ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

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おまけ

甘いひと時

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そんな平穏な日々の中、今日も朝早くに庭へ向かうと、世話をしていたアザレアの蕾が開いていた。
私は嬉しさにケルを呼びに行くと、手を引いて庭へと出る。

「見てケル、綺麗に咲いたの」

ここへきて育て始めたアザレアの花。
白と淡い赤の花びらが風に舞っていく。
昇り始めた太陽の光が辺りを照らし、朝露がキラキラと光った。

私は彼の手を握ったまま、その幻想的な風景に見惚れていると、ふと視線を感じた。
おもむろに顔を横へ向けると、ダークブルーの瞳を視線が絡む。

「ケル……?その、花を見てほしいんだけど……」

「あぁ失礼、花よりも美しくてつい」

ケルの手が頬へ触れると、ぶわっと頬が熱くなる。
婚約が決まってからというもの、こういうことが多くなった。
今までとは違う彼との距離。
昔から甘やかされていた自覚はあるけれど、今は何というか……ドキドキが止まらない。

波打つ心臓を落ち着かせながら横目でケルを見ると、いつもと同じ表情。
ドキドキしててんぱっているのはいつも私だけ。
これが経験の差というやつかしら……。
学生時代はとてもモテていたようですし……。

そんなことを考えると、胸の奥にもやっとした暗い気持ちが込み上げる。
学生の頃の彼はどんな様子だったのかしら……。
私ではない別の令嬢にドキドキしたり……。
考えれば考えるほど気持ちが沈んでいく。
昔の私ならこの気持ちに蓋をして気づかないふりをしようとしていたかもしれない。
だけど今は違う。
私が知らないケルがいるのは当然で……だけど今のケルを一番知っているのは私。
もやもやとした感情を振り払い顔を上げると、私はケルの手をギュッと強く握ったのだった。

夜にはここにきたばかりの頃に購入した望遠鏡をのぞきに、バルコニーへと向かう。
ずっと学んでいた天文学。
王都とは違う高台のこの場所は、観測にはピッタリだった。
今はまだケイトお姉さまのようにはいかないけれど、王都に戻ったらあそこで働きたいわ。

ノートへペンを走らせながらじっと天体を観測していると、ふと肩に大きな手が触れた。
おもむろに振り返ると、ブランケットが肩へかけられる。

「お嬢様、そんな薄着では風邪をひいてしまいますよ」

「ありがとう、ケル」

ケルはニッコリ笑みを深めると、ブランケット越しに私の体を抱きしめる。
伝わる彼の熱に胸が大きく高鳴った。
彼の吐息が耳にかかると、体がビクッと反応する。

「頬がこんなにも冷たい。私が温めてさしあげますね」

力強い彼の腕、胸板から伝わる熱に一気に体温が上がった。
以前余裕などないと言っていたが、翻弄されるのはいつも私。
ケルはドキドキしないのかしら……?

「ケルッッ」

「ふふふっ、もう大丈夫そうですね」

ケルはサッと私から離れると、揶揄うように笑う。
真っ赤になった私の顔を嬉しそうに見つめたのだった。

******************************************
  おまけ ケルヴィン視点
******************************************

彼女との正式な婚約が成立した日。
僕は歓喜した。
長年の彼女を想い続けてきた。
人の物だとわかっていても抑えきれなかった感情。
そしてそれがようやく実ったのだ。

ただし一つだけ彼女の両親から条件を課された。
それは……結婚するまでお嬢様に指一本触れないこと。
王都内が落ち着くまではここで二人だけの生活が始まると、それはひどく過酷だった。

従者としてではない、僕を一人の男として見るお嬢様。
以前よりも距離が近く、自然に私へ触れる。
今まで見たことがない、赤らめ恥ずかしそうにする彼女の姿。
無邪気に向けられる笑みは柔らかく、抑えきれない衝動が走った。

執事としてではなく、今までできなかった婚約者としての生活を楽しむつもりだったが、何度もタガが外れそうになり諦めた。
執事としてお嬢様の傍に居れば多少の自制はきく。
それでも……暴走してしまうときはありますが……。
まぁ手は出していないので、これぐらいは許してほしいところですね。
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