この両手を伸ばした先に

angel

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誕生日

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ボクらの中で1番のお兄さんはクリストフェルだ。
クリストフェルの誕生日の日にボクら8人はプレゼントはしないと取り決めをした。

それはお金のないボクを思いやってのことだろうと申し訳なく俯いたがネヴィルは違うと言う。
「どうせあげあいっこになるだけだし、マルブランシュっていうプレゼント交換の日があるんだからこの日にする必要はないんだ」と

だったらと誕生日の日はその人が王様ってことにして、みんなが家来のように傅くことにしようぜってティノが言った。
昼食の席でクリストフェルが好きだと言ったオカズを全員でお皿に移すと「好きだけどコレ多すぎだから!」と戻そうとする。戻されまいとみんなはお皿を持って逃げる。お行儀が悪いと周りから非難の視線を浴びみんなで反省した。
「カバンをお持ちします殿下!」アドリアンがふざけて言うのに「うむ、くるしゅうない」ってクリスがこたえる。




そんな誕生日の順番がようやくボクにやってきた。

「今日はフェルが王様だからな、なんでも命令していいぞ!」

昼休み、いつもの生徒会室棟の一室で、みんながお弁当を食べながらボクを取り囲み命令を待っている。
オカズを…もらう?でも小さなオカズでも8個も食べられないし。
みんなが命令を待ってるからとりあえず前にロジェが命令した時の真似っこをしてみた。

「えーと、えーと。じゃパリス、ボクにお茶飲ま………。飲ませるのだ!」

恥ずかしさに顔が赤くなっちゃうけど、ノリが大事だから少し偉そうに言っちゃった。

「はい!陛下ただいま!!」

胸の前に手を掲げ膝をついたパリス。うやうやしくお茶の入ったコップを掲げ持つとボクの口にそっと寄せ注意深く傾けてくれる。
コクコクと飲むけど傾きがぁ~~。首筋を伝って胸元までお茶がこぼれちゃった。

「はっ!?陛下のお召し物がっ!」「無礼者めが、さがりおれ~」

ネヴィルとロジェが間に入り手でパリスを切る真似をする。

「ぐぇええええええええっ!」  大げさにパリスが倒れた。





「フェルも、もー13歳か~大きくなったなぁ」そういいながらアドリアンがボクの頭をグリグリと撫で回す。

学園に来てからボクはチョッピリ背も伸び、自分でもお兄さんらしくなったと思う。でもまだ誕生日が来ていないフランツやネヴィルよりも遥かに低いんだけどね。
みんなは頼もしくて、友達なんてジェイ以外できたこともなかったボクにとって大切な大切な友達だ。
伯爵邸での出来事で人間が怖くなって接触恐怖症になってたボクの心をほぐしてくれたシグ。そのシグの死とデレックのしたことにより再び接触恐怖症になりそうだったボクを癒してくれたみんな。
ここは安心していい場所だと、何度も何度も教えてくれた。そんなみんなに……

「お、お誕生日、のお願いしても、いい…?」

ドキドキするけど思い切って言ってみた。どうしてもしてほしかったから。

「おう!」「いいぜー」「なんでも」




「じゃ…じゃあね……抱っこしてほしい…」

恥ずかしすぎて俯き小さな声になっちゃうけど、ギュッってしてほしかった。
あの頃のシグがしてくれたように。







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