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轟音が鳴り響いた後、周囲に見えていた冒険者たちの半数がその体を地面に倒していた。
倒れた冒険者たちの中にリベルテの姿もあり、レッドは慌てて傍に駆け寄った。
「おい、リベルテ!! しっかりしろっ!」
抱き起こして大きな声で呼びかけるが、そんなレッドをキスト兵は待ってはくれない。
奇声を上げながら向かってきていた。
レッドはリベルテの体をゆっくりと地面に横たわらせて、振り抜きざまにキスト兵の首を一閃する。
タカヒロたち見せた事の無い、はっきりと殺意を表した姿だった。
薬によって凶暴化させられているはずのキスト兵たちが、じりっと後ずさる。
レッドから醸し出されている雰囲気に恐れを感じたのだ。
しかし、キスト兵たちが逃げ出そうと動く前にレッドの動く姿が見え、見えた時には視界が赤く染まっていた。
キスト兵が一人また一人と、あっけなく血を噴き上げながらその身を崩す。
レッドは動き出した勢いのまま、キストの『銃』兵の下へ走り出した。
「く、くるなっ!」
『銃』兵は近接武器を持っていないらしく、棒みたいな『銃』を振り回してレッドを牽制する。
この『銃』を使ったキスト兵たちには薬が使われていないようで、先ほどまでレッドが相手をした兵たちよりはっきりと、レッドに対して怯えを見せていた。
だが、そんなことがレッドを止める理由になるわけがない。
仲間の命を奪ったのは、その『銃』を使った者達なのだから。
レッドに抵抗らしい抵抗も出来ず、血を噴き上げて倒れていくキスト兵。
「た、助けてくれ……。頼む……」
仲間が倒れていく状況に、キスト兵がレッドに助けを請う。
「俺たちだって戦いたくて戦ってるわけじゃないんだ。聖職者たちに言われてやってただけなんだ」
この『銃』と言う武器を持っているのはキストの教えを信じる人たちでもなく、キスト聖国の中で甘い汁を吸ってきた者達のようで、ずいぶんと都合の良い事だけを口にしていく。
だからこそ、レッドがその言葉に耳を貸すわけが無かった。
いや、このような者達でなくとも、今のレッドは止まらなかったかもしれない。
『銃』を捨てて逃げ出すキスト兵。
その中で悲鳴が上がっていく。悲鳴が聞こえるその場所だけは、虐殺の場に見えるほどだった。
しかし、戦争は一人でしているものではない。
薬を使われているキスト兵が集まってきて、レッドを取り囲んでいく。
どう見ても多勢に無勢。
今のレッドであっても、いや、他のどのような者であっても、逃げ出すことも返り討ちにすることも難しい状況である。
先ほどまで助けを請ってきたキスト兵を斬り倒したレッドなのだから、ここで降伏することなどありえないし、またレッドもそんな気などさらさらなかった。
力の限り暴れて、終わることを考えていた。
迫り来るキスト兵を一人斬り倒すが周囲を囲まれているのだ、背中を斬られる。
だが、そんな怪我一つで倒れる意志の弱さではない。
また一人、また一人と傷を負いながら、キスト兵を倒していく。
剣が血で滑って斬れなくなった最後の方では、斬るのではなく剣で殴り倒していた。
その血も返り血なのか、自身が流した血かわからないほどであった。
レッドのあまりの異様さに、取り囲んでいたキスト兵がその動きを鈍らせ、取り囲んだまま動けなくなっていた。
それにキスト兵たちとしても、今のレッドは無理をして攻めかかる必要が無いと思える状態だったのもあったのかもしれない。
動き続けた疲れと流した血の多さから、ついにレッドが膝を折る。
「ここまでか……。最後まで、無茶したもんだ……また怒られそうだな」
レッドはフッと笑いを漏らす。もうこんな無茶を嗜めてくる相手はいないのだ。
反撃する力も失ったレッドに止めを刺そうとキスト兵が動き始めるが、そこに地響きが近づいて来る。
その音にキスト兵が戸惑いを見せたところに、一団が突撃してキスト兵を倒していく。
オルグラントの騎士たちだった。
その鎧から『銃』で負傷はしていなかったのだが、轟音で馬が暴れて制御出来なくなり、振り落とされたり、馬たちを落ち着かせるのに手を取られていたのだ。
レッドたち冒険者たちの働きで退がれたことで、多少なりとも態勢を整えることが出来たのだ。
整えられたと言っても、騎士団もその数を減らしており、数が多いとは言えなかった。
「無事かっ!?……無茶をする……。だが、助かった」
この状況にあって、レッドたち冒険者の救援に戻ってきた騎士団はベルセイスが率いていた。
数が少なかったのは『銃』の影響で負傷した者が多かったからかもしれないが、救援に向かった先がただの冒険者相手だったなのかもしれなかった。
だが、今この場に騎士団が駆けつけたのは事実であり、救いであった。
キスト兵は『銃』が無ければ、オルグラントの騎士たちの相手は厳しいらしく退がっていく。
「私たちも退がるぞ! だが、息のある者たちは救助していくぞ」
ベルセイスの号令の下、騎士たちが『銃』で倒れた冒険者たちの中で、まだ息がある者たちを馬に乗せていく。
だいぶ力を失っているレッドであるが、ヨロヨロと立ち上がってリベルテの下へと歩き出す。
レッドがリベルテをゆっくりと抱え起こすと、リベルテが咳き込んだ。
「リベルテ!?」
「……レッド? ……また、無茶をして……」
目を開けたリベルテが傷だらけのレッドを目にして、心配そうに言ってくる。
レッドは、リベルテの胸に頭を落とす。
「……良かった」
泣いているような声だった。
先ほどまでは衝撃で気を失っていただけらしく、リベルテがゆっくりと腕を動かす。
さすがに怪我はしているようで、時折、痛みに眉をしかめながら胸元を探り、何かを取り出した。
リベルテの手には短剣があった。
「これの、おかげですね」
はっきりとはわからないが、どことなく覚えがある短剣だった。
リベルテが愛おしそうに鉄の塊がめり込んでいる短剣を握り締める。
レッドが冒険者となった頃から長く使い続けた物で、長く愛用してきたがさすがに剣として使い続けるのは難しい状態となった際に、短剣にと誂え直してもらった物であった。
その短剣が『銃』の攻撃からリベルテを守ってくれたらしい。
他の『銃』に撃たれた人たちのような怪我こそはしていないが、さすがに当たった衝撃は強かったようで、リベルテは骨を痛めているらしい。
レッドが強く抱きしめているのが痛いらしく、レッドはリベルテの胸元から引き剥がされる。
「……酷い状況ですね」
「……あぁ。ここからどこまで無事でいられるのか」
一旦、キスト兵が退がったことでレッドたちも退がることが出来た。
だが、これで戦争が終わるものではない。
守る者と攻める者。逃げる者とそれを追う者。それが替わるのだ。
オルグラント軍はここから撤退に動き出す。
レッドたちが乱入したことでキスト兵をいくらか倒せたとは言え、『銃』を持ったキスト兵が居なくなったわけではないし、オルグラント軍が出した犠牲が大きく、ここからさらに攻めなおすことなど出来なく、撤退するしかなくなっていたためである。
そんなオルグラント軍に対して、キスト軍はこのまま逃がすわけにはいかなかった。
帝国とも戦っているのだから、このままオルグラント軍を逃がしてしまうわけにはいかないのだ。
また戦うことにはなるかもしれないが、ここで大きくオルグラント軍を叩くことで、キストへ向かってくる力を削がねばならなかったのである。
それに、ここでキストがオルグラントに対して大きな戦果を上げれば、戦う力を弱めたり、失ったオルグラントがキストに和議を望んでくる可能性も考えられた。
いや、キスト側から持ち掛けても、オルグラントは受けることになるだろう。
実際、ここで多くの兵が討たれてしまえば、オルグラントの戦える力は十年単位で戻らない。
キストに憎しみや恨みがあっても戦えないのだから、その手を取るしか国を守れなくなってしまうのだ。
そのため、オルグラント兵にとって、厳しい撤退戦が始まった。
退がったレッドたちを迎えたのは、同じように傷つき、塞ぎこんでいる兵士と冒険者たちだった。
「レッドはまず手当てしないと」
「あぁ、頼む……。落ち着いてくると、きっついな……」
薬のほとんどが運び出されていく。
これから逃げるのだから、使い切ってしまって良かった。
「飯も食えるやつは食べておけ! ただし、これから先、国に戻れるまで食える暇なんて無いからな!」
ベルセイスの声がはっきりと聞こえる。
遠くまで声が響くと言うのは、命令が届きやすさせるものであり、上に立つ者として必要な力である。
そして今の堂々とした立ち姿は、騎士団長として誰もが認めるだろうと思えるほどだった。
後は、ボードウィン宰相もその力を発揮出来るようになれば、世代交代による不安の声は小さくなり、オルグラントは新しい時代を迎えられそうに思えた。
「そう言えば……、タカヒロは?」
タカヒロたち魔法使いも戦争に従軍することになったと聞いていた。
城仕えであり、戦う力を持っているのだから、当然だと言えた。
冒険者たちの軍には配属されないことも知っていたため、その姿を見ることも出来なかったのだが、こうして敗走している中ですらそれらしい姿が見えなく、気掛かりだった。
「タカヒロさんなら、ちゃんと逃げてそうですけどね。どなたかと違って無茶はしない方ですから」
リベルテが巻き終えた布を軽く叩く。
その痛みにレッドは眉をしかめる。誰のせいで無茶をすることになったんだと、レッドも黙ってはいられず、ただ言い返したくなる。
「そうか? あいつも結構無茶をする性格だと思うぞ? 普段は面倒ごと避けるけど、こう責任を感じてる時とか、逃げるわけにはいかない時とか、なんてな」
レッドの言葉に、リベルテは心底困ったようにため息をこぼす。
「どうしてこう、私たちの傍に居る男性は、無茶をする方ばかりなんでしょうね」
さすがにそう括られては、レッドも黙るしかなくなる。
相手の気を逸らそうとしたのに、余計に取り囲まれた感じであった。
キストの兵は常備軍ではない。そのため、夜襲を掛けてこられる程の練度は無かった。
訓練を積んだ者でなければ、暗い中での戦闘は危険すぎるのだ。
しかし逆に、夜が明けて明るくなったら仕掛けてくる、と言うことでもあった。
ここに居る誰もが、疲れきったように眠りにつく。
夜が明けたら、生きる残るための戦いが始まるのである。
倒れた冒険者たちの中にリベルテの姿もあり、レッドは慌てて傍に駆け寄った。
「おい、リベルテ!! しっかりしろっ!」
抱き起こして大きな声で呼びかけるが、そんなレッドをキスト兵は待ってはくれない。
奇声を上げながら向かってきていた。
レッドはリベルテの体をゆっくりと地面に横たわらせて、振り抜きざまにキスト兵の首を一閃する。
タカヒロたち見せた事の無い、はっきりと殺意を表した姿だった。
薬によって凶暴化させられているはずのキスト兵たちが、じりっと後ずさる。
レッドから醸し出されている雰囲気に恐れを感じたのだ。
しかし、キスト兵たちが逃げ出そうと動く前にレッドの動く姿が見え、見えた時には視界が赤く染まっていた。
キスト兵が一人また一人と、あっけなく血を噴き上げながらその身を崩す。
レッドは動き出した勢いのまま、キストの『銃』兵の下へ走り出した。
「く、くるなっ!」
『銃』兵は近接武器を持っていないらしく、棒みたいな『銃』を振り回してレッドを牽制する。
この『銃』を使ったキスト兵たちには薬が使われていないようで、先ほどまでレッドが相手をした兵たちよりはっきりと、レッドに対して怯えを見せていた。
だが、そんなことがレッドを止める理由になるわけがない。
仲間の命を奪ったのは、その『銃』を使った者達なのだから。
レッドに抵抗らしい抵抗も出来ず、血を噴き上げて倒れていくキスト兵。
「た、助けてくれ……。頼む……」
仲間が倒れていく状況に、キスト兵がレッドに助けを請う。
「俺たちだって戦いたくて戦ってるわけじゃないんだ。聖職者たちに言われてやってただけなんだ」
この『銃』と言う武器を持っているのはキストの教えを信じる人たちでもなく、キスト聖国の中で甘い汁を吸ってきた者達のようで、ずいぶんと都合の良い事だけを口にしていく。
だからこそ、レッドがその言葉に耳を貸すわけが無かった。
いや、このような者達でなくとも、今のレッドは止まらなかったかもしれない。
『銃』を捨てて逃げ出すキスト兵。
その中で悲鳴が上がっていく。悲鳴が聞こえるその場所だけは、虐殺の場に見えるほどだった。
しかし、戦争は一人でしているものではない。
薬を使われているキスト兵が集まってきて、レッドを取り囲んでいく。
どう見ても多勢に無勢。
今のレッドであっても、いや、他のどのような者であっても、逃げ出すことも返り討ちにすることも難しい状況である。
先ほどまで助けを請ってきたキスト兵を斬り倒したレッドなのだから、ここで降伏することなどありえないし、またレッドもそんな気などさらさらなかった。
力の限り暴れて、終わることを考えていた。
迫り来るキスト兵を一人斬り倒すが周囲を囲まれているのだ、背中を斬られる。
だが、そんな怪我一つで倒れる意志の弱さではない。
また一人、また一人と傷を負いながら、キスト兵を倒していく。
剣が血で滑って斬れなくなった最後の方では、斬るのではなく剣で殴り倒していた。
その血も返り血なのか、自身が流した血かわからないほどであった。
レッドのあまりの異様さに、取り囲んでいたキスト兵がその動きを鈍らせ、取り囲んだまま動けなくなっていた。
それにキスト兵たちとしても、今のレッドは無理をして攻めかかる必要が無いと思える状態だったのもあったのかもしれない。
動き続けた疲れと流した血の多さから、ついにレッドが膝を折る。
「ここまでか……。最後まで、無茶したもんだ……また怒られそうだな」
レッドはフッと笑いを漏らす。もうこんな無茶を嗜めてくる相手はいないのだ。
反撃する力も失ったレッドに止めを刺そうとキスト兵が動き始めるが、そこに地響きが近づいて来る。
その音にキスト兵が戸惑いを見せたところに、一団が突撃してキスト兵を倒していく。
オルグラントの騎士たちだった。
その鎧から『銃』で負傷はしていなかったのだが、轟音で馬が暴れて制御出来なくなり、振り落とされたり、馬たちを落ち着かせるのに手を取られていたのだ。
レッドたち冒険者たちの働きで退がれたことで、多少なりとも態勢を整えることが出来たのだ。
整えられたと言っても、騎士団もその数を減らしており、数が多いとは言えなかった。
「無事かっ!?……無茶をする……。だが、助かった」
この状況にあって、レッドたち冒険者の救援に戻ってきた騎士団はベルセイスが率いていた。
数が少なかったのは『銃』の影響で負傷した者が多かったからかもしれないが、救援に向かった先がただの冒険者相手だったなのかもしれなかった。
だが、今この場に騎士団が駆けつけたのは事実であり、救いであった。
キスト兵は『銃』が無ければ、オルグラントの騎士たちの相手は厳しいらしく退がっていく。
「私たちも退がるぞ! だが、息のある者たちは救助していくぞ」
ベルセイスの号令の下、騎士たちが『銃』で倒れた冒険者たちの中で、まだ息がある者たちを馬に乗せていく。
だいぶ力を失っているレッドであるが、ヨロヨロと立ち上がってリベルテの下へと歩き出す。
レッドがリベルテをゆっくりと抱え起こすと、リベルテが咳き込んだ。
「リベルテ!?」
「……レッド? ……また、無茶をして……」
目を開けたリベルテが傷だらけのレッドを目にして、心配そうに言ってくる。
レッドは、リベルテの胸に頭を落とす。
「……良かった」
泣いているような声だった。
先ほどまでは衝撃で気を失っていただけらしく、リベルテがゆっくりと腕を動かす。
さすがに怪我はしているようで、時折、痛みに眉をしかめながら胸元を探り、何かを取り出した。
リベルテの手には短剣があった。
「これの、おかげですね」
はっきりとはわからないが、どことなく覚えがある短剣だった。
リベルテが愛おしそうに鉄の塊がめり込んでいる短剣を握り締める。
レッドが冒険者となった頃から長く使い続けた物で、長く愛用してきたがさすがに剣として使い続けるのは難しい状態となった際に、短剣にと誂え直してもらった物であった。
その短剣が『銃』の攻撃からリベルテを守ってくれたらしい。
他の『銃』に撃たれた人たちのような怪我こそはしていないが、さすがに当たった衝撃は強かったようで、リベルテは骨を痛めているらしい。
レッドが強く抱きしめているのが痛いらしく、レッドはリベルテの胸元から引き剥がされる。
「……酷い状況ですね」
「……あぁ。ここからどこまで無事でいられるのか」
一旦、キスト兵が退がったことでレッドたちも退がることが出来た。
だが、これで戦争が終わるものではない。
守る者と攻める者。逃げる者とそれを追う者。それが替わるのだ。
オルグラント軍はここから撤退に動き出す。
レッドたちが乱入したことでキスト兵をいくらか倒せたとは言え、『銃』を持ったキスト兵が居なくなったわけではないし、オルグラント軍が出した犠牲が大きく、ここからさらに攻めなおすことなど出来なく、撤退するしかなくなっていたためである。
そんなオルグラント軍に対して、キスト軍はこのまま逃がすわけにはいかなかった。
帝国とも戦っているのだから、このままオルグラント軍を逃がしてしまうわけにはいかないのだ。
また戦うことにはなるかもしれないが、ここで大きくオルグラント軍を叩くことで、キストへ向かってくる力を削がねばならなかったのである。
それに、ここでキストがオルグラントに対して大きな戦果を上げれば、戦う力を弱めたり、失ったオルグラントがキストに和議を望んでくる可能性も考えられた。
いや、キスト側から持ち掛けても、オルグラントは受けることになるだろう。
実際、ここで多くの兵が討たれてしまえば、オルグラントの戦える力は十年単位で戻らない。
キストに憎しみや恨みがあっても戦えないのだから、その手を取るしか国を守れなくなってしまうのだ。
そのため、オルグラント兵にとって、厳しい撤退戦が始まった。
退がったレッドたちを迎えたのは、同じように傷つき、塞ぎこんでいる兵士と冒険者たちだった。
「レッドはまず手当てしないと」
「あぁ、頼む……。落ち着いてくると、きっついな……」
薬のほとんどが運び出されていく。
これから逃げるのだから、使い切ってしまって良かった。
「飯も食えるやつは食べておけ! ただし、これから先、国に戻れるまで食える暇なんて無いからな!」
ベルセイスの声がはっきりと聞こえる。
遠くまで声が響くと言うのは、命令が届きやすさせるものであり、上に立つ者として必要な力である。
そして今の堂々とした立ち姿は、騎士団長として誰もが認めるだろうと思えるほどだった。
後は、ボードウィン宰相もその力を発揮出来るようになれば、世代交代による不安の声は小さくなり、オルグラントは新しい時代を迎えられそうに思えた。
「そう言えば……、タカヒロは?」
タカヒロたち魔法使いも戦争に従軍することになったと聞いていた。
城仕えであり、戦う力を持っているのだから、当然だと言えた。
冒険者たちの軍には配属されないことも知っていたため、その姿を見ることも出来なかったのだが、こうして敗走している中ですらそれらしい姿が見えなく、気掛かりだった。
「タカヒロさんなら、ちゃんと逃げてそうですけどね。どなたかと違って無茶はしない方ですから」
リベルテが巻き終えた布を軽く叩く。
その痛みにレッドは眉をしかめる。誰のせいで無茶をすることになったんだと、レッドも黙ってはいられず、ただ言い返したくなる。
「そうか? あいつも結構無茶をする性格だと思うぞ? 普段は面倒ごと避けるけど、こう責任を感じてる時とか、逃げるわけにはいかない時とか、なんてな」
レッドの言葉に、リベルテは心底困ったようにため息をこぼす。
「どうしてこう、私たちの傍に居る男性は、無茶をする方ばかりなんでしょうね」
さすがにそう括られては、レッドも黙るしかなくなる。
相手の気を逸らそうとしたのに、余計に取り囲まれた感じであった。
キストの兵は常備軍ではない。そのため、夜襲を掛けてこられる程の練度は無かった。
訓練を積んだ者でなければ、暗い中での戦闘は危険すぎるのだ。
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