ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした

angel

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6章

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 --------俺は本当に黒の王だったんだ





 その事実に何とも言えない感情が押し寄せる。



 倒れた魔獣はすでに幻魔獣になっているようで、傷ついて下がっていた幻魔獣たちが寄り添い体を舐めあっている。

「黒の王…!!」

 跪く沢山のクウガ族クテニ族が歓喜の声を上げる。

「王!」

「黒の王!」


 その声を背に永遠とわのほうを振り返ると、飛び込むようにして俺の体に抱き着いてきた。

「おぇ、しゅごい!かっこい、かった、ねー」

 真似して右腕を上げ俺のほうに向けてくる永遠とわがいつも通りすぎる。

「かっこいかったか」

「うん!」

 抱き上げると俺の頭を撫でてくれる。

「いーこいーこ」


 --------ニパァと笑う顔が眩しくて

「まじゅーげんまじゅーなった、しゅごい」

 --------いつもの口調が愛しすぎて

「おぇ、だいすき!」



 首に顔をこすりつけるようにして体を揺するから、俺は倒れそうになり永遠とわを抱いたままその場に座り込んだ。



「黒の王!」


 何人いるんだというほどの見渡す限りのクウガ族とクテニ族の顔。
 出会ってからずっと尊敬を込めた目で見てくれていた。

 --------でも俺は自信がなかった

 俺なんかあの山頂で独りぼっちで死んでいくだけの嫌われ者のアルゼ異質な存在だったのに。
 黒の王だなんて急に言われてかしずかれて、もしそうじゃなかった時、この大勢の失望を一身に受けるのが怖かったんだ。

 最前列にいる宰相も、その後ろにいるグニスタも他の名前も知らない全ての顔は、満面の笑みを浮かべ滂沱の涙を流している。

「……俺は本当に黒の王だったみたいだ」


 白髪交じりの宰相が笑みを収め、真面目な顔になり

「何度もそう申し上げましたのに」

 と、彼にしてはからかい交じりの不満を言うのを見て俺は声を上げて笑った。
 こんなに笑ったのはいつぶりだろう。



 俺は嫌われ者のアルゼ異質な存在じゃなかったんだ--------




 そして腕の中には己の命よりも大事な愛しい愛しい永遠とわがいる。

「くろのおう?」

「あぁ、俺はアルゼ異質な存在じゃなかったみたいだ」

 キョトンと俺を見る永遠とわ

「おぇは、くおん になったのに、くろのおうってよぶ? やーのよ、もー!」

「ハハハッ」


 プクゥと膨らむ頬と少しだけ吊り目になった顔も愛らしすぎて笑ってしまうと、周り中のクウガ族もつられて笑いだす。


 傷ついていた幻魔獣たちのほうを見ると、魔獣だった2本牙の元魔獣の幻魔獣を含め、怪我が癒えていっているように見える。

「なぜ…」

「幻魔獣たちはお互いに舐めあい力の交換をします。ああして傷ついたものに力を分け与えているのです」

「そんなことが出来るのか」

「おぇとあるぜもいっちょ、ね」

 突然の爆弾発言にあわてて永遠とわの口を手で塞ぐが手遅れだ。

「むーーー」

 不満げな永遠とわを抱き上げ、赤くなる顔を隠しながら立ち上がり呼吸を整える。



 跪く人々の輪の中心に立ち永遠とわを抱き上げたまま顔を上げ


「みんな…俺は黒の王だったみたいだ。名は久遠くおんという。
 そしてこの子はオスだが俺の番の永遠とわだ」


 数百はいるであろうに一言も発さず俺の言葉を待つ人々。



「その…今までもたくさん世話になったが、これからもよろしく」

 こんな時に気の利いた言葉も言えないこんな俺だけど。


「「「黒の王!!!」」」

「「「白のつがい様!」」」



 各々が叫び



「「「久遠くおん様、永遠とわ様!」」」


 俺たちの名前を呼んでくれる。






 アルゼ異質な存在なんかじゃない俺たちの名前を--------


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