愛情探偵の報告書

雪月 瑠璃

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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 第3話

scene6 警察の到着、唯一の手がかり

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 一時間後、逢坂家の厨房は警察官で溢れかえった。僕たちは当然ながらその場から追い出され、第一発見者として話を聞かれ、リビングに舞い戻った。もちろん発見したときに触ったりはしていないから、早いうちに麻薬所持や使用の疑いは晴れたが、僕がどうしてここにいるのか、何をしていたのかを話していたら日が暮れてしまった。
 ようやく解放されたのは日が地平線に半分ほど隠れた午後六時頃だった。僕が終わっても警察の捜査は続くから、大川さんに車を出してもらって事務所に帰った。予定では明日、明後日も調査を続ける予定だったが、警察が動き回る屋敷で調査を続行する元気も勇気もなかったから、帰るしかなかった。
 桐原さんの部屋でパソコンを調べていた菜々穂さんは、警察の登場を知ったときには仕事がすでに終わっていたからデータをコピーして、自力で事務所に向かったらしい。まあ、ゴタゴタに巻き込まれるのはこっちとしても困るわけだから、ありがたい行動だ。

 さて、事務所に帰ってきた僕は、まずは何時間も外で待たせていた菜々穂さんを中に入れ、彼女が調べた成果を聞くことから始めた。菜々穂さんに成果を聞くと、「これは進展したね、確実に」と答えて早速データを見せてくれた。
 まず出したのは、桐原さんの部屋でパスワードを解いて見た購入者リストだった。最初に見たときとあまり変わりないように思える。
「何かおかしな点でもあったんですか?」
「ここ見てほしいの、下から五番目の列」
 菜々穂さんは言ったところを指差して、僕に見せた。そこにはマーカーが引かれていた。そこには『6/11 檜木阿久路 マーメイド・ユートピア』と書かれていた。
「ここがどうかしましたか? マーカー以外、おかしいとは思いませんが」
「これ、私が付けたわけじゃないの。最初から、メール開いたときからこうだった」
「送り主がこれを付けたってことですか?」
「そういうこと。だから、送ったパソコンを特定してみた」
「どうでした?」
「これ駅前の『チェリーブロッサム』っていうネットカフェから送信されてた。使った人までは特定できなかったけど」
「十分です。早速そこに行ってみましょう」
「ちょっと待って、まだあるの」
菜々穂さんは準備をし始める僕を止めて、もう一度パソコンの画面を見せた。
「マーカーのところの名前、見覚えない?」
 檜木阿久路なんていう珍しい名前は聞けば忘れないはずだが。
「聞いたことないなあ。大川さんは?」
「ヒノキアクロ様……、申し訳ございませんが、存じ上げません」
「おかしいと思わない? 誰だかも分からない人の名前を印つけたりするものなの?」
「この人に何かあるってことですか?」
「そうと見て間違いないよ。私、もっと調べてみるね」
「いえ、一緒に来てもらえますか?」
「いいけど、何すればいいの?」
「使われたパソコンを分析してほしいんです」
「いいよ、全然」
「じゃあ大川さん、車回してもらえますか?」
「承知しました」
 大川さんはさっさと事務所を出ていった。警察が逢坂家を捜査しているため、屋敷には帰れない。今は菜々穂さんが見つけたこの手がかりが全てだ。できることをすぐにやらないと、警察の邪魔が入ってしまう。一刻も早く動かなければいけない。
 僕は準備を整えてすぐに出発した。
 目指すはメールを送ったパソコンのあるネットカフェ『チェリーブロッサム』。そこには次につながる何かがあるはずだ。
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