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第一章
8話
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「ピピピピ、ピピピピ……」
朝7時、エリザと部屋の目覚ましがなった。
「ううーーん……。もう朝?」
今日は入学式の当日だ。
学校到着から一週間が経っていた。その間、特に目立ったことは何もなかった。
強いて言うなら制服採寸をして新しい制服を手に入れ、学校のまわりを散歩したくらいしかすることがなかった。
(結局まだ1人も友達出来てないな。)
エリザはとりあえず昨日届いた制服を着て学校の正門に向かうことにした。
(やっぱり何度見ても立派な建物だな。)
エリザは門の前に立ってマジマジと校舎を眺める。
1学年20人前後しかいない学校の規模とは思えないくらい大きな学校だ。
エリザは覚悟を決めて正門をくぐる。
まずは自分のクラスに行かなくてはならない。
幸い、クラスごと(といっても2クラスしかないが)にまとまって教室まで案内してくれるらしく、それまでは正門に待機するようだ。
(たしか私のクラスはBクラスだから、このBって書いてある札の前にいればいいんだよね。どんな人が同じクラスなのかな。ちょっとドキドキする!)
王立竜学校では一学年がAクラスとBクラスに分けられる。事前に行われた筆記テストを元に上位の生徒をAクラス、それ以外の生徒をBクラスに振り分けているり人数は各クラス同じくらいずつになるように割り振られるため、必然的にエリザは筆記テストの成績が半分よりも下だったということになる。
(なんかAクラスの人達は背筋がしっかり伸びてるな。やっぱり育ちがよかったりするのかな。たしか、何人かは貴族の家の子がいるんだよね。)
ドラゴニア王国には貴族制度があり、貴族でかつ竜使いに生まれたとなれば相当な教育を受けてきていることになる。エリザ達のような平民出身の生徒と比べると学力に差が出るのはどうしても仕方の無いことである。各自の修学状況に合わせた環境で教育する目的もあってこの学力によるクラス分けは行われているのである。
エリザがぼーっと立っていると肩をとんとん、と叩かれた。
「はいっ、なんでしょうか!」
「そんなにびっくりしないでね。私はマリン、あなたと同じBクラスよ。同じクラス同士仲良くしてね。」
「こちらこそよろしくね!私はエリザ。話しかけてくれて助かったよ。このままだと私ぼっち確定かなって思ってたんだぁ。」
エリザに話しかけた少女、マリンはボブヘアーのお姉さんキャラだ。
「今年の入学者は女子が少ないみたい。Bクラスは今のところ4人だけみたいよ。」
「ええっ。そうなの?!たしかBクラスって11人だよね。でも1クラスの人数が少ないからこんなもんなのかな?」
「男女間の仲を悪くしたいわけじゃないけど、やっぱり女の子の友達は欲しかったのよね。エリザとは気が合いそう!」
「私も!マリンが優しい子で良かったよ。私こんなすごい学校でやってけるか不安だったから。」
「うちらBクラスは気楽だけどさ。Aクラスの貴族の連中はどうかな。ここだけの話、ここの学校卒業した後に出世コースに乗るのは貴族ばっかりだし、小さい頃から高度な教育受けてるからプライドも高そうじゃん?ほらあの人見てよ。」
そう言ってエリザがこっそり示した人はAクラスクラスの中でもとりわけ威厳があるキリッとした美男子だった。
「あの人、あの有名なクラウド公爵家のご子息だよ。今年の首席だって。この後の入学式では代表の挨拶でもするんじゃないかな。」
「ええっ。詳しいね。どこでそんなこときいたの?」
エリザは田舎出身なので、当然王都の貴族情報や、まして首席が誰かなんて言う情報知るわけがなかった。
「私のうち、商会をやってるのよ。貴族のお客様の話とか聞いてるとね、自然とわかってくるものよ。」
「そうなんだ!すごいね。私のうちなんか普通の地方の役所勤めだよ。とにかく教えてくれてありがとう。マリンはすごいね。」
「いやいや、それほどでも。」
エリザは強力な味方を手に入れたのだった。
朝7時、エリザと部屋の目覚ましがなった。
「ううーーん……。もう朝?」
今日は入学式の当日だ。
学校到着から一週間が経っていた。その間、特に目立ったことは何もなかった。
強いて言うなら制服採寸をして新しい制服を手に入れ、学校のまわりを散歩したくらいしかすることがなかった。
(結局まだ1人も友達出来てないな。)
エリザはとりあえず昨日届いた制服を着て学校の正門に向かうことにした。
(やっぱり何度見ても立派な建物だな。)
エリザは門の前に立ってマジマジと校舎を眺める。
1学年20人前後しかいない学校の規模とは思えないくらい大きな学校だ。
エリザは覚悟を決めて正門をくぐる。
まずは自分のクラスに行かなくてはならない。
幸い、クラスごと(といっても2クラスしかないが)にまとまって教室まで案内してくれるらしく、それまでは正門に待機するようだ。
(たしか私のクラスはBクラスだから、このBって書いてある札の前にいればいいんだよね。どんな人が同じクラスなのかな。ちょっとドキドキする!)
王立竜学校では一学年がAクラスとBクラスに分けられる。事前に行われた筆記テストを元に上位の生徒をAクラス、それ以外の生徒をBクラスに振り分けているり人数は各クラス同じくらいずつになるように割り振られるため、必然的にエリザは筆記テストの成績が半分よりも下だったということになる。
(なんかAクラスの人達は背筋がしっかり伸びてるな。やっぱり育ちがよかったりするのかな。たしか、何人かは貴族の家の子がいるんだよね。)
ドラゴニア王国には貴族制度があり、貴族でかつ竜使いに生まれたとなれば相当な教育を受けてきていることになる。エリザ達のような平民出身の生徒と比べると学力に差が出るのはどうしても仕方の無いことである。各自の修学状況に合わせた環境で教育する目的もあってこの学力によるクラス分けは行われているのである。
エリザがぼーっと立っていると肩をとんとん、と叩かれた。
「はいっ、なんでしょうか!」
「そんなにびっくりしないでね。私はマリン、あなたと同じBクラスよ。同じクラス同士仲良くしてね。」
「こちらこそよろしくね!私はエリザ。話しかけてくれて助かったよ。このままだと私ぼっち確定かなって思ってたんだぁ。」
エリザに話しかけた少女、マリンはボブヘアーのお姉さんキャラだ。
「今年の入学者は女子が少ないみたい。Bクラスは今のところ4人だけみたいよ。」
「ええっ。そうなの?!たしかBクラスって11人だよね。でも1クラスの人数が少ないからこんなもんなのかな?」
「男女間の仲を悪くしたいわけじゃないけど、やっぱり女の子の友達は欲しかったのよね。エリザとは気が合いそう!」
「私も!マリンが優しい子で良かったよ。私こんなすごい学校でやってけるか不安だったから。」
「うちらBクラスは気楽だけどさ。Aクラスの貴族の連中はどうかな。ここだけの話、ここの学校卒業した後に出世コースに乗るのは貴族ばっかりだし、小さい頃から高度な教育受けてるからプライドも高そうじゃん?ほらあの人見てよ。」
そう言ってエリザがこっそり示した人はAクラスクラスの中でもとりわけ威厳があるキリッとした美男子だった。
「あの人、あの有名なクラウド公爵家のご子息だよ。今年の首席だって。この後の入学式では代表の挨拶でもするんじゃないかな。」
「ええっ。詳しいね。どこでそんなこときいたの?」
エリザは田舎出身なので、当然王都の貴族情報や、まして首席が誰かなんて言う情報知るわけがなかった。
「私のうち、商会をやってるのよ。貴族のお客様の話とか聞いてるとね、自然とわかってくるものよ。」
「そうなんだ!すごいね。私のうちなんか普通の地方の役所勤めだよ。とにかく教えてくれてありがとう。マリンはすごいね。」
「いやいや、それほどでも。」
エリザは強力な味方を手に入れたのだった。
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