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6章

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「すみません!」

 クウガ族の女が走り出してきて幼体の子供を抱きしめ跪く。

「申し訳ございません、黒の王様にそのような物を差し上げるなんて、後で叱っておきますので」

『なんでだよ、かーちゃん。オレの1番のたからものだぞ!』

 母親の腕の中でジタバタ暴れる焦げ茶色のクウガ族の幼体の子供。



 --------1番の宝物を俺なんかに



 胸が熱くなる。



「どーしたの?」

 買い終えたのか永遠とわが俺の元へと戻ってきて、抱き上げろと手を伸ばしてくる。

「この子が自分の宝物を俺にくれたんだ」

 抱き上げた永遠に、小さな篭の中を見せると

「ふぁぁあ~~きれーねー」

 クウガ族の子が鼻息荒く自慢げに

『みつけるのすっげ―むずかしかったけど、がんばってあつめたんだ!』

 母親の腕から抜け出した幼体の子供が胸を張る。


「そんな大切な物を俺なんかにくれていいのか?」

『おうさまのためにあつめたんだから、とーぜんだ』

 コラッと口の利き方を注意する母親を止めるように手を挙げると、すぐさま跪きその横には店主も同じように跪いていた。

「ここの子なのか」

「ええー!?」

 驚きの声を上げたのは永遠とわだ。

「いいないいないいなー!はわわ~んが、まいにち?いいな~」

 意味がわからない夫婦と子供はポカンと見上げているが、俺たちにはわかる。

「毎日は飽きるだろ」

 千早ちはやがそう言うとまたケンカをはじめたので腕の中の永遠を降ろし、幼体の子供に篭を差し出す。


「ありがとう、こんなにいっぱい大変だったろう。この中で2番目に大事な物を選んでくれ。それだけをもらうことにする」

『えーぜんぶいいのに』

 そういいながらも時間をかけて篭の中を吟味して1つの白色の石をくれた。
 それを俺の掌に乗せてくれたので、つまみあげ陽に透かして見ると空の色と溶け合ってなんとも美しい。

「貴重な物をありがとう、大切にする」

 そういうと幼体の子供は頷き母親の元へと戻っていった。





 幻魔獣に乗って戻る途中、テルフィエンデに聞いてみた。

「あのクウガ族の幼体の子供は俺と普通に話してくれた。大人はすぐに跪くし話してくれても少しだし敬語なのに…」

「子供ですからね。それと憧れの黒の王様に会えて嬉しさが勝ったのでしょう」

 憧れ…?

「歴代の黒の王の冒険を、毎晩子供に読み聞かせる親が多いですからね、私もよく読んでもらいましたよ」

「そんな本があるのか」

「はい」

「俺も読んでみたいな」

永遠とわもー!」

もうめったなことでは自分の事をアルゼと言わなくなった永遠とわ

「畏まりました。すぐにご用意させますね」

「うん!」

屋敷が見えてきた場所で幻魔獣から降り、あとは歩いて帰ることにする。
千早ちはやの手にある篭の中には買い物したものがいっぱい入っている。

早く食べたいと走り出す千早ちはや永遠とわを一人のクウガ族の戦士があわてて追いかけてゆく。

取り残された俺とテルフィエンデは顔を見合わせクスリと笑った。


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