13 / 23
旧雨今雨②
しおりを挟む入学式が終わると、私達は担任紹介や教科書配布、授業の説明のために教室に案内されました。
座る順はもちろん成績順なのです。
これは、これからのテストでも反映されるらしく、お偉いさんが考えた学力向上政策らしいのです。
席に着くと、私の後ろに座っていた、つまり2番だった男子が話しかけてきたのです。
いや、これは負け犬が吠えているだけという方が表現の仕方が正しいと思うのです。
「おい、お前が1番だったやつだな!
お前、俺と勝負しろ!
俺が1番だって思い知らせてやる!」
見てください。典型的な馬鹿です。
こういうのには、無視が1番なのです。
効果覿面なのです。
フィン兄様には感謝ですね。
ということで無視すること数分。
先生が入ってきて、ようやく彼は私に声をかけるのをやめました。
先生のお話はやはりどの世界でも一緒のようで、校則の説明や教科書の配布、授業の説明、などなど………。
でも、やはりというか何というか校則の中にはユニークな物もあって、例えば
・「学校の中では許可があるとき以外は魔
法の使用を禁ずる」
・「決闘は学園長の許可が下りた場合のみ認める」
・「故意に人を魔法で傷つけた場合は即退学」
などなど。
というか決闘って怖くないですか!!
え、何をそんなに争いたいの!!
先生曰く、
「この決闘ってやつは昔の名残というか伝統みたいなやつだから、やろうと思ってもできないからな!
無闇矢鱈に学園長に申請しに行くなよ~!
学園長もお忙しいんだ!」
らしいのです。
しかし、そんな先生の言葉も聞いていないのか、後ろの人はブツブツ
「決闘で勝って1位になってやる」
と言っています。
まぁ、私は戦う意思なんて無いですが。
だって、メリットないもん!!
決闘ってやつを実行するには、まず双方の意思がある場合じゃないといけないみたいなので、私が彼の話を聞かなければいいだけなのです。
なんて、簡単なのでしょう。
ということで名付けて「彼をただただ無視しよう作戦」が始まったのです。
と始まってすぐに大きな試練が!!
なんと帰ろうとした私に彼が話しかけてきたのです。
正直、ウザいのです。
私はまるで何も聞かなかったように無視して、クリスとスフィアと家に帰りました。
あ、家じゃありません!!
寮の部屋でした!!
この学園には五つの寮があります。
・アイオライト寮(青)
・カーネリアン寮(赤)
・シリマナイト寮(白)
・マラカイト寮(緑)
・ルチル寮(黄)
この五つの寮はお互いに競い合っています。
寮の順位毎によって、待遇が変わるので皆さん、マジなのです。
私達三人はアイオライト寮でした。
因みに後ろの彼は、カーネリアン寮なのです。
今の寮の順位は
1位 アイオライト寮
2位 カーネリアン寮
3位 ルチル寮
4位 マラカイト寮
5位 シリマナイト寮
だそうです。
あら、私って寮の順位でも個人の成績でも彼に勝っているようで
なんか、ドンマイ!!
翌日、翌々日と私は彼を無視し続けました。
すると、無視し続けて一週間経ったある日、私の机の上にある一枚の紙が置かれていました。
-------------------
果
し
状
-------------------
どう考えても後ろで私にガンを飛ばしている彼からの手紙でしょう。
私はゴミ箱に捨てようと思ってその手紙に触れました。
すると、突然手紙が喋ったのです。
「契約は成立しました。
これから、決闘を開始します。
ルールは簡単です。
使っていいのは固定魔法のみ。階級は問いません。
時間は無制限。
勝った人は負けた人に一つ命令ができます。
先に『参った』と言った、もしくは、気を失った方の負けです。
それでは、1-A 第1席 クレア=コーナー 対 1-A 第2席 ケビン=スルタンの決闘を開始します。
死なない程度に頑張ってください。」
は?決闘?
どうやら私は彼にまんまと嵌められたようです。
こんな屈辱を感じたのは何時ぶりでしょうか?
私は彼にケビンに猛烈に腹が立ちました。
ケビンの勝手な行動に何故私が巻き込まれなければいけないのでしょうか?
そんな私の心情を知ってか知らずかケビンは私に向かって言いました。
「クレア!!
お前、やっと本気になったな!
三大貴族スルタン家次期当主ケビン様が直々にお前を倒してやるよ!
感謝しな!!」
その言葉で私の脳はプチんと音をたてました。
まぁ、つまり私はキレました。
「三大貴族か何だか知らないけど、ケビン何かはき違えてない?
学園内では身分は関係ないのです!
つまり、ケビンと私は今同等の位置にあるのです。
そんな私に向かってそんな言葉を吐くなんてケビンの両親の顔を見てみたいわ!
ケビン、貴方に今から『現実』を嫌っていうほど叩き込んであげるのです。
さぁ、どこからでもかかってきなさい!!」
私は言い終わると同時に地面を蹴りました。
そして、反応できていないケビンに初級固定魔法【fire-cannon】を打ち込みました。
火属性の大砲型の魔法です。
流石、第2席とでもいいましょうか。
ケビンは紙一重に避けると私に初級固定魔法【water-cannon】を放ちました。
いえ、違いました。
避けても避けてもついてくるのでどうやら追跡型の中級固定魔法【water-tracking】みたいです。
何故、教えられるはずのない中級固定魔法を使えるのでしょう?
私はそれを上級固定魔法【change-person】で対象を変化させ、ケビンを追跡させました。
ケビンに
「お前なんで上級固定魔法なんて使えるんだ!
誰に習ったんだ!
卑怯だ!」
と言われましたが私は誰にも習ってないのです。
独学なのです。
私はそんなケビンに中級固定魔法【stop-person】をかけ、体の動きを一瞬だけ封じると、上級固定魔法【faint-person】をかけ、ケビンを眠らせました。
何とケビンは弱いのでしょう。
クリスの方がまだましなのです。
手紙はケビンが負けたことを知ってまた話し始めましたのです。
「ケビン=スルタンの戦闘不能により、この決闘の勝者はクレア=コーナーに決定しました。
なお、決闘が行われた1-Aの教室の修復のため、これから一週間は臨時休校とします。
生徒は速やかに校舎から退去してください。」
その言葉を聞いた途端、周りのギャラリー(いつの間にかいた)は一斉に
「でかした!」、「イヨッシャー!」
などと騒いでいました。
皆さん、そんなに授業を受けたくないのですね。
わかります、わかります。
校舎を退去すると、私はクリスとスフィアに抱きつかれ…………
めちゃくちゃ怒られてしまったのです。
はい、すいませんなのです。
一人で突っ走らないように精進するのです。
しかし、お父様やお爺様には褒められましたのです。
まぁ、キース兄様や母様には怒られたのですが。
-一週間後-
私達は元どおりになった校舎で初めての授業を受けたのです。
そこで会ったケビンはまるで別人だったのです。
そして、私に向かって笑顔でこう言ったのです。
「クレア姉貴!
これからも指導をよろしくお願いします!」
私は何処かで何かを間違えたようなのです。
そして、私の初めての ライバル? が誕生したのです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる