ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

文字の大きさ
48 / 86
第三章

閑話:王子の悩み7 (マーティン視点)

しおりを挟む
学園へ入学してひと月以上たつが、チャーリーの学生服姿……最高だ。
ずっと見ていても飽きない。
けれどあまり近すぎると、どうしても真っすぐに彼女を見られない。
時折香る彼女からの甘い香り、フワッと揺れる長い髪。
隣に彼女が座っていると自覚するだけで、歯止めが利かなくなって、おかしくなりそうだ……。
前まで話をするだけで精一杯だったのだが、一度触れてしまったからだろうか。
だからこうやって、少し離れた場所で眺めているのが、一番落ち着くなぁ。

渡り廊下を令嬢たちと歩いていく姿を、窓からじっと眺める。
今日は中庭で昼食をとるのか、よし俺も……。
そう思いクルリと体を反転させると、突然目の前にカイザックの姿が飛び込んできた。
何だ、と思い睨みつけてみると、憐れむような目で俺を見る。

「はぁ……マーティ。そろそろストーカー行為はやめたほうがいいですよ」

呆れているのだろう、棒読み言葉に俺は慌てて口を開くと、首を横へ振った。

「アイク、人聞きの悪い事を言うな!ストーカーじゃねぇ。彼女に何かあった時すぐに駆け付けられるようにだなぁ」

「いやいや、こんなところからじっと見つめられてるなんて知られたら、嫌われますよ。キモイですし」

カイザックは強引に俺を窓から引き剥がすと、深いため息をついた。

「キッ、キモイ……ッッ、ちょっ、お前なぁ、はっきり言いすぎだ!てかキモくねぇし!この間だって彼女が転びそうになったとき、こうやって見ていたから助けられたんだ」

持たれた腕を振り払い必死で言い返すと、強くカイザックを睨みつける。

「はぁ、もう婚約して何年たつんですか?最近雰囲気もいいじゃないですか。……まぁ最初に比べればですけどね……。そのツンツンした態度は一種の病気です。いやぁ、本当シャーロット様はすごいなぁ~」

「うるさい、これでもだなぁ……ッッ」

大分マシになったんだ。
正直こんな俺の傍に居てくれる事事態不思議だ……。
最初は目を見ることも、挨拶することも出来ず空回りばかり。
けど今は目を見て挨拶できるようになった。
それに……会話も続くようになったし……まぁ剣術のことばかりだが……。
だがこうやって改めて考えると、人として当然のことばかり。

「はいはい、わかってますよ。それよりも王子、何だか少し距離が縮まった感じがしましたけど、何か進展あったんですか?」

カイザックの言葉に、つい先日彼女を抱きしめた温もりを思い出した。
柔らかくて、熱くて、甘い香りがした。
見上げるように視線を上げ、愁いを帯びたあの瞳。
俺とは違う華奢な体に、腕に、少し力を入れただけで壊れてしまいそうだった。

「進展……ッッ、いや、あれは、その、違う、……弾みというか……ッッ」

咄嗟にそう答えると、カイザックはニヤリと楽しそうに口角を上げる。

「おぉ、珍しいですねその反応。やっとチューしちゃいました?」

「バカッ、お前なぁ!そんなことするわけないだろう!」

「えぇ!?婚約して数年お互いいい年になったのに、まだキスすらしてないなんて……。王子よく我慢できますねぇ。俺なら無理だなぁ~。あんな綺麗で優しい婚約者なら、すぐに抱いちゃいますね」

「お前!シャーロットを汚すな!」

なんてことを言い出すんだ。
キスなんて無理だろう、やっと愛称で呼び合うようになったばかり。
手だって繋いだことはもい。
だがもし俺が彼女を求めれば……それに応えてくれるのだろうか……?
想像するだけで脳が爆発しそうになる。
今の状態ではどうにもこうにも、そんな状況まで進むのは到底不可能だろう。

「どうしたんですか、百面相して。まぁ二人は二人のペースがありますしね。まぁ~頑張って下さい」

「うぅっ、いや、とりあえず俺の気持ちを伝えるところからだ……」

「はぁ!?まだ伝えてなかったんですか……」

カイザックは呆れた様子を見せると、お手上げといわんばかりに両手を広げた。

「いや、タイミングがだな……」

「またそれですかー?あんまり躊躇していると、他の令息にとられちゃいますよ。例えば……あの執事とか」

執事との言葉に顔を上げると、カイザックは見透かすような視線で俺を見ていた。

「ケルヴィンのことか。あいつは只の執事だろう。それに俺は王族で彼女の婚約者だ。奪われるはずなんてない」

そう、そのはずなんだと何度も言い聞かせる。
だが愛称で執事を呼ぶ彼女の姿が何度も脳裏によみがえった。
ケルヴィンの名を呟いた彼女はとても親し気で優し気な表情をしていた。
俺の前では見せたことないような……。
いや、大丈夫だ、俺は王族で……彼女の婚約者なんだから。
必死に脳裏に浮かぶ彼女の姿を消すと、俺はカイザックを押しのけ、中庭へと向かって行った。
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。

石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。 そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。 そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。 ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。 いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる

西野歌夏
恋愛
 ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー  私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。

幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される

ちゃっぷ
恋愛
家族から産まれたことも生きていることも全否定され、少しは役に立てと言われて政略結婚する予定だった婚約者すらも妹に奪われた男爵令嬢/アルサイーダ・ムシバ。 さらにお前は産まれてこなかったことにすると、家を追い出される。 行き場を失ってたまに訪れていた教会に来た令嬢は、そこで「産まれてきてごめんなさい」と懺悔する。 すると光り輝く美しい神/イラホンが現れて「何も謝ることはない。俺が君を幸せにするから、俺の妻になってくれ」と言われる。 さらに神は令嬢を強く抱きしめ、病めるときも健やかなるときも永遠に愛することを誓うと、おでこにキス。 突然のことに赤面する令嬢をよそに、やたらと甘い神様の溺愛が始まる――。

【完結】0日婚の白魔女皇后は呪いの冷酷帝に寵愛される

さわらにたの
恋愛
「冷酷帝」エンジュに皇后として望まれ、政略結婚として輿入れした白魔術師キーラ。 初夜にて「俺は呪われている。本当は皇后などいらん、解呪のためだけにお前を呼んだ」と明かされて解呪に挑むことに……から次第にあれやこれやで結局ハピエンラブラブになるお話です ほんのりと前作「魔力なしの転生少女は天才魔術師様に求婚される」と同じ世界線、時間軸です

【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係

ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

処理中です...