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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 第3話
scene4 三日目の調査、桐原透吾の部屋
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宣言通り、僕は次の日の午前六時に大川さんに起こされるまでぐっすりと眠った。吐き気は全くなく、頭痛も気にならない程度に落ち着いた。菜々穂さんを起こし、着替えて、朝食を食べ、出かける準備を終えると、ちょうど携帯電話に菊野さんから、『お迎えにあがりました』という連絡が入った。外へ出ると黒塗りのリムジンが止まっていた。僕らはそれに乗り込み、逢坂家へ出発した。
屋敷に到着すると、はるねちゃんが待っていた。特に会話をすることはなく、僕は桐原さんの部屋に連れて行かれた。
逢坂邸の二階、階段に最も近い部屋が桐原さんの部屋だった。四畳の狭い部屋にはシングルベッドとタンスと机しかない。机の上も整理されていて、ペン立てとデスクライトとパソコンしか置かれていない。ここまで整理されていると、手がかりが見つかりにくそうだ。
「ここの鍵は開けておくわ。好きなときに出入りしていいわよ」
「ありがとう」
「じゃあ、よろしく頼むわよ」
この会話が本日屋敷に来て最初のまともな会話だった。
部屋に残されたのは僕と大川さんと菜々穂さん。四畳の部屋だと三人でも十分狭く感じてしまう。
「使用人のお部屋はみんなこんな感じですか? 広くなくて、殺風景で……」
「広さはみな同じですが、こんなに整った部屋は他にありません。使用人たちにとって自室は屋敷で唯一のプライベートな空間ですから、本来なら好きなものを置いていたりしています。桐原さんの場合、趣味や好みを外に出したりしない方でしたので……」
「何もない、というわけね」
さて、どうしよう。一応、探しものの要領でベッドの下とかタンスの脇とかを調べてみるか。僕はわさわさと調べ始めた。まさに部屋の隅から隅まで、くまなく捜索した。が、本当に何もなかった。具体的にはタンスの中には燕尾服が三着と寝間着が、机の引き出しには何本かの筆記用具が入っていたが、他には何もなかった。これでは彼がどんな嗜好をしているかも分からない。
「私、前に一度、桐原さんの部屋にお邪魔したことがあったのですが、もう少しものがあったような気がいたします」
「本当ですか? それはいつの話ですか?」
「一か月前の話でございます。はるねお嬢様についてまとめたノートがあったり、屋敷についてのことが書かれたノートがあったり、とても仕事熱心な人だと思った記憶がございます」
「全部見ましたが、そんなものはなかったですよ」
「私も。紙切れすら見なかったよ」
「ノートなどを持ち歩く習慣はなかったと思いますし、失くしたなんてことは考えづらいでしょう」
それは妙な話だ。一か月前にあったもののほとんどが、急に姿を消した。これは何か理由があるとしか思えない。
「それから九条様、こちらをご覧いただいてもよろしいでしょうか?」
大川さんは机にあったパソコンを開いてこっちに向けた。映っているのはメールの受信画面らしい。大川さんは一番上にあったメールを開いて、添付されていたデータファイルを開いた。すると、『認証コードとパスワードを入力して下さい』という表示が出てきた。部屋のどこかにそれをメモした紙とかは見当たらなかったし、中身を見るにはこれを解く必要がある。
「菜々穂さん、お願いします」
「任せて」
彼女の手にかかれば、ものの数分で突破できる。菜々穂さんはパソコンの前に座って、キーボードを叩き始めた。そして、まるで一と一を足す計算式を解くように、コードとパスワードを紐解いてしまった。
僕と大川さんは開かれた画面を見入った。日付と人名と何かの名前と数字が陳列した表が出てきた。
「何かの購入者リストみたいだね」
「購入者リスト?」
「日付は買った日、人の名前は買った人、その隣の名前は商品名、数字はお金だね」
「どうしてこんなものが、ここに? 桐原さんが何かの売買をやっていたってことですか?」
「逢坂家の使用人は基本的に副業禁止ですから、それはないと思います」
「いや、そういうことじゃないと思うよ。メールで届いてたんだから、何かの資料として誰かから送られて来たんだと思う」
「桐原さんは、何かを調べていたってことですかね」
「そういうことになるけど、この段階じゃ何も言えないかな。このパソコンお借りしていい、メイドさん?」
「はい」
「じゃあ、これをもうちょっと調べてみる」
「お願いします」
菜々穂さんは一心不乱に画面を見た。
さて、パソコンは彼女に任せるとして、桐原さんの部屋の調査は終わってしまった。結果、物体として何かが見つかったわけではなかった。パソコンからリストが見つかったわけだし、無駄だったわけではないのだが、そのほかの収穫はゼロだ。まさに何もない部屋。ゴミだけでなく情報さえ転がっていない部屋。
「九条様、ここは七瀬様に任せて他を調べましょう。そうだ、桐原さんの足取りを追ってみるというのはどうでしょうか。何か分かるかもしれません」
「そうですね、今は菜々穂さんを待つしかないですから。菜々穂さん、僕ら別のところに行くので、ここは任せてもいいですか?」
「いいよ、こっちはもうちょっとかかりそうだし」
「じゃあ終わったら連絡下さい」
「オッケー」
僕たちは部屋に菜々穂さんを残し、そこを後にした。
屋敷に到着すると、はるねちゃんが待っていた。特に会話をすることはなく、僕は桐原さんの部屋に連れて行かれた。
逢坂邸の二階、階段に最も近い部屋が桐原さんの部屋だった。四畳の狭い部屋にはシングルベッドとタンスと机しかない。机の上も整理されていて、ペン立てとデスクライトとパソコンしか置かれていない。ここまで整理されていると、手がかりが見つかりにくそうだ。
「ここの鍵は開けておくわ。好きなときに出入りしていいわよ」
「ありがとう」
「じゃあ、よろしく頼むわよ」
この会話が本日屋敷に来て最初のまともな会話だった。
部屋に残されたのは僕と大川さんと菜々穂さん。四畳の部屋だと三人でも十分狭く感じてしまう。
「使用人のお部屋はみんなこんな感じですか? 広くなくて、殺風景で……」
「広さはみな同じですが、こんなに整った部屋は他にありません。使用人たちにとって自室は屋敷で唯一のプライベートな空間ですから、本来なら好きなものを置いていたりしています。桐原さんの場合、趣味や好みを外に出したりしない方でしたので……」
「何もない、というわけね」
さて、どうしよう。一応、探しものの要領でベッドの下とかタンスの脇とかを調べてみるか。僕はわさわさと調べ始めた。まさに部屋の隅から隅まで、くまなく捜索した。が、本当に何もなかった。具体的にはタンスの中には燕尾服が三着と寝間着が、机の引き出しには何本かの筆記用具が入っていたが、他には何もなかった。これでは彼がどんな嗜好をしているかも分からない。
「私、前に一度、桐原さんの部屋にお邪魔したことがあったのですが、もう少しものがあったような気がいたします」
「本当ですか? それはいつの話ですか?」
「一か月前の話でございます。はるねお嬢様についてまとめたノートがあったり、屋敷についてのことが書かれたノートがあったり、とても仕事熱心な人だと思った記憶がございます」
「全部見ましたが、そんなものはなかったですよ」
「私も。紙切れすら見なかったよ」
「ノートなどを持ち歩く習慣はなかったと思いますし、失くしたなんてことは考えづらいでしょう」
それは妙な話だ。一か月前にあったもののほとんどが、急に姿を消した。これは何か理由があるとしか思えない。
「それから九条様、こちらをご覧いただいてもよろしいでしょうか?」
大川さんは机にあったパソコンを開いてこっちに向けた。映っているのはメールの受信画面らしい。大川さんは一番上にあったメールを開いて、添付されていたデータファイルを開いた。すると、『認証コードとパスワードを入力して下さい』という表示が出てきた。部屋のどこかにそれをメモした紙とかは見当たらなかったし、中身を見るにはこれを解く必要がある。
「菜々穂さん、お願いします」
「任せて」
彼女の手にかかれば、ものの数分で突破できる。菜々穂さんはパソコンの前に座って、キーボードを叩き始めた。そして、まるで一と一を足す計算式を解くように、コードとパスワードを紐解いてしまった。
僕と大川さんは開かれた画面を見入った。日付と人名と何かの名前と数字が陳列した表が出てきた。
「何かの購入者リストみたいだね」
「購入者リスト?」
「日付は買った日、人の名前は買った人、その隣の名前は商品名、数字はお金だね」
「どうしてこんなものが、ここに? 桐原さんが何かの売買をやっていたってことですか?」
「逢坂家の使用人は基本的に副業禁止ですから、それはないと思います」
「いや、そういうことじゃないと思うよ。メールで届いてたんだから、何かの資料として誰かから送られて来たんだと思う」
「桐原さんは、何かを調べていたってことですかね」
「そういうことになるけど、この段階じゃ何も言えないかな。このパソコンお借りしていい、メイドさん?」
「はい」
「じゃあ、これをもうちょっと調べてみる」
「お願いします」
菜々穂さんは一心不乱に画面を見た。
さて、パソコンは彼女に任せるとして、桐原さんの部屋の調査は終わってしまった。結果、物体として何かが見つかったわけではなかった。パソコンからリストが見つかったわけだし、無駄だったわけではないのだが、そのほかの収穫はゼロだ。まさに何もない部屋。ゴミだけでなく情報さえ転がっていない部屋。
「九条様、ここは七瀬様に任せて他を調べましょう。そうだ、桐原さんの足取りを追ってみるというのはどうでしょうか。何か分かるかもしれません」
「そうですね、今は菜々穂さんを待つしかないですから。菜々穂さん、僕ら別のところに行くので、ここは任せてもいいですか?」
「いいよ、こっちはもうちょっとかかりそうだし」
「じゃあ終わったら連絡下さい」
「オッケー」
僕たちは部屋に菜々穂さんを残し、そこを後にした。
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