過霊なる日常

momono

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猫地蔵編

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 翌朝、以外にも早起きすることができた私は適当に準備をして駅前でマリアと落ち合った。マリアは少し寝ぼけた様子でふらふらとしており、駅のホームで線路に落ちないように支えながら待つ事となった。まったくもって面倒な事だが、これから向かう場所の事を考えると少しだけ心が躍っていた。 

 招喜旅館までの道のりは電車での移動となる。何度か乗り継ぎをして、徐々に車両が少なくなっていく電車旅、それに伴った人の数も減少していき、最終的には一車両に数人しか乗り合わせていない寂しくも快適な電車旅になっていた。

 その頃になると、マリアも目が覚めてきたのかいつもの元気な様子で騒ぎ始めた。

「いやぁ、実は零さんに聞いてもらいたい話がありまして」

「突然なに?」

「とりあえずこの資料を見て下さい」

 そう言って何枚かの紙を渡された。そこには招喜旅館の歴史と沿革が書かれており、その他、様々な旅館情報が書いてある様に思えた。

「これ、わざわざ調べたの?」

「はい、昨日見せたのはなんだか寂しかったものでしたから、一応色々調べて道中の話のネタにでもしようかなと思いまして」

 なるほど、中々気の利いたことをしてくれるのはいいんだけど、なにか今回の旅行にしてもこのマリアの態度にしても裏がありそうで怖い。

「それでですね、注目してもらいたいのは、ここですね、二枚目の最初の方」

 私は言われるがまま二枚目を開き、そこに書いてある文字を見た。

「旅館に潜む恐怖のネコ?」

「はい」

 いや、きっと旅館が営業のために何か奇抜なことをしているんだろう、決してここ最近頭を悩ませる類の物じゃないと信じてる。

「この招喜旅館という所はですね、一昔前までは非常に評判の良い旅館だったんですけど、ここ数十年かはめっきり客足が減ってるらしいです、そしてそんな事が続いたのか、あるいは客寄せのためか、その旅館では不思議な事が起こるようになったそうです」

 なにやら嫌な予感がした私は、マリアの話に割って入った。

「ちょっと待って」

「何ですか?」

「なんかおかしい」

「何がですか?」

 まるで知らん顔をするマリアに苛つきながらも、冷静にマリアの発言を思い返し静かに質問した。

「私、温泉旅行って聞いたんだけど」

「だから温泉旅行じゃないですか」

「温泉旅行に恐怖のネコはいらないっ」

 今からでも帰りたい気分、だが、とっくに招喜旅館行きの列車に乗ってしまっている、私はもはや帰ることすら面倒に思えた。

「ふふん、零さんもう後戻りは出来ませんよ」

 もしかしてマリアはこれを狙っていて、わざわざこの列車に乗り込むまで寝ぼけたふりをして、そして頃合いを見計らって私にこの報告をしたのだろか。そして、目の前のマリアは不敵な笑みを浮かべていた。

「なんで、もっと早く言ってくれなかったの?」

 私は必死に笑顔を作りマリアに問いかけると、マリアはふふんと鼻を鳴らし腕を組んだ。

「それは、勿論、こんなこと零さんに言ったら付いて来てくれないじゃないですか」

「・・・・・・」

「私、意外と頭いいんですよ、これくらいのことは予測していましたよ」

「頭いいかもしれないけど、私に痛い目にあうことも予想しとくとよかったねっ」

 そう言ってすぐそばにあるマリアの頭に強烈なデコピンをお見舞いすると、痛そうにデコを抑えながら私にもたれかかってきた。

「だ、だって零さんと一緒なら絶対楽しくなるだろうと思いまして」

「楽しいって、どうせ幽霊と出会う確率が上がりそうとか何とか言う意味の分からない理屈でしょ」

「勿論そうです、だって実際に零さんは幽霊を退治できるほどの力量を持ってるんですから、あ、何か変なものを見つけたら直ぐに知らせてくださいね」

 変なものと言われても、私だってユダに絡みつかれていない限り見ることは出来ないのに・・・・・・

「あれ、零さん、なんだか機嫌悪くなっちゃいましたか」

 まぁ、でも噂だから普通に旅行を楽しめば良いか、とにかくそういうものを見なければ私は普通の旅館を楽しむことが出来るんだし、恭子先生には感謝感謝か。

「別にもういいや、とりあえず付いたら早速温泉とかがいいなぁ」

「えへへ、ですねぇ」

 マリアはニヤニヤしながら私の事を見て笑っていた。

「なに?」

「いえ、零さん温泉好きなんですか?」

「悪い?」

「いえいえ、新たな発見だなぁって思いまして」

「なにそれ・・・・・・」

「私も一緒に入っていいですか?」

「別に女同士なんだし一緒に入るのは確認するまでもないでしょ」

「あぁ、そうでしたね」

 そうして私とマリアは少しぎこちないながらも招喜旅館という少し気味の悪い場所に向かうことにした。触らぬ神に祟りなし、どんな事が起こったとしても良くないものの蓋を開けないように心掛けながら、これから始まる二泊三日の旅を満喫させてもらおう。

 そうして電車に揺られること数十分、ようやく着いた場所は改札代わりに駅員が直接切符を確認するほどの小さな駅だった。私とマリアは電車から降りて駅員にきっぷを渡した後、目の前に広がった光景に絶句した。
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