過霊なる日常

momono

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猫地蔵編

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 月も変わって5月。4月の終わりにマリアと夕ちゃんと仲良くなってから、急に仲良くするわけでもなく、私は普段通り学校生活を送っていた。

 そして、たまに夕ちゃんが私のもとに訪れた時は旧理科準備室で、ホラー映像を見るという、普段の平穏な日々から少し脱却した学園生活を送っていた。

 ちなみに、最近では私の手入れが行き届いているのか学校中の階段が非常に綺麗で心地よい。だけど今はゴールデンウィーク、学校校舎はカギを掛けられ入ることが出来ない。

 あの、用務員のエロ爺に頼んだら入れてもらえるかもしれないが、その代償として一体どんな要求をされるかわかったもんじゃないから頼まない。

 それに加えて、あの忌々しい学ランメガネ幽霊を退治してから私の生活は一変した。

 ユダがくっついている間は、あからさまに幽霊の姿を視認できるようになったし、自宅の近くには毎日のようにカメラを持った変態幽霊がいるわで、私の生活は今までとははるかに違うものへと変貌していっている。

 なんといっても、私の隣には床を這いずりまわる一匹のヘビの姿にはいまだになれないものだ。

 学校に入学してからというもの、ずっと目にしていたそのヘビは、なんと言葉を喋り、幽霊退治まで出来る恐ろしい生き物であった。そして、そんなヘビはというと私の隣で騒いでいた。

「零、これめっちゃ上手いなぁ、何なんやこれ、なぁほんま何なんやこれ?」

「うるさいなぁ、ただのチョコでしょ」

「これがめちゃくちゃうまいんやー」

 すっかり、このヘビと会話することも日常になってしまった私にとって、今までの静かな生活に戻ることは一生無理なのかもしれない。
 ていうか、ヘビの食事って丸呑みするもんじゃないのだろうか?めちゃくちゃバリバリ噛んでるんだけど。

 なんてことを考えていると、突然部屋のインターフォンが鳴り響いた。だが、居留守を使い放置していると、私の携帯電話が振動し始めた。

 すぐに携帯の画面を確認すると、画面には夕ちゃん家にお泊りした時に登録したマリアの電話番号が表示されており、私はしぶしぶ電話にでることにした。

「はい、もしもし」

「あー零さん、今何処にいるんですか?」

「なんで?」

「いやぁ、今、零さんのおうちに来てるんですけど、なんだか留守みたいでしたし」

 なるほど今の呼び鈴はマリアだったのか、そう思い玄関の鍵を開けようとしたが、直前の所で私は踏みとどまった。

 待て、これからもしマリアを中にいれたとして一体何をするんだ、遊ぶものもないし話をするだけ?

 それともまた幽霊の話をマリアから聞かされるなんてことは、いやいや、もしのそうなのであれば、勘弁してもらいたい。

 そうだ、このままどこかにいることにしてマリアを帰らせようか、いや、でもせっかく来てくれたのに、帰らすのも中々鬼畜、というか人間としてどうかと思うし・・・・・・あぁどうしよう。

 なんて事を考えていると突然玄関のほうでガチャリという物音が聞こえすぐに確認しに行くとドアノブにぶら下がるヘビの姿があった。

「あ、あけてくれたんですね、入っていいですか?」

 電話越しから聞こえてくるうれしそうな声に、私はゾッとした。

「え、ちょっと待って」

 そうしてマリアは玄関を開けて部屋に入ってきた。私はユダを見られまいとすかさずドアに駆け寄りユダを隠すようにマリアを招き入れた。

「零さんこんにちわ」

「あ、うん」

 私はとりあえずマリアを部屋の中に入れ適当な所に座らせた。

「すみません突然来てしまってご迷惑でしたか?」

「迷惑、だっ」

「えー、そんなこと言わずに」

「迷惑だから、もう帰ってほしい」

「そんなこと言わないでくださいよ零さん、えへへへ」

 マリアは問答無用で突然私に抱きついてきた、なんだってそんなに身体を近づけてくるんだ。

「な、何でいきなり抱きつくのさ」

「いや、躓いちゃって」

 そう言って離れた後、私の全身を舐めるように見て来るマリアはなんだか険しい顔をしていた。

「何の用、私は休日を堪能してるんだけど」

「実はですね、旅行に行けることになりまして」

「自慢とか神経疑うわ」

「ち、違いますよ、ほら温泉旅館の宿泊券です、二人分」

「温泉旅館?」

 どうやら、マリアの話によると、恭子先生がゴールデンウィークで旅行に行くつもりだったのだが、知り合いにドタキャン、挙句、先生自身にも急な仕事が入ってしまったということで、マリアに提供したとのことらしい。

 幸運なこととは思うが、恭子先生が不憫でなんだか申し訳ない気持ちになってくる。しかし、二人分というと、私はともかく夕ちゃんは誘わなかったのだろうか?

「私じゃ無くて夕ちゃん誘わなかったの?」

「先に誘ってたんですけど、夕ちゃん青森に帰省するらしいんです、夕ちゃんも急用だとか何とかで」

「ふーん、っていうことは私は夕ちゃんの穴埋めか」

「違いますよ、チケットは二人に渡して、私は自腹で行こうと思ってたんですよ」

 ・・・・・・なんだこいつ、本当にそんなことを思っていたのか?

「怪しい」

「本当ですよ、三人で楽しみたいじゃないですかぁ」

 落ち込むマリアに、私はまるでマリアをいじめる悪人になったようで少し納得いかなかった。いや、あながち間違ってはいないかもしれないけどなんか納得行かない、第三者が欲しい。

 しかし、マリアの話が嘘でも本当でも、そうやって「私は自腹で行きます」なんて言ったらめちゃくちゃいい子にしか見えなくなってしまう。

「そ、それで、行きませんか零さん?」

「あ、余ってるっていうんなら、どうせ暇だし」

「え、暇だから何ですか」

「いや、だから暇だし」

「何ですって?」

「い、行くって言ってんの」

 素直になれないことに少々苛立ちつつも、こんな夢のようなお誘いを断る理由のない私は少しうきうきしていた。
こんな、夢のような展開本当に現実であり得るとは思わなかった。

「やたー、決まりですよ零さん、じゃあ明日の朝、駅前でよろしくお願いしますね」

「明日?」

「そうですよ、夏休みじゃないんですからゴールデンウィークはすぐに終わってしまいますよ」

 そう言って、目的を終えたマリアは足早に家から出て行ってしまった。それなら私の家に来ることもなかろうに、どうしてこんなところまで足を運んできたのだろう。そう思っていると階段を騒がしく鳴らしながら再び私の部屋に戻ってきた。

「忘れてました」

 マリアは息を荒げうなだれながら、不気味に私に近寄ってきた。

「今から明日の買い出しに行きましょう」

 マリアの突拍子もない提案にもはや抵抗するのも無駄だと思った私は近くのショッピングモールに来ていた。

 隣にはウキウキのマリアがご機嫌に鼻歌を歌いながら歩いている、何がそんなに楽しいのか、私はただでさえ休日のショッピングモールにいくことがストレスで寿命が縮みそうなのに。

 どうやらマリアにはどうしても揃えていきたいものがあるらしく、私はその買い物に付き合わされている。

 わざわざ私を連れて行くまでもないと思うのだけど「買い物というのは一人でするよりも誰かといっしょにするほうが良いんですよ」と満面の笑顔で言うマリアに、ついつい付いて来てしまった。

 決して楽しそうだからというわけではなく個人的にショッピングモールに買いたいものがあるからついででついっていったまでだ。

 勿論ユダはお留守番、一緒にいると余計なものが見えてしまうから。

 そうして、いつの間にか私の元を離れてエスカレーターに乗るマリアに私はまるで子連れの父親のようなため息を着いて彼女の後ろを追いかけた。

 着いた場所は家電量販店、電気製品なら何でもお任せの「グリーンエレキ」というお店で店員は全員緑の制服を着ていた。ちょうど何かのイベントやっているのか騒がしい男前と可愛らしい女の子が店員の格好を何やら喋っていた。

 そんなよくわからない家電量販店でマリアは一体何を買うのかと思っていると、彼女は持ち前の行動力で店員さんと話していた。
 本当ああいう行動力は見習いたい、私なら必死で店内を歩き回り必死に目当ての物を探し当てる。

 まぁ、実際問題マリアの行動のほうが何倍も効率的で、なおかつ店員からのオススメを聞くことが出来てお得なのかもしれないが、私は絶対に干渉されたくない主義だ、だって喋るのめんどくさいし。

 そしてようやく目当ての者が見つかったのかマリアが私に向かって大きく手を振っている。

「零さん、見てくださいっ」

 ウキウキとした様子で私に目当ての物を見せてきたマリア、なんとそれはただの懐中電灯だった。

「え、これが欲しかったの?」

「はいっ、これ見てくださいこのライト、スポット照射型の最新式です」

「え、ちょっとよくわかんない」

「もー、最新式ライトですよ、知らないんですか?」

 そんなことを言われてもよくわからないのだが、妙に目をキラキラさせているマリア。

「やはり私はスポット照射型に限ります、拡散も悪くはないんですがやっぱり一点集中型ですし」

「で、それ何に使うの?」

「え、温泉旅行で使うんですよ」

「温泉にライトはいらないでしょ」

「いるんですよそれが、あ、それよりライトのことなんですけど隠密性を上げるために赤外線のやつも良くてですねぇ」

 マリアはその後も延々とライトの話を尽きること無く話し、ようやく落ち着いてきた所で私はマリアの耳を掴んだ。

「あのさ、もういいから早く買いなよ」

 私が若干の怒りを込めた笑顔でそう言うと、彼女は苦笑いしながら「わかりました」と行ってぺたぺたと走って行ってしまった。そして、会計を済ませたマリアは、笑顔で私のもとに戻ってきた。

「で、次はどうするの?」

「次はですねぇ、ペットショップです」

「ペットショップ?」

「はい、零さん何はペットとか好きですか?」

「嫌いではないけど、何でペットショップ?」

「まぁまぁ、いいじゃないですか」
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