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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 第1話
scene4 世話係、大川桜子の証言
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その日は、屋敷で働く桐原さんの同業者の人たちに話を聞くことにした。広い屋敷を把握する意味でもいい選択である。
さて、一番目は現在最も近くにいる大川さんに決めた。僕ははるねちゃんが出て行ったリビングで、大川さんと向かい合って座った。
「主様の前で座るなど……、申し訳ありません」
「主様なんて、そんな重く考えないで下さい。一時的に僕のお世話をしてくれることになっただけですよ」
「一時的とはいえ、主様であることに変わりはありません」
「そう、真面目ですね」
「い、いえ、そんなことはありません」
どうしたのだろう。急にうじうじし始めた。何だか気になるが、とりあえずどうでもいい。
メモ帳とペンを手にして、本題に入った。
「桐原さんを最後に見たのはいつ頃ですか?」
「一週間前の十時頃です。はるねお嬢様を車で送って、帰ってきたあと、厨房をお借りして一緒にお嬢様のお菓子を作っていました。一般的なバタークッキーです。私が教える形で、二人でやっていました」
「教えるってことは、桐原さんは普段、お菓子を作らないんですか?」
「私は茶話担当のメイドでして、お菓子を作ったりお茶を淹れたりするのを職務としております。お嬢様と一緒にお茶を飲んだりすることもあります」
「へえ、メイドにそんな仕事があるなんて知りませんでした」
「この家が特殊なんです。普通はない仕事がいくつかありまして、普通の家より奉公人が多いのです。私の仕事もお嬢様から与えていただいたものです」
大川さんは瞳を輝かせながら話した。
「話を戻しましょうか。桐原さんがお菓子作りをしようと思ったか分かりますか」
「一週間後にお嬢様のお誕生日がありまして、お誕生日パーティを開く予定になっているのですが、そこで手作り、ケーキを召し上がっていただこうと考えておりました。義務教育を終えたという区切りで、今までの感謝を込めてそういうことになったのです。担当するのは桐原さんでしたが、桐原さんはお菓子作りの経験がなかったので、当日に備えてお菓子作りを教えていたのです。彼は忙しいので二週間ほどかけてケーキを作れるようにしておくはずだったのですが……」
一週間後の誕生日パーティでケーキを作る――未来の予定に向けて動いていた人が姿を消した。明らかにおかしい。僕の事務所で感じた嫌な予感は、より一層強くなった。
「……私、絶対にお誕生日パーティを開きたいです。お嬢様のためにずっと腕を磨いてきましたから。でも、そこには桐原さんがいないといけません。私たち使用人にも、お嬢様にも。――メイドの分際で主様にこんなことを言うのは、とても申し訳ないのですが、お願いいたします。一刻も早く桐原さんを見つけて下さいませ」
「はい、全力で探し出します」
僕がそういうと大川さん深々と頭を下げた。
さて、一番目は現在最も近くにいる大川さんに決めた。僕ははるねちゃんが出て行ったリビングで、大川さんと向かい合って座った。
「主様の前で座るなど……、申し訳ありません」
「主様なんて、そんな重く考えないで下さい。一時的に僕のお世話をしてくれることになっただけですよ」
「一時的とはいえ、主様であることに変わりはありません」
「そう、真面目ですね」
「い、いえ、そんなことはありません」
どうしたのだろう。急にうじうじし始めた。何だか気になるが、とりあえずどうでもいい。
メモ帳とペンを手にして、本題に入った。
「桐原さんを最後に見たのはいつ頃ですか?」
「一週間前の十時頃です。はるねお嬢様を車で送って、帰ってきたあと、厨房をお借りして一緒にお嬢様のお菓子を作っていました。一般的なバタークッキーです。私が教える形で、二人でやっていました」
「教えるってことは、桐原さんは普段、お菓子を作らないんですか?」
「私は茶話担当のメイドでして、お菓子を作ったりお茶を淹れたりするのを職務としております。お嬢様と一緒にお茶を飲んだりすることもあります」
「へえ、メイドにそんな仕事があるなんて知りませんでした」
「この家が特殊なんです。普通はない仕事がいくつかありまして、普通の家より奉公人が多いのです。私の仕事もお嬢様から与えていただいたものです」
大川さんは瞳を輝かせながら話した。
「話を戻しましょうか。桐原さんがお菓子作りをしようと思ったか分かりますか」
「一週間後にお嬢様のお誕生日がありまして、お誕生日パーティを開く予定になっているのですが、そこで手作り、ケーキを召し上がっていただこうと考えておりました。義務教育を終えたという区切りで、今までの感謝を込めてそういうことになったのです。担当するのは桐原さんでしたが、桐原さんはお菓子作りの経験がなかったので、当日に備えてお菓子作りを教えていたのです。彼は忙しいので二週間ほどかけてケーキを作れるようにしておくはずだったのですが……」
一週間後の誕生日パーティでケーキを作る――未来の予定に向けて動いていた人が姿を消した。明らかにおかしい。僕の事務所で感じた嫌な予感は、より一層強くなった。
「……私、絶対にお誕生日パーティを開きたいです。お嬢様のためにずっと腕を磨いてきましたから。でも、そこには桐原さんがいないといけません。私たち使用人にも、お嬢様にも。――メイドの分際で主様にこんなことを言うのは、とても申し訳ないのですが、お願いいたします。一刻も早く桐原さんを見つけて下さいませ」
「はい、全力で探し出します」
僕がそういうと大川さん深々と頭を下げた。
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