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レッドたちを乗せた馬車は、ハーバランド方面に向かって進んでいた。
王都からハーバランドまでは少し遠く、タカヒロの仕事が急ぎでは無いらしいとのことで、ゆっくりとした旅路となっていた。
王都を出てすでに野営を一泊し、今日の遅くにはメレーナ村には着ける予定である。
「しっかし、お前の護衛ってことでハーバランドへ向かうことになるとはなぁ……」
レッドが御者台で振動に揺られながら言葉をこぼす。
「なんかすでに城から手続きが取られてたみたいで、ビックリですよねぇ。と言うか、ハーバランドに行くっていうのに、レッドさんが請け負ってくれたことの方が驚きましたけど」
「あそこに居る……誰だっけ? まぁ、その人に会いたくないって理由だったよね?」
マイが遠くの木々を見ながら、のんびりとした声を出す。
城が手配した馬車のためか、冒険者ギルドの依頼で借りるような馬車より揺れが小さく、それがのんびりとさせているようだった。
「あのなぁ……。あいつがおまえに剣を向けたことも忘れてんのか? 先の騒乱でファルケン伯爵の下で活躍したらしいからな。怪我を負ってまでも奮闘したって話しだったし、今なら会っても良いかと思ったんだ」
「え~、なんかレッドさん偉そう」
「俺の方が冒険者歴長いから良いんだよ!」
レッドたちは以前にハーバランドへ向かった際に、ユーセーと言う、おそらく『神の玩具』と思われる人物と対立した。
レッドたちは対立する気などなかったのだが、相手がその力を振りかざして、やりたいように生きていたことが原因であった。
気に入らない相手には躊躇い無く剣を振るってきたことから、レッドは警戒して会いたくないと言い続けていたのだが、先の騒乱で怪我を押して他の冒険者たちのために剣を振るい続けたらしいことをギルマス経由で耳にして少しだけ警戒心を緩めた。
きっと力を失ったことで変わらなければならなくなったのだろうことを感じ、会っても大丈夫だろうと考えたのだ。
他の面々も薄々とは気付いているのかもしれないが、レッドはわざわざタカヒロたちに話していないため、マイにからかわれる。
「他の所がどのようになっているのか、気になっていたところはありましたからね。特にランサナ砦は激戦地だったそうですから……。それに、アクネシアから逃げてきた人たちの受け入れもあって、モレクの町やハーバランドも変わっているのでしょうね」
リベルテが荷台から顔を覗かせて、遠くハーバランドを望むように目を向ける。
空は春の陽気に包まれていて、とても気持ちのいい風が吹いていた。
しばらくぶりに訪れたメレーナ村は、以前の記憶と変わらない、のんびりとした雰囲気のままだった。
「うわぁ~、なんか懐かしいねぇ」
「しばらくちゃんと来てなかった気がするね。ただ、大変なことが多すぎたから、そう感じるだけかもしれないけど……」
村の簡易的な木の門を抜けて村長宅へと向かう。
村であれば、寄った人たちの受付などの窓口は、すべて村長宅になるからである。
村長宅に向かい、一泊していくことを伝えに向かったのだが、出てきたのは記憶していた村長より若い男性だった。
「あれ? 村長さん変わったの?」
何か良くない事情があったのかもしれないのに、サラッと突っ込んだマイの質問に、レッドは身を固くしてしまう。
「……えぇ。近くのランサナ砦で大きな戦いがあったじゃないですか。あの戦いの前くらいに、戦いの気配を感じて逃げてきたのかまではわからないのですが、この村にやってた人たちが居まして……。誰かを探してもいたようなのですが、かなり気が立っていたやつらが前の村長を……」
メレーナ村で一時期過ごしていたマイとタカヒロが痛ましそうな顔になり、リベルテだけは顔色を少し悪くし、口元に手を当てていた。
「そんなことがあったので、次の村長になりたがる人が居なくて……。私が押し上げられて村長をやることになりました」
「そうでしたか……。王都もかなり被害が出ました。今ではまた活気を取り戻してきていますから、メレーナ村も負けずに」
「ええ。泊まりと言うことですが、宿の場所はご存知ですか?」
レッドの言葉に村長は力強い笑みを見せた。
自ら望んでなった立場ではなくても、この村を良くしたい、守りたいという気持ちはしっかりと持っているようだった。
「以前に『黄金の麦亭』に泊まったことがありますが」
「ええ。あの宿はまだあります。是非泊まって行って下さい」
王都とモレクの町の間にある村だけに、行き来する人たちから落とされるお金が欲しいらしく、しっかりと宣伝してくれた。
ただやはり、モレクの町まで行くかそのまま王都に行った方が店があるため、メレーナ村で泊まる人は少ないままであるようだった。
メレーナ村は広く畑が広がっていて春ごろに蒔かれた芽が伸び始めてきているところであり、少し低く青々とした小麦が広がっていた。
相変わらず、黄金色に輝く景色が見られる時期にこの宿に泊まりに来きていないので、宿屋の名前の景色を、レッドたちは見ることが出来ないままだった。
記憶を頼りに……と言うほど広く無い村だから、他の家より目立つ造りの宿はすぐに視界に入ってくる。
「すいませ~ん。宿泊の手続きをお願いします」
「は~い」
少し高い声が響き、パタパタと走ってくる音が聞こえてくる。
姿を現したのは、この村だけでなく王都であっても、評判になりそうな若い女性だった。
「いらっしゃいませ! 『黄金の麦亭』にようこそ!!」
レッドたちを見て、ガバッとお辞儀をする女性。
他からの客は滅多に来ていないのは変わらない様で、久々のお客にはりきっているのがわかる。
そして従業員の女性は顔をあげて、マイたちを見て「あ!」と声を上げた。
「マイさん! それにリベルテさん! お久しぶりです!!」
マイに抱きつくように動き出した女性に、マイとリベルテはそろって首を傾げてしまう。
レッドとタカヒロに向けて首を傾げられても、二人を知っているらしい女性に名前を呼ばれていない二人がわかるわけがない。
「あ!? もしかして、私のこともう忘れちゃったんですか?」
マイとリベルテが反応を返してこないことから、忘れられたんだ、と今にも泣き出しそうな顔になる従業員に、マイとリベルテがアワアワと慌ててなだめようとするが、誰か分からないままではかける言葉が出てこない。
「ずっとご飯届けたあげてたのに酷いです!」
「あ!!」
女性が言った決定的な一言でやっと全員が、その女性が誰かわかった。
この村に流れ着いてきたマイに家を貸し、さらにはご飯も届けてくれていた家の娘、フィリスだった。
あれからもう三年は経っており、フェリスはすっかりと大人びた姿となり、可愛らしい少女から美女へと変貌を遂げていたのだ。
あまりにも変わりすぎていて、マイたちの記憶の姿とまったく繋がらなかったのである。
「わ~ぁ。フィリスちゃん、すっかり美人になっちゃって~」
「本当に。村ではフィリスちゃんの取り合いですごいんじゃないかしら?」
誰か分かれば話は広がる。
女性たちがきゃいきゃいと手を取り合って、話し始める。
宿の手続きなどほったらかしである。
レッドとタカヒロは、相手がフィリスでは邪魔するわけにもいかなく、かと言ってあの中に入ることも出来なく、ただ見守り続けるしかなかった。
少し話に花を咲かせたフェリスであったが、この宿で働いているのは遊びでは無いらしく、ハッとしてすぐさま見せの人の顔になる。
「すみません。宿泊ですね! 食事は付けられますか? 食事つきで1泊 銅貨18枚になります!」
微笑ましそうに笑顔を見せながら、リベルテが手続きを進めていく。
食事つきの宿泊費がレッドたちに確認されることもなく支払われる。
食事は欲しかったから誰も文句を言うことはないかった。
「はい! それではごゆっくり~」
部屋を案内するフィリスであったが、ちらちらとリベルテの方に目を向けていた。
リベルテはレッドたちと顔を見合わせ、一つ頷き、フィリスに近づく。
「フィリスちゃん……。私に話があるのですね?」
フィリスは小さく頷く。
レッドは自分たちが借りた部屋にフィリスを促す。
部屋でちゃんと聞いた方が良い話だと考えたのだ。
「……リベルテさん。前にお話したこと覚えてますか?」
「ええ……。マイさんが借りていた家の裏手に、誰かの足跡があったお話ですよね?」
リベルテがしっかりと頷いて口を開けば、フィリスもコクリと頷いた。
「っ! この村に来た人たちは、マイさんが借りていた家に行ったのですね?」
「……うん。マイさんに貸していた家の扉を壊して入り込んで、何かを探すように荒らしてたの。それで何も見つからなかったで、家に火をつけて……。村長さんが火に気づいて、大人たちと向かったんだけど、ずっとマイさんのこと聞いてて」
怖かったことを思い出しながら話すフィリスの手はぎゅっと握り締められて震えていて、話の中心となったマイの顔は蒼白となりつつあった。
「もうこの村に居ないって、王都に行ったって言ったら、村長さんが……」
ポロポロと涙をこぼしながら何があったのかを教えてくれるフィリスを、ぎゅっと抱きしめるリベルテ。
「わ、わたしのせい、なの?」
以前にリベルテから話を聞いていたとは言え、自分を探しているとしか考えていなかった。
マイを探している人たちによって、自分と少しでも関わりをもった人たちや場所に被害がもたらされるなんて考えもしていなかった。
「マイのせいじゃない。マイのせいなんかじゃ」
タカヒロがマイを抱きしめる。
そうしなければ、マイが崩れてしまいそうだったのだ。
「ああ、マイのせいじゃない。キストが聖職者の国だとか言いながら、やってることが賊と変わらないせいだ」
マイの周りにいる人たちは、フィリスを含めて誰もマイのせいだと責めることはなかった。
マイにはそれが、優しくありがたいものであったが、苦しくもあった。
いっそ、マイのせいだと喚き散らされたほうが、気持ち的には楽だったのではないかと思えてしまうほどに。
城の仕事でハーバランドまで向かうことになったこの旅は、最初に立ち寄った村で、苦い思いから迎えることとなった。
王都からハーバランドまでは少し遠く、タカヒロの仕事が急ぎでは無いらしいとのことで、ゆっくりとした旅路となっていた。
王都を出てすでに野営を一泊し、今日の遅くにはメレーナ村には着ける予定である。
「しっかし、お前の護衛ってことでハーバランドへ向かうことになるとはなぁ……」
レッドが御者台で振動に揺られながら言葉をこぼす。
「なんかすでに城から手続きが取られてたみたいで、ビックリですよねぇ。と言うか、ハーバランドに行くっていうのに、レッドさんが請け負ってくれたことの方が驚きましたけど」
「あそこに居る……誰だっけ? まぁ、その人に会いたくないって理由だったよね?」
マイが遠くの木々を見ながら、のんびりとした声を出す。
城が手配した馬車のためか、冒険者ギルドの依頼で借りるような馬車より揺れが小さく、それがのんびりとさせているようだった。
「あのなぁ……。あいつがおまえに剣を向けたことも忘れてんのか? 先の騒乱でファルケン伯爵の下で活躍したらしいからな。怪我を負ってまでも奮闘したって話しだったし、今なら会っても良いかと思ったんだ」
「え~、なんかレッドさん偉そう」
「俺の方が冒険者歴長いから良いんだよ!」
レッドたちは以前にハーバランドへ向かった際に、ユーセーと言う、おそらく『神の玩具』と思われる人物と対立した。
レッドたちは対立する気などなかったのだが、相手がその力を振りかざして、やりたいように生きていたことが原因であった。
気に入らない相手には躊躇い無く剣を振るってきたことから、レッドは警戒して会いたくないと言い続けていたのだが、先の騒乱で怪我を押して他の冒険者たちのために剣を振るい続けたらしいことをギルマス経由で耳にして少しだけ警戒心を緩めた。
きっと力を失ったことで変わらなければならなくなったのだろうことを感じ、会っても大丈夫だろうと考えたのだ。
他の面々も薄々とは気付いているのかもしれないが、レッドはわざわざタカヒロたちに話していないため、マイにからかわれる。
「他の所がどのようになっているのか、気になっていたところはありましたからね。特にランサナ砦は激戦地だったそうですから……。それに、アクネシアから逃げてきた人たちの受け入れもあって、モレクの町やハーバランドも変わっているのでしょうね」
リベルテが荷台から顔を覗かせて、遠くハーバランドを望むように目を向ける。
空は春の陽気に包まれていて、とても気持ちのいい風が吹いていた。
しばらくぶりに訪れたメレーナ村は、以前の記憶と変わらない、のんびりとした雰囲気のままだった。
「うわぁ~、なんか懐かしいねぇ」
「しばらくちゃんと来てなかった気がするね。ただ、大変なことが多すぎたから、そう感じるだけかもしれないけど……」
村の簡易的な木の門を抜けて村長宅へと向かう。
村であれば、寄った人たちの受付などの窓口は、すべて村長宅になるからである。
村長宅に向かい、一泊していくことを伝えに向かったのだが、出てきたのは記憶していた村長より若い男性だった。
「あれ? 村長さん変わったの?」
何か良くない事情があったのかもしれないのに、サラッと突っ込んだマイの質問に、レッドは身を固くしてしまう。
「……えぇ。近くのランサナ砦で大きな戦いがあったじゃないですか。あの戦いの前くらいに、戦いの気配を感じて逃げてきたのかまではわからないのですが、この村にやってた人たちが居まして……。誰かを探してもいたようなのですが、かなり気が立っていたやつらが前の村長を……」
メレーナ村で一時期過ごしていたマイとタカヒロが痛ましそうな顔になり、リベルテだけは顔色を少し悪くし、口元に手を当てていた。
「そんなことがあったので、次の村長になりたがる人が居なくて……。私が押し上げられて村長をやることになりました」
「そうでしたか……。王都もかなり被害が出ました。今ではまた活気を取り戻してきていますから、メレーナ村も負けずに」
「ええ。泊まりと言うことですが、宿の場所はご存知ですか?」
レッドの言葉に村長は力強い笑みを見せた。
自ら望んでなった立場ではなくても、この村を良くしたい、守りたいという気持ちはしっかりと持っているようだった。
「以前に『黄金の麦亭』に泊まったことがありますが」
「ええ。あの宿はまだあります。是非泊まって行って下さい」
王都とモレクの町の間にある村だけに、行き来する人たちから落とされるお金が欲しいらしく、しっかりと宣伝してくれた。
ただやはり、モレクの町まで行くかそのまま王都に行った方が店があるため、メレーナ村で泊まる人は少ないままであるようだった。
メレーナ村は広く畑が広がっていて春ごろに蒔かれた芽が伸び始めてきているところであり、少し低く青々とした小麦が広がっていた。
相変わらず、黄金色に輝く景色が見られる時期にこの宿に泊まりに来きていないので、宿屋の名前の景色を、レッドたちは見ることが出来ないままだった。
記憶を頼りに……と言うほど広く無い村だから、他の家より目立つ造りの宿はすぐに視界に入ってくる。
「すいませ~ん。宿泊の手続きをお願いします」
「は~い」
少し高い声が響き、パタパタと走ってくる音が聞こえてくる。
姿を現したのは、この村だけでなく王都であっても、評判になりそうな若い女性だった。
「いらっしゃいませ! 『黄金の麦亭』にようこそ!!」
レッドたちを見て、ガバッとお辞儀をする女性。
他からの客は滅多に来ていないのは変わらない様で、久々のお客にはりきっているのがわかる。
そして従業員の女性は顔をあげて、マイたちを見て「あ!」と声を上げた。
「マイさん! それにリベルテさん! お久しぶりです!!」
マイに抱きつくように動き出した女性に、マイとリベルテはそろって首を傾げてしまう。
レッドとタカヒロに向けて首を傾げられても、二人を知っているらしい女性に名前を呼ばれていない二人がわかるわけがない。
「あ!? もしかして、私のこともう忘れちゃったんですか?」
マイとリベルテが反応を返してこないことから、忘れられたんだ、と今にも泣き出しそうな顔になる従業員に、マイとリベルテがアワアワと慌ててなだめようとするが、誰か分からないままではかける言葉が出てこない。
「ずっとご飯届けたあげてたのに酷いです!」
「あ!!」
女性が言った決定的な一言でやっと全員が、その女性が誰かわかった。
この村に流れ着いてきたマイに家を貸し、さらにはご飯も届けてくれていた家の娘、フィリスだった。
あれからもう三年は経っており、フェリスはすっかりと大人びた姿となり、可愛らしい少女から美女へと変貌を遂げていたのだ。
あまりにも変わりすぎていて、マイたちの記憶の姿とまったく繋がらなかったのである。
「わ~ぁ。フィリスちゃん、すっかり美人になっちゃって~」
「本当に。村ではフィリスちゃんの取り合いですごいんじゃないかしら?」
誰か分かれば話は広がる。
女性たちがきゃいきゃいと手を取り合って、話し始める。
宿の手続きなどほったらかしである。
レッドとタカヒロは、相手がフィリスでは邪魔するわけにもいかなく、かと言ってあの中に入ることも出来なく、ただ見守り続けるしかなかった。
少し話に花を咲かせたフェリスであったが、この宿で働いているのは遊びでは無いらしく、ハッとしてすぐさま見せの人の顔になる。
「すみません。宿泊ですね! 食事は付けられますか? 食事つきで1泊 銅貨18枚になります!」
微笑ましそうに笑顔を見せながら、リベルテが手続きを進めていく。
食事つきの宿泊費がレッドたちに確認されることもなく支払われる。
食事は欲しかったから誰も文句を言うことはないかった。
「はい! それではごゆっくり~」
部屋を案内するフィリスであったが、ちらちらとリベルテの方に目を向けていた。
リベルテはレッドたちと顔を見合わせ、一つ頷き、フィリスに近づく。
「フィリスちゃん……。私に話があるのですね?」
フィリスは小さく頷く。
レッドは自分たちが借りた部屋にフィリスを促す。
部屋でちゃんと聞いた方が良い話だと考えたのだ。
「……リベルテさん。前にお話したこと覚えてますか?」
「ええ……。マイさんが借りていた家の裏手に、誰かの足跡があったお話ですよね?」
リベルテがしっかりと頷いて口を開けば、フィリスもコクリと頷いた。
「っ! この村に来た人たちは、マイさんが借りていた家に行ったのですね?」
「……うん。マイさんに貸していた家の扉を壊して入り込んで、何かを探すように荒らしてたの。それで何も見つからなかったで、家に火をつけて……。村長さんが火に気づいて、大人たちと向かったんだけど、ずっとマイさんのこと聞いてて」
怖かったことを思い出しながら話すフィリスの手はぎゅっと握り締められて震えていて、話の中心となったマイの顔は蒼白となりつつあった。
「もうこの村に居ないって、王都に行ったって言ったら、村長さんが……」
ポロポロと涙をこぼしながら何があったのかを教えてくれるフィリスを、ぎゅっと抱きしめるリベルテ。
「わ、わたしのせい、なの?」
以前にリベルテから話を聞いていたとは言え、自分を探しているとしか考えていなかった。
マイを探している人たちによって、自分と少しでも関わりをもった人たちや場所に被害がもたらされるなんて考えもしていなかった。
「マイのせいじゃない。マイのせいなんかじゃ」
タカヒロがマイを抱きしめる。
そうしなければ、マイが崩れてしまいそうだったのだ。
「ああ、マイのせいじゃない。キストが聖職者の国だとか言いながら、やってることが賊と変わらないせいだ」
マイの周りにいる人たちは、フィリスを含めて誰もマイのせいだと責めることはなかった。
マイにはそれが、優しくありがたいものであったが、苦しくもあった。
いっそ、マイのせいだと喚き散らされたほうが、気持ち的には楽だったのではないかと思えてしまうほどに。
城の仕事でハーバランドまで向かうことになったこの旅は、最初に立ち寄った村で、苦い思いから迎えることとなった。
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