過霊なる日常

風吹しゅう

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不思議な友達編

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 放課後、いつもながら屋上階団で暇を潰していると、人間ラジオ(男)がいつものように私に情報を届けてくれる時間がやってきたようだ。内容はお決まりの更科先生の話題から、クラスで可愛い女の子の話まで。

 そして、意外にも生徒会事情の話をしている辺り、少しだけ真面目な人間ラジオというところだろう、そんなラジオを聞いていると何やら興味深い話が持ち上がった。

 それは、マリアの好感度が良くなってきているという話しだ。

 何でも、私が幽霊の一見を片付けてからと言うもののマリアは急に大人しくなって、さらに動きまわらないおかげで可愛くなっているという。そして、それに目をつけた男子がマリアと仲良くなろうという作戦を企てているようだ。

 なんで、そんな話になるのかが私には理解できないが、とりあえずこのラジオを聴き終わったら少しマリアを探しに行ってみよう・・・・・・ちょっと気になるし。

 そして私は高校入学してから二度目となる1年2組の教室に来ていた。周りにあまり生徒がいないことを確認しつつ教室を覗きこむと、中では数人のクラスメートとともに仲よさげに話しをしているマリアの姿があった。

 楽しげに笑い、周りのクラスメートから積極的に話しかけられているマリア、そんなマリアの姿に私は衝撃を受けてすぐに教室をのぞきこむことをやめた。
 理由は勿論、あのマリアがクラスメートたちにちやほやされていた事だ、いや、確かに可愛いし明るい性格だから、チヤホヤされるのはおかしくはないのかもしれない。

 だけど、まさかあの幽霊馬鹿のマリアがあんなにも出世しているなんて、こないだまで幽霊馬鹿で大半の人間から敬遠されてたんじゃなかったのか?

 ショックをうけた私は教室から立ち去ろうと振り向いた時、下腹部に衝撃が走り私は思わずバランスを崩したがなんとか体制を整えることが出来た。
 だが、私の目の前では衝撃で倒れたであろう千野さんが『どうかしたんですか?』と書かれたスケッチブックを腹の上に載せながら仰向けに倒れていた。

「ち、千野さんっ」

 私はすぐに千野さんを抱き上げると、目をうるませながら必死に何かに耐えていた。そんな彼女を私はすぐに抱き上げ保健室へと運んぶことにした。

 保健室に辿り着き勢い良く扉を開けると恭子先生が笑顔で出迎えてくれた。

「あらー、零ちゃんって、もしかして保健委員なの?」

 今日は都合のいいことに保健室はガラガラのようだ。

「違います、ちょっと彼女とぶつかってしまって・・・・・・涙目だったんで連れてきました」

 私は千野さんを椅子に座らせようとしたが、中々座ってくれず、私の後ろに隠れてしまった。

「あらあら、こんな可愛い子が学校にいたなんて、零ちゃんお手柄よ」

「お手柄も何も、大丈夫かな千野さん?」

『大丈夫です』

 絶対頷いたほうが早かったのにどうしてそんなに書くことに拘るんだろう?そして、そんな千野さんの行為に敏感に反応し、恭子先生は私達のもとに息を荒げながら近寄ってきた。

「可愛いわ、その子精神状態がおかしそうだから私が治療してあげなきゃ」

「おかしいのは先生ですよ」

「なぁに、零ちゃんったらマリーちゃんを魅了したと思ったら今度はその子?」

「別に魅了してません」

「はぁ、もう乗り換えちゃうのかぁ、気持ちは分からなくもないけど、そうやって生きてると、いつかしっぺ返しが来るかもしれないわよ?」

「お言葉ですけど、その言葉そっくりそのまま返してみたい気分です」

 わりかし冷たい口調でそう言うと、更科先生はしぶしぶ自分の席に戻って行った。

 私と千野さんは、ホッとひと安心して帰ろうと思ったのだが、どうにもさっきのマリアが気になってしまい、マリアと仲が良い先生なら何か知っていると踏んだ私は、少し話を聞いてみることにした。

「あの先生、質問していいですか?」

「なぁに?」

「マリアって友達多いんですか?」

「聞きたい?」

「はい」

「じゃあ、その子頂戴」

「・・・・・・」

 私は、マリアの情報を得るために千野さんを更科先生に手渡してしまった。そして千野さんは今、『助けてください』と書かれたスケッチブックを持ち先生に抱かれている。そんな、彼女を目を合わせることも出来ずに私はただただ座っていた。

「そ、それで、マリアのことなんですけど」

「ちょっと待ってね、今いい所だから・・・・・・・それにしても意外ね」

「何がですか?」

「私の要求に素直に応じちゃうなんて」

「それは」

「零ちゃんのことだからすぐにどっかに行っちゃうのかなと思ったのに、そんなにマリーちゃんの事が気になる?」

「いや、別にそんなことは」

「心配しなくていいわ、あなたが思っているより彼女はずっと一人ぼっちよ」

「一人ぼっち?」

「えぇ、それにあの子の友達は・・・・・・」

 そう先生が言いかけた時、保健室の扉が勢い良く開かれ、私はすぐに扉の方に目を向けた。すると、そこにはニコニコ笑顔のマリアの姿があり、私達の姿に気づいて少し驚いているようだった。

「零さん、今日は屋上階段にいないと思ったら、こんな所にいたんですね」

「え、またあそこに行ってたの?」

 少し威圧的に言うとマリアは少し手を前に突き出して防御しながら顔を逸らした

「い、いや、そんなに怒らないで下さいよ零さん」

「そうよ零ちゃん、さぁ、マリーちゃんも一緒にお話しましょ」

 更科先生にそう言われ、マリアは喜んで保健室の中に入り、みずからパイプ椅子を用意して私の隣に座ってきた。

「あ、夕ちゃんもいるじゃないですか」

『助けてください』

「えへへ、無理ですよ夕ちゃん、サラちゃんから逃げるのは至難の業です」

 そんな事を喋りながら楽しんでいる三人とは裏腹に、私の胸中は穏やかではなかった。理由はもちろん、隣に座る幽霊少女こと音無マリアという人物がわからなくなっているからだ。
 確かに初めは変なやつで友達もいないやつだと思っていたけど、今日感じたのは、マリアはその持ち前の明るさと気取らない態度で意外にも周りの人間から支持されているという所だ。

 そんなマリアに対して嫉妬しているわけでも、独占欲が強くマリアを取られたくないと思っているわけでもない、けれど、さっきのマリアを見てどうにも胸の内が収まらない。

 この気持ちは一体何なんだろう? 

「零さん」

 私はマリアに名前を呼ばれフワフワと浮かんでいた意識を現実へと戻された。

「な、何?」

「どうしたんですか暗い顔しちゃって」

「そんなことないけど」

「そうですか、そうだ、今日、夕ちゃんの家に泊まりに行ってもいいですか?」

 唐突にそんなことを言うマリアに対し千野さんは意外にも『OK』という返事を返していた、普段からよく行ってるのだろうか、いや、でも最近知り合ったばかりとも言っていたし。

「やーん、私も行きたいわ夕ちゃん」

 ゆさゆさと千野さんを揺らしながらダダを捏ねる更科先生に千野さんは『ごめんなさい』という返答を返し、更科先生はがっくりとうなだれた。

「今日はJK三人の初めてのお泊り会ですから、サラちゃんはまた今度ということで」

「・・・・・・そうね、三人で楽しんできて」

 私はその三人の中に更科先生が含まれていないことに気づき、マリアの顔を見ると、彼女は満面の笑みをみせてきた。

「な、なに?」

「零さんも一緒に行きましょう、夕ちゃんならきっと許してくれます」

「もしかして私も千野さんの所に泊まりに行くの?」

「そうですよ、夕ちゃん零さんも一緒にいいですよね?」

『はい』

「でも、千野さん急にそんなの大丈夫なの?」

『大丈夫です』

 更科先生にその身を渡してしまったというのに、私を泊めてくれる千野さんは私の知る限り最も懐の深い人なのだろう。

 そんなマリアの突拍子もない発言による実行となった千野家お泊りパーティに私は参加することになった。私は自宅に帰りお泊りの準備をしていた、しかし、今まで人の家に泊まったことがない私はどんなものを用意していけばいいのか悩んでいた。

 パジャマと化粧品と、それからお菓子とかも持っていったほうがいいんだろうか?

 そんな事を思いながら準備していると、途中ユダに「らしくない」とバカにされたが、この後すぐに千野さんの所に泊まりに行くと伝えると、ユダはご飯の心配をして私にすがりついてきた。

 だが、そんなことはお構いなくベッドの上に放り投げた。

 そうして私はひと通りの準備を終えた後一段落して目覚まし時計で時刻を確認すると、5時30分を示していた。

 夕食はみんなで作るということになっており、食材はマリアが揃えてくれるらしい、一体何を作るのやら気になるが今はそれよりもどうして泊まりに行くことを了承してしまったのかという点だ。

 保健室で言われた時はすこしばかり心がワクワクしてしまったのだが、今はもう逃げ出したい気持ちでいっぱいだ、むしろ今からでも千野さんの所にいって断ったほうがいいんじゃないだろうか?

 そう思った私だったが、どうせ家で何もすることのない私にとってこれ以上ない暇つぶしであることで脳内決着をつけた私は言い逃れできぬようさっさと千野さんのマンションに向うことにした。

 マンションに入る前に大きなガラス張りの自動ドアが立ちふさがっており、私は千野さんに教えられた部屋番号のボタンを押して連絡を待つと、すぐに自動ドアが開かれた、すごいセキュリティだ。

 そして404号室の前につき、インターフォンをならすと玄関の鍵が開けられて『ようこそ我が家へ、お好きな様にくつろいで下さい』と書かれたスケッチブックを持ちながら千野さんがわざわざ出迎えてくれた。

「ありがとう、それじゃあ失礼します、いやぁこのマンションの階段も中々いいね、なんか無機質すぎる感じが私の魂に響いてくるかも」

 思わず、階段の魅力に取りつかれた発言をしてしまった。すると千野さんがびっくりした表情を見せた。

『階段で来られたんですか?』

「あ、うん」

 無表情ながらも、彼女の目は奇人変人を目の当たりにした様に私を見つめてるような気がした。

 私はそんn千野さんの目をそらしつつ玄関を入らせてもらうと、すぐにリビングに繋がるきれいな廊下があり、途中にはバスルームやら綺麗なキッチンがあった。
 我が家に比べると部屋の広さはあんまり変わらないものの随分と良い設備であることを実感しつつ少しだけ落胆した。

 リビングに入ると中は綺麗に掃除されており、ベッドにテレビ、そして季節外れのこたつが置いてあったりたくさんのぬいぐるみがベッドの上を占領しており、非常に可愛らしい部屋になっていた。

『マリちゃんはもうすぐ着くそうです』

 マリちゃん、千野さんはそう呼ぶのか。そんな彼女はスケッチブックを見せながら私同様にこたつの中に入った。

『友沢さん、お泊りとか嫌じゃなかったですか?』

「そんなことないよ、今日は泊めてくれてありがとう、っていうか私のことは零でいいよ、よそよそしいとめんどく
さいでしょ」

『・・・・・零さん』

 まぁ、紙に書かかれただけだから呼ばれたということにはならないのだが、名前という認識さえ持ってもらえれば十分か。

『では、私のことは夕と呼んで下さい』

「・・・・・・夕ちゃん」

『ちゃん付けですか?』

「あ、あれ、嫌だった?」

 何やらちゃんづけに疑問を持った夕ちゃんにその呼び方は嫌だったのかを聞くと頭をぶんぶんと振りながら否定した後、しばらく顔をあわせてくれなかった。
 そんな静かな時間を過ごしていると部屋にインターフォンの音が鳴り響き、夕ちゃんが応対したあとすぐにマリアがやって来た。

 両手にパンパンに膨らんだナイロン袋を持ったマリアがこたつの上に荷物をどっしりと乗せてきた。その様子は女子高生ナンバーワン主婦の称号を与えたいと思う程、様になっていた。

「いやー、肩が凝りました、あ、零さんきてたんですね」

「うん」

「今日はめいっぱい楽しみましょうね」

 そう言って私にベタベタとくっついてくるマリア、そんな姿をみていた夕ちゃんは私達に『晩御飯の支度をしましょう』というメッセージをめいいっぱい私達の顔に近づけてきた。

 時刻は6時を過ぎた頃、今から作れば7時ごろには晩御飯を頂くことが出来るだろう、しかし、ほとんど自炊をしない私にとって今のこの状況は非常にやりづらい、そしてマリアと夕ちゃんはどれほどの女子力を持っているのかが見どころだ。

「で、その袋には一体どれだけの食材が入ってるの?」

「えーっとですね、今日は簡単にカレーを作って、それから簡単にデザートなんかも作って」

『じゃあ、私はデザートを作っておきましょうか?』

「そうですね、じゃあ、夕ちゃんにデザートをお願いしますから、零さんは・・・・・・」

「な、何?」

「じっとしてて下さい」

 マリアの無慈悲な言葉に少しだけ安心した。あぁ、料理はろくにできないのさ。けれど、こういう時は意地でも張りたくなるものだ。

「な、なにさ、私だって料理の1つや2つくらい」

「コンビニ通いの零さんが?」

「それは、前にも言ったけど栄養のある食品は結構増えてきていて・・・・・・いろいろあるんだけど」

『零さんは初めてなのでゆっくりしてて下さい』

 ついには夕ちゃんからも無能扱い、そうか、私が家事ができないことを完全に見抜かれているのか。そんなこんなでマリアと夕ちゃんに寄る簡単クッキングは始まり、私はこたつに突っ伏し料理ができるまでの間少しだけ眠っておくことにした。
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