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愛するのにも一苦労 第1話
scene3 石清水夏治の依頼
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閑話休題。
さて、僕たちは場所を移動し、警察車両の中にいた。調査現場までの移動時間を、調査内容の予習をしていた。
要するに、捜査情報を教えてもらっていた。資料に目を通せば早いのだが、あいにく僕は車に酔いやすい体質である。資料なんかを読んでいたら、吐瀉物で車内を汚してしまう。だから、情報の提供はできる限り口頭で行うことにしてもらっている。
さて、今回の事件について記述しておこう。
事件は今朝九時頃に発覚した。被害者は中谷マサルさんと村田ヒロムさん。二人は同じ大学に通う男性で、年齢は二十歳。写真を見せてもらったが、中谷さんは真面目そうな眼鏡男子で、村田さんは茶髪のチャラチャラした男性だった。死亡原因はアレルギー反応によるショック死。中谷さんはそば、村田さんは小麦のアレルギーを持っていた。それらを誤って食べてしまった、とみて警察は事故として捜査を進めている。
「事故なら僕の出番ないでしょ?」
一通りの情報を教えてもらって抱いたのは、そんな感想だった。事故ならば解明する謎もない。
「それが、どうしても探偵に解明してもらいたい点があるんだ。『二人はどうやって死んだのか』、それが知りたい」
「死因はアレルギーによるショック死なんだろう」
「そういうことじゃあなくてだな、方法が知りたいんだよ。被害者二人の身体からはアレルギー物質を食べた形跡がないんだ。しかし、摂取した形跡はある」
「何が違うのさ」
「被害者はアレルギー物質を摂取してまもなく亡くなったのだが、二人の胃袋からは死因となった食べ物が見つからなかった。二人が間違ってアレルギーのものを食べてしまったのなら、胃袋に少しでもそれがないとおかしい」
「食事の中に混ざってたとかじゃないの?」
「現場となった中谷マサルの自宅にはそばと小麦がなかった。そんな状態でどうしてアレルギーを引き起こすことができるというのだよ」
確かに不自然さは否めない。だが、事件捜査のプロである警察が事故死だと判断したのなら、事故死なのだろう。
夏治は急に僕の手を掴んできた。
離せ。いくら幼馴染とはいえ、気持ちが悪い。
「報酬はちゃんと払うから、後払いで。引き受けてくれよ」
「警察が事故だって判断したんだろう。それでいいじゃないか」
「ダメだ! 俺が気になる!」
警察官の興味に付き合うほど暇ではないが、お金がもらえるなら受けるしかない。
そうこうしているうちに、車は現場となったアパートに着いた。
さて、僕たちは場所を移動し、警察車両の中にいた。調査現場までの移動時間を、調査内容の予習をしていた。
要するに、捜査情報を教えてもらっていた。資料に目を通せば早いのだが、あいにく僕は車に酔いやすい体質である。資料なんかを読んでいたら、吐瀉物で車内を汚してしまう。だから、情報の提供はできる限り口頭で行うことにしてもらっている。
さて、今回の事件について記述しておこう。
事件は今朝九時頃に発覚した。被害者は中谷マサルさんと村田ヒロムさん。二人は同じ大学に通う男性で、年齢は二十歳。写真を見せてもらったが、中谷さんは真面目そうな眼鏡男子で、村田さんは茶髪のチャラチャラした男性だった。死亡原因はアレルギー反応によるショック死。中谷さんはそば、村田さんは小麦のアレルギーを持っていた。それらを誤って食べてしまった、とみて警察は事故として捜査を進めている。
「事故なら僕の出番ないでしょ?」
一通りの情報を教えてもらって抱いたのは、そんな感想だった。事故ならば解明する謎もない。
「それが、どうしても探偵に解明してもらいたい点があるんだ。『二人はどうやって死んだのか』、それが知りたい」
「死因はアレルギーによるショック死なんだろう」
「そういうことじゃあなくてだな、方法が知りたいんだよ。被害者二人の身体からはアレルギー物質を食べた形跡がないんだ。しかし、摂取した形跡はある」
「何が違うのさ」
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「食事の中に混ざってたとかじゃないの?」
「現場となった中谷マサルの自宅にはそばと小麦がなかった。そんな状態でどうしてアレルギーを引き起こすことができるというのだよ」
確かに不自然さは否めない。だが、事件捜査のプロである警察が事故死だと判断したのなら、事故死なのだろう。
夏治は急に僕の手を掴んできた。
離せ。いくら幼馴染とはいえ、気持ちが悪い。
「報酬はちゃんと払うから、後払いで。引き受けてくれよ」
「警察が事故だって判断したんだろう。それでいいじゃないか」
「ダメだ! 俺が気になる!」
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そうこうしているうちに、車は現場となったアパートに着いた。
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