10月の向日葵

実砂菜

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新任教師

3

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自己紹介は、特に大きなトラブルなく終了した。
声の大きい子、小さい子をはじめ、それなりに個性が見える。
ひとくちに「普通の小学生」といっても、大人と同じくそれぞれ違う人間で、みんな違って当たり前だ。

続いた2時間目、3時間目も特に変わったことはなく終了し、新学期初日は半日で終了。
大体の事務作業も終え、定時近くを指している時計を横目に伶はフッと息を吐いた。
そんなタイミングを見計らったかのように、同期の女性教師、花田舞が、斜め向かいの自席から立ち上がり近寄ってきた。
同期ということもあり、歓迎会で少し伶とも盛り上がって喋った間柄の彼女は、人懐こそうな笑顔を浮かべて話し掛ける。
「お疲れさま!どう?初めての受け持ちクラス」
ちなみに舞は3年生の担任である。
「やっぱり緊張するかな。でもね、一人一人のために頑張らなきゃ」
伶が答えると、
「そんな緊張するかな?ん~私は、大学の時のバイトで塾講師した時とあまり変わらんかも」
お気楽な返事が返ってくる。
「舞は人前慣れてるし人見知りしないから羨ましいよ」
苦笑を浮かべ、でもそれをすぐに真顔に戻す伶。
「でもね、私は絶対、誰か救うの。そのために教師になったの」
「それずっと言ってるもんね。応援してるし一緒に頑張ろう。でも…」
あまり変な方向に行ったりしないようにね…そう続けた舞の声は、頭のなかで自己紹介を振り返り、早速いろんなイメージトレーニングを始めた伶の耳には届かなかった。
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