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エリザベート嬢はあきらめない
愛娘を抱きしめて
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『お帰り、エリザ。貴方を待っていたわ』
聖女レティシアが、ヴァイオレットの瞳を持つ赤ん坊を前に、そう呟いた日から15年の年月が流れた。
赤ん坊だったエリザベートも、今ではドリミア学園の3年生になっている。
「マーガレット、また来てしまったわ」
「マーガレット叔母様。こんにちは」
「いらっしゃい、お母様。いつでも大歓迎ですわ」
「いらっしゃい。ワーズ」
私は最近、アントワーズと一緒にノイズ公爵家を訪れる事が増えている。
この国の王太子であるウィリアム王子と、孫娘のアントワーズの、恋の応援をするために。
もう1人の孫娘、エリザベートが見た夢神託のために、この2人はあと4年ほど婚約が出来ないのだ。
なかなか会えない2人が不憫で、つい、マーガレットやエリザベートに会いに来るという名目で、アントワーズを連れて瞬間移動して来てしまう。
国の一大事や人びとを闇から救うだけが魔力ではない。恋する乙女心の応援だってしてあげたい。それが、可愛い孫娘の恋なら尚のこと。
マーガレットとメイド達によって、すっかり商人の娘風になったアントワーズの髪を、レティシアの手がサラリと撫でる。
クルクル巻き毛でダークブラウンだった髪が、ゴールドでサラサラヘアーのポニーテールに変わる。
「さあ出来上がったわ」
あとはデートのお相手を待つだけ。
「ウィリアム殿下が来られました」
いいタイミングで執事のクロードがウィリアム殿下を案内して現れた。
ブラウスにベスト。流行を取り入れた帽子。動きやすそうなズボンをはいて現れた青年の髪は、ブロンドではなくてブラウン。
「ウィリ様!」
「ワーズ!」
アントワーズがウィリアム殿下に駆け寄って、その数歩手前で止まる。
「ウィリ様、会いたかったわ」
「ワーズ、僕もだよ。本当に君なの?その髪型もゴールドの髪も、とても似合っているよ」
ウィリアム殿下がアントワーズを抱きしめようとしたその時、
「ゴホン!ゴホン!」
その咳払いでハッと気がついた殿下は、姿勢を切り替えて、私達がいるところまで歩んで来られた。
「聖女レティシア様、ようこそ、我が国へ。今日はアントワーズを一緒に連れて来て下さって、ありがとうございます」
「お久しぶりですね。ウィリアム殿下。今日はアントワーズのこと、宜しくお願いしますね」
その後、ウィリアム殿下はマーガレットにも挨拶をして、楽しげに色々と話し込んでいた。
「ウィリアム殿下、大丈夫とは思いますが、もしも危険が迫ったら、私の名前をお呼びください。
心の中で強く願うだけでも大丈夫です。私に助けて欲しいと願って下さい。それだけで、ここに戻ってこれますから」
「いつもありがとうございます。レティシア様。わかりました。」
「お祖母様、ありがとう。」
レティシアが唱えると、2人は光に包まれて、そして、その光は消えていった。
「これでいいわ。危険が迫ったらすぐに私の名前を呼ぶのですよ。」
護衛は魔法騎士団のいつものメンバー。
2人が街に出る時は、第一部隊の中から数名が付く事になっている。
ウィリアム殿下とワイズが並んで頭を下げる。
「ありがとうございます。レティシア様」
「ありがとうございます。お祖母様。」
「では、楽しんでいらっしゃい。」
「行って参ります。」
「行ってきます。」
2人はノイズ家が用意した、商人用風に見える馬車に乗り込み出かけて行った。
「お母様、お茶でもいかがですか?」
「そうね、頂こうかしら。ところでエリザはどこに?」
「2人より先に街に出かけて、向こうで待っているらしいですわ。先ほどワーズと場所の確認をしていましたもの。」
「あら!あの子ったら!2人のデートの邪魔をしに行くなんて。邪魔をする方もされる方も、気が付かないのだから、可愛いものね。」
マーガレットの侍女セイラが、飲み物とお菓子を用意してくれた。
「お母様と2人でお茶を頂くなんて、本当に久しぶり。なんだか、昔に戻ったみたいで嬉しいわ。」
「貴方はお転婆だったものね。でも、とっても可愛いかったわよ」
本当に、また、貴方とお茶を頂ける日が来るなんて。マーガレット・・
あの、悲しみの日々を思い出す。
エリザベート、貴方のおかげよ。
私の大切な娘はここにいる。
今、マーガレットは生きているわ。
エリザベート
頑張ったわね。
今、貴方も笑っているのね。
私はそれが嬉しいわ。
「マーガレット、久しぶりに抱きしめてもいいかしら?」
「まあ、お母さまったら」
「貴方も頑張っているもの」
レティシアは娘マーガレットに近づいて、優しく抱きしめたのだった。
聖女レティシアが、ヴァイオレットの瞳を持つ赤ん坊を前に、そう呟いた日から15年の年月が流れた。
赤ん坊だったエリザベートも、今ではドリミア学園の3年生になっている。
「マーガレット、また来てしまったわ」
「マーガレット叔母様。こんにちは」
「いらっしゃい、お母様。いつでも大歓迎ですわ」
「いらっしゃい。ワーズ」
私は最近、アントワーズと一緒にノイズ公爵家を訪れる事が増えている。
この国の王太子であるウィリアム王子と、孫娘のアントワーズの、恋の応援をするために。
もう1人の孫娘、エリザベートが見た夢神託のために、この2人はあと4年ほど婚約が出来ないのだ。
なかなか会えない2人が不憫で、つい、マーガレットやエリザベートに会いに来るという名目で、アントワーズを連れて瞬間移動して来てしまう。
国の一大事や人びとを闇から救うだけが魔力ではない。恋する乙女心の応援だってしてあげたい。それが、可愛い孫娘の恋なら尚のこと。
マーガレットとメイド達によって、すっかり商人の娘風になったアントワーズの髪を、レティシアの手がサラリと撫でる。
クルクル巻き毛でダークブラウンだった髪が、ゴールドでサラサラヘアーのポニーテールに変わる。
「さあ出来上がったわ」
あとはデートのお相手を待つだけ。
「ウィリアム殿下が来られました」
いいタイミングで執事のクロードがウィリアム殿下を案内して現れた。
ブラウスにベスト。流行を取り入れた帽子。動きやすそうなズボンをはいて現れた青年の髪は、ブロンドではなくてブラウン。
「ウィリ様!」
「ワーズ!」
アントワーズがウィリアム殿下に駆け寄って、その数歩手前で止まる。
「ウィリ様、会いたかったわ」
「ワーズ、僕もだよ。本当に君なの?その髪型もゴールドの髪も、とても似合っているよ」
ウィリアム殿下がアントワーズを抱きしめようとしたその時、
「ゴホン!ゴホン!」
その咳払いでハッと気がついた殿下は、姿勢を切り替えて、私達がいるところまで歩んで来られた。
「聖女レティシア様、ようこそ、我が国へ。今日はアントワーズを一緒に連れて来て下さって、ありがとうございます」
「お久しぶりですね。ウィリアム殿下。今日はアントワーズのこと、宜しくお願いしますね」
その後、ウィリアム殿下はマーガレットにも挨拶をして、楽しげに色々と話し込んでいた。
「ウィリアム殿下、大丈夫とは思いますが、もしも危険が迫ったら、私の名前をお呼びください。
心の中で強く願うだけでも大丈夫です。私に助けて欲しいと願って下さい。それだけで、ここに戻ってこれますから」
「いつもありがとうございます。レティシア様。わかりました。」
「お祖母様、ありがとう。」
レティシアが唱えると、2人は光に包まれて、そして、その光は消えていった。
「これでいいわ。危険が迫ったらすぐに私の名前を呼ぶのですよ。」
護衛は魔法騎士団のいつものメンバー。
2人が街に出る時は、第一部隊の中から数名が付く事になっている。
ウィリアム殿下とワイズが並んで頭を下げる。
「ありがとうございます。レティシア様」
「ありがとうございます。お祖母様。」
「では、楽しんでいらっしゃい。」
「行って参ります。」
「行ってきます。」
2人はノイズ家が用意した、商人用風に見える馬車に乗り込み出かけて行った。
「お母様、お茶でもいかがですか?」
「そうね、頂こうかしら。ところでエリザはどこに?」
「2人より先に街に出かけて、向こうで待っているらしいですわ。先ほどワーズと場所の確認をしていましたもの。」
「あら!あの子ったら!2人のデートの邪魔をしに行くなんて。邪魔をする方もされる方も、気が付かないのだから、可愛いものね。」
マーガレットの侍女セイラが、飲み物とお菓子を用意してくれた。
「お母様と2人でお茶を頂くなんて、本当に久しぶり。なんだか、昔に戻ったみたいで嬉しいわ。」
「貴方はお転婆だったものね。でも、とっても可愛いかったわよ」
本当に、また、貴方とお茶を頂ける日が来るなんて。マーガレット・・
あの、悲しみの日々を思い出す。
エリザベート、貴方のおかげよ。
私の大切な娘はここにいる。
今、マーガレットは生きているわ。
エリザベート
頑張ったわね。
今、貴方も笑っているのね。
私はそれが嬉しいわ。
「マーガレット、久しぶりに抱きしめてもいいかしら?」
「まあ、お母さまったら」
「貴方も頑張っているもの」
レティシアは娘マーガレットに近づいて、優しく抱きしめたのだった。
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