くから見ていたその笑顔に、華奢な姿に、頭が真っ白になっていった。
何か話さないと、そう思っても言葉が出てこない。
バクバクと跳ねる心臓の音に、手に汗をかいていると、彼女の透き通るような声が耳にとどく。

「初めまして、公爵家の長女、シャーロットと申しますわ」

「あッ……ッッ、よっ、宜しく……たのむ……。俺は……その……マーティンだ」

何とか無理矢理ひねり出した言葉が……自分の名前を口にするだけ。
恥ずかしさに視線を逸らせると、彼女はそそくさと去って行ってしまったんだ。
あぁ……なんでだ、なんでなんだ、はぁ……何やってんだろうなぁ俺は……。

去って行く彼女を追いかけることも出来ず、俺は肩を落とし王族の席へ戻ると、母からお灸を据えられた。
きっと彼女にとって、俺の第一印象はいいものではなかっただろう。
いや、良いはずがない、あれは誰が見ても失礼な態度だった。
考えれば考えるほど心に靄がかかっていき、何度ため息をついただろう。

だが夜会が終わって数日たった頃、母からある話が飛び込んできた。
何でも夜会で俺の事を彼女が気に入ったのだとか。
ありえない言葉に唖然とする。
正直、どこをどう気に入ったのかさっぱりわからない。
けれど嫌われていないその事実に喜びをかみしめていると、あれよあれよと俺と彼女の婚約が決定していた。
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