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2章
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「おなか…」
自分のお腹を服の上から不思議そうにさするアルゼ。
子供はどこから生まれるのかという質問。
父さんの種と母さんの卵を合わせておなかに入れて大きくするという説明をしたのだが。
「おなかのなか?でてくる、どこ?」
また同じ質問をされてしまった。
「それは…」
答えに窮する。
本当のことをどう説明したらいいのか途方に暮れた俺は。
「秘密だ」
「ひみちゅ?」
「そうだ、母親だけの秘密だ」
隠れて産むのだ母親しかわからないのだと嘘を教えた。
本当のことなど説明できないからだ。
「ふーん」
納得してないような顔でチョシの腹を撫でる。
「ちょし、ひみちゅ?」
キューキューと鳴くチョシ。
「ひみちゅ、だって!」
やっと納得したようだ
「そのうち、小さいチョシやルセも来るぞ楽しみだな」
「ちっちゃい!たのしみ」
うまく難問を切り抜けられてホッとする。
けれど次の疑問が沸いたようだ。
「かあさん、せぜも。かあさん、ちょし?」
「ああ、そうだ。父さんもどこかにいるぞ」
アルゼの唇が尖りだすのは、考え事をしている証拠。
「おぇの、かあさんしんだ?」
「あぁ」
「とおさんも、しんだ」
「そうだな」
父さんと母さんの話はよくするのでアルゼもわかっている。
「あるぜのとうさんかあさん、は?」
首をコテンと傾けて大きな真っ黒な瞳が問うてくる。
「ぐ…」
すぐに答えなければと思うのに、答えがわからなかった。
「ねぇねぇ。あるぜのかあさん、は?」
膝によじ登ってくる華奢な体を受け止めつつ視線を逸らす。
何というのが正解なのか…。
「アルゼのかあさんは…」
「おぇ?」
キョトンと見つめる瞳がとんでもないことを言い出す。
「おぇ、が、かあさん?」
なんと返答するのが正解かわからず頭がグルグルしだす。
「お…れは、母さんじゃ…ない」
「あるぜのかあさん、どこ。しんだ?」
矢継ぎ早の質問に困った俺は本当のことを話した。
ある日、突然ひとりでこの家にいたこと。
親はいなかったのでわからないと。
「何も覚えてないのか?」
この家に来る前の事、親の事は何も覚えていないと言う。
「おぇ、きた。おいしごはん、くれた」
アルゼの1番古い記憶は俺と出会ったことだと言う。
考え込む小さい頭を撫でてやる。
一体何があってこんな小さいのに親とはぐれて一人山の上に現れることがあるのか。
膝の上の体をギュッと抱きしめると、すぐさま抱き返してくる。
「ふふ」
笑い声をあげるアルゼの顔をのぞき込むと頬をピンク色に染めて嬉しそうだ。
「どうした」
「ふふっ」
嬉しくて仕方がないという顔で抱き着いてくるアルゼに困惑する。
どうしたというのだ。
「あるぜ、おぇ、すき」
心臓がドキンとはねる。
「かあさん、しらない。とおさん、いない。おぇ、だけ」
密着した体から匂い立つ馨しい香りにクラクラする。
久しぶりの触れ合いが嬉しかったようだ。
「おぇ、だいすき」
質問攻めから解放された俺だが、また別の意味で困るのだった。
自分のお腹を服の上から不思議そうにさするアルゼ。
子供はどこから生まれるのかという質問。
父さんの種と母さんの卵を合わせておなかに入れて大きくするという説明をしたのだが。
「おなかのなか?でてくる、どこ?」
また同じ質問をされてしまった。
「それは…」
答えに窮する。
本当のことをどう説明したらいいのか途方に暮れた俺は。
「秘密だ」
「ひみちゅ?」
「そうだ、母親だけの秘密だ」
隠れて産むのだ母親しかわからないのだと嘘を教えた。
本当のことなど説明できないからだ。
「ふーん」
納得してないような顔でチョシの腹を撫でる。
「ちょし、ひみちゅ?」
キューキューと鳴くチョシ。
「ひみちゅ、だって!」
やっと納得したようだ
「そのうち、小さいチョシやルセも来るぞ楽しみだな」
「ちっちゃい!たのしみ」
うまく難問を切り抜けられてホッとする。
けれど次の疑問が沸いたようだ。
「かあさん、せぜも。かあさん、ちょし?」
「ああ、そうだ。父さんもどこかにいるぞ」
アルゼの唇が尖りだすのは、考え事をしている証拠。
「おぇの、かあさんしんだ?」
「あぁ」
「とおさんも、しんだ」
「そうだな」
父さんと母さんの話はよくするのでアルゼもわかっている。
「あるぜのとうさんかあさん、は?」
首をコテンと傾けて大きな真っ黒な瞳が問うてくる。
「ぐ…」
すぐに答えなければと思うのに、答えがわからなかった。
「ねぇねぇ。あるぜのかあさん、は?」
膝によじ登ってくる華奢な体を受け止めつつ視線を逸らす。
何というのが正解なのか…。
「アルゼのかあさんは…」
「おぇ?」
キョトンと見つめる瞳がとんでもないことを言い出す。
「おぇ、が、かあさん?」
なんと返答するのが正解かわからず頭がグルグルしだす。
「お…れは、母さんじゃ…ない」
「あるぜのかあさん、どこ。しんだ?」
矢継ぎ早の質問に困った俺は本当のことを話した。
ある日、突然ひとりでこの家にいたこと。
親はいなかったのでわからないと。
「何も覚えてないのか?」
この家に来る前の事、親の事は何も覚えていないと言う。
「おぇ、きた。おいしごはん、くれた」
アルゼの1番古い記憶は俺と出会ったことだと言う。
考え込む小さい頭を撫でてやる。
一体何があってこんな小さいのに親とはぐれて一人山の上に現れることがあるのか。
膝の上の体をギュッと抱きしめると、すぐさま抱き返してくる。
「ふふ」
笑い声をあげるアルゼの顔をのぞき込むと頬をピンク色に染めて嬉しそうだ。
「どうした」
「ふふっ」
嬉しくて仕方がないという顔で抱き着いてくるアルゼに困惑する。
どうしたというのだ。
「あるぜ、おぇ、すき」
心臓がドキンとはねる。
「かあさん、しらない。とおさん、いない。おぇ、だけ」
密着した体から匂い立つ馨しい香りにクラクラする。
久しぶりの触れ合いが嬉しかったようだ。
「おぇ、だいすき」
質問攻めから解放された俺だが、また別の意味で困るのだった。
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