○○とハサミ

すずねこ脚本リスト

文字の大きさ
8 / 11

言の葉の想いの御霊を添えて①

しおりを挟む
     明  深海の中に落ちていく
        ようなイメージ。

 【SE 水泡の音】

明 「宛てのない努力は
   どうも好きじゃなかった。
   無駄も苦労もしない生き方の方が
   楽だったから」

 【SE 水泡の音】

明 「気が付けば、俺には何もなかった。
   誰かと違う何か。誰かに勝る何か。
   それを何一つ
   持ち合わせていなかった」

 【SE 水泡の音】

明 「どうせ、負ける」

明 「どうせ、選ばれない」

明 「どうせ、失敗する」

明 「どうせ、ボクなんて」

明 「楽な方へと流れて行った結果。
   自業自得。何も恨めず、
   ただ全てを諦めていた」

 【SE 水泡の音】

明 「嘘だ。無いモノを求めて走り続けた」

明()「でも、どこまで走ればいいんだろう」

明 「何も掴めないまま、
   その生涯を終える。
   結局、その存在に意味などなく」

明()「もう走らなくていい・・・」

明 「だから落ちることにした。
   そっと目を閉じて。ただ落ちていく」

明()「それが楽だったから」
 
未優『辛い』

 【SE 刺す音】
 
明 「未優・・・?」
 
未優「苦しい」

 【SE 刺す音】

未優「痛い」

 【SE 刺す音】

未優()「はぁ、はぁ、はぁ、
     あぁぁぁぁああ!!」

 【SE 刺す音】

明 『地獄を見た。
   地獄を見た。
   誰かが辿った地獄を見た』

 【SE 刺す音】

 【SE 刺す音】
未優「私ね、頑張ったんだよ。
   メイクを覚えたの、
   ピアスを空けたの、
   ミニスカートも穿いたよ。
   そしたら、クラスメイトは
   私を歓迎してくれた、嬉しかった」

 【SE 刺す音】

母 「こんなはしたない格好やめなさい! 
   どうして、お母さんの言うことを
   聞けないの! 
   誰に吹き込まれたのよ、
   こんなこと!!」

未優「痛い! 痛いよ、お母さん。
   やめて、もうしないから。
   もうしないから殴らないで」

母 「女はね、お淑やかでいればいいの! 
   自慢の娘でいて頂戴、
   お願いだからいい子にして!!!」

未優「ごめんなさい、痛いの、凄く痛いの、
   だから、ごめんなさい! 
   ごめんなさいごめんなさい!! 
   もう許して! 許してぇ!!」
 
未優「お母さんに見せた。
   認めてくれると思ってたから。
   セミの声が聞こえた。
   骨が折れる音が聞こえた。
   飛び散る血が見えた。
   ハサミが見えた。
   これでお母さんを殺したら
   助かるかな? でも、ダメだった。
   帰る家がなくなるから」

 【SE 刺す音】

     〇待ち合わせの公園

未優「お待たせ」

女一「え、誰?」

未優「未優だよ?」

女二「誰かと間違えてるんじゃないの?」

未優「え、そんなこと」

女三「こういうのとは
   関わらない方がいいよ、いこいこ」

女一「そうね、もう行こうか」

未優「え」

     離れていく友だちたち。

女二「なにあの格好ださすぎ」

女三「一緒に歩きたくないよねぇ」

女一「しっ本人まだいるんだから」

女二「だって、夏場に
   長袖長ズボンって頭湧いてるでしょ」

未優「あ、うん、人違いだ・・・あははは」

 
未優「私はまた独りになった。でも、
   私は平気、お母さんがいるから」

 【SE 刺す音】

     ○高校の文化祭

男一「はい、先生! 文化祭実行委員は
   東山未優さんがいいと思います」

男二「俺も支持しまーす」

女四「私も東山さんがいいと思います」

女五「頼りにしてます、東山さん」

未優「は、はい。頑張ります」
 
未優「お母さんは誇らしげだった。
   自慢の娘だって。
   母子家庭でしっかりした娘を
   育てたと近所で有名になっていた。
   私は嬉しかった」

 【SE 刺す音】

女四「喉渇かない?」

男一「めっちゃ乾いたわ」

未優「ちょっと待ってて」

     未優 教室を出る。

女五「さすが東山さん、気が利くぅ」

     クラス大笑い。

未優「お待たせ」
男二「俺ファンタが良かった」

男一「わがまま言うなよ、東山様が
   買ってきてくださったんだぜ。
   あ、お金ねえや」

未優「いいよいいよ、お金は要らないから」

男一「お、マジで。やっさしぃ」

女四「さすが、東山さん」

未優「えへへへへへ」
 
未優「お母さんの言う通りだった。
   いい子でいれば、みんな私を
   必要としてくれた。みんな、私を」

未優()「誰も私を必要としてないことは
    分かっていた。でも、
    そうしなければまた一人ぼっちに
    なってしまう。だから、(都合の)
    いい子でいなきゃ」

未優「実行委員なんて私には無理だよ」

未優()「うるさい」

 【SE 刺す音】

未優「みんなに奢るなんて何してるのよ」

未優()「うるさい!」

 【SE 刺す音】

未優「いい子でなんていたくない! 
   私はただ」

未優()「うるさい!!」

 【SE 刺す音】

明 『充満する血の匂い。
   そこらに転がる未優の死体。これは』

 【SE 水上に顔を出す音】

明 「ぷはっ」

明()「大人しく沈んでいれば、
   楽になれるものを」

明 「そうも
   してられなくなっちゃったから」

明()「お前は死んだんだ。
   もう頑張る必要はないんだよ」

明 「・・・・・・」

明()「なのになんで、抗う。 
   自分を殺してまで何を目指す!」

明 「そんなの決まってる」

明()「何にも成れない存在なのに! 
   誰にも勝てないのに! 
   ただの引き立て役でしかないのに! 
   何も出来ないのに」

明 「何も出来ないと
   言って何もしなかったら、
   もっと何も出来なくなる」
 
未優『嫌だ・・・』
 
明 「未優」

    明  歩き出す

明()「どうせ、お前が行ったところで
   何も変わりはしない。
   どうせ、お前には何も救えない。
   どうせ、すぐに投げ出すくらいなら、
   最初から拾わなければいい! 
   どうせ、お前はすぐに逃げ出す‼」

    明  明()の横をすり抜ける。

 【SE 足音】

明()「ボクを見ろ!」

    明  振り返る。
    明() 息を呑む。

明 「すまない。
   『どうせ』って言葉は
   
 
伙音「嫌・・・お願い」
 
未優「誰でもいいから」
 
伙音&未優「助けて」

未優()「消えろ!」

 【SE 刺す音】

明 「間に合った」

未優「明くん⁈」

明 「いってえ・・・
   ハサミってこんな痛いんだな、
   今度から気をつけて使おう」

未優「なんで」

明 「俺はただ自分にだけは
   負けたくないんだ」
 
立花『歯食いしばんなさい、
   このすっとこどっこい!!』

明 「団長の声」

勇介『分かってねえぞ、お前ら! 
   成れるか成れないかじゃねえ! 
   絶対になるんだよ‼』

未優「勇介くん・・・」

明 「みんなも頑張ってるんだな」

未優()「なんで? どうして? 
    わからない、わからない!」

明 「未優・・・」

未優()「私はただ友だちが欲しかった。
    心から笑える友だちが欲しかった。
    愚痴こぼして、
    くだらない事で笑って、
    恋バナしたいだけ。
    これってそんなに難しいこと? 
    特別なこと? 
    どうして叶えさせてくれないの!」

明 「そんなの当り前だろう」

未優「え」

明 「自分の心偽って生きている人間に、
   心から笑える明日なんて
   来るはずないんだ!」

未優()「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 未優・・・」

未優「いや、来ないで!」

未優()「え・・・
    私はあなたのために、私は!」

 【SE 地鳴り】

明 「未優、ここを離れるぞ‼」

未優「え、あ、うん!」

 【SE 大洪水】

明 「あそこの高台まで急げ」

     未優 波に飲まれる。

明 「未優!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...