ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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第三章

閑話:ケルヴィンの策略7 (ケルヴィン視点)

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今日も学園へ向かうお嬢様を見送ると、僕は出かける準備を始めた。
馬を借り飛び乗ると、実家の方角へと走らせる。
久しぶりにきた自分の屋敷を通り過ぎ、隣にあるキャサリンの屋敷で止まると、馬を預け中へと入って行った。

長年過ごした我が家を横目に、僕は顔見知りの執事へ声を掛けると、キャサリンへ繋いでもらう。
応接室へと案内され、大人しく待っていると、扉の向こうから声が響いた。

「待って待って、なんであいつがここにくるのよ!」

「お嬢様、声を落としてください。ケルヴィン様がお待ちしております」

「嫌なの、会いたくないの!あいつがここへ来るなんて碌な用事じゃないし、私はいないって言ってくれない?」

「いえ、それは……もうしわけございませんが……」

そんな執事に困った声に、僕はおもむろに立ち上がると、勢いよく扉を開けた。

「ケイト、久しぶりだな。誰がいないって?」

「ひぃっ、あぁもう、なんのよ~!チャーリーのことは謝ったでしょう!何の用があるのよ」

キャサリンは諦めた様子でガックリと肩を落とすと、執事は丁寧に僕へ頭を下げ、その場を立ち去っていった。

「……お前、僕との約束を覚えていないのか?」

スッと目を細めキャサリンを睨みつけると、彼女はキョトンとした様子で顔を上げた。

「約束……あー、えーと、いや、覚えてるわ。そのーだからー、えーと」

どうにも覚えていないだろうその反応に、僕は深く息を吐き出すと、舌打ちをする。
こいつはいつもそうだ。
聞いているようで聞いていなかったり、そういうやつだと知っていたが……。
あぁイライラする……。
僕は強引にキャサリンの腕を引っ張ると、部屋に連れ込みカギをかける。

「はぁ……バカだとは思っていたが、あの時僕の話したことを聞いてなかったの?」

「いやいやいやいや、待って待って、いつの話だっけ?」

誤魔化す様に笑みを浮かべるキャサリンの姿に、眉間に皺がよる。
全く覚えていないのかこいつは……はぁ……。
僕はキャサリンの耳を掴むと、聞けと言わんばかりに強くひっぱった。

「よく聞いて。お嬢様のことは許す、その代わりに交換条件をだしただろう。記憶をひねり出して思い出せ」

「へぇっ、あー、えーと、あああああ、思い出した!学園の話だっけ?」

「それだ、その様子じゃ全く進んでいなさそうだな」

キャサリンの祖父はお嬢様の通っている学園の理事長をしている。
そのコネを使ってなんとか学園に入り込みたいと思い頼んでみたのだが……。
こいつに任せた僕がバカだった。

今もお嬢様があの王子が二人の世界を楽しんでいると思うと、居てもたってもいられない。
牽制のつもりではないが、少しでも僕の事を思い出してもらうよう、料理を勉強しお弁当を用意しているが……あれだけじゃ全く満たされない。

「いやいやいや、あの後ちゃんと聞いたわ。でも今は人手が足りてるみたいで……。それにあなた教員になる資格を持っていないでしょう?教師としては無理だし、清掃員とか、庭師とか?限られた業務じゃ厳しいわよ。言っちゃぁなんだけど、チャーリーが卒業したらやめるつもりなんでしょう。そんな人強引に入れるなんて無理よ」

キャサリンの言う事も一理ある。
自分勝手な願いだ、けれどどうにかして学園へ入り込みたい。
お嬢様の学生生活をこの目で見れないなんて、くそっ。
僕が6歳若ければ、いやそれだと近づけていないか……。

「それならば、今働いている者を二年ほど休めるよう傷病者にすればいいのか……」

そうぼそっと呟くと、キャサリンは慌てた様子で首を横へ振った。

「ダッ、ダメよ!」

「冗談ですよ」

ニコッと営業スマイルを浮かべてみると、キャサリンは怯えた様子で頬を引きつらせる。

「あんたが言うと、冗談に聞こえないわよ。それよりもそんなにチャーリーの傍に居たいのなら、校舎は違うけれど、隣の騎士の訓練場に入るのが一番いいんじゃないの?だってあんた騎士を目指してたんだし」

それは僕が一番最初に考えたことだ。
お嬢様の元に来てから、実家へ一度も顔を出していない。
だがあそこには父がいる、騎士団を断り執事をしている現状、正直会うのは気まずい。
彼女の耳から手を離し黙り込んでいると、キャサリンが窺うように視線を向ける。

「もしかして、お父様に会うのが気まずいの?それなら大丈夫よ、暫くしたら遠征へ向かうはずよ」

遠征?そんな情報は入ってきていない。
真意を探るようにキャサリンへ視線を向けると、必死に訴えかけている。

「ちょっ、怖、本当よ!ここ数日前に突然決まったことだもの。知らないのもしょうがないわ」

嘘は言っていないようだが、後は自分で調べよう。
いい情報を手に入れた、もし本当に父が居ないのなら何の問題もない。

「ケイト、ありがとう」

「ちょっと何その反応、やめてよ、気持ち悪い……」

失礼なやつだ、と思いながらも僕はニッコリと笑みを浮かべると、急ぎ足で屋敷を後にした。
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