ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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第一章

閑話:王子の悩み3 (マーティン視点)

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彼女との婚約、これほど嬉しい事はない。
婚約という風習を古臭いとバカにしていたが、今改めよう。
あんな素っ気ない態度を見せてしまった今、あのままだと自分から彼女と恋人になってもらうなんて不可能だった。
それにしても俺のことを気に入ってくれただって!?
信じられない、あぁ素晴らしい、婚約万歳!

婚約すれば彼女に変な虫がつくこともないし、将来は俺の妻。
なんて理想的、夢のようじゃないか!
後は彼女にも……ちゃんと俺を好きになってもらえれば、完璧だ。

飛び上がるほどの嬉しさをかみしめる中、やってきた、初の顔合わせ。
遠くから水色のドレスを着た彼女がやってくる。
それだけで心臓が破裂するほどにバクバクしていた。
いつもの距離ではない、手を伸ばせば触れられるほどに近い。
彼女から何とも表現しがたい甘い良い匂いが鼻孔を擽ると、頬に熱が集まる。
長い髪がフワッと跳ね、彼女が俺の前に座ると、ニッコリ笑いかけた。
その姿に俺は感情が高ぶり、本能のままに立ち上がった。

君は知らないだろが、俺は君をずっと見てた、一目ぼれだったんだ。
だから君にも俺を好きになってほしい、これからゆっくり仲を深めていこう。
きっと君は俺のことを何もしらないだろう、それはわかっている。
気に入ってくれたっていうのも正直どこかわからない。
だが知っていけば……政略な婚約ではなく、お互い同意した恋愛結婚を出来ると……ッッ!
頭の中にグルグル様々な想いが渦巻く中、口から出た言葉はひどいものだった。

「俺はこのまま、結婚なんてしないからな!」

なんでこんなこと言ったのか、自分自身よくわからない。
無意識だった、違うんだ、こんなことを言いたいんじゃない!
早く否定しなければ、そう思えば思うほどに言葉が上手く出てこない。
シーンと静まり返る中、彼女は困った笑みを浮かべると、そっと視線を逸らせた。

切なそうな表情も素敵だ、って違う!彼女が悲しんでいるだろう。
違うんだ、ちゃんと伝えないと。
こんな関係のまま結婚なんてしたくない、もっと話して仲を深めてお互いが好きになってから結婚したい、そう言いなおすんだ!!!

必死に口を開け声を出そうとするが、聞こえるのは乾いた息使いだけ。
そんな俺の姿に、執事が慌てた様子で駆け寄ってくる。
穏やかな空気ではないと感じたのだろう、執事は急いで彼女を立ち上がらせると、そのまま出口へと誘っていった。
あぁ、待ってくれ!
必死に彼女の背に手を伸ばすが、声は出ていない。
そのまま離れていく背を眺めるが、足はあの時と同じ、棒になったかのように動かなかった。

そして二度目の顔をあわせ、今日こそは……ッッ。
そう気合を入れて、テラスへとやってきた。
そこにはまだ彼女の姿はなく、俺は深く息を吸い込むと、今日話す事を頭の中でシミュレーションしていた。
大丈夫だ、まずこの前のことを謝罪して、それからこれからの事をだな……。

気合を入れ彼女を待っていたが、実際にやってくると、頭の中が真っ白になって、目をあわせることも、話をすることも出来ない。
そんな俺の様子に彼女はニッコリと笑みを浮かべると、徐に空を見上げた。

「マーティン様、今日はとても良い天気ですわね」

彼女が俺に話しかけてる、やばい最高に幸せだ。
笑った顔をこんな間近で見れるなんて……ッッっていやいや違う違う。
俺がこんな態度だから、彼女に気を遣わせてしまっているんだ。
何か、何か返さないと……ッッ
こんな日は稽古がしたくなる、いや違う、いい天気だと気持ちがいい、いや、何がいいんだ!?
いくつもの言葉が脳裏に浮かび混乱していく。
そうやって考えて考え抜いてでた言葉がこれだった。

「あぁ……だがそれがどうした」

「いえ、ごめんなさい。特に意味はありませんわ……」

おいおい、俺はなんでこんな言葉を……こんなの誰が聞いても気を悪く……ッッ。
自分の発した言葉に狼狽する中、彼女は気まずげに目を伏せると、謝って見せる。
待ってくれ、違うんだ、えーと、その……あああぁぁぁぁ!
何とも言えぬ沈黙が流れると、もう何も考えられない。

「こんにちはー、ご婚約おめでとうございます」

どこからか、気まずい空気を吹き飛ばすその声に、俺は慌てて振り返る。
そこには友人のカイザックの姿があった。

「カイザック様、ごきげんよう。ありがとうございますわ」

彼女は先ほどの困った笑みとは違い、ニッコリと笑ってみせる。
その姿に見惚れる中、二人が仲良く話し始めるが、上手く会話に入ることが出来ない。
カイザックが気を利かせて話を振ってくれるのだが……口から出るのは素っ気ない返事だけ。
コントロールできない己の感情に戸惑う中、時間があっという間に過ぎ、彼女の迎えが来ると、良いところを一つも見せられぬまま帰っていった。
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