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不思議な友達編
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しかし、そんな夢旅行の旅も支度段階で目覚めてしまい、目を開けると、そこにはぼやけたマリアの顔があり、徐々に視界が晴れてくると私の方を見てにやにやしていた。
私はその顔をしばらく眺めた後デコピンをした。悶絶するマリアは放っておき、反対側に顔を向けるとこっちには夕ちゃんの顔があった。二人は料理もせずに何をしているのだろう、そう思いながらも私は夕ちゃんの頭を優しくなでた。
「ちょっと、私と夕ちゃんではえらく態度が違いますね零さん」
目覚まし時計ばりに寝起きにはキツイ大声を聞かされた私は、耳がキンとした。
「あー、頭に響くから静かにして」
「ふん、もういいです、二人共早くご飯食べましょう」
そうか、もうご飯できていたのか、私はすぐに立ち上がりせめて盛りつけくらいはしようと思い、立ち上がって台所に向かうマリアを追いかけた。
「も、盛り付けくらいは手伝うよ」
「あ、はい、お皿はそこの棚に入ってますので」
他人の家にえらく詳しいマリアの指示通りに、棚から皿を出し鍋に入ったカレーを盛り付けた。
隣では三人分のサラダを取り分けるマリアと、遅れてやってきた夕ちゃんがお盆を持って私の側に来てくれていて、盛り付けが終わると彼女が持つお盆に皿を乗せていった。
こたつの上にカレーとサラダを並べて私達は合掌をしようとした時、夕ちゃんが慌てて席を離れ、そしてお盆に何かを乗せて戻ってきた。
「あれ、まだ何かあるの?」
私が夕ちゃんに尋ねると遠慮気味に頷いて、カレーの横に煮物をおいてくれた。
カレーに煮物、なんとも言いがたい組み合わせだが、まぁカレーも煮物も似たようなもんだから、大して驚くことはないかもしれない、しかし、この2つが並ぶとかなりインパクトのある絵になってしまった。
「これ、夕ちゃんが作ったの?」
「そうですよ、えーっと確かなんて言うんでしたっけ?」
マリアは何度か食べたことがあるようで必死に料理名を思い出そうとしている。
『にしめです、よかったらどうぞ』
「にしめ?」
「そうそうにしめです、夕ちゃんのふるさとの味らしいですよ」
「へー、夕ちゃんの出身って何処なの?」
『青森です』
「青森かぁ」
「はい、知ってますか零さん?」
「知ってるよ、イカでしょ、イカちゃんが有名な所」
「イカというより、りんごじゃないですか?」
「いや、イカだから」
「りんごですよー」
そんな地元でもないはずの青森談義をしていると夕ちゃんが控えめにスケッチブックを私とマリアに見せてきた
『せんべい汁ですよ?』
「「・・・・・・」」
随分とローカルな意見に他府県民であるの私達はすっかり意気消沈してしまった、夕ちゃんの前で地元でもないのに必死になるのはやめた方がいいのかもしれない。
『にしめ、お口にあうといいんですが』
心配そうな夕ちゃんを一目見た後に、私は早速にしめとやらを口に入れた。なるほど普通の煮物に比べて素朴な味付けだけど、これは中々美味しい、若干とろみがかっているせいもあるのかどんどん胃の中に吸い込まれていく。
「おいしいよこれ」
「えー、ビニ飯常習者が郷土料理の美味しさを分かるんですか?」
「なにかいった?」
私が睨むとマリアはすぐさまデコを隠して怯えた。
「そんなことよりも、夕ちゃんこれ美味しいよ」
『良かったです』
「私も好きですよ、この素朴で胃に優しい感じが心にも体にもしみこんできます」
マリアもカレーをよそにどんどん煮しめを口に運んでいく、そして今度はマリアが作ったというカレーを口に運んだ。マリアが作ったカレーは少し甘口にできており彼女の舌の性格がよくわかった。
そんな事を思いながら、マリアに味の感想でも言おうとした時、彼女は隣で何やら奇妙な行動をしていた。
「マリア、何してるの?」
「え、なにしてるって、マシュマロですよ」
そう、マリアはカレーにマシュマロをぶっかけていた。
フワフワした印象はこんなところからきていたのだろうか、キャラ作りのためにそんなことまでするとは。
「な、何ですかその目は、やめて下さい零さんそんな目で見ないで下さい」
そう言って急に涙目になりながら真っ赤な顔を隠すマリア、なんだ、見られるのは嫌ならはじめからしなければいいのに?
そんなマリアとは対照的に黙々とカレーを頬張る夕ちゃんは目の保養になる、なんたって小さな口でカレーを頬張って、リスみたいだ。
「マリア、それビニ飯よりやばいと思うんだけど」
「そ、そんなことないです、美味しいんですからいいじゃないですか、むしろカレーなんてこれくらいしないと食べられたものじゃないんですよっ」
「いや、やり過ぎだと思う、ねぇ夕ちゃん」
私が夕ちゃんに話しかけると私の言葉に反応すること無く必死に食べている・・・・・・そうだよねご飯の時はお喋りはだめだよね。
そして、夕食も終わると真っ先に食べ終えた夕ちゃんがキッチンで皿洗いをしており、私は食器拭きを手伝うことにした。
「ごちそうさま夕ちゃん、皿洗い手伝うね」
「・・・・・・」
そうか、いつも筆談だから返事してくれないのか、でも、そういえばどうして喋ってくれないんだろう?
いや、今ならめちゃくちゃ話しかけて夕ちゃんを困らせたり出来そうだけど、まだ知り合って間もない人にそんな事するのは少しばかりデリカシーが無いっていうものだろうか。
しかし、やってみたい。
困った夕ちゃんが、仕方なく喋ってしまうかもしれないという状況が見たい、そして、それがきっかけで更に仲良く慣れるかもしれない。
「ねぇ夕ちゃん?」
「・・・・・・っ」
私が夕ちゃんに声を掛けると彼女は身体をびくつかせた
「ごめんね急に、私なんかが泊まりに来ちゃって」
「・・・・・・ぁ」
夕ちゃんはそわそわしとして皿洗いに集中できなくなっており、今にも声を上げそうになっている。
「だから何かあったら何でも言って、私の出来る事ならなんでもするから、たくさん私に言ってよ」
私が耳元でヒソヒソとそう言うとゆーちゃんは皿をシンクに落とし、すぐにリビングに走って行ってしまった。
そんな様子にマリアもびっくりしているで騒いでいる声が聞こえたと思ったら、夕ちゃんがスケッチブックをもって私に突進してきた。勢い余ってぶつかったきた夕ちゃんを受け止めた私は床にしりもちをついて、その後スケッチブックに目をやると
『零さんに泊まりに来てもらってとてもワクワクで、ウキウキですごく緊張してて、一緒に寝るとかなると、キャーキャーしちゃいそうで爆発しそうで。とにかく私は大歓迎なのでゆっくりしていって下さい』
夕ちゃんに様子に、あんまりからかうのは止めた方が良いと思った。そうして、すぐさま彼女を抱き起こした後、静かに食器洗いに専念した。
食後の後始末も終わったあと、夕ちゃん手作りの特製プリンを三人でたくさんデコレーションしながら食べた後、夕ちゃん、マリア、私の順番にシャワーを浴びた。
その後、パジャマに着替えた私達は布団の上でトランプに始まり、ホラーDVD鑑賞、マリアによる創作怪談などなど、しょうもなくも楽しい時間を過ごした。
途中、マリアは自己紹介タイムと称した他人紹介を初め、ひたすら一人で私の事や夕ちゃんのことを喋っており、私は憎き女除霊師と紹介され、夕ちゃんは悪魔祓い師に憧れる可愛い女の子と紹介していた。
どうやらマリアは幽霊好きで、夕ちゃんは幽霊を成仏させる側が好きのようだ。あれ、これって対立関係なんじゃないのだろうか?
そんな時間を過ごした私達は、いつの間にか日をまたいでいることと、夕ちゃんがあくびばかり連発していることに気づいて、そろそろ布団に入って寝ることにした。
布団に入ると、さっきまでのマリアの騒がしい声がすっぱりと消え静かな時間が流れ、そんな状況に心地よさを感じながら、私は目を閉じた。
が、すぐにそんな静寂は打ち破られた。
「零さん」
マリアの声だ、さすがに寝る前だからとても優しく静かな声で語りかけてきた
「何?」
「今日楽しかったですか?」
「うん」
「なら良かったです」
「マリアは夕ちゃんの家に何度かきたことあるの?」
「はい、今日で二回目です」
「ふーん、あ、そうだ昨日のことなんだけど、結局夕ちゃんてどうして私に会いたがってたの?」
「あぁ、それはですね・・・・・・」
マリアの話によると、夕ちゃんは青森から一人でこっちに引っ越してきて高校に入学したらしい。
しかし、地元のなまりがぬけない彼女は青森とは全く違う喋り方をする人達にギャップを感じ、このまま喋れば馬鹿にされると思い込み、中々喋ることを出来ずにいた様だ。
そして、それが災いして、教室で人に話しかけられても中々返事する勇気がなくひたすら逃げ回っていたらしい。
でも、そんな時同じように一人で学校中を歩きまわっている私の姿を見てとても親近感をもった夕ちゃんは、私のことをこっそりと尾行していたが、彼女からは私に話しかけることが出来ず、ひたすらストーカーをしていたそうだ。
そんな理由からか、マリアは私が屋上階段にいることを知り、そして、マリアが私と仲が良いことを理由に私と仲良くなれるかもと思って今に至るという。
「しかし、可愛いストーカーがいたものだ」
「はい、人気者ですね零さん」
顔を見なくてもわかる、マリアはどうせニヤニヤ笑っているんだろう。
「その言葉は、そっくりそのままマリアに返すよ」
「え、私は人気者じゃないですよ」
すっとぼけたように話すマリア、今日、教室でたくさんの人間に囲まれていたくせに。
「うそ、今日クラスメートに囲まれてたでしょ?」
「あれは・・・・・・」
「いいじゃん、ああやって人に囲まれればマリアも真っ当な人間になれると思うよ」
「な、何ですか、真っ当な人間じゃないみたいな言い方」
「普通、幽霊ゆうれい言ってる女子高生なんていないから」
「そんな言い方、私だって好きで人に囲まれてるわけじゃないんですから」
「はぁ、贅沢な悩みだこと」
「贅沢でもなんでもありません、私はいつも良いことしか言われないんです」
まぁ、マリアは変人ではあるけど見た目が良くて、悪い人ではなさそうだからそうなっても仕方ないかもしれない。
「更に贅沢な事ですね、もう聞きたくない」
「聞いて下さいよっ」
私の態度にイライラが募ったのか、声をはりあげたマリアに私は少し驚いた。
暗闇で、なおかつ布団の中だとついつい余計なことや本心をおおっぴらに話したくなるのはどうしてだろう。
何時ぞやに更科先生が言っていた事はあながち間違っていはいなかったのかもしれない、と、思ってていると夕ちゃんの方からゴソゴソと寝苦しそうな音を立ててきた。
「マリア、夕ちゃんが起きるから」
「あ、すみません」
私は気まずくなった空気に耐えられずこれを機に眠りにつこうと思ったのだが、マリアの方から更に話しかけてきた。
「結局、私のもと集まる人達は私を仲間にしたいんです」
「仲間?」
「私を一般的な女子高生にしようとするんです、ファッションの事とか、恋愛の事とか高校生として当たり前のことを押し付けてくるんです、私はそれが嫌です」
「当たり前のことは嫌なの?」
「はい」
当たり前に生きる事、それが一番難しいこととか言われるけど、結構な人間がそうやって生きているし、そうしないと生きていけない。
マリアは今、その常識と非常識の狭間で戦っているんだろう。私にしちゃその葛藤ですらバカバカしく思えるほど、当たり前の行為なんてものに興味は持っていない。
「なら断れば?」
「でも、私、人に好意を寄せられると、とても気持ちよくて、今からでも普通の高校生として生きていけば楽しい人生を送れるかもって思ったりもします、私って結構移り気な所もあるので」
「ふぅん」
「でも、やっぱりそうなるのが怖くて許せなくて、零さんや夕ちゃんの様な方と一緒にいることで本来の自分を維持したいんです、幽霊大好きのマリアでいたいんです」
「だから、急遽お泊り会を開いたと」
「・・・・・・はい」
「なにそれ、私はまたマリアに振り回されたってこと?」
「あの、そういうつもりじゃなくて、ただ純粋に零さんともっと仲良くなりたいなって」
「ふーん・・・・・・そういえばついこないだ、マリアはとんでもない理由で私の友達になってって言ったよね」
「はい、断られましたけど」
「じゃあ、私と友達になる?」
「ええっ、なんですか急に?」
「マリアの変な理由で友達になるのは嫌だけど、私から友だちになってくれるよう言ったらそうでもなくなるかなって」
自分でも何を言っているのかわかりかねたが、どうにもマリアと出会ってからの私は別人のように変わっていっているような気がする。
「えっ、それって」
「ならないなら、それはそれで別に構わないけどさ」
「な、なります、なってくださいっ」
「・・・・・・あっそ」
そうだ、私は友達がいらないとは思っていない。むしろ友達がいてくれたほうが嬉しい。だって、私は寂しがり屋の普通の高校生だから、友達がいるほうが断然楽しいと思っている。
ただ、その理由が幽霊と出会えるとかそういう理由なのは非常に気に食わない、だから私から友達にならないかといえば、私個人としては納得の行く友情関係を結ぶことが出来る。
どうあったってマリアの思惑通りになる駒になんかなってやるものか。あと、こんな柄にもないことを言ったのは、妙に懐いている夕ちゃんと更に仲良くなるためだ。
マリアと離れてしまってはいくら私に興味がある夕ちゃんといえど今の関係性では彼女との距離が離れてしまう。
マリアがいつの日か言った私といると幽霊に会う確率が高くなると思っているように私もマリアと入れば夕ちゃんと一緒にいる時間が増えることになる・・・・・・あれ、こんな理由じゃ私もマリアと対して変わらないか?
「じ、じゃあ、握手しますか」
「は?」
「あ、ハグですか、いやキスとかですかね」
隣でゴソゴソと私に見を寄せてくるマリアに私は布団で身を隠した。
「何いってんの?」
「いや、友だちになれたことですしやっぱりそういう儀式をしなきゃいけないかなと思いまして」
「本当バカ、何いってんの?」
「ば、バカじゃないですよ」
夜も遅いというのに再び騒ぎ出す私達、しかし、そんな騒いでいる中、変な音が聞こえてくるのに私は気づいた。そう、それはまるで何かをすすっているような音だった。
私はその顔をしばらく眺めた後デコピンをした。悶絶するマリアは放っておき、反対側に顔を向けるとこっちには夕ちゃんの顔があった。二人は料理もせずに何をしているのだろう、そう思いながらも私は夕ちゃんの頭を優しくなでた。
「ちょっと、私と夕ちゃんではえらく態度が違いますね零さん」
目覚まし時計ばりに寝起きにはキツイ大声を聞かされた私は、耳がキンとした。
「あー、頭に響くから静かにして」
「ふん、もういいです、二人共早くご飯食べましょう」
そうか、もうご飯できていたのか、私はすぐに立ち上がりせめて盛りつけくらいはしようと思い、立ち上がって台所に向かうマリアを追いかけた。
「も、盛り付けくらいは手伝うよ」
「あ、はい、お皿はそこの棚に入ってますので」
他人の家にえらく詳しいマリアの指示通りに、棚から皿を出し鍋に入ったカレーを盛り付けた。
隣では三人分のサラダを取り分けるマリアと、遅れてやってきた夕ちゃんがお盆を持って私の側に来てくれていて、盛り付けが終わると彼女が持つお盆に皿を乗せていった。
こたつの上にカレーとサラダを並べて私達は合掌をしようとした時、夕ちゃんが慌てて席を離れ、そしてお盆に何かを乗せて戻ってきた。
「あれ、まだ何かあるの?」
私が夕ちゃんに尋ねると遠慮気味に頷いて、カレーの横に煮物をおいてくれた。
カレーに煮物、なんとも言いがたい組み合わせだが、まぁカレーも煮物も似たようなもんだから、大して驚くことはないかもしれない、しかし、この2つが並ぶとかなりインパクトのある絵になってしまった。
「これ、夕ちゃんが作ったの?」
「そうですよ、えーっと確かなんて言うんでしたっけ?」
マリアは何度か食べたことがあるようで必死に料理名を思い出そうとしている。
『にしめです、よかったらどうぞ』
「にしめ?」
「そうそうにしめです、夕ちゃんのふるさとの味らしいですよ」
「へー、夕ちゃんの出身って何処なの?」
『青森です』
「青森かぁ」
「はい、知ってますか零さん?」
「知ってるよ、イカでしょ、イカちゃんが有名な所」
「イカというより、りんごじゃないですか?」
「いや、イカだから」
「りんごですよー」
そんな地元でもないはずの青森談義をしていると夕ちゃんが控えめにスケッチブックを私とマリアに見せてきた
『せんべい汁ですよ?』
「「・・・・・・」」
随分とローカルな意見に他府県民であるの私達はすっかり意気消沈してしまった、夕ちゃんの前で地元でもないのに必死になるのはやめた方がいいのかもしれない。
『にしめ、お口にあうといいんですが』
心配そうな夕ちゃんを一目見た後に、私は早速にしめとやらを口に入れた。なるほど普通の煮物に比べて素朴な味付けだけど、これは中々美味しい、若干とろみがかっているせいもあるのかどんどん胃の中に吸い込まれていく。
「おいしいよこれ」
「えー、ビニ飯常習者が郷土料理の美味しさを分かるんですか?」
「なにかいった?」
私が睨むとマリアはすぐさまデコを隠して怯えた。
「そんなことよりも、夕ちゃんこれ美味しいよ」
『良かったです』
「私も好きですよ、この素朴で胃に優しい感じが心にも体にもしみこんできます」
マリアもカレーをよそにどんどん煮しめを口に運んでいく、そして今度はマリアが作ったというカレーを口に運んだ。マリアが作ったカレーは少し甘口にできており彼女の舌の性格がよくわかった。
そんな事を思いながら、マリアに味の感想でも言おうとした時、彼女は隣で何やら奇妙な行動をしていた。
「マリア、何してるの?」
「え、なにしてるって、マシュマロですよ」
そう、マリアはカレーにマシュマロをぶっかけていた。
フワフワした印象はこんなところからきていたのだろうか、キャラ作りのためにそんなことまでするとは。
「な、何ですかその目は、やめて下さい零さんそんな目で見ないで下さい」
そう言って急に涙目になりながら真っ赤な顔を隠すマリア、なんだ、見られるのは嫌ならはじめからしなければいいのに?
そんなマリアとは対照的に黙々とカレーを頬張る夕ちゃんは目の保養になる、なんたって小さな口でカレーを頬張って、リスみたいだ。
「マリア、それビニ飯よりやばいと思うんだけど」
「そ、そんなことないです、美味しいんですからいいじゃないですか、むしろカレーなんてこれくらいしないと食べられたものじゃないんですよっ」
「いや、やり過ぎだと思う、ねぇ夕ちゃん」
私が夕ちゃんに話しかけると私の言葉に反応すること無く必死に食べている・・・・・・そうだよねご飯の時はお喋りはだめだよね。
そして、夕食も終わると真っ先に食べ終えた夕ちゃんがキッチンで皿洗いをしており、私は食器拭きを手伝うことにした。
「ごちそうさま夕ちゃん、皿洗い手伝うね」
「・・・・・・」
そうか、いつも筆談だから返事してくれないのか、でも、そういえばどうして喋ってくれないんだろう?
いや、今ならめちゃくちゃ話しかけて夕ちゃんを困らせたり出来そうだけど、まだ知り合って間もない人にそんな事するのは少しばかりデリカシーが無いっていうものだろうか。
しかし、やってみたい。
困った夕ちゃんが、仕方なく喋ってしまうかもしれないという状況が見たい、そして、それがきっかけで更に仲良く慣れるかもしれない。
「ねぇ夕ちゃん?」
「・・・・・・っ」
私が夕ちゃんに声を掛けると彼女は身体をびくつかせた
「ごめんね急に、私なんかが泊まりに来ちゃって」
「・・・・・・ぁ」
夕ちゃんはそわそわしとして皿洗いに集中できなくなっており、今にも声を上げそうになっている。
「だから何かあったら何でも言って、私の出来る事ならなんでもするから、たくさん私に言ってよ」
私が耳元でヒソヒソとそう言うとゆーちゃんは皿をシンクに落とし、すぐにリビングに走って行ってしまった。
そんな様子にマリアもびっくりしているで騒いでいる声が聞こえたと思ったら、夕ちゃんがスケッチブックをもって私に突進してきた。勢い余ってぶつかったきた夕ちゃんを受け止めた私は床にしりもちをついて、その後スケッチブックに目をやると
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その後、パジャマに着替えた私達は布団の上でトランプに始まり、ホラーDVD鑑賞、マリアによる創作怪談などなど、しょうもなくも楽しい時間を過ごした。
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どうやらマリアは幽霊好きで、夕ちゃんは幽霊を成仏させる側が好きのようだ。あれ、これって対立関係なんじゃないのだろうか?
そんな時間を過ごした私達は、いつの間にか日をまたいでいることと、夕ちゃんがあくびばかり連発していることに気づいて、そろそろ布団に入って寝ることにした。
布団に入ると、さっきまでのマリアの騒がしい声がすっぱりと消え静かな時間が流れ、そんな状況に心地よさを感じながら、私は目を閉じた。
が、すぐにそんな静寂は打ち破られた。
「零さん」
マリアの声だ、さすがに寝る前だからとても優しく静かな声で語りかけてきた
「何?」
「今日楽しかったですか?」
「うん」
「なら良かったです」
「マリアは夕ちゃんの家に何度かきたことあるの?」
「はい、今日で二回目です」
「ふーん、あ、そうだ昨日のことなんだけど、結局夕ちゃんてどうして私に会いたがってたの?」
「あぁ、それはですね・・・・・・」
マリアの話によると、夕ちゃんは青森から一人でこっちに引っ越してきて高校に入学したらしい。
しかし、地元のなまりがぬけない彼女は青森とは全く違う喋り方をする人達にギャップを感じ、このまま喋れば馬鹿にされると思い込み、中々喋ることを出来ずにいた様だ。
そして、それが災いして、教室で人に話しかけられても中々返事する勇気がなくひたすら逃げ回っていたらしい。
でも、そんな時同じように一人で学校中を歩きまわっている私の姿を見てとても親近感をもった夕ちゃんは、私のことをこっそりと尾行していたが、彼女からは私に話しかけることが出来ず、ひたすらストーカーをしていたそうだ。
そんな理由からか、マリアは私が屋上階段にいることを知り、そして、マリアが私と仲が良いことを理由に私と仲良くなれるかもと思って今に至るという。
「しかし、可愛いストーカーがいたものだ」
「はい、人気者ですね零さん」
顔を見なくてもわかる、マリアはどうせニヤニヤ笑っているんだろう。
「その言葉は、そっくりそのままマリアに返すよ」
「え、私は人気者じゃないですよ」
すっとぼけたように話すマリア、今日、教室でたくさんの人間に囲まれていたくせに。
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「あれは・・・・・・」
「いいじゃん、ああやって人に囲まれればマリアも真っ当な人間になれると思うよ」
「な、何ですか、真っ当な人間じゃないみたいな言い方」
「普通、幽霊ゆうれい言ってる女子高生なんていないから」
「そんな言い方、私だって好きで人に囲まれてるわけじゃないんですから」
「はぁ、贅沢な悩みだこと」
「贅沢でもなんでもありません、私はいつも良いことしか言われないんです」
まぁ、マリアは変人ではあるけど見た目が良くて、悪い人ではなさそうだからそうなっても仕方ないかもしれない。
「更に贅沢な事ですね、もう聞きたくない」
「聞いて下さいよっ」
私の態度にイライラが募ったのか、声をはりあげたマリアに私は少し驚いた。
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「マリア、夕ちゃんが起きるから」
「あ、すみません」
私は気まずくなった空気に耐えられずこれを機に眠りにつこうと思ったのだが、マリアの方から更に話しかけてきた。
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「仲間?」
「私を一般的な女子高生にしようとするんです、ファッションの事とか、恋愛の事とか高校生として当たり前のことを押し付けてくるんです、私はそれが嫌です」
「当たり前のことは嫌なの?」
「はい」
当たり前に生きる事、それが一番難しいこととか言われるけど、結構な人間がそうやって生きているし、そうしないと生きていけない。
マリアは今、その常識と非常識の狭間で戦っているんだろう。私にしちゃその葛藤ですらバカバカしく思えるほど、当たり前の行為なんてものに興味は持っていない。
「なら断れば?」
「でも、私、人に好意を寄せられると、とても気持ちよくて、今からでも普通の高校生として生きていけば楽しい人生を送れるかもって思ったりもします、私って結構移り気な所もあるので」
「ふぅん」
「でも、やっぱりそうなるのが怖くて許せなくて、零さんや夕ちゃんの様な方と一緒にいることで本来の自分を維持したいんです、幽霊大好きのマリアでいたいんです」
「だから、急遽お泊り会を開いたと」
「・・・・・・はい」
「なにそれ、私はまたマリアに振り回されたってこと?」
「あの、そういうつもりじゃなくて、ただ純粋に零さんともっと仲良くなりたいなって」
「ふーん・・・・・・そういえばついこないだ、マリアはとんでもない理由で私の友達になってって言ったよね」
「はい、断られましたけど」
「じゃあ、私と友達になる?」
「ええっ、なんですか急に?」
「マリアの変な理由で友達になるのは嫌だけど、私から友だちになってくれるよう言ったらそうでもなくなるかなって」
自分でも何を言っているのかわかりかねたが、どうにもマリアと出会ってからの私は別人のように変わっていっているような気がする。
「えっ、それって」
「ならないなら、それはそれで別に構わないけどさ」
「な、なります、なってくださいっ」
「・・・・・・あっそ」
そうだ、私は友達がいらないとは思っていない。むしろ友達がいてくれたほうが嬉しい。だって、私は寂しがり屋の普通の高校生だから、友達がいるほうが断然楽しいと思っている。
ただ、その理由が幽霊と出会えるとかそういう理由なのは非常に気に食わない、だから私から友達にならないかといえば、私個人としては納得の行く友情関係を結ぶことが出来る。
どうあったってマリアの思惑通りになる駒になんかなってやるものか。あと、こんな柄にもないことを言ったのは、妙に懐いている夕ちゃんと更に仲良くなるためだ。
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マリアがいつの日か言った私といると幽霊に会う確率が高くなると思っているように私もマリアと入れば夕ちゃんと一緒にいる時間が増えることになる・・・・・・あれ、こんな理由じゃ私もマリアと対して変わらないか?
「じ、じゃあ、握手しますか」
「は?」
「あ、ハグですか、いやキスとかですかね」
隣でゴソゴソと私に見を寄せてくるマリアに私は布団で身を隠した。
「何いってんの?」
「いや、友だちになれたことですしやっぱりそういう儀式をしなきゃいけないかなと思いまして」
「本当バカ、何いってんの?」
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