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「うぁ~、なんでこんなに道混んでるんだろ……」
ここまで混雑したことが無い道を、人を避けながら進んでいくタカヒロ。
冒険者ギルドで大量にあった王都内の配送依頼を受けてきたのだ。
王都内の配送は、冒険者になった頃にマイと一緒にこなしてきたため、これなら楽だろうと思ってうけたのだが、人通りの多さに嫌気が差してきていた。
この人の多さは、豊穣祭に向けて王都に来ている人たちであり、例年通り、泊まる所を求めて列をなしているのだ。
配送の依頼は宿屋や飲食店に運ぶ物が多い。
だが、この人通りではいつものように馬車で向かうには向かなさ過ぎる。
人に注意しながら進んでいくしかないのだが、いつもより時間がかかる。
宿屋や飲食店はその時間が惜しい。
そのため、荷物を小分けにして冒険者にも運んでもらおうということで、配送の依頼が増えるのも例年通りである。
人ごみを嫌って王都の外の依頼を受ける冒険者もいるが、討伐の依頼が受けられないものたちにとっては稼ぎ時である。
元々、タカヒロたちのように王都内の雑用を主に受けている人たちには、抜け道を知っていたりするため、手際よく物を届けに行き、戻ってきては別の配送依頼の手続きを受けていく。
だが、王都内での配送をやったことがあるといっても、王都内の抜け道とかまでは知らないタカヒロは、人の流れに四苦八苦しながら進んでいくしかなかった。
「はぁ……。やっと一つ終わった」
荷物を届けるなら裏手から入ってよいのだが、店の正面から入ることが多かったタカヒロは正面から入ろうとして、並んでいた人たちと揉めたり、睨まれたりと散々であった。
冒険者の証と依頼であることを伝えて、店の人に荷物を渡してサッサと出てきたところである。
そしてギルドに戻ろうとして足にぶつかるものを感じて目線を落とすと、小さな女の子が足にしがみついていた。
この瞬間、まずいと感じた。
その勘は予想をはずれず、女の子が泣き出す。
「おか~さ~ん。どこ~」
迷子である。
あたりに響く小さな子の泣き声であるが、この日にとっては人混みで近くを通る人にしか気づかれなく、道行く人は宿を取りに動いていたり、忙しい人たちばかりのため、足を止める人もいない。
タカヒロはため息をついてから、しゃがみこんで女の子の目線にあわせる。
「お母さんを探してるんだね。どんな格好をしてるかわかるかな? 探しに行こうか」
女の子の頭をやさしくなでて、ひとまず泣き止ませることに集中する。
女の子の名前はシェリーと言った。
タカヒロはこの人混みを手を繋いでいたとしても歩かせるのは危ないかもと思い、シェリーを肩車する。
目線が高くなったシェリーは幾分か不安が晴れたのか楽しげになり、タカヒロとしても願ったり叶ったりであった。
「おかあさんとね~、お祭りにきたの~」
「お祭り? なんかあったっけ?」
「ほうじょうさいっていうの。お兄さんしらないの? ダメね~」
明らかにタカヒロの方が年上なのだが、自分の方が知っていると思ったシェリーがお姉さんぶっている。
「ああ~。聞いた気がする。でもあれってもう少し先じゃなかった? まだ早いよね」
「うん。お祭りでお店出すの。そのためのじゅんびにきてるのよ」
「なるほど~。どんなお店だすの?」
「食べものやさん! お母さんが作るのおいしいんだから」
へぇ~と相槌を返しながら、進んでいく。
ひとまずタカヒロが向かうべきと思ったのは、兵士の詰め所だった。
お母さんを探すとは言ったものの、服装だけでわかるわけもなく、ましてやこの人混みでは無理だろうと思っていたのだ。
「あ! おかあさん!」
そう思っていたのだが、シェリーが母親を見つけたらしく、タカヒロの頭をぺちぺちと叩く。
「はいはい。どっちの方?」
「あっち~!」
元気よく指差すほうに向かって、人ごみを避けながら進んでいく。
シェリーは母親を呼びながらぶんぶんと手を振るので、落としそうでタカヒロの速度はあがらない。
「おかあさん行っちゃう! 急いで!」
とまぁ、これまたぺちぺち叩かれるのだが、タカヒロは速度を変えない。
ここで小さい子に怪我をさせるようなことこそ避けるべきなのだ。
人混みも多く、まだ暑くはある日で、肩車をする子どもの高い体温に、暑くて走りたくないというのもあったりはするのだが。
「シェリー!」
タカヒロが肩車していた効果がここででる。
母親と思われる女性が疲れて視線を上げたら、そこに目に入ったのだ。
タカヒロの身長は少し高い。そこに肩車された女の子が居れば目に入りやすかったのだ。
母親の方も人混みをかき分けながら向かってくる。
さすがに道の真ん中では迷惑だし、また人波に飲まれてしまうだろうと、少し横道に入って女性を待つ。
母親が来る前にとシェリーを下ろしていると、母親がたどり着いた。
「シェリー!」
「おか~さん!」
母子が抱き合う。
「この人がおかあさん探すのてつだってくれたの」
シェリーがタカヒロを母親に紹介する。
「娘を連れてきていただき、ありがとうございます」
深々と礼をする女性にタカヒロは、いえいえ、とこちらも礼を返す。
お互いにお辞儀をしあう光景が少し続く。
「お母さん見つかってよかったね。またはぐれないように気をつけて」
シェリーに声を掛けて帰ろうとしたのだが、シェリーに服を掴まれていた。
だいぶ懐かれたらしい。
タカヒロは目で母親に訴えるが、母親はシェリーの行動に驚いた後、タカヒロに向かって微笑む。
「娘が懐くなんて。良い方なんですね。あ、すみません。私の名前はルチウスといいます」
「これはどうも。冒険者してます、タカヒロといいます」
また少しお辞儀をしあう。
「お礼にお昼はいかがですか? たいした物は作れませんが」
母親の提案にシェリーが服を掴んだままということもあって、タカヒロは頷くしかない。
「では、お言葉に甘えて」
気に入ったのかシェリーをまた肩車して、ルチウスと一緒に歩いていく。
ルチウスが着いた先は、屋台や出店を出す人たち用の区域だった。
いつもは広場として利用されている場所であるが、準備もあって先に入ってくる屋台や出店の人たちの身の置き場となる。
所狭しとテントが広がっている。
ルチウスたちのテントに戻り、火を熾して居る間に小麦粉にミルクと卵と砂糖を混ぜていく。
熱せられた鉄板にタネを流して焼いていく。
あまりふっくらとしていないが、ホットケーキだとタカヒロは小さく呟く。
砂糖も卵も安くは無い。
だが、これならば軽く食べられるし、持ち歩いてもそこまで困るものではない。
それに後は好みで何か付けたりすればいいこともあり、なかなか良いものに思われた。
「こんな簡単なもので申し訳ないのですが」
伏し目がちにしながら、焼きあがったものを載せたお皿をタカヒロに差し出す。
「これおいしいんだよ」
シェリー用に焼かれた少し小さなものに、シェリーがかぶりついていく。
受け取り一口食べる。
少し硬い焼いた甘いパン。悪くは無いが、タカヒロにとっては少々物足りない味だったが……。
「おいしいですね」
シェリーの母親は若く、綺麗な女性だった。
そんな女性が焼いて伏目がちに渡されたら、これは売れるだろうなぁと余計なことを考えてしまうタカヒロ。
そして、そんな女性が作ったものをまずいといえるわけが無い。そこまで美味しくないものでもないわけだし。
「これを屋台で出すのですが……、あまり砂糖が仕入れられなくて。砂糖を多くしたほうがデザート感覚で食べられるのですが、出せる量も少なくなりますし、値段も上げなくてはいけないんですよね。砂糖を抑えると少し甘い潰れたパンですし」
ルチウスも食べながら、おいしそうに食べるシェリーを見て微笑んでいる。
珍しくタカヒロが動く。
「ほかに材料を仕入れられる予算はありますか?」
「え? ええ。ですが、王都で砂糖を買うのは難しいのですが」
「いえ、ソーセージや野菜。ほかには果物を買いましょう。クリームは無いんだろうなぁ……。まぁなんとかなるかな?」
なにやらやる気満々の様子に困惑気味のルチウスであるが、シェリーもタカヒロに釣られてやる気の様子で、苦笑しながらタカヒロに従うことにする。
材料を買ってきたタカヒロたちは、またルチウスたちのテントに戻ってくる。
ルチウスは火を絶やさないようにと残っていた。
またタカヒロの肩車にご満悦の様子のシェリーであったが、帰りでは寝ていたらしい。
ゆっくりと肩から下ろし、テントで横にする。
「さて、やりますか」
先ほどルチウスがやっていたように、小麦粉に卵とミルクを混ぜる。砂糖は入れない。
そしてタネを薄く広げて焼いていく。
横でソーセージも焼きつつ、薄いためすぐ焼きあがった生地を裏返す。
そして焼きあがった生地にトマトソースを塗り、ちぎったカボシェ、ソーセージをを載せ、生地をたたんでいく。
「はい、どうぞ」
差し出されたものに驚きながら手を伸ばし、受け取ったルチウスがタカヒロの顔を見ながら一口食べる。
パンにソーセージとカボシェを挟んだものは出ているが、それより薄い生地はサクサクとしており、折りたたまれた生地によって具材やソースが零れ落ちず食べやすかった。
続いてソーセージの代わりに切った果物を挟んだものを差し出す。
こちらは少し砂糖を入れていたのか、生地の甘さと果実の甘さがあっていた。
タカヒロは、やっぱり少し物足りないな、とつぶやいていたが、ルチウスはあっという間に二つとも食べてしまった。
そこにシェリーも起きてきて、ずるいと声を上げる。
タカヒロが待っててね~と再び焼いていく。
ルチウスに渡したのより小さく焼いた2種類をそれぞれ渡すと、シェリーが満面の笑顔で食べていく。
「卵も高いけど、砂糖よりは手に入るでしょ。薄く焼けばいいから、さっきのより量出せるんじゃないかな?」
「これは! いいんですか?」
「ええ。どうぞ。祭りの日に買いに行きますよ。あぁ、これ、クレープっていうものですので」
「ありがとうございます」
ルチウスがタカヒロに抱きついてくる。
「ありがと~」
シェリーも母親の真似をしてタカヒロに抱きつく。
陽が落ちた頃に家に戻ったタカヒロ。
「おかえり。遅かったね」
いつもと変わらない表情でマイが出迎える。
「うん。ただいま。ちょっとあってね。豊穣祭、楽しみだね」
「ん? そうだね。美味しいもの食べようね」
王都でタカヒロを知っている人たちにとっては珍しい、タカヒロの一日だった。
ここまで混雑したことが無い道を、人を避けながら進んでいくタカヒロ。
冒険者ギルドで大量にあった王都内の配送依頼を受けてきたのだ。
王都内の配送は、冒険者になった頃にマイと一緒にこなしてきたため、これなら楽だろうと思ってうけたのだが、人通りの多さに嫌気が差してきていた。
この人の多さは、豊穣祭に向けて王都に来ている人たちであり、例年通り、泊まる所を求めて列をなしているのだ。
配送の依頼は宿屋や飲食店に運ぶ物が多い。
だが、この人通りではいつものように馬車で向かうには向かなさ過ぎる。
人に注意しながら進んでいくしかないのだが、いつもより時間がかかる。
宿屋や飲食店はその時間が惜しい。
そのため、荷物を小分けにして冒険者にも運んでもらおうということで、配送の依頼が増えるのも例年通りである。
人ごみを嫌って王都の外の依頼を受ける冒険者もいるが、討伐の依頼が受けられないものたちにとっては稼ぎ時である。
元々、タカヒロたちのように王都内の雑用を主に受けている人たちには、抜け道を知っていたりするため、手際よく物を届けに行き、戻ってきては別の配送依頼の手続きを受けていく。
だが、王都内での配送をやったことがあるといっても、王都内の抜け道とかまでは知らないタカヒロは、人の流れに四苦八苦しながら進んでいくしかなかった。
「はぁ……。やっと一つ終わった」
荷物を届けるなら裏手から入ってよいのだが、店の正面から入ることが多かったタカヒロは正面から入ろうとして、並んでいた人たちと揉めたり、睨まれたりと散々であった。
冒険者の証と依頼であることを伝えて、店の人に荷物を渡してサッサと出てきたところである。
そしてギルドに戻ろうとして足にぶつかるものを感じて目線を落とすと、小さな女の子が足にしがみついていた。
この瞬間、まずいと感じた。
その勘は予想をはずれず、女の子が泣き出す。
「おか~さ~ん。どこ~」
迷子である。
あたりに響く小さな子の泣き声であるが、この日にとっては人混みで近くを通る人にしか気づかれなく、道行く人は宿を取りに動いていたり、忙しい人たちばかりのため、足を止める人もいない。
タカヒロはため息をついてから、しゃがみこんで女の子の目線にあわせる。
「お母さんを探してるんだね。どんな格好をしてるかわかるかな? 探しに行こうか」
女の子の頭をやさしくなでて、ひとまず泣き止ませることに集中する。
女の子の名前はシェリーと言った。
タカヒロはこの人混みを手を繋いでいたとしても歩かせるのは危ないかもと思い、シェリーを肩車する。
目線が高くなったシェリーは幾分か不安が晴れたのか楽しげになり、タカヒロとしても願ったり叶ったりであった。
「おかあさんとね~、お祭りにきたの~」
「お祭り? なんかあったっけ?」
「ほうじょうさいっていうの。お兄さんしらないの? ダメね~」
明らかにタカヒロの方が年上なのだが、自分の方が知っていると思ったシェリーがお姉さんぶっている。
「ああ~。聞いた気がする。でもあれってもう少し先じゃなかった? まだ早いよね」
「うん。お祭りでお店出すの。そのためのじゅんびにきてるのよ」
「なるほど~。どんなお店だすの?」
「食べものやさん! お母さんが作るのおいしいんだから」
へぇ~と相槌を返しながら、進んでいく。
ひとまずタカヒロが向かうべきと思ったのは、兵士の詰め所だった。
お母さんを探すとは言ったものの、服装だけでわかるわけもなく、ましてやこの人混みでは無理だろうと思っていたのだ。
「あ! おかあさん!」
そう思っていたのだが、シェリーが母親を見つけたらしく、タカヒロの頭をぺちぺちと叩く。
「はいはい。どっちの方?」
「あっち~!」
元気よく指差すほうに向かって、人ごみを避けながら進んでいく。
シェリーは母親を呼びながらぶんぶんと手を振るので、落としそうでタカヒロの速度はあがらない。
「おかあさん行っちゃう! 急いで!」
とまぁ、これまたぺちぺち叩かれるのだが、タカヒロは速度を変えない。
ここで小さい子に怪我をさせるようなことこそ避けるべきなのだ。
人混みも多く、まだ暑くはある日で、肩車をする子どもの高い体温に、暑くて走りたくないというのもあったりはするのだが。
「シェリー!」
タカヒロが肩車していた効果がここででる。
母親と思われる女性が疲れて視線を上げたら、そこに目に入ったのだ。
タカヒロの身長は少し高い。そこに肩車された女の子が居れば目に入りやすかったのだ。
母親の方も人混みをかき分けながら向かってくる。
さすがに道の真ん中では迷惑だし、また人波に飲まれてしまうだろうと、少し横道に入って女性を待つ。
母親が来る前にとシェリーを下ろしていると、母親がたどり着いた。
「シェリー!」
「おか~さん!」
母子が抱き合う。
「この人がおかあさん探すのてつだってくれたの」
シェリーがタカヒロを母親に紹介する。
「娘を連れてきていただき、ありがとうございます」
深々と礼をする女性にタカヒロは、いえいえ、とこちらも礼を返す。
お互いにお辞儀をしあう光景が少し続く。
「お母さん見つかってよかったね。またはぐれないように気をつけて」
シェリーに声を掛けて帰ろうとしたのだが、シェリーに服を掴まれていた。
だいぶ懐かれたらしい。
タカヒロは目で母親に訴えるが、母親はシェリーの行動に驚いた後、タカヒロに向かって微笑む。
「娘が懐くなんて。良い方なんですね。あ、すみません。私の名前はルチウスといいます」
「これはどうも。冒険者してます、タカヒロといいます」
また少しお辞儀をしあう。
「お礼にお昼はいかがですか? たいした物は作れませんが」
母親の提案にシェリーが服を掴んだままということもあって、タカヒロは頷くしかない。
「では、お言葉に甘えて」
気に入ったのかシェリーをまた肩車して、ルチウスと一緒に歩いていく。
ルチウスが着いた先は、屋台や出店を出す人たち用の区域だった。
いつもは広場として利用されている場所であるが、準備もあって先に入ってくる屋台や出店の人たちの身の置き場となる。
所狭しとテントが広がっている。
ルチウスたちのテントに戻り、火を熾して居る間に小麦粉にミルクと卵と砂糖を混ぜていく。
熱せられた鉄板にタネを流して焼いていく。
あまりふっくらとしていないが、ホットケーキだとタカヒロは小さく呟く。
砂糖も卵も安くは無い。
だが、これならば軽く食べられるし、持ち歩いてもそこまで困るものではない。
それに後は好みで何か付けたりすればいいこともあり、なかなか良いものに思われた。
「こんな簡単なもので申し訳ないのですが」
伏し目がちにしながら、焼きあがったものを載せたお皿をタカヒロに差し出す。
「これおいしいんだよ」
シェリー用に焼かれた少し小さなものに、シェリーがかぶりついていく。
受け取り一口食べる。
少し硬い焼いた甘いパン。悪くは無いが、タカヒロにとっては少々物足りない味だったが……。
「おいしいですね」
シェリーの母親は若く、綺麗な女性だった。
そんな女性が焼いて伏目がちに渡されたら、これは売れるだろうなぁと余計なことを考えてしまうタカヒロ。
そして、そんな女性が作ったものをまずいといえるわけが無い。そこまで美味しくないものでもないわけだし。
「これを屋台で出すのですが……、あまり砂糖が仕入れられなくて。砂糖を多くしたほうがデザート感覚で食べられるのですが、出せる量も少なくなりますし、値段も上げなくてはいけないんですよね。砂糖を抑えると少し甘い潰れたパンですし」
ルチウスも食べながら、おいしそうに食べるシェリーを見て微笑んでいる。
珍しくタカヒロが動く。
「ほかに材料を仕入れられる予算はありますか?」
「え? ええ。ですが、王都で砂糖を買うのは難しいのですが」
「いえ、ソーセージや野菜。ほかには果物を買いましょう。クリームは無いんだろうなぁ……。まぁなんとかなるかな?」
なにやらやる気満々の様子に困惑気味のルチウスであるが、シェリーもタカヒロに釣られてやる気の様子で、苦笑しながらタカヒロに従うことにする。
材料を買ってきたタカヒロたちは、またルチウスたちのテントに戻ってくる。
ルチウスは火を絶やさないようにと残っていた。
またタカヒロの肩車にご満悦の様子のシェリーであったが、帰りでは寝ていたらしい。
ゆっくりと肩から下ろし、テントで横にする。
「さて、やりますか」
先ほどルチウスがやっていたように、小麦粉に卵とミルクを混ぜる。砂糖は入れない。
そしてタネを薄く広げて焼いていく。
横でソーセージも焼きつつ、薄いためすぐ焼きあがった生地を裏返す。
そして焼きあがった生地にトマトソースを塗り、ちぎったカボシェ、ソーセージをを載せ、生地をたたんでいく。
「はい、どうぞ」
差し出されたものに驚きながら手を伸ばし、受け取ったルチウスがタカヒロの顔を見ながら一口食べる。
パンにソーセージとカボシェを挟んだものは出ているが、それより薄い生地はサクサクとしており、折りたたまれた生地によって具材やソースが零れ落ちず食べやすかった。
続いてソーセージの代わりに切った果物を挟んだものを差し出す。
こちらは少し砂糖を入れていたのか、生地の甘さと果実の甘さがあっていた。
タカヒロは、やっぱり少し物足りないな、とつぶやいていたが、ルチウスはあっという間に二つとも食べてしまった。
そこにシェリーも起きてきて、ずるいと声を上げる。
タカヒロが待っててね~と再び焼いていく。
ルチウスに渡したのより小さく焼いた2種類をそれぞれ渡すと、シェリーが満面の笑顔で食べていく。
「卵も高いけど、砂糖よりは手に入るでしょ。薄く焼けばいいから、さっきのより量出せるんじゃないかな?」
「これは! いいんですか?」
「ええ。どうぞ。祭りの日に買いに行きますよ。あぁ、これ、クレープっていうものですので」
「ありがとうございます」
ルチウスがタカヒロに抱きついてくる。
「ありがと~」
シェリーも母親の真似をしてタカヒロに抱きつく。
陽が落ちた頃に家に戻ったタカヒロ。
「おかえり。遅かったね」
いつもと変わらない表情でマイが出迎える。
「うん。ただいま。ちょっとあってね。豊穣祭、楽しみだね」
「ん? そうだね。美味しいもの食べようね」
王都でタカヒロを知っている人たちにとっては珍しい、タカヒロの一日だった。
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