魔法使いの夢

すずねこ脚本リスト

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目を閉じて見る夢

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踏切の警鐘が鳴り響く。

電車が来る。

5時32分。

時刻通り。

2号車中央のドアの前に寄る。

俺の前には必ず、髪と幸の薄いおじさんがいる。

空気が抜ける音とともにドアが開くと
俺は手前の端に、おじさんはその向かい側の席に座る。
そして、後ろのお姉さんが隣の席に腰を下ろす。

瞳を閉じる。
揺りかごに抱かれた赤子のように
1時間半の夢路へと俺は旅立つ。

それが日常。

永遠と繰り返される安定した世界。

昇進や昇給はあっても、卒業や受験はない。

定められた節目のない、変わらない世界がそこにある。

口を開いた扉の向こう
そこには俺のが広がっていた。

「全てが終わる…」

平穏と安定を含んだ扉は、母親のようだ。
優しく温かく微笑みながら手を差し伸べている。

あとは掴むだけ。

変わらない明日がそこにはあるのだ。
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