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「しっかし、朝から大騒ぎだったな」
外の寒さから少しでも体を温めるように、ゆっくりとスープを飲んでいるレッドが笑いかける。
「だって! タカヒロ君の手は冷たいし! レッドさんはベッドの前で倒れて顔冷たいし! リベルテさんの部屋からは呻き声聞こえるし! 怖かったんですよ!!」
右手にスプーンを持ったまま、ブンブンと両手を振って抗議する。
「……すみません。目は覚めてたのですが、あまりに寒くて……。毛布に包まって震えてました……」
顔を下に向けて恥ずかしそうにするリベルテは、少し着膨れた格好になっていて、そちらのほうが見た目的にどうなのかと、マイは思わなくも無い。
が、寒いのを我慢してまでファッションにこだわるというのは、前の世界ならともかくこちらの世界では意味が無いことをわかっている。
少しでも周囲に良く見せたいという欲求はあるが、すぐに暖まれる恵まれた環境でなければ、それはそのまま自分の命を危険にさらすことになるのだ。
「僕は冷え性だからなぁ。こればっかりはどうにかしろと言われてどうにかなるものじゃないし。今日は寒かったからね、それでいつも以上に冷えたんだねぇ」
今朝はリベルテが動けなかったため、タカヒロが朝ごはんを作っていた。
自分で作ったスープを早速とお代わりしながら、タカヒロが他人事のように話す。
「もう! 起きて見て回ったらそんなんだったから、ビックリしても仕方ないでしょう!? うぅ~……。もうこの話は終わり。もう話しちゃだめだからねっ!」
ビシッとスプーンをまだ少し笑っているレッドに突きつけて、話題の打ち切りを宣言する。
「ま、笑い話でよかったじゃないか。……たぶん、今日はもう笑えないからな」
急に深刻そうな表情になるレッドに、マイは首を傾げる。
「マイさんたちは今日は休んでた方が」
「いや、マイたちも一緒に出よう。ここで生きていくのに知っておいた方がいい。どんなことであってもな……」
リベルテの言葉をレッドが途中で遮る。
「……そうですね。いつまでも目を、耳を塞いでいて上げられるものではありませんしね……」
マイたちを他所に、レッドとリベルテが少し悲しげな表情のまま話を進めていく。
マイはなにか急に進んでいくなぁと思いながら食事を再開し、タカヒロはあんまりいいことはなさそうだと、今日の覚悟をひっそりとするのであった。
「うわぁ、雪が積もってますねぇ。もう大通りの方は溶けてますけど」
外に出てマイが冬の訪れを見て少し楽しそうにあちこちに目を向ける。
「落ち着かないと、転ぶよ?」
「さすがにこれくらいで滑って転んだりなんかしないよ!」
タカヒロの注意に子どもじゃないと抗議するが、その微笑ましいはしゃぎっぷりは子どものようだった。
「……やはり、ですね」
「あっちだろうな。人が集まってる」
そんなマイたちを横目に、リベルテが悲しそうに目を伏せ、レッドが人が集まっている場所の方に進んでいく。
「え? 何? なにかあったんですか?」
人が集まっていることに何があったのかとリベルテに質問するマイ。
それをタカヒロは、あ~と手を額にやる。
「……マイさん。落ち着いてくださいね。……楽しいことではなく、悲しいことですよ」
リベルテがそっと指した方に目を向けると、誰かが運び出されてきているところだった。
横道から兵二人が表情険しく、人を抱えてどこかへ向かって歩いていく。
運び出されてきた人はやせ細っている子どもたちだった。
マイはそこでやっと気づいて、漏れそうになる言葉を止める様に口元に手を当てる。
「今朝は一気に冷え込んだからな。それでだろう……」
レッドが呟くように答えを言ってくれる。
オルグラント王国は近隣からの戦争や、モンスターに襲われたり戦ったりして親を亡くした子ども達の保護のため、孤児院の援助が行われている。
孤児院を設立し、活動状況を精査して給付金を出したりしているが、それでも万全とは言えない。
親を亡くした子もあるが、経済的な困窮によって子どもを捨てるということもないわけではないし、困窮してもなお子どもとともに居ることを選んで亡くなるということも無くは無い。
他の国より恵まれている土地が多くあるが、それでも王国に生まれ住まう人をすべて保護できるような金銭など出てきたりはしない。
孤児院に入れることもできていない人たちが野宿生活をしており、今朝はこの寒さを凌げる場所も服も持つことが出来ず、体力も低くなっている人たちに亡くなった人が出ていたのだ。
冒険者という受け皿の職があると言っても、すべての人がそれで生計が立てきれるものでもないのだが、比較的に中堅どころとして上手く稼いで生活で来ているレッドたちと一緒に居ることで、王国の華やかな部分しか目に留まらなかったマイたちは言葉をなくすしかなかった。
リベルテは運ばれていく人たちに祈りを捧げ、同じように祈っている人たちが目に付いた。
だが、運び出される人たちに同情的な目だけを向ける人、そのような生活しか出来なかった人たちを蔑むような目を向ける人もいることに気が付く。
自分たちで無く、知り合いでもないことに安堵して笑う声も聞こえ、マイは叫びたかった。
だが、タカヒロがマイの肩に置いた手が震えていることに我慢する。
そう、運ばれていく人をじっと見送っていくレッドの手も硬く握り締められ、震えていることにも気づいたからだ。
王都と言えども苦しい生活をしている人たちがいて、そこまでと考えもしなかった天気で亡くなる人たちがいる。
そして王国と言えども、亡くなった人を、そのような生活をせざるを得なかった人たちを嘲笑し、見下し、侮蔑する人たちがいることを改めて知らされたものだった。
「ここで暮らしてるのに、まだまだ分かってないこと多かったんだね……」
「僕らでも何かできることをした方がいいのかもね……」
マイが悲しげに自分のことを反省するようにつぶやき、タカヒロの手をぎゅっとにぎる。
タカヒロは今のを見て自分たちができることを何かしようかと、マイを促すように応える。
「その心は素晴らしいですけど、自分たちの足でしっかりと立てるようになってなければ、中途半端になるだけですよ。その半端な行動は自分も相手も辛さを増すだけです」
まだ悲しみが残っている表情であったが、リベルテの言葉はきっぱりとタカヒロたちを嗜めるものだった。
「その日のメシ代渡してやればその日はなんとかなるかもだが、次の日からはまたわからねぇ。それにただ恵まれることになれちまったら、もうそこから出てくることもできなくなっちまう」
リベルテの頭をぽんぽんと叩きながら、レッドが安易な行動を嗜めたリベルテの言葉を補足する。
レッドたちも孤児院に寄付したことはあるが、それもある程度貯めた後であり、孤児院の運営費の足しにまわしてもらうように渡したものである。
そこから施設長達が考えて使っていけばいいのであり、その日だけの食事や食事代を渡したりしたものではない。
亡くなった人たちが運び出され終わったのか、集まっていた人だかりが少しずつ散らばっていく。
レッドたちも人の流れの邪魔にならないように道の端に避ける。
これからすぐ仕事だとマイたちが切り替えられなかったためだ。
「あ、あの。お花買ってくれませんか?」
道の端で佇んでいたレッドたちの側に一人の少女が一輪の花を差し出すようにしながら、花を売りに寄ってきた。
「……この時期に咲いたのですか?」
リベルテが少女の目線に合わせるようにしゃがみこんで質問するが、その目はジッと花を見ている。
「ここ数日に急に花をつけたの。でも綺麗な花でしょう? 綺麗なお花は心を和ませてくれるのよ?」
「一つくださいな。いくらになりますか?」
「銅貨1枚です。……ありがとうございます!」
リベルテから銅貨1枚もらい、嬉しそうに花を手渡す少女。
レッドたちは何も言わずにただ見守っている。
「ねぇ、このお花、どこで育てているのかな? 教えてくれないかな? あ、お花は取ったりはしないって約束するわ」
リベルテが少女の手を両手で包みながらお願いする。
リベルテが買ってくれたものの、こう寒くなってきた日では花を買ってくれる人も多くは無く、売りに回るには少女にとっても寒かったので、どうしようか悩みだす。
「持ってる花、全部売ってくれ。そんでもって花を育ててる場所、このお姉さんに教えてくれないか?」
レッドがいきなり手持ちの花を全部買うと言い出し、それを聞いた少女が吃驚してレッドに大きく開いた目を向ける。
「ほ、本当ですか?」
「ああ、ここで嘘言っても仕方ないだろ? 全部だといくらになる?」
「え、ええと……。銅貨20枚、です」
「銅貨20か。ほれ、落とすなよ」
全部買っても大きな金額にはならない。レッドにすればちょっとした薬草を採取してくる仕事一つ分である。安い宿に一泊できるとなれば、少女にとってはいい稼ぎだ、
といっても先日の旅で結構使ってきた一行であり、これからまた稼がないとと感じている薄くなった皮袋がより薄さを見せているのであるが、レッドの行動を誰も咎めはしない。
「ありがとうございます! えぇと……お花を持ってったりしないのなら……」
レッドにもらったお金を大事そうに皮袋にしまって、口をぎゅっと握り締める少女がリベルテに恐る恐ると言う感じで承諾してくれる。
少女にとってまだ採れる花は貴重な収入源になるため、他の人に教えるというのはなかなかに勇気がいることなのだ。
「ありがとうございます!」
リベルテが少女をぎゅっと抱き上げる。
少女は驚いて困惑しているのだが、その姿をレッドたちは朗らかにみていた。
リベルテが抱き上げたままの少女の案内で向かった先は、レッドたちがよく行く孤児院とは違う方向にあるところだった。
小さい子どもだったため無条件に孤児院の子かと思ってしまっていたレッドが頭を掻く。
目の前にあるのは、人々が暮らす家が建ち並ぶ中でも、少し年季が入っている家だった。
リベルテから地面に降ろしてもらった少女は家に入っていく。
「おとーさーん。お花売れたよ! それでね、お客さん連れてきたんだけど……」
「おお、お帰り、サブリナ。全部売れたってすごいな! それとお客さんってことだが……」
リベルテのように結局、父親にも抱きかかえ上げられた少女は、仕方ないなぁとばかりの顔であり、サブリナと呼んだ少女を抱きかかえながら男性が出てくる。
少しほっそりとしていて顔には髭がだらしなく伸びていた。
リベルテがその男性に会釈する。
「あ、いや、これはどうも……」
サブリナが連れてきた客が女性であることもさることながら、剣とかを携えている相手であれば警戒しようものであるのだが、リベルテの容姿に恐縮していた。
外の寒さから少しでも体を温めるように、ゆっくりとスープを飲んでいるレッドが笑いかける。
「だって! タカヒロ君の手は冷たいし! レッドさんはベッドの前で倒れて顔冷たいし! リベルテさんの部屋からは呻き声聞こえるし! 怖かったんですよ!!」
右手にスプーンを持ったまま、ブンブンと両手を振って抗議する。
「……すみません。目は覚めてたのですが、あまりに寒くて……。毛布に包まって震えてました……」
顔を下に向けて恥ずかしそうにするリベルテは、少し着膨れた格好になっていて、そちらのほうが見た目的にどうなのかと、マイは思わなくも無い。
が、寒いのを我慢してまでファッションにこだわるというのは、前の世界ならともかくこちらの世界では意味が無いことをわかっている。
少しでも周囲に良く見せたいという欲求はあるが、すぐに暖まれる恵まれた環境でなければ、それはそのまま自分の命を危険にさらすことになるのだ。
「僕は冷え性だからなぁ。こればっかりはどうにかしろと言われてどうにかなるものじゃないし。今日は寒かったからね、それでいつも以上に冷えたんだねぇ」
今朝はリベルテが動けなかったため、タカヒロが朝ごはんを作っていた。
自分で作ったスープを早速とお代わりしながら、タカヒロが他人事のように話す。
「もう! 起きて見て回ったらそんなんだったから、ビックリしても仕方ないでしょう!? うぅ~……。もうこの話は終わり。もう話しちゃだめだからねっ!」
ビシッとスプーンをまだ少し笑っているレッドに突きつけて、話題の打ち切りを宣言する。
「ま、笑い話でよかったじゃないか。……たぶん、今日はもう笑えないからな」
急に深刻そうな表情になるレッドに、マイは首を傾げる。
「マイさんたちは今日は休んでた方が」
「いや、マイたちも一緒に出よう。ここで生きていくのに知っておいた方がいい。どんなことであってもな……」
リベルテの言葉をレッドが途中で遮る。
「……そうですね。いつまでも目を、耳を塞いでいて上げられるものではありませんしね……」
マイたちを他所に、レッドとリベルテが少し悲しげな表情のまま話を進めていく。
マイはなにか急に進んでいくなぁと思いながら食事を再開し、タカヒロはあんまりいいことはなさそうだと、今日の覚悟をひっそりとするのであった。
「うわぁ、雪が積もってますねぇ。もう大通りの方は溶けてますけど」
外に出てマイが冬の訪れを見て少し楽しそうにあちこちに目を向ける。
「落ち着かないと、転ぶよ?」
「さすがにこれくらいで滑って転んだりなんかしないよ!」
タカヒロの注意に子どもじゃないと抗議するが、その微笑ましいはしゃぎっぷりは子どものようだった。
「……やはり、ですね」
「あっちだろうな。人が集まってる」
そんなマイたちを横目に、リベルテが悲しそうに目を伏せ、レッドが人が集まっている場所の方に進んでいく。
「え? 何? なにかあったんですか?」
人が集まっていることに何があったのかとリベルテに質問するマイ。
それをタカヒロは、あ~と手を額にやる。
「……マイさん。落ち着いてくださいね。……楽しいことではなく、悲しいことですよ」
リベルテがそっと指した方に目を向けると、誰かが運び出されてきているところだった。
横道から兵二人が表情険しく、人を抱えてどこかへ向かって歩いていく。
運び出されてきた人はやせ細っている子どもたちだった。
マイはそこでやっと気づいて、漏れそうになる言葉を止める様に口元に手を当てる。
「今朝は一気に冷え込んだからな。それでだろう……」
レッドが呟くように答えを言ってくれる。
オルグラント王国は近隣からの戦争や、モンスターに襲われたり戦ったりして親を亡くした子ども達の保護のため、孤児院の援助が行われている。
孤児院を設立し、活動状況を精査して給付金を出したりしているが、それでも万全とは言えない。
親を亡くした子もあるが、経済的な困窮によって子どもを捨てるということもないわけではないし、困窮してもなお子どもとともに居ることを選んで亡くなるということも無くは無い。
他の国より恵まれている土地が多くあるが、それでも王国に生まれ住まう人をすべて保護できるような金銭など出てきたりはしない。
孤児院に入れることもできていない人たちが野宿生活をしており、今朝はこの寒さを凌げる場所も服も持つことが出来ず、体力も低くなっている人たちに亡くなった人が出ていたのだ。
冒険者という受け皿の職があると言っても、すべての人がそれで生計が立てきれるものでもないのだが、比較的に中堅どころとして上手く稼いで生活で来ているレッドたちと一緒に居ることで、王国の華やかな部分しか目に留まらなかったマイたちは言葉をなくすしかなかった。
リベルテは運ばれていく人たちに祈りを捧げ、同じように祈っている人たちが目に付いた。
だが、運び出される人たちに同情的な目だけを向ける人、そのような生活しか出来なかった人たちを蔑むような目を向ける人もいることに気が付く。
自分たちで無く、知り合いでもないことに安堵して笑う声も聞こえ、マイは叫びたかった。
だが、タカヒロがマイの肩に置いた手が震えていることに我慢する。
そう、運ばれていく人をじっと見送っていくレッドの手も硬く握り締められ、震えていることにも気づいたからだ。
王都と言えども苦しい生活をしている人たちがいて、そこまでと考えもしなかった天気で亡くなる人たちがいる。
そして王国と言えども、亡くなった人を、そのような生活をせざるを得なかった人たちを嘲笑し、見下し、侮蔑する人たちがいることを改めて知らされたものだった。
「ここで暮らしてるのに、まだまだ分かってないこと多かったんだね……」
「僕らでも何かできることをした方がいいのかもね……」
マイが悲しげに自分のことを反省するようにつぶやき、タカヒロの手をぎゅっとにぎる。
タカヒロは今のを見て自分たちができることを何かしようかと、マイを促すように応える。
「その心は素晴らしいですけど、自分たちの足でしっかりと立てるようになってなければ、中途半端になるだけですよ。その半端な行動は自分も相手も辛さを増すだけです」
まだ悲しみが残っている表情であったが、リベルテの言葉はきっぱりとタカヒロたちを嗜めるものだった。
「その日のメシ代渡してやればその日はなんとかなるかもだが、次の日からはまたわからねぇ。それにただ恵まれることになれちまったら、もうそこから出てくることもできなくなっちまう」
リベルテの頭をぽんぽんと叩きながら、レッドが安易な行動を嗜めたリベルテの言葉を補足する。
レッドたちも孤児院に寄付したことはあるが、それもある程度貯めた後であり、孤児院の運営費の足しにまわしてもらうように渡したものである。
そこから施設長達が考えて使っていけばいいのであり、その日だけの食事や食事代を渡したりしたものではない。
亡くなった人たちが運び出され終わったのか、集まっていた人だかりが少しずつ散らばっていく。
レッドたちも人の流れの邪魔にならないように道の端に避ける。
これからすぐ仕事だとマイたちが切り替えられなかったためだ。
「あ、あの。お花買ってくれませんか?」
道の端で佇んでいたレッドたちの側に一人の少女が一輪の花を差し出すようにしながら、花を売りに寄ってきた。
「……この時期に咲いたのですか?」
リベルテが少女の目線に合わせるようにしゃがみこんで質問するが、その目はジッと花を見ている。
「ここ数日に急に花をつけたの。でも綺麗な花でしょう? 綺麗なお花は心を和ませてくれるのよ?」
「一つくださいな。いくらになりますか?」
「銅貨1枚です。……ありがとうございます!」
リベルテから銅貨1枚もらい、嬉しそうに花を手渡す少女。
レッドたちは何も言わずにただ見守っている。
「ねぇ、このお花、どこで育てているのかな? 教えてくれないかな? あ、お花は取ったりはしないって約束するわ」
リベルテが少女の手を両手で包みながらお願いする。
リベルテが買ってくれたものの、こう寒くなってきた日では花を買ってくれる人も多くは無く、売りに回るには少女にとっても寒かったので、どうしようか悩みだす。
「持ってる花、全部売ってくれ。そんでもって花を育ててる場所、このお姉さんに教えてくれないか?」
レッドがいきなり手持ちの花を全部買うと言い出し、それを聞いた少女が吃驚してレッドに大きく開いた目を向ける。
「ほ、本当ですか?」
「ああ、ここで嘘言っても仕方ないだろ? 全部だといくらになる?」
「え、ええと……。銅貨20枚、です」
「銅貨20か。ほれ、落とすなよ」
全部買っても大きな金額にはならない。レッドにすればちょっとした薬草を採取してくる仕事一つ分である。安い宿に一泊できるとなれば、少女にとってはいい稼ぎだ、
といっても先日の旅で結構使ってきた一行であり、これからまた稼がないとと感じている薄くなった皮袋がより薄さを見せているのであるが、レッドの行動を誰も咎めはしない。
「ありがとうございます! えぇと……お花を持ってったりしないのなら……」
レッドにもらったお金を大事そうに皮袋にしまって、口をぎゅっと握り締める少女がリベルテに恐る恐ると言う感じで承諾してくれる。
少女にとってまだ採れる花は貴重な収入源になるため、他の人に教えるというのはなかなかに勇気がいることなのだ。
「ありがとうございます!」
リベルテが少女をぎゅっと抱き上げる。
少女は驚いて困惑しているのだが、その姿をレッドたちは朗らかにみていた。
リベルテが抱き上げたままの少女の案内で向かった先は、レッドたちがよく行く孤児院とは違う方向にあるところだった。
小さい子どもだったため無条件に孤児院の子かと思ってしまっていたレッドが頭を掻く。
目の前にあるのは、人々が暮らす家が建ち並ぶ中でも、少し年季が入っている家だった。
リベルテから地面に降ろしてもらった少女は家に入っていく。
「おとーさーん。お花売れたよ! それでね、お客さん連れてきたんだけど……」
「おお、お帰り、サブリナ。全部売れたってすごいな! それとお客さんってことだが……」
リベルテのように結局、父親にも抱きかかえ上げられた少女は、仕方ないなぁとばかりの顔であり、サブリナと呼んだ少女を抱きかかえながら男性が出てくる。
少しほっそりとしていて顔には髭がだらしなく伸びていた。
リベルテがその男性に会釈する。
「あ、いや、これはどうも……」
サブリナが連れてきた客が女性であることもさることながら、剣とかを携えている相手であれば警戒しようものであるのだが、リベルテの容姿に恐縮していた。
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