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「あ~、暇だ……」
ベッドで寝転がっているのはレッドである。
先の薬を作っている張本人を捕まえる際に、その男が撒いた煙を吸ってしまったため、手足に痺れが残っている、ことになっているためだ。
リベルテの肩を借りながら家にたどり着いた後、マイの力によって綺麗に治してもらったため、問題なく動けるようになっている。
しかし、昨日の今日で警ら隊の多くが同じ症状になり、亡くなった者も多い中で依頼をこなすことなどできない。
そんなことをすれば治った原因を調べられ、マイの力が表に出てしまう。
薬の影響を受けている人全て、マイの力であれば治せるだろうが、当然その後は想像がつきやすい。
良くも悪くも国や有力者達に狙われることになる。
優遇してくれるところもあるだろうが、それはすなわち籠の鳥であり、その人たちの思惑に応じ続けていかなくてはいけなくなる。
もしかしたら、奴隷のように扱われてしまう可能性だってある。
そのため、しばらくの間、レッドは家に篭ってなければいけなくなっているのだ。
「元気になったんですし、感謝して欲しいんですけどね? それにたまにはゆっくり休んでてくださいよ。働きすぎじゃないですか?」
ベッドで暇すぎて腐ってきているレッドに声かがかかる。
「マイか。それは本当に助かった。ありがとう。わかってると思うが、他のやつらを不用意に治療して回るなよ」
「自分は治してもらっておいて、他はダメとか酷いこと言いますよね。レッドさんて」
非難めいたことを言っているがその顔は笑っていた。
「はぁ……。他のやつらだって治療して欲しいとは俺だって思ってる。だがな。お前さんの力は大きすぎる。それを懸念して逃げてきてたんだろ?」
「わかってますけどね……。自由にやれないなんて肩身狭いわ」
「世の中そんなもんだろ。誰にも気兼ねしなく自由になんて言うなら、誰もいない島とかで過ごさない限り、ありえないさ」
「わかってるつもりなんですけど、やっぱり力のせいで肩身狭くなってるのが……。よくある話じゃ、こんな風になってることないんですけどね」
マイやタカヒロたち『神の玩具』は、違う世界から来た者達のため、こちらではよくわからない言葉を使ったりするし、こちらでは聞かないような話を当たり前のようにする。
突然、過ぎた力を与えられるなどという話は、こちらの世界にはない。
よくある話なんて、仕事や酒の場での失敗、異性関係なのだ。
わからない話は触れないようにして、レッドは話を変える。
「そういえば、リベルテたちは?」
「タカヒロ君連れて仕事に行きましたよ? しばらくだれかさんがただ飯くらいになりますからね~」
にやりと薄笑いを浮かべながらレッドを見やるマイに、ばつが悪く目をそらす。
レッドとて好きで動かないわけではないのだが、動けないことに変わりがないので、何も言えない。
「んで、マイはなんで残ってるんだ?」
「レッドさんは介護が必要だろうという話に合わせてです。でも、レッドさん問題ないし、私も仕事行ってこようかなって思ってますよ」
「一人でか!? マイで一人は危ないだろ。やめとけよ」
「え? なんですかそれ!? 差別です! 偏見です! 私だって冒険者ですから、一人でやれます」
元々、出かける前にレッドに挨拶にきただけだったため、そのまま家を出て行ってしまう。
「あ~、言い方間違えたか……。一緒に行くわけにも後を付けるわけにもいかないし。何も無く戻ってくることを願うだけか……」
言葉と裏腹にレッドは毛布を引っ被って寝ることにした。
「まったく、レッドさんてば子ども扱いするんだから!」
むくれつつも向かったギルドで貼りだされている依頼を探す。
一人で出来ると言い切ってきたが、さすがに討伐はもちろん、力仕事になりそうな依頼は受ける気は無かった。
そして、採取の依頼にしてもどこにあるか、どういったものかがまだまだ覚え切れていないため、採取にしても一人で行けないとも思っていた。
「そうなると近い場所の配達か給仕とかかなぁ。あればいいんだけど」
冒険者の依頼の多くは、冒険者にしか出来ないというものではなく、手が足りないので冒険者に、というものだ。
冒険者とは職にあぶれた者たちの受け皿の職なのだ。
「お~? お姉さん一人? だったら俺達と一緒に仕事しない?」
声をかけられてマイは思いっきり顔をしかめる。
レッドたち、少なくともタカヒロと一緒にいるときには遭った事がなかったためだ。
相手は男3人でニヤニヤとマイを見ていた。
この時点で絶対ろくなもんじゃないとわかったマイは無視してギルドを出ることにした。
この手のは反応を返す方がよくないのだ。
受けてはもちろん、依頼にかこつけてどんな目にあってしまうかわからないし、拒絶してもこういった類の人は引き下がりはしない。
かえってよけいしつこく絡まれて、おもしろくもなんともない時間を費やされることになり、そのうち逆上して襲ってくるのだ。
だが、無視して動くというのも危ない可能性はあり、襲ってこられても対処できるようにだけは気をつけていた。
だが、そんなマイに返ってきたのは予想してなかった言葉だった。
「そうそう。女なんだから大したこと出来ねぇんだから、サッサと帰んな」
「皿洗いとか給仕を本職にした方がいいぜぇ~」
「いや、それより娼妓だろ? 金弾んで相手してやるよ」
そういって馬鹿笑いする3人になんでこんなことを全く知らない相手に言われないといけないのか。ただ、ここで暴れても3対1。唇を噛みながら家に戻るしかなかった。
ただ無性に悔しさだけが募り、家のドアを荒々しく閉める。
思いのほか大きな音にレッドも起きてくる。
「何だっ!? ってマイか。早かったな。さてはいい依頼なかったな?」
レッドのいい方が悪かったのもあろうが、啖呵を切って出かけたものの早い戻りに事情を察したつもりであったが、少し足りなかった。
マイがいきなり泣き出したのだ。
冒険者として日々の生活のために仕事をこなし、時として命を賭けることがあり、ましてや一緒に仕事をしている相手が相手だけに、浮いた名など一切無かったレッドとしてはどう対処していいかわからない。
ひとまず玄関近くでは体面が良くないとマイを抱えてリビングへと運ぶ。
そして以前、リベルテとマイが話していたことを思い出しながらハーブのお茶を淹れる。
いくらか泣いて気持ちがすっきりしたのだろうマイが、目の前に出されていたハーブのお茶にゆっくりと口を付ける。
また言い方間違えてもと思えば、どう声掛けたものかと悩み、マイの反応をじっと待つことにしたレッド。
「……いきなり泣いちゃってすいません」
まだ少し涙声っぽいマイが、軽く鼻をすすりながら話し始める。
それにホッとするレッドが、お茶のお代わりをもってくる。
「上手くいったかわからんが、悪くはないだろ? でだ……。あー、何があった?」
泣き顔を見せてしまったことに気恥ずかしいのか、聞き取りにくい小さな涙声で話す内容をまとめたところ、ギルドで男性冒険者に馬鹿にされたということらしかった。
「まぁ、なんだ。同じ冒険者としてすまなかった」
レッドはマイに向かって頭を下げる。
レッドとてギルドで10年続けている冒険者である。決して強くて憧れてもらえる存在でもなかったが、先達として新たに冒険者となる者達の言動については注意をしてきていた。
もっともマークたちがレッド側につき、他の面々を諭していかなければ、レッドの言うことなどだれも聞かず、もっと無法地帯になっていただろう。
そして、マークが亡くなってしまった後は自分の仕事と思っていたため、レッドは頭を下げることにためらいは無かった。
「レッドさんが悪いわけじゃ、ないじゃないですか」
「それでもな。そういった奴らを指導してこれなかったし、マイにも注意してやれなかったからな」
本来であればギルド内であるし、冒険者達の取りまとめが仕事であるギルド職員、ギルドマスターが指導したりしなければいけないのだが、ギルマスは忙しくてよほどタイミングのいいときしかわからないし、ギルド職員といっても戦うものたちではないため、争いごとに向かないものが多いのが現状である。
そんなことがあるとレッドが注意をしてないとは言え、一人では危ないとも言ってくれていたため、マイは黙って首を振って、レッドが悪いわけじゃないことを示す。
「冒険者ギルドでさ。依頼を見てるやつとか周りにいる仲間達に女性が少ないこと気づいていたか?」
改めてギルドでの状況を思い出して、マイはまた首を振る。
「女性が弱いというつもりはまったくない。俺の相棒はリベルテだしな。だが、女性で冒険者になるヤツってのは多くないんだ。その理由は大きく2つだと思っている。
1つは、単純に危険ということだ。討伐の依頼はもちろん、採取の仕事であっても場所や運によってはモンスターにかち合う。絶対に、無傷で倒せるなんてことはない。数多くの討伐依頼をこなしてきたやつでも、なれたはずの相手に大怪我をするときだってある。打ち身やまぁ骨折くらいまでならいいんだろうが、切り傷になると痕が残る。傷跡が残ってる女性ってのは、もらいても少なくなるのがあってな。それを敬遠してるんだろうな。
もう1つは、仕事なんだ。やはりだが、力がいる仕事というのは男が多くつくが、その代わり手の細かい仕事、裁縫とか細工とかな。そっちは女性が多く就く。それと給仕も女性の方が好まれるし、いい気はしないだろうが娼妓もある。冒険者なんて職じゃなくても他に女性がつきやすい職があるんだ。怪我を負う可能性のある仕事を選ぶことはないんだよ」
「それじゃ、私、冒険者辞めたほうがいいんですか? 続けてるほうが変なんですか?」
「そうじゃない。ただ女性の冒険者ってのは少ないってことなんだ。だが、少ないだけで居ないわけじゃないし。そこいらの男よりずっと強い人もいる。それでも、男の方が多く、実力の一つでも見せないと舐められるのがあるんだ。討伐の依頼を全くしない冒険者も結構馬鹿にされてるな。戦わなきゃいけない仕事ではないんだが、な」
レッドも自分で淹れたお茶に口をつけ、思ってたよりは美味くいっていることに満足げな顔をする。
「このまま、泣き寝入りしてなきゃいけないんですかね?」
空っぽになったコップを見つめながら、それでもなお悔しさを滲ませるマイの言葉をレッドは笑い飛ばす。
「いや、簡単だよ。力を示せばいい。それだけだ。力であいつらをねじ伏せてもいいし、仕事をこなすでもいい。冒険者としての力を見せればいいだけだ」
「私で勝てますか?」
「それは簡単に勝てるとは言えんな。たぶん、聞く限りじゃまだ冒険者になって若い方だろうが、討伐や力仕事を主に受けてる奴らだろ。戦って勝てるとは、あまり思えんな? それよりは討伐依頼をこなすってのがいいだろうよ。マイ一人で、いや、タカヒロは居てもいいだろうな」
「タカヒロ君が居ても、私の力を認めさせられる?」
「いや、あいつも体細いからな。一緒の方がいいんじゃないか? しかし、そう考えると俺達が連れまわしすぎたのはよくなかったかもしれないな。すまない」
「いえ! いろいろと教えてもらってますから。でも、いつかタカヒロ君と二人で討伐やってきます!」
「ああ、頑張れよ」
先の『神の玩具』についてはなんともない様子にレッドはひとまず安心する。
泣いたのもそれが関わっているのかもと思っていたためだ。
いつか二人が自分の意思で動き出すことを決めたとき、自分たちはどうするのだろうと、やる気を出してトレーニングを始めるマイを横目に考えるのであった。
ベッドで寝転がっているのはレッドである。
先の薬を作っている張本人を捕まえる際に、その男が撒いた煙を吸ってしまったため、手足に痺れが残っている、ことになっているためだ。
リベルテの肩を借りながら家にたどり着いた後、マイの力によって綺麗に治してもらったため、問題なく動けるようになっている。
しかし、昨日の今日で警ら隊の多くが同じ症状になり、亡くなった者も多い中で依頼をこなすことなどできない。
そんなことをすれば治った原因を調べられ、マイの力が表に出てしまう。
薬の影響を受けている人全て、マイの力であれば治せるだろうが、当然その後は想像がつきやすい。
良くも悪くも国や有力者達に狙われることになる。
優遇してくれるところもあるだろうが、それはすなわち籠の鳥であり、その人たちの思惑に応じ続けていかなくてはいけなくなる。
もしかしたら、奴隷のように扱われてしまう可能性だってある。
そのため、しばらくの間、レッドは家に篭ってなければいけなくなっているのだ。
「元気になったんですし、感謝して欲しいんですけどね? それにたまにはゆっくり休んでてくださいよ。働きすぎじゃないですか?」
ベッドで暇すぎて腐ってきているレッドに声かがかかる。
「マイか。それは本当に助かった。ありがとう。わかってると思うが、他のやつらを不用意に治療して回るなよ」
「自分は治してもらっておいて、他はダメとか酷いこと言いますよね。レッドさんて」
非難めいたことを言っているがその顔は笑っていた。
「はぁ……。他のやつらだって治療して欲しいとは俺だって思ってる。だがな。お前さんの力は大きすぎる。それを懸念して逃げてきてたんだろ?」
「わかってますけどね……。自由にやれないなんて肩身狭いわ」
「世の中そんなもんだろ。誰にも気兼ねしなく自由になんて言うなら、誰もいない島とかで過ごさない限り、ありえないさ」
「わかってるつもりなんですけど、やっぱり力のせいで肩身狭くなってるのが……。よくある話じゃ、こんな風になってることないんですけどね」
マイやタカヒロたち『神の玩具』は、違う世界から来た者達のため、こちらではよくわからない言葉を使ったりするし、こちらでは聞かないような話を当たり前のようにする。
突然、過ぎた力を与えられるなどという話は、こちらの世界にはない。
よくある話なんて、仕事や酒の場での失敗、異性関係なのだ。
わからない話は触れないようにして、レッドは話を変える。
「そういえば、リベルテたちは?」
「タカヒロ君連れて仕事に行きましたよ? しばらくだれかさんがただ飯くらいになりますからね~」
にやりと薄笑いを浮かべながらレッドを見やるマイに、ばつが悪く目をそらす。
レッドとて好きで動かないわけではないのだが、動けないことに変わりがないので、何も言えない。
「んで、マイはなんで残ってるんだ?」
「レッドさんは介護が必要だろうという話に合わせてです。でも、レッドさん問題ないし、私も仕事行ってこようかなって思ってますよ」
「一人でか!? マイで一人は危ないだろ。やめとけよ」
「え? なんですかそれ!? 差別です! 偏見です! 私だって冒険者ですから、一人でやれます」
元々、出かける前にレッドに挨拶にきただけだったため、そのまま家を出て行ってしまう。
「あ~、言い方間違えたか……。一緒に行くわけにも後を付けるわけにもいかないし。何も無く戻ってくることを願うだけか……」
言葉と裏腹にレッドは毛布を引っ被って寝ることにした。
「まったく、レッドさんてば子ども扱いするんだから!」
むくれつつも向かったギルドで貼りだされている依頼を探す。
一人で出来ると言い切ってきたが、さすがに討伐はもちろん、力仕事になりそうな依頼は受ける気は無かった。
そして、採取の依頼にしてもどこにあるか、どういったものかがまだまだ覚え切れていないため、採取にしても一人で行けないとも思っていた。
「そうなると近い場所の配達か給仕とかかなぁ。あればいいんだけど」
冒険者の依頼の多くは、冒険者にしか出来ないというものではなく、手が足りないので冒険者に、というものだ。
冒険者とは職にあぶれた者たちの受け皿の職なのだ。
「お~? お姉さん一人? だったら俺達と一緒に仕事しない?」
声をかけられてマイは思いっきり顔をしかめる。
レッドたち、少なくともタカヒロと一緒にいるときには遭った事がなかったためだ。
相手は男3人でニヤニヤとマイを見ていた。
この時点で絶対ろくなもんじゃないとわかったマイは無視してギルドを出ることにした。
この手のは反応を返す方がよくないのだ。
受けてはもちろん、依頼にかこつけてどんな目にあってしまうかわからないし、拒絶してもこういった類の人は引き下がりはしない。
かえってよけいしつこく絡まれて、おもしろくもなんともない時間を費やされることになり、そのうち逆上して襲ってくるのだ。
だが、無視して動くというのも危ない可能性はあり、襲ってこられても対処できるようにだけは気をつけていた。
だが、そんなマイに返ってきたのは予想してなかった言葉だった。
「そうそう。女なんだから大したこと出来ねぇんだから、サッサと帰んな」
「皿洗いとか給仕を本職にした方がいいぜぇ~」
「いや、それより娼妓だろ? 金弾んで相手してやるよ」
そういって馬鹿笑いする3人になんでこんなことを全く知らない相手に言われないといけないのか。ただ、ここで暴れても3対1。唇を噛みながら家に戻るしかなかった。
ただ無性に悔しさだけが募り、家のドアを荒々しく閉める。
思いのほか大きな音にレッドも起きてくる。
「何だっ!? ってマイか。早かったな。さてはいい依頼なかったな?」
レッドのいい方が悪かったのもあろうが、啖呵を切って出かけたものの早い戻りに事情を察したつもりであったが、少し足りなかった。
マイがいきなり泣き出したのだ。
冒険者として日々の生活のために仕事をこなし、時として命を賭けることがあり、ましてや一緒に仕事をしている相手が相手だけに、浮いた名など一切無かったレッドとしてはどう対処していいかわからない。
ひとまず玄関近くでは体面が良くないとマイを抱えてリビングへと運ぶ。
そして以前、リベルテとマイが話していたことを思い出しながらハーブのお茶を淹れる。
いくらか泣いて気持ちがすっきりしたのだろうマイが、目の前に出されていたハーブのお茶にゆっくりと口を付ける。
また言い方間違えてもと思えば、どう声掛けたものかと悩み、マイの反応をじっと待つことにしたレッド。
「……いきなり泣いちゃってすいません」
まだ少し涙声っぽいマイが、軽く鼻をすすりながら話し始める。
それにホッとするレッドが、お茶のお代わりをもってくる。
「上手くいったかわからんが、悪くはないだろ? でだ……。あー、何があった?」
泣き顔を見せてしまったことに気恥ずかしいのか、聞き取りにくい小さな涙声で話す内容をまとめたところ、ギルドで男性冒険者に馬鹿にされたということらしかった。
「まぁ、なんだ。同じ冒険者としてすまなかった」
レッドはマイに向かって頭を下げる。
レッドとてギルドで10年続けている冒険者である。決して強くて憧れてもらえる存在でもなかったが、先達として新たに冒険者となる者達の言動については注意をしてきていた。
もっともマークたちがレッド側につき、他の面々を諭していかなければ、レッドの言うことなどだれも聞かず、もっと無法地帯になっていただろう。
そして、マークが亡くなってしまった後は自分の仕事と思っていたため、レッドは頭を下げることにためらいは無かった。
「レッドさんが悪いわけじゃ、ないじゃないですか」
「それでもな。そういった奴らを指導してこれなかったし、マイにも注意してやれなかったからな」
本来であればギルド内であるし、冒険者達の取りまとめが仕事であるギルド職員、ギルドマスターが指導したりしなければいけないのだが、ギルマスは忙しくてよほどタイミングのいいときしかわからないし、ギルド職員といっても戦うものたちではないため、争いごとに向かないものが多いのが現状である。
そんなことがあるとレッドが注意をしてないとは言え、一人では危ないとも言ってくれていたため、マイは黙って首を振って、レッドが悪いわけじゃないことを示す。
「冒険者ギルドでさ。依頼を見てるやつとか周りにいる仲間達に女性が少ないこと気づいていたか?」
改めてギルドでの状況を思い出して、マイはまた首を振る。
「女性が弱いというつもりはまったくない。俺の相棒はリベルテだしな。だが、女性で冒険者になるヤツってのは多くないんだ。その理由は大きく2つだと思っている。
1つは、単純に危険ということだ。討伐の依頼はもちろん、採取の仕事であっても場所や運によってはモンスターにかち合う。絶対に、無傷で倒せるなんてことはない。数多くの討伐依頼をこなしてきたやつでも、なれたはずの相手に大怪我をするときだってある。打ち身やまぁ骨折くらいまでならいいんだろうが、切り傷になると痕が残る。傷跡が残ってる女性ってのは、もらいても少なくなるのがあってな。それを敬遠してるんだろうな。
もう1つは、仕事なんだ。やはりだが、力がいる仕事というのは男が多くつくが、その代わり手の細かい仕事、裁縫とか細工とかな。そっちは女性が多く就く。それと給仕も女性の方が好まれるし、いい気はしないだろうが娼妓もある。冒険者なんて職じゃなくても他に女性がつきやすい職があるんだ。怪我を負う可能性のある仕事を選ぶことはないんだよ」
「それじゃ、私、冒険者辞めたほうがいいんですか? 続けてるほうが変なんですか?」
「そうじゃない。ただ女性の冒険者ってのは少ないってことなんだ。だが、少ないだけで居ないわけじゃないし。そこいらの男よりずっと強い人もいる。それでも、男の方が多く、実力の一つでも見せないと舐められるのがあるんだ。討伐の依頼を全くしない冒険者も結構馬鹿にされてるな。戦わなきゃいけない仕事ではないんだが、な」
レッドも自分で淹れたお茶に口をつけ、思ってたよりは美味くいっていることに満足げな顔をする。
「このまま、泣き寝入りしてなきゃいけないんですかね?」
空っぽになったコップを見つめながら、それでもなお悔しさを滲ませるマイの言葉をレッドは笑い飛ばす。
「いや、簡単だよ。力を示せばいい。それだけだ。力であいつらをねじ伏せてもいいし、仕事をこなすでもいい。冒険者としての力を見せればいいだけだ」
「私で勝てますか?」
「それは簡単に勝てるとは言えんな。たぶん、聞く限りじゃまだ冒険者になって若い方だろうが、討伐や力仕事を主に受けてる奴らだろ。戦って勝てるとは、あまり思えんな? それよりは討伐依頼をこなすってのがいいだろうよ。マイ一人で、いや、タカヒロは居てもいいだろうな」
「タカヒロ君が居ても、私の力を認めさせられる?」
「いや、あいつも体細いからな。一緒の方がいいんじゃないか? しかし、そう考えると俺達が連れまわしすぎたのはよくなかったかもしれないな。すまない」
「いえ! いろいろと教えてもらってますから。でも、いつかタカヒロ君と二人で討伐やってきます!」
「ああ、頑張れよ」
先の『神の玩具』についてはなんともない様子にレッドはひとまず安心する。
泣いたのもそれが関わっているのかもと思っていたためだ。
いつか二人が自分の意思で動き出すことを決めたとき、自分たちはどうするのだろうと、やる気を出してトレーニングを始めるマイを横目に考えるのであった。
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