悪役令嬢エリザベート物語

kirara

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エリザベート嬢はあきらめない

ロリエッタの微笑み

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 変ね。おかしいわ。
 入学後で私が光魔法が使える次期聖女だってわかったのに、どうして特別扱いにならないの?

 教会の神父様も涙を流して、膝を折って頭を下げておられたというのに。

 来賓席にいたあの若い方。半年ほど前に新しく宰相になったデイビス・ブルーノ様。

 あの方はとっても熱い瞳で私を見ていたわ。父兄の中には私に手を合わせて、拝んでおられた方もいらっしゃったのに。

 それに、あの神父様がせっかく中央に私を連れて行ってくれたのに、何? アルベール・ロレーヌ。

 あの黒い瞳は素敵だったけど、私を壇上から降ろす?なぜ?どうして?

 もっと私に酔いしれなさいよ!
 私はこの物語のヒロイン、聖女ロリエッタなのよ。

 ふわふわピンクブロンドの髪の女生徒は、寮の自分の部屋に着くなり、手当たり次第に周りの物を壁に向かって投げつけた。

 もー!腹が立つ。
 許せないわ!

 まずは、アルベール・ロレーヌを攻略して、学園の全生徒に聖女アピールしたかったのに。

 まあ、いいわ。

 彼のエスコート付きで階下に降りて、拍手をもらったから。それで許してあげるわ。

 私を粗末に扱わなかったのは、あとから魅了が効いてきたんだわ。きっとそうよ。
 私を見て、ニッコリと微笑んでいたもの。

 今日の出会いのウィリアム殿下。
 あそこにどうしてエドモンド・ブラウンがいるのよ!?
 せっかくウィリアム殿下と仲良く話していたのに。  

 ウィリアム殿下ったら、私が胸に飛び込んだら、ドキッとしていたわ。

 あの高飛車で我儘(わがまま)なエリザベートに、ウンザリしている頃よね。

 誰もが王太子殿下には敬意を表して親しく接していかないのに、私が平気で胸に飛び込んで行ったから、驚きながらも温かいものを感じていたはずよ。

 皆が敬語で話すから、だれの本音も聞けないと、いつも1人で寂しい思いをしているのを、私は知っているわ。

 婚約者のエリザベートの事も、今は悪くは思っていないでしょうけど、あの身勝手な傲慢(ごうまん)さに、ウンザリしてきてる事も私は知っているわ。

 フフフ・・

 今日はあまりに親しげに話す私に、ビックリしていたけれど、それが狙いよ。

 明日からはだんだん私に会うのが楽しくて待ち遠しくなるのよ。

 フフフ・・

 でも別れる時の言葉は貴方らしくないわ。
 ウィリ様。

「それでは失礼するよ。君ももう少し常識を勉強しないとね」

 私の魅力は常識を考えないことなの。だから私を好きになるのよ、ウィリ様。

「しょうがない子だね。君には上流貴族にない気安さがあるから、僕も肩の力を抜く事が出来るよ。何時の間にか君が近くにいないと寛げなくなってきたよ」

 そう言って私にハマっていくのよ。ウィリアム殿下。

 フフフ・・

 さあ、明日は誰との出会いイベントの日だったかなあ。

 今日は食堂で美味しい夕飯を食べて、ゆっくり休まなきゃ。

 さっきまでのイライラが治まってきたわ。

 エリザベート・ノイズ。
 貴方は悪役令嬢なの。良い子のふりは似合わないわ。

 待っていなさい。
 皆んな皆んな、私の虜にして、貴方はウィリアム殿下に婚約破棄されるのよ。

 フフフ・・

 強がっているけれど、貴方が本当は独りぼっちだって知っているのよ。
 悪役令嬢エリザベート・ノイズさま。

 寮の部屋に戻ってきた〈ロリエッタ・トリエール〉は、とっても楽しそうに微笑んだ。
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