45 / 68
愛するのにも一苦労 第2話
scene2 中谷マサルに片思い中の女子大生の証言
しおりを挟む
そういうわけで、南棟にやってきた。ちょうど授業が終わったときで、教室から学生たちが一斉に出てきた。学生が多すぎて、誰に聞けばいいか困る。
僕がきょろきょろしていると、さっそくはるねちゃんが一人の学生を捕まえていた。女性だ。
「すみません、ちょっとお話聞きたいんですけど、お時間いいですか?」
「はい」
女性は友達を誘って足を止め、こっちに来てくれた。「お話って何ですか?」
「あ、用事があるのは私じゃなくて、こっちの探偵です」
「探偵?」
女性は首をかしげた。
「はい。僕が探偵です」
ポケットに入れておいた名刺を渡す。
「えっと、聞きたいことがあります。一昨日亡くなった中谷マサルさんと村田ヒロムさんについてなんですが……」
「……はい」
女性は俯いて、呟いた。二人が亡くなったことを知っているようだ。
「答えていただけますか?」
「……はい」
「では、質問します。中谷マサルさんと村田ヒロムさんの交友関係について、ご存知のことがあったら教えていただけますか?」
「……二人は仲のいい友達でした。学部内でも有名になるくらい仲が良くて、よく二人で一緒にいるのを見かけました」
「一昨日、変わったことなどはありませんでしたか?」
「気になることはなにもありませんでした。でも、確かその日は村田くんが中谷くんの家に泊まりに行くって言っていました」
そこまで言うと、女性は目元を押さえた。
「すみません……、私、中谷くんに片思いしていたんです。たまに遊びに行ったりしていて、とても優しい人だったから、惜しくて……」
「そうですか……、辛い思いさせてすみません」
「大丈夫です。多分、彼女さんのほうが辛いと思うから……」
「彼女さん、ですか?」
ぽろっとこぼれた言葉を聞き逃しはしなかった。
「はい。高校のときにできた恋人で、大学を卒業したら結婚するんだって言っていました」
「顔とか名前は分かりますか?」
「そこまでは分かりません。本人が教えてくれないんです。きっと幻滅しちゃうからって」
「そうですか」
『幻滅しちゃう』恋人って、顔がモアイに似ているとかなのかな。もしくは大仏か、シーサーか。いや、そんなことはどうでもいい。『幻滅しちゃう』恋人というのは気になる。
女性は泣き崩れてしまって、聞き込みどころではなくなってしまった。友達が慰めているが、泣き止むことはない。
「ありがとうございました」
縮こまって泣いている女性とその友達に礼を言って、その場を去った。なんだか悪いことをした気分だが、これも仕事だ。
僕がきょろきょろしていると、さっそくはるねちゃんが一人の学生を捕まえていた。女性だ。
「すみません、ちょっとお話聞きたいんですけど、お時間いいですか?」
「はい」
女性は友達を誘って足を止め、こっちに来てくれた。「お話って何ですか?」
「あ、用事があるのは私じゃなくて、こっちの探偵です」
「探偵?」
女性は首をかしげた。
「はい。僕が探偵です」
ポケットに入れておいた名刺を渡す。
「えっと、聞きたいことがあります。一昨日亡くなった中谷マサルさんと村田ヒロムさんについてなんですが……」
「……はい」
女性は俯いて、呟いた。二人が亡くなったことを知っているようだ。
「答えていただけますか?」
「……はい」
「では、質問します。中谷マサルさんと村田ヒロムさんの交友関係について、ご存知のことがあったら教えていただけますか?」
「……二人は仲のいい友達でした。学部内でも有名になるくらい仲が良くて、よく二人で一緒にいるのを見かけました」
「一昨日、変わったことなどはありませんでしたか?」
「気になることはなにもありませんでした。でも、確かその日は村田くんが中谷くんの家に泊まりに行くって言っていました」
そこまで言うと、女性は目元を押さえた。
「すみません……、私、中谷くんに片思いしていたんです。たまに遊びに行ったりしていて、とても優しい人だったから、惜しくて……」
「そうですか……、辛い思いさせてすみません」
「大丈夫です。多分、彼女さんのほうが辛いと思うから……」
「彼女さん、ですか?」
ぽろっとこぼれた言葉を聞き逃しはしなかった。
「はい。高校のときにできた恋人で、大学を卒業したら結婚するんだって言っていました」
「顔とか名前は分かりますか?」
「そこまでは分かりません。本人が教えてくれないんです。きっと幻滅しちゃうからって」
「そうですか」
『幻滅しちゃう』恋人って、顔がモアイに似ているとかなのかな。もしくは大仏か、シーサーか。いや、そんなことはどうでもいい。『幻滅しちゃう』恋人というのは気になる。
女性は泣き崩れてしまって、聞き込みどころではなくなってしまった。友達が慰めているが、泣き止むことはない。
「ありがとうございました」
縮こまって泣いている女性とその友達に礼を言って、その場を去った。なんだか悪いことをした気分だが、これも仕事だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる