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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 第3話
scene5 逢坂家の厨房、見つける二人
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大川さんの提案で失踪当日の足取りを追うことになった僕たちは、厨房に来ていた。ここは屋敷の地下一階の一番端っこにある。地下とはいえ、天井から数十センチは地上に出ているらしく、横開きの窓がある。調理台は厨房の壁に沿って置かれていて、中央には除菌ケースに入った食器や調理器具と冷蔵庫が置かれている。それらは銀色に統一されていて、覗けば自分の顔が映るくらい綺麗に磨かれている。
「大川さん、九日前の午前中はここで桐原さんとお菓子を作っていたんですよね」
「はい。桐原さんがお嬢様を学校に送って帰ってきてからですので、十時頃のお話になります」
「桐原さんと作っている間、ここから出て行ったりしませんでしたか?」
初日の調査で、菊野さんが『十一時頃に桐原さんが買い出しに出かける姿を見た』と証言していたが、あえてそのことは伏せて、質問した。これは菊野さんが犯人だった場合、庇ったりするのを防いだり、共犯だった場合、嘘の証言を防いだりするためだ。
ここで忘れてはいけない。僕の中の容疑者は、逢坂家の屋敷に住まう者全員なのだ。世話役を務めてくれている大川さんも、依頼人の執事の菊野さんも例外ではない。
しかし、大川さんは「十一時頃に出て行きました。小麦粉が足りなくなって、買いに行っていただきました」と言った。彼の証言は間違っていなかったようだ。
「大川さん、ここを調べてみましょう」
「承知しました」
一緒に調べるとはいえ、隅から隅まで調べるつもりだ。大川さんが犯人だった場合、手を抜くかもしれない。
ともかく、調査を開始した。
厨房は見た目だけでなく、収納の中まで清掃の手が行き届いていた。どれを見てもピカピカに磨かれていて、どこを覗いても僕の顔が映った。途中、どこを見ても自分の顔が映るものだから、鏡の世界にでも迷い込んだ気分になった。
「九条様! これをご覧下さい!」
広い厨房を互いに反対側から調べていた僕は、大川さんの驚きの声を聞いてそっちに行った。大川さんは腰を抜かした格好のまま、台の下の方に視線を向けて固まっていた。
「こ、これ……」
そう言いながら視線の先を指で差した。僕は指先の先を覗くようにして確認した。台の下に何かが貼ってあった。目を凝らして見ると、それは小さなジッパーらしかった。さらによく見ると中に何か入っているらしい――――ピンクの錠剤?
それには見覚えがあった。
「そのまま動かないで下さいね、大川さん。警察に通報します」
「しょ、承知しました」
「袋に触らないで下さい」
「は、はい」
僕は携帯電話のボタンを押して、耳に当てた。
「もしもし、薬物だと思われる物体を発見しました。すぐに来てもらえませんか。場所は、桜が丘の逢坂財閥の屋敷です。至急、お願いします……」
冷静を装っていた僕も、電話を切った瞬間に腰を抜かした。
「大川さん、九日前の午前中はここで桐原さんとお菓子を作っていたんですよね」
「はい。桐原さんがお嬢様を学校に送って帰ってきてからですので、十時頃のお話になります」
「桐原さんと作っている間、ここから出て行ったりしませんでしたか?」
初日の調査で、菊野さんが『十一時頃に桐原さんが買い出しに出かける姿を見た』と証言していたが、あえてそのことは伏せて、質問した。これは菊野さんが犯人だった場合、庇ったりするのを防いだり、共犯だった場合、嘘の証言を防いだりするためだ。
ここで忘れてはいけない。僕の中の容疑者は、逢坂家の屋敷に住まう者全員なのだ。世話役を務めてくれている大川さんも、依頼人の執事の菊野さんも例外ではない。
しかし、大川さんは「十一時頃に出て行きました。小麦粉が足りなくなって、買いに行っていただきました」と言った。彼の証言は間違っていなかったようだ。
「大川さん、ここを調べてみましょう」
「承知しました」
一緒に調べるとはいえ、隅から隅まで調べるつもりだ。大川さんが犯人だった場合、手を抜くかもしれない。
ともかく、調査を開始した。
厨房は見た目だけでなく、収納の中まで清掃の手が行き届いていた。どれを見てもピカピカに磨かれていて、どこを覗いても僕の顔が映った。途中、どこを見ても自分の顔が映るものだから、鏡の世界にでも迷い込んだ気分になった。
「九条様! これをご覧下さい!」
広い厨房を互いに反対側から調べていた僕は、大川さんの驚きの声を聞いてそっちに行った。大川さんは腰を抜かした格好のまま、台の下の方に視線を向けて固まっていた。
「こ、これ……」
そう言いながら視線の先を指で差した。僕は指先の先を覗くようにして確認した。台の下に何かが貼ってあった。目を凝らして見ると、それは小さなジッパーらしかった。さらによく見ると中に何か入っているらしい――――ピンクの錠剤?
それには見覚えがあった。
「そのまま動かないで下さいね、大川さん。警察に通報します」
「しょ、承知しました」
「袋に触らないで下さい」
「は、はい」
僕は携帯電話のボタンを押して、耳に当てた。
「もしもし、薬物だと思われる物体を発見しました。すぐに来てもらえませんか。場所は、桜が丘の逢坂財閥の屋敷です。至急、お願いします……」
冷静を装っていた僕も、電話を切った瞬間に腰を抜かした。
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