ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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第三章

学園生活

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あれから数週間、無事に怪我が治り、目立った痣も残らなかった。
元気になるや否や、ケルにこっぴどく説教されたが、夢のように彼が離れていく事はない。
そのことにほっと胸を撫で下ろす。
もちろん王子からもきついお言葉を頂いたわ。
でもその言葉には優しさがあって、友として私を心配してくれているのだとわかる。
そしてすぐにケイトお姉様の元を訪れて、何度も何度も謝った。

お姉様は少し疲れた様子だったけれど、私の謝罪を受け入れてくれたわ。
あの時は自分のことでいっぱいいっぱいで……昔の私なら参加することすらしなかったかもしれない。
王妃にならない、レールから外れる、その気持ちが悪い意味で出てしまった。
反省の意を込め、私は剣を握ることを止めると、学園が始まるまでの間、大人しく過ごしていた。

そしてあっという間に時は過ぎ、入学式当日。
学園指定の制服を身に着け、真っ白な校舎へやってくると、私は青く晴れ渡った空を見上げ、大きく息を吸い込む。
校舎の中へ入り指定された教室へ向かうと、正直顔見知りばかりで面白味はあまりない。
夜会やお茶会そういった場で何度も顔を合わせている令嬢や令息たちばかり。
私は笑みを浮かべながらに指定された席へ着くと、カバンを傍へと置いた。

暫くすると、マーティン王子が教室へとやってくる。
その姿に、教室内がざわつくと、令嬢たちの黄色い声援が響いた。
隣には彼との逢瀬で何度か顔をあわせたカイザック。
いつも見ていた服装とは違い、学園に定められた制服姿の二人。
紺のブレザー、内側にはベスト、胸元には学園の紋章が刺繍されている。
どことなく大人っぽく見えるその姿に、新鮮さを感じた。

他の令息達も同じ姿なのだが、なんと言えばいいのか、王子特有のオーラがある。
カイザックも王子の隣にずっと居るからだろうか、カリスマ性が窺える。
チラチラと視線を向ける令嬢たちに優しげな笑みを浮かべ手を振るカイザックとは正反対に、王子は興味を示さない。

そんな中、ふと視線が絡むと、私はニッコリと笑みを浮かべ王子へ顔を向ける。
すると彼は慌てた様子で目を逸らせた。
そのまま速足で私の隣の席へやってくると、無言のままに腰かける。
ムスッとしているように見えるが、これは照れている表情。
ここ数年、彼と長年の付き合いがあったからこそ、この違いがわかるようになった。
だけどこれからこうやって学園で毎日顔を見るのは、何だか慣れないわね。
私は王子へ軽く挨拶をすると、いつもと同じように笑みを深め、穏やかな気持ちで前へ向き直った。

私達が並ぶ姿に生徒たちは、仲の良さを絶賛する声が耳にとどく。
ただ座っているだけなのだが、何とも不思議だわ。
まぁ令嬢や令息達が認めてくれているのなら、成功なのかしらね。

学園生活が始まり、彼と毎日顔を会わせる中で、新たな事実に気が付いた。
彼は私以外に対しての対応は、驚くほどにスムーズなのだ。
夜会では公務的なところがあるから、そういう物なのだと解釈していたけれど。
普段何気ない話をするときも、貴族に対しても誠実で真面目な姿勢。
視線だってそらすこともはない、それに笑ったりもするのよね。

笑ったり怒ったり、喜怒哀楽が自然で私の前とは全然違う顔を見せる。
仲良くなったと私自身思っていたけれど、そんなことはなかったのかもしれない。
廊下で楽しそうに令息達と話す彼を見つめる中、私は心の中で深く息を吐き出すと、静かに教室へと戻って行った。

入学して数週間が過ぎ落ち着き始めた頃、令嬢たちと廊下を歩いていると、小さな段差につまずいた。
体制を立て直そうと脚へ力を入れた瞬間、腰に腕が巻き付けられる。
そのまま力強い腕に支えられると、令嬢たちからキャーとの歓声が響いた。

「おぃ、ちゃんと前を見て歩け。いや……ッッお前は結構どんくさいところがあるからな。気をつけろ!」

その声に顔を上げると、視線を逸らせ何とも微妙な表情を浮かべている。
いつの間に傍へ来ていたのか……全く気が付かなかった。

「あっ、ありがとうございます。はい、気を付けますわ」

そうやんわりと笑みを浮かべると、彼は慌てた様子で体を離しそのまま走り去っていった。

そんな彼の背を眺めていると、令嬢の一人がうっとりとした表情を見せる。

「あぁ、本当に素敵な王子様ですわね。私も早く恋人を作りたいですわ」

「本当ですわよね、仲が宜しいようで羨ましいです~」

そんな彼女たちの反応に、疑問符が浮かび上がる。
マーティンのあの反応、目を合わさないその態度。
あれを見てどうしてそう思うのかしら?
だって今のが他の令嬢だったら、きっと彼は目を見て笑みを浮かべ、優しい言葉をかけているだろう。
それはここ数日マーティンを見ていてわかっている。
何とも不可思議な令嬢の反応に、私は苦笑いを浮かべると、複雑な思いで相槌を打った。
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