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Page.1 「旅立ち、出会い、そして初戦。」
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冒険0日目
ここは、ナンタン。砂漠の大陸【トラトス】にある小さな港町である。
ナンタンは、田舎の町である。ここから、ある時青年が船で旅に出た。
その青年は、とある少年に【黄金郷】の話をしてから旅に出た。
そして数年後、少年だったオレズノート・リヒンは17歳になっていた。
「リヒンよ。出発の準備はできておるのか?」
「もうちょっとで終わるさ。あとは、みんなに挨拶をし終えたら出発できる。」
「そうか。明日の朝、海は荒れていないそうだ。船もしっかりとうちの船大工たちが整備をしているしな。大丈夫だろう。」
「ありがとう。村長。」
「本当に一人で行くのか。誰か付き添いで行かせるとかは・・・。」
「村長。俺は自分の眼で【黄金郷】を見つけたいんだ。その夢のためにはもしかしたら危険が伴う。魔物とかにも会うかもしれない。自分と志が同じなら行くけど、危険な目にこの町の人を合わせたくはないんだ。」
「・・・。」
「村長、こんな俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。あんたには足を向けて寝られないよ。」
「やめろぅ。今生の別れみたいになるだろ、必ずこの村には帰ってこい。いつでもお前のこの家も、馬も、すべて取っておくからよ。」
「助かるよ。」
「さぁさ、俺よりも村のみんなに挨拶してこい。俺は船の最終調整をしてくるさ。」
「何から何までありがとう。」
そこから、俺は武器屋の家に向かった。
「おう、リヒン。良いところに来たな。」
「うん?」
「これを持っていけ。お前の体質に合った短剣(ショートソード)の2本だ。」
「すごいな。触っただけでわかる。『火炎魔素(バーニング)』と『氷結魔素(アイシング)』それぞれ流せるのか。」
「あぁそうだ。ポンメルの部分には2つまで違った魔素が流し込める。火炎魔素のほうには『雷電魔素(ライトニング)』、氷結魔素には『風流魔素(エアリング)』が流し込めるようにしておいたから習得したらそこに流し込むといいさ。」
「ありがとう。」
「いやぁ、しかし、明日出発だろ?気を付けて行けよ。見送りには行くからよ。」
「ありがとう。こんな短剣もらえるなんて思いもしなかったよ。」
「あいつがこの村を出てから数年経ってから二人目の門出だ。あいつの時はまだ見習いで出せなかったけどお前には絶対渡したいと思ってたからな。それで、強敵が来てもイチコロだ。」
「そうだな、イクブさん、ほんとうにありがとう。」
「必ず戻って来いよ?俺らはいつでもお前の帰りを待ってるからな。」
「あぁ、必ず夢を果たしたら帰ってくるよ。」
武器屋から出て次は、薬屋に向かった。
「あら、リヒン。薬でも買いに来たのかい?薬ならあんたの船に結構積み込んだが?」
「いやぁ、あいさつ回りをしに来たんだ。一応。」
「そうだったのかい。私なんていいのに。」
「そんなことないさ、ウカイさんにはけがや病気で世話になりっぱなしだし。」
「あぁそうかい。まぁけがや病気には気を付けるんだよ。放って治るなんて思っちゃいけないよ。真水を使って処置をするんだよ。」
「あぁ、気を付けるよ。」
「もし、帰ってきたくなったらいつでも来るんだよ。」
「わかった、ありがとう。」
「あぁ、あと、これをもっていきな。私が調合して船に積み込んである薬たちのリストとレシピさ。麻痺止め、毒止め、やけど治しは材料も積んであるからな。」
「ありがとう、助かるよ。」
そのあと、青果店と肉店などがある商店街に向かった。
いつもの入り口には大量の食べ物たちが並んでいた。
「なんだこれ?」
「リヒン、これは商店街からの旅たちの祝いだ。明日までには船には入れておく。」
「いいのか、こんなに。」
「いいのさ、この日のためにみんなとってきたんだ。」
「いいかい、リヒン。食事だけはしっかりとするんだよ。」
「あぁ、ありがとう。みんな。」
「明日の7時に出発って言ったよね?」
「あぁ、その予定でいる。」
「わかった。そうしたらそれよりも前に入れなきゃだな。あんたたち!船まで行くよ!」
「ありがとう。助かるよ。」
あいさつ回りを一通り終えてから自宅に戻った。
夜は自分の門出会をするらしい。
「リヒン?いるかしら、私よ。」
「マリアか?」
玄関のドアを開けると、幼馴染で村長の娘のマリアが立っていた。
「ごめんなさいね。忙しい時に。」
「いやいいよ。あいさつ回りを終えたところだったから。」
「そう、少し上がらせてもらってもいいかしら?」
「あぁ、入って。」
「準備はもう万端なのかしら?」
「あぁ、持ってくものはすべて用意できたよ。」
「そう、本当に一人で行くの?私も一緒に・・・。」
「ダメだよ。マリアは次期村長として学ぶこともあるし、旅は危険かもしれない。守ることができないかもしれない。」
「・・・。だよね、ごめんね。」
「なんで、マリアが謝るんだい?でも、その優しいところがマリアの良いところだな。ありがとう。」
「いつ帰ってくるかわからないけど、帰ってきたときにまたお話をしましょう。」
「そうだね。楽しみにしててくれ。大量のお土産話を持ってくるさ。」
「楽しみにしてるわ。あとね、これを受け取ってほしいの。」
「これは?」
「私の手作りのマフラーとミサンガなの。うまくできなかったけど。ぜひつけていてほしくて。」
「ありがとう。ずっとつけるよ。」
マリアは、話を終えてから自分の家に戻っていった。
門出会まで俺は少し眠ることとした。
夜6時半。会の会場である酒場に向かった。
「お?主役の登場だ。」
「もう飲んでるのか?主役は30分前に来てるのに。」
「なあに、酒を飲む楽しさは子供にはわからないだろうな。」
「リヒン、あんたはいつものレモンスカッシュでいいかい?」
「あぁ、それでいいさ。」
「あいよ。」
その会は10時ころまで続いた。
「まったく、主役だの門出会だのいってこいつらは。」
「それがこの町の良いところではあるよ。」
「そういえば、レモンスカッシュは船に積んでもらったからね。そこの馬鹿どもに。」
「ありがとう。」
「あんたは、この村の若者だ。みんなにとっても子供同然だから甘くなっちゃうのさ。それにさみしいとも思ってる。」
「さみしい?」
「あぁ、さみしいさ。子供が旅立つってのはな。」
「もう17だがな。」
「私らは2倍以上なんだよ。さみしいから埋めるために作業をして酒を飲んで紛らわすんだ。」
「あはは、確かにな。でも、ほんとにみんなのおかげで明日出発できるんだ。感謝してるよ。」
「そうだな。まぁ、もう遅いし、帰って寝ろ。」
俺は10時半ごろに自分の家に帰り眠りについた。
冒険1日目
6時半になったので出発の最終確認をしていた。
「おはよう、リヒン。船とかは大丈夫そう?」
「おはよ、マリア。大丈夫そうだよ。天気もいいし、波も高くないから今日を選んでよかったよ。」
「それならよかったわ。」
「ほかのみんなは降りてこないのかな?」
「うんちょっとね・・・。ねぇ、リヒン。私は、あなたがどこで何をしていても、悪人になってしまったとしてもあなたの言うことしか信じないからね。」
「なんだそれ、俺は自分の夢のために村を出ていくんだよ?もう・・・悪人みたいなもんではないか?」
「そんなことないわ。世界中の誰もがオレズノート・リヒンに対して『悪人』と言おうが私にとっては『自慢の幼馴染』と言い続けるわ。」
「ありがとう。」
「さてと、もうこんな時間だ。出発するよ。」
「うん、行ってらっしゃい。」
「行ってくるよ。」
「帰ってくるわよね。」
「帰ってくるよ。」
「・・・。」
「マリア、どうした?行きづらいだろう。そんな顔をされたら。」
「・・・ごめんね。行ってほしくないの。ここで一緒に・・・。」
「わかった。そしたら、これを持っていてくれ。俺といえばこの帽子だろ?俺が帰ってくるまで大切に持っていてくれ。帰ってきたらここで、また俺にかぶせてくれ。」
「・・・。」
「頼めるか?一人にさせてごめんな。」
「ううん。わかった、必ず戻ってきてね。早く帰ってこないと私もお嫁に行っちゃうかもだし、いけなくておばあちゃんになっちゃうかもだからね。」
「あぁ、早めに見つけて帰ってくるよ。行ってくる。」
俺は船のエンジンをかけて港を出発し始めた。
「リヒン!」
マリアが呼ぶ方を見ると村のみんなが作ったであろう手作りの横断幕が飾られていた。
『オレズノート・リヒン!いってらっしゃい!』
「みんな!ありがとう!必ず黄金郷を見つけてくるからよ!新聞でもテレビでも見て俺の活躍を見守っててくれ!行ってくる!」
この日、青年:オレズノート・リヒンが船で旅に出た。
一方そのころ、砂漠の大陸【トラトス】の最小の国ウーヌス王国の王都:ユニズでは、
「おい!これは一大事だ!絶対にやつを捕まえて来い!これが国民に知れたら我々はおしまいだ!」
「お父様!彼の命だけは生きた状態でお願いします!彼から聞きたいことはたくさんありますので!」
「やつはお前を殺そうとしたのだぞ?そんなやつに何度情けをかけるのだ?」
「彼は身勝手にこんなことをする人ではありません!それは、ここにいるもの全員が分かってることではありませんか?」
「ですが、お姉さま。事実彼が渡したリンゴには・・・。」
「黙りなさい!彼をこれ以上侮辱するというなら私が許しません!」
「お嬢様。ここは引きましょう。私からお伝えしたいこともありますので。」
「わかったわ。」
冒険3日目
「そろそろ、どこかの港によりたいところなんだがなぁ。あれは?」
遠くの方に何か町のようなものが見えた。
「やっと町だー!あそこに向かおう!」
数時間後、町にくっついた形の港に船を止めて門番らしき男に話をかけた。
「すまない、旅のものなのだがここは何という町だ?」
「町?ここは、ウーヌス王国の王都:ユニズだ。」
「ユニズか。どうやったらここに入れる?」
「まずは、お前の身分を証明するために審査をする。お前が持ってる船を確かめさせてくれ。」
「あぁ、わかった。」
「特にリンゴの中は見ないといけないんだが、リンゴはあるだろうか?」
「たぶんあるが、どうしてだ?結構あるもんで。安全だと分かればいいのか?」
「すまないな。ついこの間とある事件があってな。」
「なるほど、わかった。船に来てくれ。」
「あぁ、ご協力感謝する。」
「これが俺の船で、食庫はここだ。」
「こんなにあるのか。一人でこんなにか?」
「あんたナンタンって町分かるか?そこから出発したんだが町のみんなが持たせてくれてな。」
「なるほどな。リンゴを10つ切ってもいいか?ほんとは全部なんだがあんたは協力してくれてるから10つを切った後に、1つ私が毒見をする。」
「あぁ、安全だったら残りの8つは門番たちで食べてくれ。1つは俺が食べるから。」
「よかろう。」
「大丈夫そうだな、そうしたらここに名前とかもろもろ書いてくれ。」
「わかった。」
「オレズノート・リヒンだな。この王都を楽しむといい。もし、嵐が来るとなったらふねはこちらで安全を確保しておくからな。」
「ありがとう。」
「あぁ、あと・・・王都近くの酒場に行くといろんな奴の話が聞けるからおすすめだ。俺は今日ちょっと夜回りがあるからな。案内はできない。」
「わかった、ありがとな。じゃあ。」
門番に通してもらいユニズに入った。
ユニズには、様々な食べ物や物資などがあった。
門番が言っていた酒場が開くまで王都を歩き回っていた。
「おう。これはマリア似合いそうだな。」
そんな感じであっという間に時間は過ぎて酒場が開く時間になった。
向かうと酒場は結構な賑わいを見せていた。
冒険者みたいなものや昼間に出会った商人の親父などがいた。
「見ない顔だね。旅人かい?」
「あぁ、今日この王都に来たんだが空いてるか?」
「そうだね。ちょっと待ってな。」
店主はそういうと一人で飲んでいる薄汚れた軍服を着た男に話をかけていた。
戻ってきて相席でもいいかと聞かれたので構わないと伝えた。
「何食べる?未成年なら酒は出せないが?」
「そうだな、何がおすすめだ?」
「うちの料理はすべてうまいからね。相席相手に聞くといい。」
「何がおすすめだ?」
「そうだな、ここに来たというならやはり、名物特大カツカレーなんておすすめだ。なんたって・・・」
「わかった、特大カツカレーで。」
「おい!最後まで話を・・・。」
「へい!お待ちどう!特大カツカレーだよ!残したら倍の金額。3500ペンズ。全部食べられたら750ペンズ値引きの・・・。」
「ごちそうさまでした!いやぁうまかった。」
『え~~~~~~~!特大カツカレーを食った~~~~~!?』
酒場にいた全員が口をそろえて驚いていた。
「あんた、すげぇな。この特大カツカレーを食べれた奴は俺の仲間でもいないぜ?」
「はぁ、そうだったのか。旅を出てから初めての誰かの作った飯だったからうれしくてよ。」
「あんたほんとに変わってんな。」
「まぁな。夢のために生まれた故郷おいて出ていく奴なんて変わってるやつかもな。」
「それはそうかもな。俺はこの国で生まれてこの国で育ってこの国で働いてるからな。恐らくこれからも・・・ってそれはわからないか。ちなみにあんた、この国を出ていくときはいつなんだ?」
「特大オムカレーを一つ!うん?そうだな?ここの町でいろいろと情報収集してからだからなぁ。」
「情報収集?」
「あぁ、【黄金郷】について調べたいんだ。」
「黄金郷。」
「それを見つけるのが俺の夢なんだ。」
「その【黄金郷】とやらを見つけたあとは冒険終了なのか?」
「あぁ、いまのところはな。それ以上に見つけたいものがあれば旅は続けるけど。」
「いいな、その夢。俺の夢はかなわないかもだからこそ、あんたを応援できるさ。」
「叶わないのか?」
「叶わないとかどうかよりもって感じだな?俺の夢はこの2本の大剣で強者を倒して世界で一番の【兵(つわもの)】になることなんだ。でも、ここで足踏みしてるからな叶わないかもしれないって思ってよ。」
「兵か。世界には強者がいっぱいいるからな、おそらく。そうしたらよ?俺の船に乗らないか?船で旅をした先々でその町の強者たちをなぎ倒していけばいいんじゃないか?」
「ははは。あんたは最高だ。その話に乗りたい。だが、俺にはこの町でやらなきゃいけないことがある。それが終わった後にあんたがまだこの町にいたら俺から頼み出たい。」
「そうか。やらなきゃいけないことってなんだ?」
「ここでは絶対に話せないからな。誰が聞いてるかわからないからな。」
「そうなのか。」
「そういえばあんたの名前は?俺は、マーク・タイカ。」
「俺の名前は、オレズノート・リヒンだ。」
「よろしくな、リヒン。ここは、こんな長話を付き合ってくれたお礼で俺が払おう。店長いくらだ?」
「あぁ、いいのか?よろしくだ。タイカ。」
「お会計かい?えっとちょっと待ってな。計算してくるから。」
店主は、レジの方に向かい計算を始めた。
「失礼する!国軍のものである。」
「なんだい!物騒だね。もっと穏便に入ってこれないものかい?」
「すまないな。店主殿。ここに、『マーク・タイカ』はいないだろうか?」
「は?いるもいないもこの店で人探しはやめておくれ。」
[おい、あの軍兵、お前を探してるぞ。]
[来ちまったか。黙ってここは隠れるしかないか?]
「いいのか?ここで奴を匿えば店主殿が国家反逆罪として捕まってしまっても。いいのか?マーク・タイカ?」
「俺はここだ。店長やここにいる客を傷つけないでくれ。」
「おとなしく出てきてえらいではないか?なんだ?隣の奴は?」
「俺のことか?俺はただの旅人さ。」
「仲間ってわけではないってことか?」
「あぁそうさ。こいつは今仲良くなっただけさ。すまねぇ。リヒン。俺はここまでのようだ。」
「どういうことだ?」
「店長迷惑をかけてすまなかった。これで足りるのならいいが、今日のお代だ。」
「あぁ。」
「それでは、軍基地まで来てもらおう。」
そういうとタイカは連れていかれてしまった。
「あらら、いっちゃったな。」
「すまないな、旅人さんよ。」
「あぁ、まぁ仕方がないというかすべてがわからないが・・・。」
「それもあるが、金が足りねえ。」
「え?あ?あと何ペンズだ?」
「1000ペンズだ。」
「え?」
「おい、やっぱリヒンじゃねえか。」
「あんたは、門番。」
「ケルト大佐!」
「金がないのか?じゃあ、俺が立替ってことでさっきのマーク・タイカが残したものを預かりに来たんだ。」
「そうなのか。よかったら、なんでタイカは捕まってしまったのか教えてくれないか?」
「あぁ、まぁいいだろう。だが、ここでは話を聞かれる場合がある。離れようと思うんだがこっちに来てくれるか?」
「わかった。ありがとう店主!ごちそうさま!」
「あいよ。」
門番について行きながら話を続けていた。
「まったく、リヒンはほんとに何もわかってないんだろうな?」
「なんだ?」
「いちおう大佐であるんだ。犯罪者の内容をあんな人前で言わないよ。」
「・・・。そういうもんか。」
「まぁでもはなそう。」
船などが置いてある倉庫らしきところで話していた。
「ここは、ウーヌス王国の王都だ。王様のおひざ元だ。そして、マーク・タイカはその王国の軍兵だ。しかも、次期女王の護衛兵団の一員だった。ここまでわかるか?」
「あぁ、まぁなんとなく。」
「その護衛兵が次期女王の命を狙ったんだ。」
「命を狙った?殺そうとしたのか?」
「あぁ、そういうことだ。」
「そんな奴には見えなかったけどな・・・?」
「人は見かけによらないってことだよ。リヒンも気をつけろよ?」
「あぁ、俺は普段から気を付けてるぞ?」
「そうか。」
「ちなみに、その2つの大剣を俺が貰うことはできるか?」
「こんな大剣をか?こういうのは持ち主が使わないとだめになるが?」
「なんかかっこいいからちょっとほしくなってよ。」
「あはは、まぁいいだろう。売るなりしたらいい。」
「あぁ、なにかに困ったらそうするよ。もう一ついいか?」
「どうした?」
「タイカはどこに連れていかれたんだ?」
「あぁ、おそらく王国軍重要犯罪者刑務所だろうな。2日後には処刑じゃないか?」
「へえそうなのか。」
そう聞き、俺は門番に今日の宿代まで出してもらい宿に泊まった。
「さてと、どうしたもんかな。」
冒険4日目、ユニズ滞在2日目
朝になったので顔を洗って服を着替えてからタイカがいるであろう刑務所に向かった。
「うわぁ、厳重警戒だな。なんか抜け道ねぇかな・・・。」
「おい、お前。昨日もあの酒場で隣にいたやつだな。何の用だ?」
「たまたま通りかかったと言えばいいか?それとも、仲間を助けに来たと言えばいいか?どっちがいい?」
「なに?軍兵をなめるのはほどほどにしておけ!」
「よっと~~。」
「いきなり襲い掛かってくるなんて卑怯だぞ。俺はお前らと戦いに来たなんて言ってないだろ?」
「ふざけるな!暗殺未遂は立派な犯罪だ。」
そういうと周りにいた軍兵たちも参戦をしてきた。
「おいおい、リヒン。ここで戦うのは聞いてないぜ?」
「あ、門番。こいつらをどうにかしてくれ。」
「リヒン。済まないが七英雄であるこの僕にそのお願いは聞けないよ。」
「なんだ、残念だ。まぁいい。」
「君とは戦いたくなかったが本気を出させてもらうよ!」
「望むところだ。」
それから十数分二人の決闘は続いた。
最終的に俺が力負けをしてしまった。俺は捕まってしまった。
刑務所の中へ行くとタイカの姿があった。
「なんで、お前も来たんだ?」
「え?タイカのことを助けようとしたらそこの七門番?に捕まってしまった。」
「お前・・・。」
「リヒン。訂正をしようか。僕は七英雄だ。」
「そうそう。それそれ。」
「君の罪はそんなに重くないはずだ。僕は君に恩もあるから明日には出られるだろう。」
「そうか。タイカも一緒に出られたりするか?」
「それはできない。彼にはこれから罪選択の時間がある。」
「無理なのか・・・。」
「まぁ、せいぜい悩むといい。最良な選択をすることを願ってるよ、元同僚であり、七英雄:マーク・タイカ。」
「・・・。」
しばらく話がなかった。今までの話を振り返っていた。
「七英雄!?タイカも七英雄なのか?」
「なんだ今頃。そうだ、俺はその呼ばれ方は嫌いで名乗っていないがな。」
「ちなみに七英雄ってなんだ?」
「いわゆる七人の英雄のような強さを持った奴らの総称だ。数年前に大規模な戦争があったときに活躍した7人だ。」
「なんでそんなすごいやつがこんな檻にいるんだ?」
「誰かから聞いただろうが俺はこの手で次期女王の命を落とそうとした。それだけで十分な理由だろ?」
「何か目的があってそれをやったんじゃないか?」
「まぁ、復讐だ。俺はこの国の王家に両親も家もなくされた。だから、復讐をしてきた。」
「なるほどなぁ。わかってきてはいるがもう少しかみくだいてくれると助かる。」
「俺の家は八百屋だったんだこの音でも有名な八百屋だった。俺が10歳の頃そこに国王たちが訪問して、八百屋を見学していた。」
「俺は父さんに言われた一つのリンゴを手に取って、次期女王に差し出したんだ。」
「リンゴ・・・。」
「そのリンゴを次期女王の側近のワンクスがリンゴを取り上げたんだ。結局別の果物を次期女王は食べていた。あとから気が付いたが俺が渡したリンゴには毒魔法が施された菱がはいっていたそうだ。」
「毒魔法か。」
「あぁ、おそらくうちの親たちはその毒リンゴを次期女王に食べさせるよう誰かに言われたんだろう。今の俺ならわかる。」
「なんでだ?」
「俺も同じことをさせられたからだ。その後、すぐに俺は国境近くの徴兵をかけられて、数年前の大規模な戦争にて国軍の正式兵に昇進した。」
「七英雄のことか。」
「そしてこの間、リヒンが王都に来るちょっと前だ。王都にて護衛任務として王都に来てから自分の親たちが亡くなっていたことを知ったんだ。」
「実家に帰る決意をしたが次期女王やワンクスなどが止めてくれていたが、その制止を振り切って実家に行ってみたが跡形もなかった。独自に調査した結果、両親は王家に磔にされたとわかった。」それから、両親の仇を討とうとしたんだ。」
「そこに、継承権第2位の王子である:ウーヌス・アウルストが現れて、俺に協力を持ちかけてきたんだ。絶好のチャンスだと俺は思った。」
「そして王子がある日一つのリンゴを手に取り、次期女王に差し出すように俺に伝えてきたんだ。それを食べさせればすぐに復讐ができると俺に言ってきた。」
「またリンゴか。」
「最終的に俺は次期女王の前まで持ってはいけたが最後に俺は渡せなかった。」
「なんでだ?」
「過去のことを思い出したのもあるが、次期女王の人柄を知ってるからこそ殺すことはできないって思ってしまったんだ。」
「なるほどな。」
その後は側近だったワンクスがリンゴを取り上げる。中身を確認してからエノ殺害未遂の罪をつけられてしまいタイカは逃げ出したそうだ。
「すまないな。」
「なんで謝ってるんだ?」
「こんな情けない話をしてしまって悪いなって思ってよ。」
「あぁ、俺は聞きたいからタイカの話。でもよくわかった。俺はタイカにつく。」
「やめておけ、お前の夢をどうするんだ?」
「それも叶える。お前と戦えるならそれでいい。」
すると刑務所の扉が開いた。そこに現れたのはいかにも偉そうな3人だった。
「よぉ、マーク・タイカ。お前のおかげで我が娘は殺されそうになった。よってお前は2つの選択肢を選ぶことになる?」
「選択肢?」
「あぁ、殺そうとしていないならお前処刑だ。事実、お前は毒の入ったリンゴを二度も渡してるのだからな。」
「お父様!1度目は!」
「エノはだまっていなさい。そしてもう一つの選択肢は殺そうとしたことを認め、国境軍で10年務めるということだ。」
「・・・。」
「少しは考える時間を与えよう。明朝またここに来る。その時にどちらかを選ぶといい。」
そういうと彼らは刑務所から出て行った。
「あれが次期女王で後ろにいたのはタイカをそそのかしたやつか?」
「あぁ、次期女王:ウーヌス・エノだ。」
「なんか、国王と王子は悪い奴だったけど、次期女王はそんな感じはしなかったな。」
「そうなんだ。俺はあの人を二度も。」
「なぁ、タイカ。選択肢を増やしはしないか?」
「選択肢を増やすだと?どうやって?」
「あぁ、第3の選択肢『国王と王子をぶっ倒して、自分と旅に出る。』ってのはどうだ?」
「・・・。ははは、まったくリヒンは自分の状況も考えずに馬鹿な話をするやつだ。」
「いい考えだと思うけどな。」
「あぁ、とってもいい考えだ。その選択肢に決めた。こうなったら、なんでもやってやる。俺はオレズノート・リヒンについて行くぜ。」
「そうでなくっちゃ。さてと、ここから出る方法を考えなきゃな。」
「そうだな。」
『無理じゃね?』
「そんなことはないと思うぞ?」
「話は聞かせてもらった。さっきはあんなこと言って悪かった。」
「ワンクス!ケルト!」
「どうしたんだ、あんたら。」
「まぁな、そこで盗み聞きをしてるケルトとは違って俺はお嬢さまからの命令だ。」
「お前らこの服に着替えろ。そして、早めに脱出するんだ。俺らについてこい。」
ワンクスとケルトについて行き王都の南の方まで来た。
「いいのか、そんなことをして。お前らのクビだとかにならないのか?」
「まぁなるだろうな。だが、俺らはあんたらにかけることにした。このままの王家体制ではいずれ大きな問題が現れる。お前らの力でこの国をぶっ壊してくれ。」
「わかった。」
「はぁ、リヒンは二つ返事が過ぎる。だが、俺はあんたについて行くと決めたんだ。やってやろうじゃねえか。」
一方そのころ王宮では、
「なに?脱獄しただと?あれは相当な力がないと開かない檻だぞ?」
「それが、七英雄のケルト大佐、ワンクス大佐が関与した模様。」
「ケルトとワンクスだと!?なぜあの二人が?」
「わかりません」
「姉上!これは国家の一大事です!速やかに会見を開きましょう!」
「なぜです?」
「姉上、次期女王の支持率をこれ以上下げないようにせねばなりません。」
「確かにだな・・・。2時間後、国家非常事態宣言を出しましょう。」
「わかりました。」
「そして、マーク・タイカ、オレズノート・リヒン、ジャイアント・ワンクス、サバイザー・ケルトを緊急指名手配にいたしましょう。」
夜6時、国家非常事態宣言と指名手配が発表された。
「改めて申し訳ない、これじゃ、身動きが取れない。」
「な~に、いいのさ。明日の朝にはあの次期女王が統べる国だ。」
「会見が始まった。」
次期女王:ウーヌス・エノが広場で会見を始めた。
最初の方は、普通の会見だった。
「改めて挨拶をさせていただく、現国王のウーヌス・アンダーマンだ。今回の一件についてだが国王としても大変責任を感じてる。申し訳ない。責任を取って私は国王の座を降りることとした。次期国王は、継承権第2位の王子:ウーヌス・アウルストとする。エノには、今回のことが落ち着くまでは政治不介入とする。」
「お父様!」
「父上、かしこまりました。そうしましたらこのウーヌス・アンダーマン前国王と正妻との子供である私が国王といたしましょう!」
「アウルスト!」
「なんでしょうか?姉上いや、混血の姫?」
「何を言ってるのですか!?」
「まぁいいでしょう。あなたも使えるでしょう。さて、この放送を見てる4名の指名手配よ。1時間に現れないのであればここにいる、ウーヌス・エノも同罪人としてこのテレビに会見に移した状態でみぐるみをはがし、ありとあらゆる処刑方法をいたすぞ?いいのか?」
「エノを」「次期女王を」「お嬢様を」「エノ様を」
『離せぇーーーーーー!!!!』
俺らはとんでもない速さで広場についた。
「あなたたち、なぜここに!?」
「罪人だ!全員ひっとらえろ。てめぇはこっちにこい!」
「きゃ!」
「くそ。なんていう人数だ。」
「【雪火(ニクスフラン)】!」
俺はここで初めて技を使用して兵隊をなぎ倒した。
『リヒン、タイカ、ここは俺たちに任せてエノ様を救い出せ!』
「わかった、ありがとう二人とも!行くぞ、タイカ!」
「あぁ、【武離音越(ぶりおこし)】!」
「おうかっこいいじゃねえか。俺はあの前国王とやらをぶったおしてくるからタイカはエノを救ってあげろ!」
「恩に着るぜ!団長!」
ここは、ナンタン。砂漠の大陸【トラトス】にある小さな港町である。
ナンタンは、田舎の町である。ここから、ある時青年が船で旅に出た。
その青年は、とある少年に【黄金郷】の話をしてから旅に出た。
そして数年後、少年だったオレズノート・リヒンは17歳になっていた。
「リヒンよ。出発の準備はできておるのか?」
「もうちょっとで終わるさ。あとは、みんなに挨拶をし終えたら出発できる。」
「そうか。明日の朝、海は荒れていないそうだ。船もしっかりとうちの船大工たちが整備をしているしな。大丈夫だろう。」
「ありがとう。村長。」
「本当に一人で行くのか。誰か付き添いで行かせるとかは・・・。」
「村長。俺は自分の眼で【黄金郷】を見つけたいんだ。その夢のためにはもしかしたら危険が伴う。魔物とかにも会うかもしれない。自分と志が同じなら行くけど、危険な目にこの町の人を合わせたくはないんだ。」
「・・・。」
「村長、こんな俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。あんたには足を向けて寝られないよ。」
「やめろぅ。今生の別れみたいになるだろ、必ずこの村には帰ってこい。いつでもお前のこの家も、馬も、すべて取っておくからよ。」
「助かるよ。」
「さぁさ、俺よりも村のみんなに挨拶してこい。俺は船の最終調整をしてくるさ。」
「何から何までありがとう。」
そこから、俺は武器屋の家に向かった。
「おう、リヒン。良いところに来たな。」
「うん?」
「これを持っていけ。お前の体質に合った短剣(ショートソード)の2本だ。」
「すごいな。触っただけでわかる。『火炎魔素(バーニング)』と『氷結魔素(アイシング)』それぞれ流せるのか。」
「あぁそうだ。ポンメルの部分には2つまで違った魔素が流し込める。火炎魔素のほうには『雷電魔素(ライトニング)』、氷結魔素には『風流魔素(エアリング)』が流し込めるようにしておいたから習得したらそこに流し込むといいさ。」
「ありがとう。」
「いやぁ、しかし、明日出発だろ?気を付けて行けよ。見送りには行くからよ。」
「ありがとう。こんな短剣もらえるなんて思いもしなかったよ。」
「あいつがこの村を出てから数年経ってから二人目の門出だ。あいつの時はまだ見習いで出せなかったけどお前には絶対渡したいと思ってたからな。それで、強敵が来てもイチコロだ。」
「そうだな、イクブさん、ほんとうにありがとう。」
「必ず戻って来いよ?俺らはいつでもお前の帰りを待ってるからな。」
「あぁ、必ず夢を果たしたら帰ってくるよ。」
武器屋から出て次は、薬屋に向かった。
「あら、リヒン。薬でも買いに来たのかい?薬ならあんたの船に結構積み込んだが?」
「いやぁ、あいさつ回りをしに来たんだ。一応。」
「そうだったのかい。私なんていいのに。」
「そんなことないさ、ウカイさんにはけがや病気で世話になりっぱなしだし。」
「あぁそうかい。まぁけがや病気には気を付けるんだよ。放って治るなんて思っちゃいけないよ。真水を使って処置をするんだよ。」
「あぁ、気を付けるよ。」
「もし、帰ってきたくなったらいつでも来るんだよ。」
「わかった、ありがとう。」
「あぁ、あと、これをもっていきな。私が調合して船に積み込んである薬たちのリストとレシピさ。麻痺止め、毒止め、やけど治しは材料も積んであるからな。」
「ありがとう、助かるよ。」
そのあと、青果店と肉店などがある商店街に向かった。
いつもの入り口には大量の食べ物たちが並んでいた。
「なんだこれ?」
「リヒン、これは商店街からの旅たちの祝いだ。明日までには船には入れておく。」
「いいのか、こんなに。」
「いいのさ、この日のためにみんなとってきたんだ。」
「いいかい、リヒン。食事だけはしっかりとするんだよ。」
「あぁ、ありがとう。みんな。」
「明日の7時に出発って言ったよね?」
「あぁ、その予定でいる。」
「わかった。そうしたらそれよりも前に入れなきゃだな。あんたたち!船まで行くよ!」
「ありがとう。助かるよ。」
あいさつ回りを一通り終えてから自宅に戻った。
夜は自分の門出会をするらしい。
「リヒン?いるかしら、私よ。」
「マリアか?」
玄関のドアを開けると、幼馴染で村長の娘のマリアが立っていた。
「ごめんなさいね。忙しい時に。」
「いやいいよ。あいさつ回りを終えたところだったから。」
「そう、少し上がらせてもらってもいいかしら?」
「あぁ、入って。」
「準備はもう万端なのかしら?」
「あぁ、持ってくものはすべて用意できたよ。」
「そう、本当に一人で行くの?私も一緒に・・・。」
「ダメだよ。マリアは次期村長として学ぶこともあるし、旅は危険かもしれない。守ることができないかもしれない。」
「・・・。だよね、ごめんね。」
「なんで、マリアが謝るんだい?でも、その優しいところがマリアの良いところだな。ありがとう。」
「いつ帰ってくるかわからないけど、帰ってきたときにまたお話をしましょう。」
「そうだね。楽しみにしててくれ。大量のお土産話を持ってくるさ。」
「楽しみにしてるわ。あとね、これを受け取ってほしいの。」
「これは?」
「私の手作りのマフラーとミサンガなの。うまくできなかったけど。ぜひつけていてほしくて。」
「ありがとう。ずっとつけるよ。」
マリアは、話を終えてから自分の家に戻っていった。
門出会まで俺は少し眠ることとした。
夜6時半。会の会場である酒場に向かった。
「お?主役の登場だ。」
「もう飲んでるのか?主役は30分前に来てるのに。」
「なあに、酒を飲む楽しさは子供にはわからないだろうな。」
「リヒン、あんたはいつものレモンスカッシュでいいかい?」
「あぁ、それでいいさ。」
「あいよ。」
その会は10時ころまで続いた。
「まったく、主役だの門出会だのいってこいつらは。」
「それがこの町の良いところではあるよ。」
「そういえば、レモンスカッシュは船に積んでもらったからね。そこの馬鹿どもに。」
「ありがとう。」
「あんたは、この村の若者だ。みんなにとっても子供同然だから甘くなっちゃうのさ。それにさみしいとも思ってる。」
「さみしい?」
「あぁ、さみしいさ。子供が旅立つってのはな。」
「もう17だがな。」
「私らは2倍以上なんだよ。さみしいから埋めるために作業をして酒を飲んで紛らわすんだ。」
「あはは、確かにな。でも、ほんとにみんなのおかげで明日出発できるんだ。感謝してるよ。」
「そうだな。まぁ、もう遅いし、帰って寝ろ。」
俺は10時半ごろに自分の家に帰り眠りについた。
冒険1日目
6時半になったので出発の最終確認をしていた。
「おはよう、リヒン。船とかは大丈夫そう?」
「おはよ、マリア。大丈夫そうだよ。天気もいいし、波も高くないから今日を選んでよかったよ。」
「それならよかったわ。」
「ほかのみんなは降りてこないのかな?」
「うんちょっとね・・・。ねぇ、リヒン。私は、あなたがどこで何をしていても、悪人になってしまったとしてもあなたの言うことしか信じないからね。」
「なんだそれ、俺は自分の夢のために村を出ていくんだよ?もう・・・悪人みたいなもんではないか?」
「そんなことないわ。世界中の誰もがオレズノート・リヒンに対して『悪人』と言おうが私にとっては『自慢の幼馴染』と言い続けるわ。」
「ありがとう。」
「さてと、もうこんな時間だ。出発するよ。」
「うん、行ってらっしゃい。」
「行ってくるよ。」
「帰ってくるわよね。」
「帰ってくるよ。」
「・・・。」
「マリア、どうした?行きづらいだろう。そんな顔をされたら。」
「・・・ごめんね。行ってほしくないの。ここで一緒に・・・。」
「わかった。そしたら、これを持っていてくれ。俺といえばこの帽子だろ?俺が帰ってくるまで大切に持っていてくれ。帰ってきたらここで、また俺にかぶせてくれ。」
「・・・。」
「頼めるか?一人にさせてごめんな。」
「ううん。わかった、必ず戻ってきてね。早く帰ってこないと私もお嫁に行っちゃうかもだし、いけなくておばあちゃんになっちゃうかもだからね。」
「あぁ、早めに見つけて帰ってくるよ。行ってくる。」
俺は船のエンジンをかけて港を出発し始めた。
「リヒン!」
マリアが呼ぶ方を見ると村のみんなが作ったであろう手作りの横断幕が飾られていた。
『オレズノート・リヒン!いってらっしゃい!』
「みんな!ありがとう!必ず黄金郷を見つけてくるからよ!新聞でもテレビでも見て俺の活躍を見守っててくれ!行ってくる!」
この日、青年:オレズノート・リヒンが船で旅に出た。
一方そのころ、砂漠の大陸【トラトス】の最小の国ウーヌス王国の王都:ユニズでは、
「おい!これは一大事だ!絶対にやつを捕まえて来い!これが国民に知れたら我々はおしまいだ!」
「お父様!彼の命だけは生きた状態でお願いします!彼から聞きたいことはたくさんありますので!」
「やつはお前を殺そうとしたのだぞ?そんなやつに何度情けをかけるのだ?」
「彼は身勝手にこんなことをする人ではありません!それは、ここにいるもの全員が分かってることではありませんか?」
「ですが、お姉さま。事実彼が渡したリンゴには・・・。」
「黙りなさい!彼をこれ以上侮辱するというなら私が許しません!」
「お嬢様。ここは引きましょう。私からお伝えしたいこともありますので。」
「わかったわ。」
冒険3日目
「そろそろ、どこかの港によりたいところなんだがなぁ。あれは?」
遠くの方に何か町のようなものが見えた。
「やっと町だー!あそこに向かおう!」
数時間後、町にくっついた形の港に船を止めて門番らしき男に話をかけた。
「すまない、旅のものなのだがここは何という町だ?」
「町?ここは、ウーヌス王国の王都:ユニズだ。」
「ユニズか。どうやったらここに入れる?」
「まずは、お前の身分を証明するために審査をする。お前が持ってる船を確かめさせてくれ。」
「あぁ、わかった。」
「特にリンゴの中は見ないといけないんだが、リンゴはあるだろうか?」
「たぶんあるが、どうしてだ?結構あるもんで。安全だと分かればいいのか?」
「すまないな。ついこの間とある事件があってな。」
「なるほど、わかった。船に来てくれ。」
「あぁ、ご協力感謝する。」
「これが俺の船で、食庫はここだ。」
「こんなにあるのか。一人でこんなにか?」
「あんたナンタンって町分かるか?そこから出発したんだが町のみんなが持たせてくれてな。」
「なるほどな。リンゴを10つ切ってもいいか?ほんとは全部なんだがあんたは協力してくれてるから10つを切った後に、1つ私が毒見をする。」
「あぁ、安全だったら残りの8つは門番たちで食べてくれ。1つは俺が食べるから。」
「よかろう。」
「大丈夫そうだな、そうしたらここに名前とかもろもろ書いてくれ。」
「わかった。」
「オレズノート・リヒンだな。この王都を楽しむといい。もし、嵐が来るとなったらふねはこちらで安全を確保しておくからな。」
「ありがとう。」
「あぁ、あと・・・王都近くの酒場に行くといろんな奴の話が聞けるからおすすめだ。俺は今日ちょっと夜回りがあるからな。案内はできない。」
「わかった、ありがとな。じゃあ。」
門番に通してもらいユニズに入った。
ユニズには、様々な食べ物や物資などがあった。
門番が言っていた酒場が開くまで王都を歩き回っていた。
「おう。これはマリア似合いそうだな。」
そんな感じであっという間に時間は過ぎて酒場が開く時間になった。
向かうと酒場は結構な賑わいを見せていた。
冒険者みたいなものや昼間に出会った商人の親父などがいた。
「見ない顔だね。旅人かい?」
「あぁ、今日この王都に来たんだが空いてるか?」
「そうだね。ちょっと待ってな。」
店主はそういうと一人で飲んでいる薄汚れた軍服を着た男に話をかけていた。
戻ってきて相席でもいいかと聞かれたので構わないと伝えた。
「何食べる?未成年なら酒は出せないが?」
「そうだな、何がおすすめだ?」
「うちの料理はすべてうまいからね。相席相手に聞くといい。」
「何がおすすめだ?」
「そうだな、ここに来たというならやはり、名物特大カツカレーなんておすすめだ。なんたって・・・」
「わかった、特大カツカレーで。」
「おい!最後まで話を・・・。」
「へい!お待ちどう!特大カツカレーだよ!残したら倍の金額。3500ペンズ。全部食べられたら750ペンズ値引きの・・・。」
「ごちそうさまでした!いやぁうまかった。」
『え~~~~~~~!特大カツカレーを食った~~~~~!?』
酒場にいた全員が口をそろえて驚いていた。
「あんた、すげぇな。この特大カツカレーを食べれた奴は俺の仲間でもいないぜ?」
「はぁ、そうだったのか。旅を出てから初めての誰かの作った飯だったからうれしくてよ。」
「あんたほんとに変わってんな。」
「まぁな。夢のために生まれた故郷おいて出ていく奴なんて変わってるやつかもな。」
「それはそうかもな。俺はこの国で生まれてこの国で育ってこの国で働いてるからな。恐らくこれからも・・・ってそれはわからないか。ちなみにあんた、この国を出ていくときはいつなんだ?」
「特大オムカレーを一つ!うん?そうだな?ここの町でいろいろと情報収集してからだからなぁ。」
「情報収集?」
「あぁ、【黄金郷】について調べたいんだ。」
「黄金郷。」
「それを見つけるのが俺の夢なんだ。」
「その【黄金郷】とやらを見つけたあとは冒険終了なのか?」
「あぁ、いまのところはな。それ以上に見つけたいものがあれば旅は続けるけど。」
「いいな、その夢。俺の夢はかなわないかもだからこそ、あんたを応援できるさ。」
「叶わないのか?」
「叶わないとかどうかよりもって感じだな?俺の夢はこの2本の大剣で強者を倒して世界で一番の【兵(つわもの)】になることなんだ。でも、ここで足踏みしてるからな叶わないかもしれないって思ってよ。」
「兵か。世界には強者がいっぱいいるからな、おそらく。そうしたらよ?俺の船に乗らないか?船で旅をした先々でその町の強者たちをなぎ倒していけばいいんじゃないか?」
「ははは。あんたは最高だ。その話に乗りたい。だが、俺にはこの町でやらなきゃいけないことがある。それが終わった後にあんたがまだこの町にいたら俺から頼み出たい。」
「そうか。やらなきゃいけないことってなんだ?」
「ここでは絶対に話せないからな。誰が聞いてるかわからないからな。」
「そうなのか。」
「そういえばあんたの名前は?俺は、マーク・タイカ。」
「俺の名前は、オレズノート・リヒンだ。」
「よろしくな、リヒン。ここは、こんな長話を付き合ってくれたお礼で俺が払おう。店長いくらだ?」
「あぁ、いいのか?よろしくだ。タイカ。」
「お会計かい?えっとちょっと待ってな。計算してくるから。」
店主は、レジの方に向かい計算を始めた。
「失礼する!国軍のものである。」
「なんだい!物騒だね。もっと穏便に入ってこれないものかい?」
「すまないな。店主殿。ここに、『マーク・タイカ』はいないだろうか?」
「は?いるもいないもこの店で人探しはやめておくれ。」
[おい、あの軍兵、お前を探してるぞ。]
[来ちまったか。黙ってここは隠れるしかないか?]
「いいのか?ここで奴を匿えば店主殿が国家反逆罪として捕まってしまっても。いいのか?マーク・タイカ?」
「俺はここだ。店長やここにいる客を傷つけないでくれ。」
「おとなしく出てきてえらいではないか?なんだ?隣の奴は?」
「俺のことか?俺はただの旅人さ。」
「仲間ってわけではないってことか?」
「あぁそうさ。こいつは今仲良くなっただけさ。すまねぇ。リヒン。俺はここまでのようだ。」
「どういうことだ?」
「店長迷惑をかけてすまなかった。これで足りるのならいいが、今日のお代だ。」
「あぁ。」
「それでは、軍基地まで来てもらおう。」
そういうとタイカは連れていかれてしまった。
「あらら、いっちゃったな。」
「すまないな、旅人さんよ。」
「あぁ、まぁ仕方がないというかすべてがわからないが・・・。」
「それもあるが、金が足りねえ。」
「え?あ?あと何ペンズだ?」
「1000ペンズだ。」
「え?」
「おい、やっぱリヒンじゃねえか。」
「あんたは、門番。」
「ケルト大佐!」
「金がないのか?じゃあ、俺が立替ってことでさっきのマーク・タイカが残したものを預かりに来たんだ。」
「そうなのか。よかったら、なんでタイカは捕まってしまったのか教えてくれないか?」
「あぁ、まぁいいだろう。だが、ここでは話を聞かれる場合がある。離れようと思うんだがこっちに来てくれるか?」
「わかった。ありがとう店主!ごちそうさま!」
「あいよ。」
門番について行きながら話を続けていた。
「まったく、リヒンはほんとに何もわかってないんだろうな?」
「なんだ?」
「いちおう大佐であるんだ。犯罪者の内容をあんな人前で言わないよ。」
「・・・。そういうもんか。」
「まぁでもはなそう。」
船などが置いてある倉庫らしきところで話していた。
「ここは、ウーヌス王国の王都だ。王様のおひざ元だ。そして、マーク・タイカはその王国の軍兵だ。しかも、次期女王の護衛兵団の一員だった。ここまでわかるか?」
「あぁ、まぁなんとなく。」
「その護衛兵が次期女王の命を狙ったんだ。」
「命を狙った?殺そうとしたのか?」
「あぁ、そういうことだ。」
「そんな奴には見えなかったけどな・・・?」
「人は見かけによらないってことだよ。リヒンも気をつけろよ?」
「あぁ、俺は普段から気を付けてるぞ?」
「そうか。」
「ちなみに、その2つの大剣を俺が貰うことはできるか?」
「こんな大剣をか?こういうのは持ち主が使わないとだめになるが?」
「なんかかっこいいからちょっとほしくなってよ。」
「あはは、まぁいいだろう。売るなりしたらいい。」
「あぁ、なにかに困ったらそうするよ。もう一ついいか?」
「どうした?」
「タイカはどこに連れていかれたんだ?」
「あぁ、おそらく王国軍重要犯罪者刑務所だろうな。2日後には処刑じゃないか?」
「へえそうなのか。」
そう聞き、俺は門番に今日の宿代まで出してもらい宿に泊まった。
「さてと、どうしたもんかな。」
冒険4日目、ユニズ滞在2日目
朝になったので顔を洗って服を着替えてからタイカがいるであろう刑務所に向かった。
「うわぁ、厳重警戒だな。なんか抜け道ねぇかな・・・。」
「おい、お前。昨日もあの酒場で隣にいたやつだな。何の用だ?」
「たまたま通りかかったと言えばいいか?それとも、仲間を助けに来たと言えばいいか?どっちがいい?」
「なに?軍兵をなめるのはほどほどにしておけ!」
「よっと~~。」
「いきなり襲い掛かってくるなんて卑怯だぞ。俺はお前らと戦いに来たなんて言ってないだろ?」
「ふざけるな!暗殺未遂は立派な犯罪だ。」
そういうと周りにいた軍兵たちも参戦をしてきた。
「おいおい、リヒン。ここで戦うのは聞いてないぜ?」
「あ、門番。こいつらをどうにかしてくれ。」
「リヒン。済まないが七英雄であるこの僕にそのお願いは聞けないよ。」
「なんだ、残念だ。まぁいい。」
「君とは戦いたくなかったが本気を出させてもらうよ!」
「望むところだ。」
それから十数分二人の決闘は続いた。
最終的に俺が力負けをしてしまった。俺は捕まってしまった。
刑務所の中へ行くとタイカの姿があった。
「なんで、お前も来たんだ?」
「え?タイカのことを助けようとしたらそこの七門番?に捕まってしまった。」
「お前・・・。」
「リヒン。訂正をしようか。僕は七英雄だ。」
「そうそう。それそれ。」
「君の罪はそんなに重くないはずだ。僕は君に恩もあるから明日には出られるだろう。」
「そうか。タイカも一緒に出られたりするか?」
「それはできない。彼にはこれから罪選択の時間がある。」
「無理なのか・・・。」
「まぁ、せいぜい悩むといい。最良な選択をすることを願ってるよ、元同僚であり、七英雄:マーク・タイカ。」
「・・・。」
しばらく話がなかった。今までの話を振り返っていた。
「七英雄!?タイカも七英雄なのか?」
「なんだ今頃。そうだ、俺はその呼ばれ方は嫌いで名乗っていないがな。」
「ちなみに七英雄ってなんだ?」
「いわゆる七人の英雄のような強さを持った奴らの総称だ。数年前に大規模な戦争があったときに活躍した7人だ。」
「なんでそんなすごいやつがこんな檻にいるんだ?」
「誰かから聞いただろうが俺はこの手で次期女王の命を落とそうとした。それだけで十分な理由だろ?」
「何か目的があってそれをやったんじゃないか?」
「まぁ、復讐だ。俺はこの国の王家に両親も家もなくされた。だから、復讐をしてきた。」
「なるほどなぁ。わかってきてはいるがもう少しかみくだいてくれると助かる。」
「俺の家は八百屋だったんだこの音でも有名な八百屋だった。俺が10歳の頃そこに国王たちが訪問して、八百屋を見学していた。」
「俺は父さんに言われた一つのリンゴを手に取って、次期女王に差し出したんだ。」
「リンゴ・・・。」
「そのリンゴを次期女王の側近のワンクスがリンゴを取り上げたんだ。結局別の果物を次期女王は食べていた。あとから気が付いたが俺が渡したリンゴには毒魔法が施された菱がはいっていたそうだ。」
「毒魔法か。」
「あぁ、おそらくうちの親たちはその毒リンゴを次期女王に食べさせるよう誰かに言われたんだろう。今の俺ならわかる。」
「なんでだ?」
「俺も同じことをさせられたからだ。その後、すぐに俺は国境近くの徴兵をかけられて、数年前の大規模な戦争にて国軍の正式兵に昇進した。」
「七英雄のことか。」
「そしてこの間、リヒンが王都に来るちょっと前だ。王都にて護衛任務として王都に来てから自分の親たちが亡くなっていたことを知ったんだ。」
「実家に帰る決意をしたが次期女王やワンクスなどが止めてくれていたが、その制止を振り切って実家に行ってみたが跡形もなかった。独自に調査した結果、両親は王家に磔にされたとわかった。」それから、両親の仇を討とうとしたんだ。」
「そこに、継承権第2位の王子である:ウーヌス・アウルストが現れて、俺に協力を持ちかけてきたんだ。絶好のチャンスだと俺は思った。」
「そして王子がある日一つのリンゴを手に取り、次期女王に差し出すように俺に伝えてきたんだ。それを食べさせればすぐに復讐ができると俺に言ってきた。」
「またリンゴか。」
「最終的に俺は次期女王の前まで持ってはいけたが最後に俺は渡せなかった。」
「なんでだ?」
「過去のことを思い出したのもあるが、次期女王の人柄を知ってるからこそ殺すことはできないって思ってしまったんだ。」
「なるほどな。」
その後は側近だったワンクスがリンゴを取り上げる。中身を確認してからエノ殺害未遂の罪をつけられてしまいタイカは逃げ出したそうだ。
「すまないな。」
「なんで謝ってるんだ?」
「こんな情けない話をしてしまって悪いなって思ってよ。」
「あぁ、俺は聞きたいからタイカの話。でもよくわかった。俺はタイカにつく。」
「やめておけ、お前の夢をどうするんだ?」
「それも叶える。お前と戦えるならそれでいい。」
すると刑務所の扉が開いた。そこに現れたのはいかにも偉そうな3人だった。
「よぉ、マーク・タイカ。お前のおかげで我が娘は殺されそうになった。よってお前は2つの選択肢を選ぶことになる?」
「選択肢?」
「あぁ、殺そうとしていないならお前処刑だ。事実、お前は毒の入ったリンゴを二度も渡してるのだからな。」
「お父様!1度目は!」
「エノはだまっていなさい。そしてもう一つの選択肢は殺そうとしたことを認め、国境軍で10年務めるということだ。」
「・・・。」
「少しは考える時間を与えよう。明朝またここに来る。その時にどちらかを選ぶといい。」
そういうと彼らは刑務所から出て行った。
「あれが次期女王で後ろにいたのはタイカをそそのかしたやつか?」
「あぁ、次期女王:ウーヌス・エノだ。」
「なんか、国王と王子は悪い奴だったけど、次期女王はそんな感じはしなかったな。」
「そうなんだ。俺はあの人を二度も。」
「なぁ、タイカ。選択肢を増やしはしないか?」
「選択肢を増やすだと?どうやって?」
「あぁ、第3の選択肢『国王と王子をぶっ倒して、自分と旅に出る。』ってのはどうだ?」
「・・・。ははは、まったくリヒンは自分の状況も考えずに馬鹿な話をするやつだ。」
「いい考えだと思うけどな。」
「あぁ、とってもいい考えだ。その選択肢に決めた。こうなったら、なんでもやってやる。俺はオレズノート・リヒンについて行くぜ。」
「そうでなくっちゃ。さてと、ここから出る方法を考えなきゃな。」
「そうだな。」
『無理じゃね?』
「そんなことはないと思うぞ?」
「話は聞かせてもらった。さっきはあんなこと言って悪かった。」
「ワンクス!ケルト!」
「どうしたんだ、あんたら。」
「まぁな、そこで盗み聞きをしてるケルトとは違って俺はお嬢さまからの命令だ。」
「お前らこの服に着替えろ。そして、早めに脱出するんだ。俺らについてこい。」
ワンクスとケルトについて行き王都の南の方まで来た。
「いいのか、そんなことをして。お前らのクビだとかにならないのか?」
「まぁなるだろうな。だが、俺らはあんたらにかけることにした。このままの王家体制ではいずれ大きな問題が現れる。お前らの力でこの国をぶっ壊してくれ。」
「わかった。」
「はぁ、リヒンは二つ返事が過ぎる。だが、俺はあんたについて行くと決めたんだ。やってやろうじゃねえか。」
一方そのころ王宮では、
「なに?脱獄しただと?あれは相当な力がないと開かない檻だぞ?」
「それが、七英雄のケルト大佐、ワンクス大佐が関与した模様。」
「ケルトとワンクスだと!?なぜあの二人が?」
「わかりません」
「姉上!これは国家の一大事です!速やかに会見を開きましょう!」
「なぜです?」
「姉上、次期女王の支持率をこれ以上下げないようにせねばなりません。」
「確かにだな・・・。2時間後、国家非常事態宣言を出しましょう。」
「わかりました。」
「そして、マーク・タイカ、オレズノート・リヒン、ジャイアント・ワンクス、サバイザー・ケルトを緊急指名手配にいたしましょう。」
夜6時、国家非常事態宣言と指名手配が発表された。
「改めて申し訳ない、これじゃ、身動きが取れない。」
「な~に、いいのさ。明日の朝にはあの次期女王が統べる国だ。」
「会見が始まった。」
次期女王:ウーヌス・エノが広場で会見を始めた。
最初の方は、普通の会見だった。
「改めて挨拶をさせていただく、現国王のウーヌス・アンダーマンだ。今回の一件についてだが国王としても大変責任を感じてる。申し訳ない。責任を取って私は国王の座を降りることとした。次期国王は、継承権第2位の王子:ウーヌス・アウルストとする。エノには、今回のことが落ち着くまでは政治不介入とする。」
「お父様!」
「父上、かしこまりました。そうしましたらこのウーヌス・アンダーマン前国王と正妻との子供である私が国王といたしましょう!」
「アウルスト!」
「なんでしょうか?姉上いや、混血の姫?」
「何を言ってるのですか!?」
「まぁいいでしょう。あなたも使えるでしょう。さて、この放送を見てる4名の指名手配よ。1時間に現れないのであればここにいる、ウーヌス・エノも同罪人としてこのテレビに会見に移した状態でみぐるみをはがし、ありとあらゆる処刑方法をいたすぞ?いいのか?」
「エノを」「次期女王を」「お嬢様を」「エノ様を」
『離せぇーーーーーー!!!!』
俺らはとんでもない速さで広場についた。
「あなたたち、なぜここに!?」
「罪人だ!全員ひっとらえろ。てめぇはこっちにこい!」
「きゃ!」
「くそ。なんていう人数だ。」
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俺はここで初めて技を使用して兵隊をなぎ倒した。
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「わかった、ありがとう二人とも!行くぞ、タイカ!」
「あぁ、【武離音越(ぶりおこし)】!」
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