197 / 214
197
しおりを挟む
レッドは身を滑らせるようにして城門に飛び込んだが、驚くくらいあっさりと中に入ることが出来た。
門を警固しているはずの兵も、巡回しているはずの兵の姿もも見えなかったのである。
本来ではありえない状況に、すでに良からぬことが起きてしまっているのかと不安になってくる。
しかし、事が起きていたなら何かしらの騒ぎが起きているはずであり、騒がしい様子が無いことからまだ大丈夫そうだと、レッドは自身を納得させる。
人の行動は、その時の気持ちが反映されてしまうものである。
例えば、音を立てないように行動する必要がある際に不安や焦りがあると、不意に大きな音を立ててしまいやすい。音を立てないようにと気をつけているはずなのだが、焦りや不安から視野が狭くなってしまったり、落ち着いているつもりで落ち着けていなかったりして、何かを倒してしまったりだとか枯れ枝のように音が響いてしまう物を踏んだりしてしまうのだ。
それを知っているレッドはゆっくりと、でも小さく呼吸を三度ほど繰り返し、気持ちを落ち着けてから動き出した。
さすがに城門の中にはさらっと入れたが、城の中に入るとなるとそれは難しい。
さすがに城の中にまで人が居ないなど、王族、貴族全てが逃げ出すなどなければありえないのだ。
レッドは早々に城の中に入ると言う選択肢は投げ捨てる。そもそも、ギルマスからの依頼は騎士たちの様子を見てくることで、城の中にまで入る必要性を感じなかったのである。
城のどこか一室で密談などをしているのかもしれないが、それを一冒険者が忍び込んで聞いてくるとかそんなのは手に余りすぎる内容だ。さすがに、ギルマスもそんな無茶な要求をレッドにしていない……と思うことにした。
レッドは用心深く、城の外を動いていく。
城の周囲であったり、兵舎で騎士たちの姿が見えなかったら、それは何かしらの動いていると考えて戻れば良いとの判断の動きだ。
オルグラント王国はこれまで専守の指針であった。だからこそ、騎士たちが城から姿を消す何ていうのは、他の国から攻め込まれている時くらいしかありえないのだ。
それなのに姿が見えないとなれば、内乱を起こそうとして王都に大きな混乱を再び起こすか、キストへオルグラントから侵略を始めると言うことになるだけだ。
レッドの手に力が入る。
この国の人たちは、わざわざ他の国に攻め込むことも、騒乱を起こすことも望んでいない。
戦争を仕掛けて奪わなければいけないほど貧しくは無いし、攻め込んで勝ったとしても奪えるのは、人の命と戦って荒れた人の居ない土地だけだ。
そんな荒地でまた収穫できるようになるまで人手と月日が必要となるだけで、それならまだ開拓できていないオルグラント国内の土地に手を出す方が、得られる物が多いと考えられている。
それに、捕虜であったりその土地に残った人たちが、オルグラントに支配されて大人しく従ってくれるかなんて誰も責任が持てる話ではない。
治める国が変われば治め方も変わり、これまでの生活から変わってしまうのだから、自分たちの生活に不安を覚えるもので、ふとした時に以前の暮らしが良かったなんて思ってしまうのも人である。
ましてや、オルグラント王国は先にキストの者たちによって騒乱を起こされ、多くの人が亡くなり、怪我をして悲しむこととなったのだ。キスト聖国の教えを認めることなんてありえない。
キストの生活に慣れた人たちには受け入れられない生活になることだろう。
では、残った人たちを追い出してオルグラントの人々をその土地に送れば良いと考える者もいるだろうが、オルグラント王国であっても人が余っているわけではない。先の騒乱で亡くなった人が多く、仕事に就いている人は減っているし、怪我を負った人たちもそれまでの仕事は続けられなくなって、冒険者で生計を立てることになった人たちもいるのだ。
だからと言って冒険者の人たちを強制的に別の職に就けようとしたところで、上手く働けるものでもない。その仕事をこなせるようになるまで、また長い月日を必要とすることになり、それまで国が補助を出すなんて、どれほど国に蓄えが必要だと言うのだろうか。
それに騒乱と戦争で兵も命を落としている。そこで戦争をして土地を奪っても、またその戦いで命を落とす兵が出ることになるだけでなく、守らなければいけない土地を広げることになる。
一時的に国が豊かになると喜ぶ者が居るかもしれないが、少しだけ先を見れば国を疲弊させ、オルグラントの人々が苦しむことになるだけなのだ。
これまでオルグラント王国が専守であり続けてきたのも、肥沃な土地がまだまだ広がっているからと言うだけでなく、土地を攻め取ったとしてもその後が続けられないと言う考えもあったのである。
レッドがつい篭ってしまった手から力を抜くように、ゆっくりと息を吐く。
なんとかして事が起きてしまう事態は止めたいという思いに力が入ってしまい、その思いを振り切るように頭を振る。
気持ちが急いてしまえば、それはまた自分の身を危うくしてしまうかもしれないのだから。
レッドはまず、中心に居ると言われているベルセイスを探すことにする。
ベルセイスに会って、話し合いでなんとか収まればと言う思いがあったのだ。
ただ、ベルセイスがキストへ攻め込むとの声を強めている理由がわからない。
以前に、帝国やキストと戦ったが、オルグラントが勝ったと声高に言える結果はない。
帝国との戦いは、アクネシアとグーリンデとの連合で戦い、負けている。
後退中に『神の玩具』の横槍が入ったことで、帝国が下がったに過ぎない。
キストとの戦いは、オルグラントの領土内であった上に、キストからの兵と言うのは少なく、ほとんどはモンスターだった。
この戦いで大勢の犠牲者を出すことになったオルグラントの方が、被害が大きい結果である。
領内からは蹴散らして、その多くを討ち取った結果になっているが、それだって突然にモンスターたちがキスト兵にも襲いかかり出した所に、時機良くファルケン伯の援軍が間に合ったからに過ぎない。
運が良かったとも言えそうな話であって、キスト相手だからと勝てるなんて簡単に考えていたのなら愚か過ぎる考えであった。
まるで自分たちは負けないと、命を落とすことは無いと夢想しているだけでしかない。
ふと、レッドはまさかと思うようなことが浮かんでしまう。
ベルセイスはアンリとよく逢っていた。それこそ自身の婚約者よりも。
そしてそのアンリはキストへとその身を寄せている。
ベルセイスはアンリを取り返すために、キストへ攻め込もうと考えているのではないかと思ってしまったのだ。
レッドはまたも頭を振る。あまりにも酷い想像だったのだ。
ベルセイスはすでに、前騎士団長の娘と結婚している。
アンリ騒動の後、悪い噂を払拭するように急遽、ベルセイスは前騎士団長の娘と入籍したのである。
婚約のままではベルセイスの立場が危ういと、前騎士団長が動いたものと考えられている。
副団長を支持する声が強まってきていることに危機感を覚えたのもあるのだろう。
結局の所、他人の考えなど、本人に聞かない限り分かりはしない。
逸る気持ちを抑えながら、レッドは兵舎に向かって足を動かしていく。
この移動の間も見回りの兵は見当たらなかった。
レッドはもう何かあることを前提に考えながら歩いていた。本当に、誰とも会わずに兵舎までたどり着けてしまったからである。
レッドとて少しはこのような行動の心得はあるが、自信を持っているわけではなかった。
レッドよりも腕の良い人物が身近に居たのだから、謙遜でもない。それだと言うのにここまで順調であれば、舞台が整えられているか、すでに事態が動いているとしか考えられなかったのだ。
兵舎の隣には広い訓練場があった。兵たちは日々、そこで鍛錬を行っているらしい。
かなり厳しい訓練らしく、兵士になることを望む人が多くない原因にもなっていると耳にしたことがあるが、命を掛けて国を守るのだから、厳しい内容でなければ価値が無いと、レッドは思っている。
その訓練場には大勢の兵士たちの姿が遠目からでも目に入った。
特別な訓練をしている様子は無く、これから事を起こそうとするような剣呑な雰囲気も無かった。
至って、普段どおりの訓練に感じられた。
タカヒロをわざわざ城から遠ざけるように孤児院へ向かわせたから、何かある物と考えで動いていたのだが、何事も無さそうな雰囲気にレッドは肩透かしを感じていた。
これなら、タカヒロの方が狙いだったのではないかと思いもするが、まだこちら側で何も無いとは言い切れなく、レッドは引き続き兵たちの様子を窺うことにする。
自分の間が外れたことは悔しくはあるが、何事も無い方が良い話であり、安堵とも残念とも言い難い気持ちで、レッドは周囲を見ていた。
訓練を続ける兵士たちに上官と思われる人物が声を荒げているように見え、噂に違わず厳しい訓練が続けられているように見えるのだが、そこに一番目立つと思われるベルセイスの姿は何処を見ても見当たらない。
兵の全てが訓練場にいるものでもないだろうが、騎士たちの姿も幾人か見えている。それなのにベルセイスの姿だけ見えなかったのである。
訓練場でベルセイスの姿が見えれば、普段どおりの様子だったとの報告で終わらせられるが、ベルセイスの姿だけ見えなかった。
キストへの進攻の声を強めているベルセイスだけは、その様子を確認しなければならなかった。
何より、叶うのであればその真意をレッドはベルセイスに確認したかったのもあった。
レッドはここまで来た道を引き返していく。
まだ、人と会いそうな気配は感じられない。
さすがに城の中に入るのは、今この時であっても難しく、中に入って見つかれば逃げ場は少ない所では捕まってしまう光景しか浮かんでこない。
何とか中の様子を窺いたい所であるが、内政官やメイドたちが動き回っていて、覗き見ることも容易そうではなく、少しずつ場所を変えながら中を窺おうとするが、そんな機会は巡ってこない。
城の中だけは人の動きが多く、働き者ばかりだな、と逃避するような考えになってきてしまう。
結局、なるべく人の気配が少なそうな方へと動き続けた結果、拓けた場所に出てしまっていた。
ちょっとした庭園で、中央辺りに木があり、天気の良い日であれば気持ち良さそうな場所であった。
「へぇ~……城にはこんな場所があるのか」
普段目にする機会など無い整えられた庭園に、レッドは思わず声を漏らしながら、中央の木を陰にぐるっと回る。
回った先で人が立っていることに気がついて、思わず立ち止まる。
その人物も突然の侵入者であるレッドを見ていた。
短く切り揃えられた金髪に、鍛えられているのがわかる体格。ベルセイス本人であった。
門を警固しているはずの兵も、巡回しているはずの兵の姿もも見えなかったのである。
本来ではありえない状況に、すでに良からぬことが起きてしまっているのかと不安になってくる。
しかし、事が起きていたなら何かしらの騒ぎが起きているはずであり、騒がしい様子が無いことからまだ大丈夫そうだと、レッドは自身を納得させる。
人の行動は、その時の気持ちが反映されてしまうものである。
例えば、音を立てないように行動する必要がある際に不安や焦りがあると、不意に大きな音を立ててしまいやすい。音を立てないようにと気をつけているはずなのだが、焦りや不安から視野が狭くなってしまったり、落ち着いているつもりで落ち着けていなかったりして、何かを倒してしまったりだとか枯れ枝のように音が響いてしまう物を踏んだりしてしまうのだ。
それを知っているレッドはゆっくりと、でも小さく呼吸を三度ほど繰り返し、気持ちを落ち着けてから動き出した。
さすがに城門の中にはさらっと入れたが、城の中に入るとなるとそれは難しい。
さすがに城の中にまで人が居ないなど、王族、貴族全てが逃げ出すなどなければありえないのだ。
レッドは早々に城の中に入ると言う選択肢は投げ捨てる。そもそも、ギルマスからの依頼は騎士たちの様子を見てくることで、城の中にまで入る必要性を感じなかったのである。
城のどこか一室で密談などをしているのかもしれないが、それを一冒険者が忍び込んで聞いてくるとかそんなのは手に余りすぎる内容だ。さすがに、ギルマスもそんな無茶な要求をレッドにしていない……と思うことにした。
レッドは用心深く、城の外を動いていく。
城の周囲であったり、兵舎で騎士たちの姿が見えなかったら、それは何かしらの動いていると考えて戻れば良いとの判断の動きだ。
オルグラント王国はこれまで専守の指針であった。だからこそ、騎士たちが城から姿を消す何ていうのは、他の国から攻め込まれている時くらいしかありえないのだ。
それなのに姿が見えないとなれば、内乱を起こそうとして王都に大きな混乱を再び起こすか、キストへオルグラントから侵略を始めると言うことになるだけだ。
レッドの手に力が入る。
この国の人たちは、わざわざ他の国に攻め込むことも、騒乱を起こすことも望んでいない。
戦争を仕掛けて奪わなければいけないほど貧しくは無いし、攻め込んで勝ったとしても奪えるのは、人の命と戦って荒れた人の居ない土地だけだ。
そんな荒地でまた収穫できるようになるまで人手と月日が必要となるだけで、それならまだ開拓できていないオルグラント国内の土地に手を出す方が、得られる物が多いと考えられている。
それに、捕虜であったりその土地に残った人たちが、オルグラントに支配されて大人しく従ってくれるかなんて誰も責任が持てる話ではない。
治める国が変われば治め方も変わり、これまでの生活から変わってしまうのだから、自分たちの生活に不安を覚えるもので、ふとした時に以前の暮らしが良かったなんて思ってしまうのも人である。
ましてや、オルグラント王国は先にキストの者たちによって騒乱を起こされ、多くの人が亡くなり、怪我をして悲しむこととなったのだ。キスト聖国の教えを認めることなんてありえない。
キストの生活に慣れた人たちには受け入れられない生活になることだろう。
では、残った人たちを追い出してオルグラントの人々をその土地に送れば良いと考える者もいるだろうが、オルグラント王国であっても人が余っているわけではない。先の騒乱で亡くなった人が多く、仕事に就いている人は減っているし、怪我を負った人たちもそれまでの仕事は続けられなくなって、冒険者で生計を立てることになった人たちもいるのだ。
だからと言って冒険者の人たちを強制的に別の職に就けようとしたところで、上手く働けるものでもない。その仕事をこなせるようになるまで、また長い月日を必要とすることになり、それまで国が補助を出すなんて、どれほど国に蓄えが必要だと言うのだろうか。
それに騒乱と戦争で兵も命を落としている。そこで戦争をして土地を奪っても、またその戦いで命を落とす兵が出ることになるだけでなく、守らなければいけない土地を広げることになる。
一時的に国が豊かになると喜ぶ者が居るかもしれないが、少しだけ先を見れば国を疲弊させ、オルグラントの人々が苦しむことになるだけなのだ。
これまでオルグラント王国が専守であり続けてきたのも、肥沃な土地がまだまだ広がっているからと言うだけでなく、土地を攻め取ったとしてもその後が続けられないと言う考えもあったのである。
レッドがつい篭ってしまった手から力を抜くように、ゆっくりと息を吐く。
なんとかして事が起きてしまう事態は止めたいという思いに力が入ってしまい、その思いを振り切るように頭を振る。
気持ちが急いてしまえば、それはまた自分の身を危うくしてしまうかもしれないのだから。
レッドはまず、中心に居ると言われているベルセイスを探すことにする。
ベルセイスに会って、話し合いでなんとか収まればと言う思いがあったのだ。
ただ、ベルセイスがキストへ攻め込むとの声を強めている理由がわからない。
以前に、帝国やキストと戦ったが、オルグラントが勝ったと声高に言える結果はない。
帝国との戦いは、アクネシアとグーリンデとの連合で戦い、負けている。
後退中に『神の玩具』の横槍が入ったことで、帝国が下がったに過ぎない。
キストとの戦いは、オルグラントの領土内であった上に、キストからの兵と言うのは少なく、ほとんどはモンスターだった。
この戦いで大勢の犠牲者を出すことになったオルグラントの方が、被害が大きい結果である。
領内からは蹴散らして、その多くを討ち取った結果になっているが、それだって突然にモンスターたちがキスト兵にも襲いかかり出した所に、時機良くファルケン伯の援軍が間に合ったからに過ぎない。
運が良かったとも言えそうな話であって、キスト相手だからと勝てるなんて簡単に考えていたのなら愚か過ぎる考えであった。
まるで自分たちは負けないと、命を落とすことは無いと夢想しているだけでしかない。
ふと、レッドはまさかと思うようなことが浮かんでしまう。
ベルセイスはアンリとよく逢っていた。それこそ自身の婚約者よりも。
そしてそのアンリはキストへとその身を寄せている。
ベルセイスはアンリを取り返すために、キストへ攻め込もうと考えているのではないかと思ってしまったのだ。
レッドはまたも頭を振る。あまりにも酷い想像だったのだ。
ベルセイスはすでに、前騎士団長の娘と結婚している。
アンリ騒動の後、悪い噂を払拭するように急遽、ベルセイスは前騎士団長の娘と入籍したのである。
婚約のままではベルセイスの立場が危ういと、前騎士団長が動いたものと考えられている。
副団長を支持する声が強まってきていることに危機感を覚えたのもあるのだろう。
結局の所、他人の考えなど、本人に聞かない限り分かりはしない。
逸る気持ちを抑えながら、レッドは兵舎に向かって足を動かしていく。
この移動の間も見回りの兵は見当たらなかった。
レッドはもう何かあることを前提に考えながら歩いていた。本当に、誰とも会わずに兵舎までたどり着けてしまったからである。
レッドとて少しはこのような行動の心得はあるが、自信を持っているわけではなかった。
レッドよりも腕の良い人物が身近に居たのだから、謙遜でもない。それだと言うのにここまで順調であれば、舞台が整えられているか、すでに事態が動いているとしか考えられなかったのだ。
兵舎の隣には広い訓練場があった。兵たちは日々、そこで鍛錬を行っているらしい。
かなり厳しい訓練らしく、兵士になることを望む人が多くない原因にもなっていると耳にしたことがあるが、命を掛けて国を守るのだから、厳しい内容でなければ価値が無いと、レッドは思っている。
その訓練場には大勢の兵士たちの姿が遠目からでも目に入った。
特別な訓練をしている様子は無く、これから事を起こそうとするような剣呑な雰囲気も無かった。
至って、普段どおりの訓練に感じられた。
タカヒロをわざわざ城から遠ざけるように孤児院へ向かわせたから、何かある物と考えで動いていたのだが、何事も無さそうな雰囲気にレッドは肩透かしを感じていた。
これなら、タカヒロの方が狙いだったのではないかと思いもするが、まだこちら側で何も無いとは言い切れなく、レッドは引き続き兵たちの様子を窺うことにする。
自分の間が外れたことは悔しくはあるが、何事も無い方が良い話であり、安堵とも残念とも言い難い気持ちで、レッドは周囲を見ていた。
訓練を続ける兵士たちに上官と思われる人物が声を荒げているように見え、噂に違わず厳しい訓練が続けられているように見えるのだが、そこに一番目立つと思われるベルセイスの姿は何処を見ても見当たらない。
兵の全てが訓練場にいるものでもないだろうが、騎士たちの姿も幾人か見えている。それなのにベルセイスの姿だけ見えなかったのである。
訓練場でベルセイスの姿が見えれば、普段どおりの様子だったとの報告で終わらせられるが、ベルセイスの姿だけ見えなかった。
キストへの進攻の声を強めているベルセイスだけは、その様子を確認しなければならなかった。
何より、叶うのであればその真意をレッドはベルセイスに確認したかったのもあった。
レッドはここまで来た道を引き返していく。
まだ、人と会いそうな気配は感じられない。
さすがに城の中に入るのは、今この時であっても難しく、中に入って見つかれば逃げ場は少ない所では捕まってしまう光景しか浮かんでこない。
何とか中の様子を窺いたい所であるが、内政官やメイドたちが動き回っていて、覗き見ることも容易そうではなく、少しずつ場所を変えながら中を窺おうとするが、そんな機会は巡ってこない。
城の中だけは人の動きが多く、働き者ばかりだな、と逃避するような考えになってきてしまう。
結局、なるべく人の気配が少なそうな方へと動き続けた結果、拓けた場所に出てしまっていた。
ちょっとした庭園で、中央辺りに木があり、天気の良い日であれば気持ち良さそうな場所であった。
「へぇ~……城にはこんな場所があるのか」
普段目にする機会など無い整えられた庭園に、レッドは思わず声を漏らしながら、中央の木を陰にぐるっと回る。
回った先で人が立っていることに気がついて、思わず立ち止まる。
その人物も突然の侵入者であるレッドを見ていた。
短く切り揃えられた金髪に、鍛えられているのがわかる体格。ベルセイス本人であった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる