クレアの独白

群青

文字の大きさ
22 / 23

一致団結①

しおりを挟む
 


 文化祭まで後一ヶ月に迫ったある日
 私達は、教室で劇の練習をしていました。


「サラ様、どうか後ろに。
 怪しいものには近づかないように。」


 クリス(ライ)は、そう言って私の腕を掴みます。
 若干腕が震えているのです。


「ライ!!
 あれは、怪しいものではないわ!!
 レイよ!!
 私の恋人なのよ!!
 だから、ライ!!
 そこをどいて!!」


 私は、必死にサラを演じます。
 昔のことを思い出して、なるべくリアルに見せれるように。
 私は、狂おしいほどの愛を演じます。


「私は、私は断じて認めません!!
 あんな下賤なものを恋人にするなんて………
 何故、そんなことをするのですか!!」


 そう言うクリス(ライ)は、少し遠慮がちで。
 もっと、ガツガツきて欲しいのです!!
 リアルな感じが出せないのです!!


「何故、あなたの承諾が必要なの!!
 私は、私は、レイのことが………」
「それ以上言ったら、私は貴女を閉じ込めることにいたします。
 貴女を独り占めできるように。
 私だけの貴女にするのです。
 貴女が私をみてくれないのなら、そうするしかありません。」
「何を言い出すの!!ライ!!
 止めなさい!!ライ!!
 この腕を離して!!」


「はい、カーット!!」


 カチンコの音が鳴り響き、私は動きを止めました。


「クレア、とっても素敵だよ!!
 ナイス演技!!
 グッジョブ!!
 そのまんまでいいよ!!」
「スフィア監督、ありがとうございます!!」


 私は、スフィアの言葉に胸をなでおろしました。


「それに比べて、クーリースー!!」
「はいぃぃ!!」
「あの演技は何なの!?
 もっと気持ちを込めて!!
 ヤンデレになりきって!!」
「無理だよ~。」
「無理じゃない!!
 私の弟でしょ!!
 できるはずよ、クリスなら!!」


 そうなんです。
 クリスの演技がすごいことになっているのです。
 あれですね、大根役者?
 棒立ち、棒読み?
 まぁ、とにかく酷いのです。
 練習、練習あるのみなのです!!


「じゃあ、もう一回!!
 同じところから!!」


 今日もスフィア監督の容赦ない指導が止まりません。




 さて、何故ここにクリスとスフィアがいるのかと申しますと、単純な話なのです。
 積極的な貴族の数が少なく、人数が足りず、Bクラスと合同という形をとらせてもらったのです。
 まぁ、二人と一緒にできて、嬉しいのでいいのです!!



     ◇   ◇   ◇


「あぁ、疲れた………」


 私とクリスは、寮の交流スペースで今日の反省会&お互いをねぎらう会をしていました。


「お疲れ、クリス。
 ふふっ、今日は一段としごかれてたね?」
「本当だよ~。
 もう、クタクタ~。」
「無理なら、無理ってちゃんと言いなさいよ。」
「いやだよ。」


 急にクリスは真剣な顔をして、私の手を握りました。


「えっ、クリス!?
 手が!!手が触れてる!!」
「え?ダメ?」
「え、いや、何ていうか、その、えーっと………」


 私は、思い切り動揺してしまいました。


「僕は、クレアと付き合いたいんだ。
 そのためなら、何だってするつもりだよ。
 これもそのため。
 クレアのため。」


 積極的なクリスにどきどきしながら、私は何故クリスの演技が下手なのか、その理由がわかりました。


「クリス、それよ!!」
「えっ?」
「その心構えが問題なのよ!!
 私のために演技しようとするから、あんな下手な演技になるの!!
 自分からやりたいと思わない限り、クリスの演技は上手くなんてならない!!
 もっと、ちゃんと向き合ってよ!!
 私のことが好きなのは、嬉しいけど………
 でも、ダメよ!!
 今のままじゃ!!
 自分のために行動しない人間を私は嫌うわ!!
 もっと、ちゃんと考えなさい!!」


 クリスは驚いたように、目を見開いていました。
 私は、そう言い残してその場を去りました。




 寮に戻ると、ニヤニヤした顔のスフィアが待っていました。
 もしかして、さっきの会話を聞いていたのでしょうか?
 正直、気持ち悪いのです。


「クレア、良いこと言った!!
 あれが言いたかったのよ、私は!!
 ありがとう、言ってくれて。
 私からの言葉じゃ、クリスには伝わらなかったわ。」
「やっぱり聞いてたのね。
 でも、言い過ぎてはなかったかしら?」
「あれくらいがちょうど良いのよ!!
 クリスには!!」
「そうかなぁ?
 ていうか、あの話の続き、聞かせてもらうわよ!!」
「え、何の話?」
「リチャード皇子とのことよ!!」
「えー、恥ずかしい///」
「スフィア!!」


 こうして、ガールズトークは、夜遅くまで続きました。
 その詳細は、今はまだ秘密なのです。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...